羽丘の元囚人   作:火の車

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打ち上げと......

 “琴葉”

 

 体育祭が終わりました

 

 青かった空は段々と暗くなっていき

 

 ポツポツと小さな星々が見えてきました

 

 そんな中、私たちは......

 

琴葉「今日は皆さんお疲れさまでした!かんぱーい!」

『カンパーイ!』

 

 教室で打ち上げをしています!

 

 机にはかなりの量の食べ物や飲み物があって

 

 これらは全て、南宮君からの計らいです

 

 彼のポケットマネー、どうなってるんでしょうかね

 

燐子「あの、私たちもここにいていいんでしょうか......?」

イヴ「別のチームですし、私は学年も違いますが?」

彩「私たちに関しては、あんまり関わりないけど......」

千聖「私は会ったこともないわよ?」

麻弥「ジブンもお噂は聞きますが。」

リサ「いいよいいよ!環那もイヴちゃんのお友達なら是非って言ってたし!」

千聖「大企業の社長となると、やっぱり器が違うわね。ねぇ?日菜ちゃん。」

日菜「そうだねぇ......」

 

 教室の中にはいろんな人がいます

 

 若宮さんのお友達さんに1年生の宇田川あこさん

 

 それに、2年生の生徒もいますね

 

 後は南宮君のお知り合いにお父さんに阿頼耶さん、と

 

 もう何でもありですね

 

あこ「環那兄!これ、全部食べていいの!?」

環那「別にいいよー。好きなだけお食べ?」

あこ「わーい!環那兄大好きー!」

環那「あはは、そっかそっかー。」

 

 彼はまぁ、普通に楽しんでます

 

 完全に目が保護者のそれなんですが

 

 彼ってそう言うところありますよね

 

千聖「こんにちは、南宮社長。」

環那「おっ、これはこれは白鷺千聖さん。初めましてだね。」

千聖「えぇ。お噂はかねがね伺っているわ。」

環那「こちらこそ、君の名前はよく聞いているよ。」

 

 なんか空気変わりましたね

 

 あの2人が話すと、完全にビジネスのそれですね

 

 雰囲気が学生のそれじゃないですもん

 

千聖「私の仲間がご迷惑をおかけしたようで申し訳ないわ。」

環那「あはは、そんなお気になさらず。もう二度とあんな風にはなりたくないけど。」

千聖「全くの同意見よ。私はあなたと仲良くしたいと思っているもの。」

環那「それはちょうどいい。近々、俺もそちらに出向く予定だったんだ。近日中に連絡を入れるつもりだけど、君からも話を通してくれると助かるかな。」

千聖「あら?どういったお話かしら?」

環那「そこはまぁ、まだ社外秘なので後ほど。」

千聖「この場で話すような内容ではなかったわね。失礼。」

環那「いえいえ、お気になさらず。」

 

 ......これ、社交パーティーですか?

 

 いや、違いますよ?

 

 あの2人がおかしいだけです

 

琴葉「あなたは本当に誰とでも話せますね。」

環那「ん?そう?」

琴葉「白鷺さんとは初対面だったのでしょう?」

環那「まぁね。でも、流石だと思ったよ?」

琴葉「そうなんですか?」

環那「距離感を測るのが上手いね。話しやすかった。」

 

 珍しく高評価ですね

 

 やはり、幼いころから活躍されてるだけはあるのでしょう

 

環那「琴ちゃんも篤臣さんと話してみればいいじゃん。」

琴葉「勘弁してください。もうお昼休みに十分話しましたよ。」

環那「そう?篤臣さんは話したそうにしてるけど。」

琴葉「え?」

環那「騙されたと思って行ってみなよ。きっと、面白いから。」

 

 彼はそう言って、エマちゃんの方に行きました

 

 恐らく、様子を見に行ったんでしょう

 

琴葉(仕方ありません。)

 

 私はそんなことを考えながら、お父さんの方を向きました

 

 彼の言うことが本当なら、流石に良心が痛みますし

 

 少し、様子見位で

 

琴葉「お父さん。飲んでますか?」

篤臣「......アァ。」

琴葉「嘘をつかないでください。コップに何も入ってないじゃないですか。」

 

 私はそう言いながら、近くにあるビールを手に取り

 

 それを開け、お父さんの方を見ました

 

琴葉「注ぎますよ。コップ、出してください。」

篤臣「アァ。」

 

 お父さんが差し出してきたコップにビールを注ぎました

 

 割合は7対3

 

 昔、組員の人が間違えて怒られてましたし

 

 少し、緊張します

 

琴葉「はい、どうぞ。」

篤臣「......オォ。」

 

 お父さんはコップを口につけると

 

 一気にビールを流し込みました

 

 昔からお酒に強い人だとは知ってますが

 

 もういい歳なのに、すごい飲みっぷりです

 

篤臣「まさかァ、娘の注いだ酒が飲めるとはなァ。随分、長生きしたもんだなァ。」

琴葉「そうですね。」

篤臣「ちょっと前まで豆粒みてェだったのによォ。」

 

 お昼に比べて、よく喋りますね

 

 お酒が入ってるからでしょうか

 

篤臣「今日のお前を見てェ、昔を思い出したァ。」

琴葉「昔、ですか?」

篤臣「あれはァ、30年前くれェだったかァ。今日と似たようなことがあったのよォ。」

琴葉「似たようなこと?」

篤臣「クラスのはぐれもんだった俺にィ、お前ェみてェに笑いかけるようなバカな女がいてよォ。」

琴葉「......!」

 

 お母さんだ

 

 と、直感的に感じました

 

 って、あれ?

 

篤臣「あいつァ、生徒を誰一人として見限らなかったァ。どんな奴にもバカみてェに真っ直ぐぶつかってよォ。」

琴葉「......そうですか。」

篤臣「お前ェはあいつに似てるァ。良い教師になったなァ、琴葉ァ。」

琴葉「......!」

 

 初めて、この人に褒められた気がします

 

 昔から、ずっと難しそうな顔をしてたのに

 

 今はどこか、表情が柔らかい気がします

 

篤臣「......お前ェにアイツを預けてよかったァ。」

琴葉「え?」

 

 あいつ、って、南宮君の事でしょうか?

 

 そう言えば、彼とお父さんの関係って謎が多いですね

 

 本当にいきなり紹介されて、一緒に住むことになりましたし

 

篤臣「だがまァ、一つだけ忠告するぞォ。」

琴葉「忠告?」

篤臣「リレーの時のあいつ、おかしかっただろォ?」

琴葉「リレーのとき、ですか?......確かに、いつもと様子が違いましたが。」

 

 何と言うか、ボーっとしていたような気はします

 

 それに、珍しく汗もかいてましたし

 

 運動能力も異常とかそういう次元じゃなかったような

 

篤臣「あいつは本来、本気を出さねェ。いやァ、出す必要もねェ。元からバケモンだからなァ。」

琴葉「それは、そうですね。」

篤臣「だがァ、今日のリレー。あれは間違いなくアイツの本気だァ。」

琴葉「......あれが?」

 

 あれが、南宮君の本気

 

 見える気配のなかった底......

 

篤臣「お前ェに言っておくぞォ。出来る限り、アイツにアレを使わせるなァ。」

琴葉「え?」

篤臣「あれは本気は本気だがァ、そんなに安っぽいもんじゃねェ。」

琴葉「どういうことですか......?」

 

 あのお父さんが少し焦ってるように見えます

 

 あれは、そんなに不味いものなんですか?

 

篤臣「あれは使えば間違いなく最強になるがァ、それ以上のリスクを負うことになるんだァ。それを、あいつは分かってるはずだァ。だがァ、アイツは大切な奴のためなら躊躇いなくつかいやがるだろうなァ。今日のアイツを見て、確信したァ。」

琴葉「あれは、どういうものなんですか?」

篤臣「あれはァ__」

リサ「__あのー。」

琴葉、篤臣「!」

 

 お父さんが話してる途中

 

 今井さんがこっちに来て、声をかけてきました

 

 どうしたのでしょうか?

 

リサ「環那がどこにいったか知らないですか?いつの間にか消えてたんですけど。」

琴葉「え?」

リサ「エマも知らないみたいで、浪平先生と話してたの見たので、心当たりないかなって。」

琴葉「私も離れてから見てませんが......」

リサ「もー、ほんとどこ行ったんだか......」

 

 ......なんだか、不安になりますね

 

 今の会話の流れ的に

 

 いや、そんなに時間もたってないので何もないでしょうが

 

リサ「トイレとかですかねー?」

琴葉「それか、面倒になって帰ったか。」

リサ「うわ、ありそーですね。」

琴葉「そうですね。」

 

 帰ったかトイレに行ってるか、だとは思います

 

 きっとこの不安もさっきのお話のイメージが尾を引いてるだけです

 

 そう、きっとそのはずです

___________________

 

 “環那”

 

環那「__この辺でいいでしょ。」

 

 俺は学校の前にある雑木林の中で足を止めた

 

 登校するとき偶にショートカット使われるこの場所だけど

 

 普段は誰も通ることのない、静かな場所だ

 

環那「俺に話があるんでしょ?拓真君。」

拓真「......あぁ。」

 

 俺の後ろにいる厳しい表情をした拓真君に話しかけた

 

 相変わらず、好かれてはないみたいだ

 

 まぁ、どっちでもいいけど

 

 ただ......

 

環那「保護者同伴は感心しないな。1人で来るのは怖かった?」

春日「......」

 

 俺は拓真君の後ろにいる春日の方を見た

 

 確か、俺が中学に殴り込んだ日以来か

 

 老け込んだとかはないけど、少しやつれたな

 

拓真「違う。」

環那「!」

拓真「ただ、聞いて欲しいだけだ。俺の決めた覚悟を。」

環那「......ほう。」

 

 どうやら、手ぶらで来たわけじゃないみたいだ

 

 いいねぇ、悪くない

 

環那「なら、聞かせてもらおうか。君の覚悟ってやつを。」

 

 俺はそう言って、拓真君の方に体を向けた

 

 果たして、この子は俺の期待通りなのか

 

 それとも超えるのか、それとも外れなのか

 

 今から語る言葉で全てが分かる

 

 さぁ、聞くとしようか

 

 未来を担う若者の言葉を

 

 

 

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