羽丘の元囚人   作:火の車

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ルールブレイカー

 振替休暇が明けて、今日は学校だった

 

 けど、あたし達の教室では一つ席が空いていた

 

 窓際の一番後ろの、環那の席

 

リサ「エマ?今日は環那はどうしたの?」

エマ「......体調不良。目は覚めてるけど、まだ体力が回復しきってない。」

リサ「そうなんだ?」

友希那「あの環那が3日も動けないなんて、相当な体力を消費してたのね。」

 

 ......多分、違う

 

 友希那は気づいてないけど、エマがいつもより歯切れが悪い

 

 きっと、他に何かがあったんだ

 

 昨日は燐子が最後までいたはずだけど

 

リサ(うーん、どうしたんだろう。)

 

 環那がサボるときの理由は大体わかる

 

 何か悩んでる時だ

 

 それでも、学校まで休んだのは初めてだけど

 

友希那「リサ?」

リサ「あー、なんでもないよ。」

友希那「そう?」

リサ「取り合えず、お弁当食べよっか。エマも一緒に。」

友希那「えぇ、そうね。」

エマ「うん。」

 

 そう言って、あたしたちはそれぞれお弁当を広げた

 

 エマのお弁当は見た感じ、環那の手作りだった

 

 ちゃんと保護者としての責任は果たしてるみたいだけど

 

 あたしにはそれがあまりにも義務的に見えて

 

 少し、環那のことが心配になった

___________________

 

 “環那”

 

 ずっと感じてた

 

 俺の人生に転機が訪れてることは

 

 けど、見ないようにしてた

 

 姿を認識したら、本格的に始まる気がして

 

 もう少し、もう少しと、問題を先延ばしにしてた

 

環那(......ダメだなぁ、俺は。)

 

 散々偉そうにしてこのザマだよ

 

 ほんと、なんだ?この体たらくは

 

 ありえないでしょ

 

 これから人を育ってようってやつが

 

『__気づいてたんでしょ?』

環那(......そうだよ。)

『もう、君の中で友希那への執着はなくなってる。』

環那(知ってるよ。うるさい。)

『見つけっちゃったんだよね?友希那よりも大切な人達を。僕に命をくれた女の子よりも大切な人よりも大切な人達。』

環那(......うるさいって言ってんだろ。殺すぞ。)

『別にいいけど、いいの?今僕が死ぬと、壊れるよ?』

環那「......チッ。」

 

 我ながらウザイ

 

 何のメリットもなかったら殺してる

 

 ほんとにダルい

 

環那(てか、お前から見てどうなの?今の俺の友希那への感情って。)

『そりゃあ、信じがたいよ。僕は友希那が一番大切だし。』

環那(......だよね。)

『分かる、分かるよ?傷つきたくないんでしょ?永遠と思ってた友希那への愛が色褪せたことを認めて、傷つきたくないんだよね?』

環那(......)

『でも、それを認めないと、君はあの4人を選ぶことは一生できない。』

 

 分かってるけど見たくないものをズケズケと

 

 ムカつくよ

 

 ほんとに自分自身とは気が合わない

 

 死んでも友達にはなれないタイプだ

 

ノア「__なんだ、こんなところにいやがったのか。」

環那「っ!って、ノア君か。」

ノア「どうやら、いつも通りのようだな。」

 

 ノア君も気づいてるのか

 

 多分、篤臣さんあたりが話したのかな

 

 あの人くらいだもん

 

 あれの存在を知ってるの

 

ノア「だが、今日はもう1人の貴様に用がある。」

環那「!」

『おっと?』

 

 驚いた

 

 てか、あっちまで驚いてるし

 

環那(仕方ない。変わるよ。)

『そうだねー。仕方ないか。』

 

 入れ替わる、と言うのも少し語弊があるけど

 

 取り合えず、ノア君が用のある方にしよう

 

 “ノア”

 

環那「っと、僕に何か用かな?ノア。」

ノア「呼び方まで変わりやがるのか。(雰囲気がガラッと変わりやがった。)」

 

 こいつ、本気で多重人格なのか?

 

 口調だけならともかく、身に纏う雰囲気も変わった

 

 今までにいろんな人間は見てきたが、こんなのは初めてだ

 

ノア「用などない。ただ、貴様に興味があるだけだ。」

環那「そうなの?嬉しいなー。何か聞きたいこと__」

ノア「__ふんっ!」

環那「!(おっと。)」

 

 俺は一気に距離を詰め、奴に殴り掛かった

 

 常人なら見ていても反応できない速度で不意を突いた

 

 これならいくら奴と言っても__

 

環那「危ないなー(フワッ)」

ノア「!?(なにっ......!?)」

 

 音がなかった

 

 拳は受け止められている

 

 だが、衝突音は一切なく

 

 まるで羽にでも殴ったように音がなかった

 

環那「興味ってそっちの興味ー?まぁ、どっちでもいいけど。」

ノア(速さじゃない。なんだ、この違和感は?)

 

 自分の今までの鍛錬を否定された気分だ

 

 攻撃すらなかったことにされた気がする

 

 だが、やはりこいつはいつもの南宮環那じゃない

 

 なぜなら、隙だらけだからだ

 

ノア「はぁ......っ!!」

環那「おー(フワッ)」

ノア「っ!?(バカな!!)」

 

 不意を突いた蹴りも消された

 

 冗談キツイぞ

 

 殺気と違って、見えてない、後ろからの攻撃だぞ

 

 なぜそれにまで反応できる

 

ノア「貴様、なぜ......!?」

環那「なんで反応できるかって?」

ノア「......あぁ。」

環那「それは、見えてるからだけど。ごめん、傷ついちゃった?」

ノア「っ!!」

 

 浪平篤臣の言ってた通りだ

 

 スタイルも性格も全く違いやがる

 

 いつものこいつは相手の感情なんて考えねぇ

 

 だが、こいつは明らかに感情を感じてやがる

 

 それにスタイルも、いつもの奴なら回避するはずだ

 

 だが、こいつは全部受け止めてやがる

 

環那「君は強いよ?」

ノア「余計な気を遣うな。」

 

 俺は奴から飛びのいた

 

 ただでさえ馬鹿げた強さだってのに

 

 こいつはさらにレベルが違いやがる

 

 いつも奴を秩序を作り、統率するルーラーとするなら

 

 こいつは全ての秩序を破壊する、ルールブレイカーだ

 

ノア「答えろ。貴様はなぜ、今まで出てこなかった。貴様の力なら、今まで起きたトラブルなどすべて1人で解決できたはずだろう。」

環那「......まぁ、そうかもしれないね。」

ノア「なら、なぜ今まで隠れていた。」

環那「うーん、そうだなー。」

 

 奴は考えるような仕草を見せた

 

 こいつ、いつもよりも遅いな

 

 それに、頭脳の方もいつもより下だ

 

環那「使いたくなかったから。」

ノア「は?」

環那「分かってたんだよ。いつも君が見てる僕が作った計算式見て、僕が出れば事態は動くだろうって。」

ノア「!」

 

 こいつら、お互いの能力を一気には使えないのか

 

 情報共有は出来るみたいだが

 

環那「きっと、僕も使うつもりはなかったと思うよ?けど、どうしようもない状況になったから使ったんだ。その結果、僕の運命は動き出した。」

ノア「......なに?」

環那「仕方のないことなんだよ。運命って言うのは誰にでも平等に訪れるんだから。」

 

 そう言う奴の表情は少し寂しそうに見えた

 

 いつも以上によくわからんな

 

 なんなんだ、こいつは

 

環那「さて、今日のところはこれで終わりかな。」

ノア「!?」

環那「悪いね、長くお話しできなくて。」

ノア「な、おい、待て__」

環那「......タイムオーバーだ。」

ノア「!」

 

 この雰囲気、いつもの奴に戻ったか

 

 結局、もう1人の奴については強さしか分からなかった

 

環那「どうだったかな?ノア君。」

ノア「よくわからん。」

環那「あはは、そっか。」

 

 こいつのこの感じがなぜか落ち着くな

 

 あっちはこいつに比べて幼い気がして

 

 すごいやりずらかった

 

環那「まぁ、君が知れるのはここまでだ。」

ノア「......仕方ない。」

 

 これ以上の情報は引き出せないな

 

 まぁ、いいだろう

 

 もう1つの目的にシフトする

 

ノア「貴様に1つ、忠告しておく。」

環那「忠告?」

ノア「まだ、なにも終わっていないぞ。南宮はまだいる。」

環那「!」

 

 俺はそれだけ言って、その場を後にした

 

 今回ばかりは俺も奴に手を貸すことになるかもしれん

 

 それまでに、もう少し鍛錬を積むことにするか

 

 

 

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