羽丘の元囚人   作:火の車

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開いた距離

 翌日も俺は文化祭の準備で学校に来てます

 

 取り合えず、もうドッキリはしない

 

 ドッキリはしない(強調)

 

あこ「あ!環那兄!」

環那「あこちゃん?どうしたの?」

 

 準備を始めて数分ほどすると

 

 あこちゃんが1年生のフロアの方から来た

 

 一体何の用だろう

 

あこ「あのね!環那兄に言っておかないといけないことがあったの!」

環那「俺に?それはなに?」

あこ「10月17日って何の日でしょー?」

環那「10月17日?」

 

 ......何の日だ?

 

 どうしよ、本気で分からないぞ

 

環那「えっと、何の日かな?」

あこ「答えはー......りんりんの誕生日でーす!」

環那「なんだって!?」

あこ「わっ!びっくりした!」

 

 ふ、普通に知らなかった

 

 てか、17日?

 

 あと8日しかないんだけど?

 

環那「くっ、不覚だった......!俺が燐子ちゃんの誕生日を知らないなんて......!日本国民の必修科目なのに......!(?)」

あこ「環那兄って偶に変だよね。」

 

 あれ、あこちゃんってこんなに辛辣な子だっけ?

 

 原因は俺が変だからなんだけど

 

あこ「まぁ、いいや。それでさ、りんりんの誕生日って文化祭2日目と被るんだよね。」

環那「確かにそうだね。」

 

 文化祭と被るとなると、今まで見たいにパーティーと言うのもキツイ

 

 日を改めるって言うのもいいけど

 

 それもなんだか普通過ぎる気がする

 

 何より、当日にお祝いしたい

 

環那「んー......あっ、そうだ。」

あこ「何か思いついたの?」

環那「アイディア程度だけど、こういうのはどうだろう。」

 

 俺はあこちゃんに思いついたアイディアを説明した

 

 ある程度、実現できる範囲を保ってるし

 

 悪くはないと思う

 

あこ「すっごく良いと思う!楽しそう!」

環那「よしっ、なら、色々と準備しよう。」

あこ「でも、大丈夫なの?学校でそんなに好き勝手出来ちゃう?」

環那「大丈夫大丈夫。何も言われないよ。」

あこ(あ、そうだった。環那兄ってこんなだった。)

 

 となると、あとはプレゼントか

 

 正直、これの方が問題だ

 

 何にすればいいのか全く分からない

 

 毎回、これには悩まされる

 

環那「あこちゃん、リサ達にもこのことは話しておいてほしいな。」

あこ「うん!他の呼びたい子にも声かけて良い?」

環那「いいよ。好きなだけ呼んでおいで。」

あこ「うん!じゃあ、あこ、行くね!」

環那「またね。文化祭、楽しむんだよ。」

 

 あこちゃんは大きく手を振りながら走って行った

 

 子供は元気でいいね

 

 俺には真似できない

 

リサ「__なーにほっこりしてんのー?」

環那「リサ?いたの?」

リサ「結構前からね。」

 

 じゃあ、さっきの話も聞いてたのかな?

 

 だったら混ざればよかったのに

 

リサ「燐子のプレゼントどうしようかなーって考えてるでしょ?」

環那「なんで分かるの?表情そんなに変わってないと思うけど?」

リサ「いや、それくらいしか考えることないじゃん。」

環那「それもそっか。」

 

 そんな会話の最中、リサの頬が少し膨らんでるのが分かった

 

 いや、少しじゃない、結構あからさまだ

 

 目もなんかジトーってしてる

 

環那「......ど、どうしたの?」

リサ「なんでもー。燐子もあたしと同じくらいのプレゼント貰っちゃうんだーとか思ってないしー。」

環那(ヤキモチか......)

 

 いつもお姉さんぶってるリサにしては珍しい、と周りの人間は思うだろう

 

 まぁ、俺からすればいつも通りなんだけどね

 

 昔からこういうこと言う子だったし

 

環那「まぁ、それはね。リサは特別だけど、燐子ちゃんも特別だから。」

リサ「......女タラシ、スケベ、変態。」

 

 俺を軽く小突きながら、そんなことを言ってくる

 

 ひどい言い草だなぁ......

 

 まぁ、仕方ないか......

 

リサ「雰囲気イケメン、不運、歌唱力壊滅。」

環那「一つは褒めちゃってるけどいいの?」

リサ「いいの!バカ!ほら、準備するよ!」

環那「へ、へーい。」

 

 俺はリサに引っ張られて教室に戻った

 

 これ、ご機嫌取りしないとダメなやつだ

 

 今回は一体、何時間かかることやら

___________________

 

 “友希那”

 

 文化祭の準備は順調に進んでる

 

 エマの指示が的確で、皆が動きやすくなっていて

 

 本当に、すごい子なんだと思う

 

リサ「環那ー!ちゃんとやってるー?」

環那「やってるよ。ほら。」

リサ「や、やけにリアルだね。」

環那「そうでしょ?結構自信作なんだよ。内臓セット。」

リサ「......いや、本気でヤバくない!?どうやって作ったの!?」

環那「それは企業秘密。」

 

 環那も楽しそうにしてる

 

 作ってる物は置いておいて

 

友希那(あんなに楽しそうな環那、今までで初めてね。)

 

 つい、頬が緩んでしまう

 

 この間は色々あったけれど、今の環那は周りに恵まれてる

 

 幸せそうにしてる

 

友希那(よかった。)

 

 環那は今まで、私を幸せにするために頑張ってくれた

 

 だから、私は環那の幸せを祈ってる

 

 十数年も私に縛られた分、これからも幸せであった欲しい

 

友希那(......あら?)

 

 そんなことを考えながら作業をしてると

 

 一つ、道具が足りないことに気づいた

 

 どこにあるのかしら?

 

友希那(環那に聞けばいいわね。)

 

 私はそう考え、ゆっくりと立ち上がり

 

 環那の方に歩いて行った

 

 このくらいの距離なら気づく

 

 そう思い、少し歩いて、私は声を出した

 

友希那「環那__」

 

エマ「お兄ちゃん。これからのスケジュールについて話したい。」

環那「ん?あぁ、変更点あった?」

エマ「4日目なんだけど、このペースならもう少し前倒しに出来ると思って。」

環那「あー、そうかも。少しだけスケジュールいじろうか。」

エマ「なら、ここの予定をこっちにもってきて......」

 

 ......少し、ほんの少し、不満があるとするなら

 

 最近、環那との距離が開いたこと

 

 もう、環那の目には色んな人が写って

 

 私だけに優しい存在ではなくなったこと

 

友希那「......」

 

 幸せになってほしいけれど、恋しい

 

 私への気持ちが薄くなっているのが悲しい

 

 そう思う自分に嫌気がさす

 

 それは結局、都合の良い人間がいなくなるのが嫌だと思っているんじゃないかと

 

 幸せになってほしい、けど私が1番であってほしい

 

 そう思う自分が気持ち悪い

 

友希那(......分からないわ。)

 

 自分の気持ちが分からない

 

 小学校3年生に抱えた環那への好意が信じられない

 

 優しい環那が好き、と言うのを疑問に感じる

 

 優しいとは何?自分にとって都合がいいということ?

 

 今までの自身の幸せを無視して尽くしてくれる環那が好きなの?

 

エマ「__ありがとう、お兄ちゃん。これでスケジュールを決定できる。」

環那「そうだね。けど、もう少しプランを用意するべきかもね。また家に帰ってから考えよう。」

エマ「うん。」

 

友希那「!」

 

 2人の話が終わった

 

 取り合えず、道具の場所を聞かないと

 

 そう思い、私はいつも通り、環那の肩に触れようと手を伸ばした

 

友希那「......?」

 

 けれど、その手は環那の肩に触れず

 

 空中で完全に静止してしまった

 

 時間が止まったように動かない

 

友希那(これは......?)

環那「ん?友希那?どうしたの、固まってるけど。」

友希那「え、あ、いや......」

 

 上手く言葉が出ない

 

 小さい時、悪いことをした時の感覚に似てる

 

環那「?」

友希那「......このリストに載ってる道具が、ないの。」

環那「えっと......あ、これだね!ちょっと待って!」

友希那「え、ある場所を言ってくれれば......(もう、あんなところに......)」

 

 気持ち悪い

 

 自分で行こうとしたのに環那を動かしてしまって

 

 それをするべきじゃない、申し訳ないと思う

 

 なのに、環那が私のために動いてくれるのが嬉しい

 

 そんな思考と気持ちの差異が気持ち悪い

 

環那「はい!これでいい?」

友希那「え、えぇ。ありがとう。」

 

 私は道具を受け取った

 

 その時も環那は不思議そうに首を傾げ

 

 心配そうに声をかけてきた

 

環那「大丈夫?体調が悪いなら、保健室行きなよ?」

友希那「問題ないわ。大丈夫。」

環那「そう?」

 

 いつまで、私は環那を心配させるの?

 

 いや、心配してほしいと思ってるの?

 

 気持ち悪い、こんなの私じゃない

 

友希那「環那......」

環那「どうしたの?」

友希那「お願い......」

 

 今日の私は変よ

 

 暗いことばかり考えて、焦って

 

 地に足がついてなくて、上手く思考することができない

 

 だから今も、深く考えて喋ってない

 

 そんな私の口から出た言葉は、これだった

 

友希那「もう、私に優しくしないで......」

環那「え?」

 

 そんな最低な言葉を吐いてから

 

 私は逃げるように環那から離れた

 

 その間もずっと、環那は困った顔をしてた

 

 私がおかしなことを言ったから......

 

 そう思うと、更に自分が嫌になった

 

 

 

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