リサ「んっ、んん......っ?」
あたしはぼんやりと目を覚ました
あれ、あたし何してるんだろ?
さっきまで廊下にいたのに、教室の中にいる
しかもここ、あたしたちの......
?「__目を覚ましたか。」
リサ「!」
?「初めまして。」
意識が完全に覚醒して、あたしは愕然とした
ここは仕切りのカーテンを外れたあたし達の教室で
他の生徒はおびえた様子で端の方に立っていて
横には燐子、浪平先生、イヴ、エマがいる
いや、それだけじゃない
今、あたしたちの目の前にいるのは......
源蔵「久しぶりだね、今井君。」
リサ「なんで、ここに......」
この人は捕まったはずじゃ......
なんでここにいるの?
しかも、そんな危なそうな人を連れて
源蔵「そんなこと、聞くまでもないだろう......奴への復讐だ。」
リサ「......っ!(この人は......!)」
完全な逆切れじゃん
この人がいなくなった今、皆が幸せに向かってるのに
なんで、また
源蔵「私は獄中で、奴に復讐することだけを考えてきた......どうすれば奴を殺せるのか、絶望させられるのか、毎日毎日そんなことを考えた。」
聞いてもない自分語りを始めた
この人はどんだけ自分勝手なの?
誰かの屍を足蹴にして裕福な暮らしをしてて
ただ、それ相応の罰を受けただけなのに
反省どころか、逆切れするなんて
源蔵「私は奴の臓物をすべて抉り出し、豚の餌にでもしないと気が治まらんのだよ......っ!だから、私は__っ!」
リサ「!?」
南宮源蔵は話してる途中、いきなり倒れた
まるでいきなり意識の糸が切れたみたいに
?「おぉ、この状況でそんな行動ができるのか。いやはや、流石ともいうべきか。」
エマ「......」
?「孤独の姫様。」
リサ「!」
まさか、これ、エマがしたの!?
こんな状況で冷静に......って、当たり前か
エマは昔、環那と戦えたくらいすごかったんだし
エマ「あなたのことも知ってる。あらゆる暴力とストーキングを得意とし、相手を痛めつけることを楽しむ変態。井上浩二郎。」
浩二郎「知って貰えていて光栄だ。」
この人、危ないとは思ったけど予想以上だ
結構なおじさんに見えるのに、すごい雰囲気
気配の大きさみたいなのは、環那とそう変わらない
浩二郎「そこまで分かってるなら、ここからの行動は分かるな?」
エマ「......私はお兄ちゃんみたいにジョークは言えない。」
浩二郎「今回、そこで寝てるのからは、殺さない程度なら甚振っていいって言われてんだ。」
リサ「!」
それって不味いんじゃ......
あたし達は縛られて身動きが取れないし
逃げ道も塞がれてるし、他の3人は目を覚まさないし
この状況、どうすれば......
“エマ”
エマ「そんなことだろうと思った。」
リサ「!」
浩二郎「ほー?箱入りの姫様に何ができる?」
エマ「......」
これは、ハッタリ
正直、このレベルが来るとは思ってなかった
あの老害だけならどうにでもなったけど
流石にこれをどうにか出来る物は用意してない
エマ「何ができるかなんて、そんなレベルで私は語らない。やれることをやるだけ。」
浩二郎「お兄ちゃんの為か?」
エマ「その通り。」
私はお兄ちゃんに幸せであってほしい
その為にはこの4人は必要不可欠
ならば、私も全力で守らないといけない
エマ(......お兄ちゃんのように、身体能力も優れていれば。)
私はお兄ちゃんとは違う
自分のできることだけをしてきただけ
けど、お兄ちゃんは逆境の中で自分を鍛え、反発してきた
所謂、箱入りの私とは全く違う
エマ(せめて、時間稼ぎを。お兄ちゃんが来るまでの時間を稼ぐ。)
浩二郎「じゃあ、遠慮なくやらせてもらうぞ!」
エマ「!(来る__)」
浩二郎「__うおっ!?」
エマ「!?」
井上浩二郎が殴り掛かってきて、それを回避しようとした瞬間
なぜか、奴は空中で一回転し
頭から床に激突した
琴葉「......ふぅ。間に合いました。」
エマ「こ、琴葉......?」
琴葉「はい!よく頑張りましたね!エマちゃん!」
驚いた
あいつを倒したのは、琴葉なの?
そんなこと、ありえるの?
エマ「な、んで......?」
琴葉「え?あー、私はですね、小さい頃にお父さんから武術の心得を叩きこまれてたんですよ。縄を解くのだってお手の物です!」
エマ「なるほど。」
そうだ、琴葉って浪平組組長の娘だった
普段はそう見えなさ過ぎて意識から外れてた
琴葉「......まぁ。」
浩二郎「いってえなぁ。こんなのもいたのかよーまじかー。」
奴は軽く頭を掻きながら立ち上がった
流石に、そうだよね
都合よく首が折れて逝ってくれたら嬉しかったけど
人生って予想以上にうまくいかない
琴葉「何分、持ちこたえられますかね。」
エマ「さぁ、分からない。」
けど、長くは持たない
それは分かってるから、お祈り
お兄ちゃんが間に合ってくれるように
エマ(麻酔針のストックはある。これでどうにか。)
浩二郎「じゃあ、こっちも真面目にやろうか......なっ!!」
エマ「っ!」
奴はそう言ったかと思うと
足を大きく振り上げ、燐子の方に振り下ろした
その時、一瞬時間が止まったように感じ
私は無意識に体が動いた
エマ「__うぐっ......!!!」
琴葉「エマちゃん!!」
燐子「っ!な、なに__って、エマちゃん!?」
イヴ「な、なんですか!?」
エマ(卑怯な、やつ......)
内臓が潰れたかと思った
けど、大丈夫
何とかダメージは軽減できた
イヴ「エマさん!?大丈夫ですか!?」
エマ「大丈夫......」
肩を打撲した程度
これならどうにでもなる
エマ「......(いや......)」
この状況、予想以上に不味い
この場にある要素は色々とあるけど
周りの生徒が狙われることはしばらくない
けど、今井リサ、燐子、イヴは狙われる
この3人を守りながら時間稼ぎとなると
流石に確率が悪すぎる
エマ「......ねぇ、琴葉。」
琴葉「なんですか、エマちゃん。」
エマ「もし、本気で危ないと思ったら、あの3人を連れて逃げて。」
琴葉「っ!それは__」
エマ「私は、いい。」
琴葉「!」
私は琴葉が喋るのを強い口調で止めた
これはあくまでも最終手段
本当の本当に最悪の場合のプランになる
エマ「お兄ちゃんのためにも生きて欲しい。それだけ。」
琴葉「......見捨てませんよ。私は教師ですから。」
エマ「!」
琴葉「それに、間に合わせてくれますよ。彼は。」
エマ「......そうだね。」
これが、友情と言うものなのかな
お兄ちゃんはこれを私に教えたかったのかな
エマ(......感謝、する。)
大丈夫、お兄ちゃんなら
だって、私のお兄ちゃんは......最強だから
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“少し離れた場所”
「__ぐあああああ!!!」
羽丘から少し離れた路地裏で男の声が響いた
それは肉体に与えられる痛みと
何か恐ろしいものに出会ったような絶望を孕んでいる
(ま、マジかよ、こんなの聞いてねぇよ......っ!状態は悪いって聞いてたのに、これかよぉ。......)
環那「......」
「クソ......」
そこに歩み寄る、1つの影
それは明確な殺意を持っている
「おいおい......勘弁してくれやい......(ほんとによ......)」
環那「......」
(俺にこいつを割り振りやがって......報酬は弾んでもらうぞ......)
男は敗北を認めるように顔を伏せ
環那が目の前に立ったのと同時に
小さく、その口角を上げた