羽丘の元囚人   作:火の車

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統合

 取り合えず、デカいやつは倒した

 

 けど、おかしい

 

 あまりにも手ごたえがなさすぎる

 

環那「......(どういうことだ?)」

 

 雰囲気の割には、弱すぎる

 

 パワーはもちろんすごいけど、速さはない

 

 そのパワーも別に圧倒的ってほどでもない

 

 体のタフさはあるけど、スタイルは逃げ腰

 

 全てがかみ合ってなくて、チグハグだ

 

環那「ねぇ、その外見は飾りなの?全くやる気が感じられないんだけど。」

「......くくっ。」

環那「?(なんだ。)」

「俺の仕事は、完了、したぜ。」

環那「なに?......っ!!」

 

 仕事が、完了?

 

 こいつは俺に負けてなおこう言った

 

 つまり、こいつの仕事は俺を倒すことじゃない

 

 となると、残る可能性は後は一つ

 

環那(時間稼ぎか......っ!)

「おいおい、今更気づいたのか......未来が見れるって聞いてたが、誤りだったみたいだな。」

環那「チッ!」

 

 小賢しいことをしやがって

 

 でも、どっちにしても一緒だ

 

 今からダッシュで戻って、潰せばいい

 

 所詮、延命処置程度だ

 

「今から戻って潰せばいい......って面だな。」

環那「っ!」

「だが、そうはうまくいかねぇぜ?折角だし、ネタ晴らししてやるよ。」

 

ノア「__湊友希那と今井リサ、白金燐子、浪平琴葉、若宮イヴ、そしてエマを分断された、か?」

 

(銀狼、だと!?)

 

 男が話してる途中

 

 ノア君がゆっくりと表通りの方から歩いて来た

 

環那「なんで、ここに?」

ノア「さっき言った通りだ。湊友希那と今井リサ達が完全に分断され、俺1人の手に負えなくなって、貴様と協力することにしたのだ。」

 

 ノア君が先手を打たれた?

 

 それなら仕方ない

 

 ここからはノア君と連携して

 

 皆を捕らえてるやつらを潰せばいい

 

 そう思い、俺は歩き出そうとした

 

ノア「......おい、貴様。」

環那「なに?」

ノア「貴様はどっちを助けるつもりだ?」

環那「......!」

 

 ノア君の言葉を聞いて、俺は歩を止めた

 

 そして、そこからいくつもの思考が展開された

 

 あれ、俺は、どっちに行こうとしてたんだ?

 

ノア「言っておく。恐らく、今回の主力は迷った状態の貴様で勝てるほど甘くはない。そして、俺も迷ってる奴に従うつもりはない。」

環那「......」

「くくっ......!(予想通りだ。わざわざ調べて、こいつが一番迷うパターンで分けたんだからな。)」

ノア「奴らは頭がイカレてる。まず間違いなく、容赦なくお前の大切な奴らの命を奪うだろう。」

 

 心臓が、激しく動く

 

 分かってる、そんなことは

 

 だからこそ__

 

『__何を迷うことがあるの?』

環那「っ!(なんだ!こんなときに!)」

『それはこっちのセリフだよ。』

 

 アレは呆れたような声でそう言った

 

 なんだこいつ

 

 今はふざけてる場合じゃないっていうのに

 

『君はノアの優しさに気づいてないの?』

環那「ノア君の、優しさ......?」

 

ノア(もう1人の奴か。)

(いきなり独り言言い始めたぞ?)

 

 俺はそう聞き返した

 

 どういう意味だ?

 

 ノア君の優しさって、なんだ?

 

『さっきの話を思い出してよ。リサ達の方にはエマもいるんだ。』

環那「っ......!」

 

 その言葉に俺はハッとした

 

 なんで忘れてたんだ

 

 ノア君がエマを大切に思ってることを

 

『ノアは勿論、エマを助けに行きたいはずなんだ。だけど、君に選ばせようとしてる。』

環那「な、何のために......」

『君だよ。』

環那「え......?」

『分からないの?』

 

 ......いや、何となくわかる

 

 パターンはいくつかあるけど......

 

環那(......そう言うことか。)

 

 恐らく、今の状況と似たような経験があるんだ

 

 彼がエマと出会う前の出来事だろうか

 

 そこは分からないけど、あったんだ

 

 そして、ノア君はそこで......

 

『彼と君はどこか似てる。そんな彼は、君に後悔させない選択肢を与えてくれてるんだよ。同じ経験をして、失敗した身として。』

環那「......」

 

 そういう、ことか......

 

 なんで、俺はこんな簡単な事に気づかなかったんだ

 

 少し考えれば、ノア君がここまでする理由は限られるのに

 

環那(じゃあ、俺は......)

『......正直、羨ましかった。』

環那「......!」

『ずっと見てたよ。あの、光り輝いてた時間。』

環那「っ......!」

 

 アレは寂しそうな口調でそう話しだした

 

 そうだ、アレはずっといたんだ

 

 だから、実際に体験してなくても、記憶としては残ってるんだ

 

 俺とは違って

 

『本当の意味で対等な、大切な人たちがいる世界。恋を出来ない僕には、すごく羨ましかった。』

環那(恋を、出来ない......?)

『気づいてるでしょ?君も僕も、もう友希那を女の子としては見れないって。』

環那「!!」

 

 その言葉は痛かった

 

 見ないようにしてた、俺の事実だった

 

 これを完全に見てしまったら、俺は終わると

 

 そう思って、封印してた......

 

『あの日。』

環那「......」

『友希那にキスをされた日から、君と友希那の物語は終わったんだ。』

環那(分かってるよ、そんなことは!!でも__)

『分かってる。君がそうしないために足掻いてたことは。どうにか頑張って、今まで通りであろうとした。けど、それは不可能だった。』

環那「っ!!!」

 

 痛い、痛い、痛い

 

 心臓に棘が食い込んでくる

 

 その痛みで、目の前が真っ赤になる

 

『その理由は明白。友希那より、新しい4人のお姫様が大事だったから。』

環那「......」

『運命に引き寄せられたお姫様は、癒しでもあり残酷でもあった。好きになればなるほど、君に絡まっている未練は強く心臓を締め上げる。なのに、更に好きさせられる。その痛みに君は苦しみ続けた。』

環那「うるさい!!!黙れ!!!」

 

ノア「っ!」

(なんだなんだ!?)

 

 激しい痛みで発狂し

 

 そのまま地面に膝をついた

 

 立っていられなかった

 

 もう、心臓が潰れてしまいそうで

 

環那「俺が、どんな、気持ちで、今まで......っ!!!」

『分かってるよ。君の気持ちは、僕が一番分かってるから。』

環那「う、ぐっ......げほっ!ゴホッ!!」

 

ノア「......」

(お、おいおい、吐血しやがったぞ......?銀狼はなぜ動かない?仲間じゃないのか?)

 

 なんだ、何が起きてるんだ

 

 景色が真っ赤で、痛すぎて、何が何だか分からない

 

『......もう、いいんだよ。』

環那「なに、が、だよ......っ」

『過去に縋るのは、もういいんじゃない?』

 

 そんな時、頭にそんな言葉が響いてくる

 

 その言葉に、苛立った

 

 こいつ、俺の何を見てんだ

 

 何にも分かってないじゃないか、と

 

『いつも、僕達にとって正しいのは未来だった。』

環那「......!!」

 

 静かで、穏やかな声で告げられたのは

 

 俺の人生における明確な答えだった

 

『君が目覚めたあの日、友希那は未来だった。けど、走って、通り過ぎて、過去になって、新しい未来が現れた。』

環那「......」

『一歩踏み込めば、未来への歩みは止まらない。いくら強くなったって、それは変わらない。』

環那(......なんだよ。)

 

 ......嫌だけど、納得するしかない

 

 それは今までの俺の人生で実証されたことだから

 

 否定なんて、俺には出来ない

 

 そうなったら、自ずと......

 

『君の答えはもう決まってる。時間もないし、僕が送り出してあげるよ。』

環那(っ!それは!)

『分かってる。』

 

 儚げな声が頭に響く

 

 まさか、こうなることを分かってたのか?

 

 分かってて、俺に答えを出させようとしたのか?

 

『そもそも、僕は君の持ち切れなかった能力を預かってただけだから。』

環那(それでいいのか?友希那に何も言わなくて)

『いいんだよ。言ったじゃないか。あの日に君の物語は終わったんだ。僕は君でもあるから、必然的に。』

 

 終わってた、と言うことか

 

 けど、俺のせいで留まってた

 

 だから、最近は無理矢理外に出て、事態を動かそうとしてたんだ

 

『預かってるものは全部返すよ。本物である君に。』

環那「......あぁ。」

『その代わりに友希那への未練は全部、僕が貰っていく。』

環那「!!」

 

 心臓の痛みが、抜けていく

 

 締め付けてたものが解かれて

 

 心臓が正常な鼓動を刻み始める

 

『精度の僕と範囲の君。この2つが合わされば、誰にも負けはしない。』

環那「......(負けないよ、誰にも。)」

『そっか。じゃあ__』

 

 あいつは目の前にある扉に手を突き

 

 そのまま軽く押した

 

 すると、どうだろう?

 

 動く気配もなかったその扉は簡単に開いてしまった

 

『おめでとう、そしてさようなら。君の進む未来はこの先にある。』

環那「......あぁ、さようなら。過去の俺。いつまでも引き留めてて、ごめん。」

 

 その瞬間、世界が一変した

 

 立ち上がって、上を向いてみる

 

 空が青くて、車の音や人の話し声がうるさい位聞こえる

 

 でも、これはなんだろうか?

 

 さっきとは違う意味で胸が痛くて

 

 目の前の景色が潤んでる

 

環那「......あぁ、なるほど。」

 

 少しして、やっと理解した

 

 なるほど、久しぶり過ぎて忘れてた

 

 これが......

 

環那(寂しさ、か。)

 

 “ノア”

 

ノア「__!!(なに......っ!?)」

 

 俺は目の前で起きた事に愕然とした

 

 さっきまで奴からは2つの気配を感じてた

 

 だが、今の一瞬でその一つが消えた

 

 そして、それと同時に恐ろしいものが目覚めたのを感じた

 

 これは......

 

環那「ノア君。」

ノア「......なんだ。」

環那「お願い、してもいい?」

ノア「......あぁ。(たくっ、嫌になるぜ。)」

 

 今までなら、勝てないまでも何とか対抗できる要素があった

 

 だが、今はどうだ?

 

 前までが可愛く見えやがる

 

 恐ろしい、だが、体験してみたい

 

 今の奴はどれほど強いのか、圧倒的なのか

 

環那「じゃあ、行こうか。」

ノア「あぁ。」

 

(あ、あぁ......ダメだ......銀狼の奴は、なんて化物を目覚めさせやがったんだ......!?)

 

 目覚めさせといてなんだが

 

 流石に、今回の敵が可哀そうに思えてくるぜ

 

 だが、手を出した相手が悪かったと諦めてくれ

 

 誰が来てるかは知らんが......

 

 貴様の相手は正真正銘、本物の化物だ

 

 

 

 




今日のお題箱で燐子のifルートのお題が来て、すごくいいと思ったので、元から予定してたリサのちょっとドロドロな未来のifルートの前か後に出します。(構成は本編何話か+外伝になる可能性高)
こいつ忘れてるなと思ったら、つついてください。
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