少しだけマズい事になった
今宮翔の事が分かって
どこに逃げて行ったかも大体わかった
でも、少し時間が経った
これは、見つけるのは苦しいかもしれない
ノア「__おい、ガキ。」
環那「ノア君?」
ノア「エマの命令だ。貴様を手助けしろとな。」
環那「!」
ノア君はバイクにまたがって鬱陶しそうにそう言った
これは勿論エマへではなく、俺へだ
ノア「バカが、易々と逃がしやがって。さっさと乗りやがれ。」
環那「うん、ありがとう。」
ノア「礼はエマに言え。」
俺はのバイクの後ろに跨り
それを確認したノア君はバイクを走らせ
ショッピングモールから出て行った
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”ひまり”
ひまり(ん......ここ、どこ?)
目を覚ますと、全く知らない場所にいた
なんだか埃っぽくて暗い
なんでこんな所にいるんだろ......?
今宮「起きたみたいだね、ひまりちゃん。」
ひまり「今宮先輩?あの、なんでこんな所にいるんですか?」
今宮「そうだなぁ、少しひまりちゃんにお願いがあってね。」
今宮先輩は笑みを浮かべている
でも、なんでだろう?
怖い、近づきたくない
「__おーい、翔ー。」
「もう連れて来たのか?」
「おぉ!胸でけぇ!」
ひまり「え?」
今宮「なんだ、もう来たのか。」
今宮先輩の視線の先のドアからいかにも怖そうな男の人たちが入ってきた
タトゥーが入ってたり目が怖かったり
まるで、私が最初にイメージした南宮さんみたい
ひまり「あの、この人たちは?」
今宮「ひまりちゃんには今からこの人たちに体を売ってもらいたいんだ。」
ひまり「え......?」
「うっわ、ひでぇ。」
「この子、すげぇ顔してるじゃん。」
今宮「お前ら、金はしっかり払ってくれよ。」
「わーってるって。」
ひまり「な、なんで......?」
なんで、こうなったの?
私、さっきまでデートしてたのに
今宮さんは何でそんなこと言うの?
なんでそんなに笑ってるの?
助けて、助けてよ......
今宮「俺が楽しい思い出を上げたんだから、金稼ぐくらいしてくれるよね?」
「さぁ~、やるか~。」
「久しぶりの巨乳じゃ~ん。ラッキー。」
「誰から行きたい?」
ひまり「嫌......嫌......」
男の人の手がこっちに来る
ゆっくり服を脱がされて行って
段々、寒さを感じる
その時、ゴンゴンと鉄製の扉を叩く音がした
『__すいませーん、引っ越し業者の者ですー。』
今宮「!!」
「なんだー?そんなの呼んでたのか?」
今宮「いや、そんな訳ないだろ。ここには俺達しか入れない。」
「おいおい、じゃあ今の声は何だよ。」
ひまり(あれ、この声......)
『誰もいないんですかー?じゃあ、蹴り破りますので修理費はそちらもちでお願いしますよー。』
そんな声がした瞬間
ガシャンとドアは大きな音を立て
まず、ガラスが割れた
そして、大きくへこんだドアはゆっくり開かれ
私はそこから入ってきた人物を見て
涙の溜まる目を大きく見開いた
環那「どうもー、引っ越し業者でーす。」
ひまり「み、南宮さん......?」
”環那”
ギリギリアウトよりのセーフ
部屋に入って最初に思ったのはそれだった
まさか、想定した中で4番目に最悪なパターンだったとはね
これには流石の俺も驚いた
今宮「南宮環那......だったっけ?」
環那「そうだよー。覚えてくれてて良かった。」
俺は首をかしげてる今宮君にそう言った
別にもう今宮君は大した問題じゃない
正体が分かればとるに足らない普通の学生だ
さっさとひまりちゃんを連れて帰りたいな
今宮「何しに来た?俺はただ、ひまりちゃんとデートをしてるだけなんだけど?」
環那「これがデート?ははっ、おかしなことを言うね?」
俺は笑いながらひまりちゃんの方に歩いた
さて、今宮君は動く気配がない
つまり自分の優位が動くことはないと高をくくってる
だとすると、問題は......
「おい、なんだお前は?」
「いいとこだってのに邪魔すんなよ。」
環那「1つ、君たちに言っておくことがある。」
「あ?」
環那「君たちにはまだ助かる時間がある。だから、早くここから逃げるのをおすすめするよ。そうしてくれないと、俺は君たちの命を保証してあげられない。」
「何言ってんだ、こいつ?」
「頭おかしいんじゃねぇか?」
まぁ、信じてくれないよね
欲しいものが取られそうになれば守る
まるで幼稚園児の相手でもしてるみたいだ
ただ、今回に限っては嘘じゃないんだよ......
ノア「__おい、猿ども。」
今宮「!?」
ひまり(だ、誰......!?)
「なっ!?」
「どこから現れたこいつ!?」
「ていうかでかっ!?」
ノア「本当はお前らのような品性のかけらもない奴らをエマの前に持っていくなんてしたくはないが、モルモットは多いほうがいい。喜べ、この世で最も美しい医者の実験材料になれる事をな。」
「「「え__」」」
環那「だから言わんこっちゃない......」
俺が頭を抱えるのと同時に、ノア君は3人の男を一瞬で気絶させた
実験材料に大きな傷をつけない
ノア君の動きからはそんな意思が見える
本当に手慣れてる
彼らの今後はもうお察しと言う事で
環那「大丈夫?ひまりちゃん?」
ひまり「み、南宮、さん......!」
環那「俺ので悪いけど、これ着て。」
俺はひまりちゃんの前でしゃがんで
今着てる上着をひまりちゃんに羽織らせた
流石に女の子を半裸で放置できない
環那「もう大丈夫。すぐ終わらせるから。」
ひまり「う、うぅ......!」
ひまりちゃんは涙を流した
我慢してたものがあふれ出したんだろう
女の子をこんなに、か......
ノア「終わりだ、今宮翔。」
今宮「な、何なんだお前ら!?なんで俺の邪魔をするんだ!?」
環那「それは、君の行いが裁かれるべき悪だからだよ。」
俺はひまりちゃんを今宮君から離れた位置に移動させ
今宮君の方に近づいて行った
別に怒るつもりはなかったけど
......こんなにひどい人間を見るのは人生で2人目かな
今宮「悪だと?何を言ってるんだ?」
環那「......?」
ノア(何を言ってるんだ、こいつ?)
今宮「俺は悪くない!俺は生まれた時から勝ち組、お前らなんかとは違うんだよ!!」
今宮君は叫ぶようにそう言った
頭がおかしくなったのかな?
全く内容が伝わって来ない
今宮「負け組が勝ち組に従う、これの何がおかしい!?そもそも、俺の役に立てるなら女は喜んで体を売るべきなんだよ!!そう、悪いのはそこの簡単に騙されるバカ女だ!!!」
環那「......」
今宮「ほんと、泣きたいのはこっちだ!服まで与えてやったのに何の役にも立たない!!大損だ!!」
今宮君はそんな事喚いてる
その姿はまるで滑稽な物で
むしろ哀愁に似た感情すら感じる
環那「......もう、分かった。」
今宮「!?」
俺は静かにそう呟いた
駄目だ、このクズさは計算できなかった
本当に泣いちゃいそうだよ
流石2番目だ
環那「虚しいね、今宮君。」
今宮「なんだと?」
環那「俺は別に君に何の興味もない。でも、死ぬことはないんじゃないかとは思ってた......けど、今宮君の場合は死んだほうが幸せかもしれない。」
ノア「だとよ。」
今宮「は__」
俺が言葉を言い切った瞬間
ノア君は今宮君の後ろに回って気絶させた
それを確認し、俺は静かに呟いた
環那「自分だけしか見えないなら、君は絶対に本当の人生の1番に出会えない......そんな苦痛を味わうくらいなら、死んだ方がマシだよね。」
ノア(俺が手を出して正解だった。もし、このガキに任せてたら今度は少年院じゃ済まなかったかもな。)
俺は少し目を瞑った後
後ろにいるひまりちゃんの方に歩み寄った
さっき確認した感じ、まだ何もされてない
よかった
環那「もう夕方だし、帰ろう。送って行くよ。」
ひまり「はい......」
ひまりちゃんは俺が差し出した手を掴んで立ち上がり
後の始末はノア君に任せ
今いる建物から出た
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外はもう陽が傾いていた
あの4人にはもう帰って貰って
後は俺がひまりちゃんを送るだけだ
環那「いや~、もうすぐ夜だね~。」
ひまり「そう、ですね......」
環那(うーん。)
ひまりちゃんのダメージは大きい
まぁ、初めてのデートで初めて裏切られる
こんな事があれば今の状態も納得だ
環那「ひまりちゃん。」
ひまり「はい__!!」
俺はひまりちゃんの手を握った
すると、ひまりちゃんは驚いたような顔をして
こっちを見て来た
ひまり「南宮さん......?」
環那「手を握ることはストレスホルモンを減らす効果にリラックス効果、それと鎮痛効果もあると言われてるんだよー。」
ひまり「そう、なんですか?」
環那「そうらしいよー。」
俺は笑いながらそう言った
正直、人の気持ちを理解するのは苦手だ
だから雑学的な事しか出来ない
難しいな......
環那「あ、あれだよ。あんな外れは早々ないから、今回は偶々あんな確率を引いただけに過ぎないよ。」
ひまり「......私って、ダメなんです。」
環那「え?」
ひまり「だって、あんなことをされても、まだ今宮先輩が忘れられないんです......」
環那「!」
ひまりちゃんは小さな声でそう言った
これも、この子の性なんだろう
人一倍優しくて、優しい理想を持ってる
お花畑、なんて言われることもあるかもだけど
俺は別にそれを悪いとは思わない
環那「一瞬でも好きになれば、その人を信じていたいよね。」
ひまり「はい......」
環那「分かるよ、その気持ち。すごく分かる。」
ひまり「南宮さん......?」
ひまりちゃんがこっちを見てる
ちょっとだけ態度が崩れたかな
俺は少しだけ意識して、いつもの笑った顔に戻した
環那「でも、今回の事は忘れよう。きっと、そうしたほうがいい。」
ひまり「忘れる......ですよね。」
環那「?」
俺がそう言うとひまりちゃんは足を止めた
心なしか手を握る力も強くなってる
これは......?
環那「どうかしたの?」
ひまり「......します。」
環那「?」
ひまりちゃんは小声で何か言ってる
距離は近いのに全く聞こえない
俺はよく耳を澄ました
ひまり「お願い、します......忘れさせてください......」
環那「......?」
ひまり「リサ先輩がいるのは分かってます......でも、今は南宮さんしか信じられないんです......」
環那「ひまりちゃん......?」
ひまりちゃんは何が言いたいんだろう
リサとか信じられないとか
俺にはこの言葉はよく理解できない
環那「えっと、どういうこと?」
ひまり「一晩だけ、私を彼女にしてください......」
環那「え?」
ひまり「ここなら、丁度いいので......」
俺は周りを見た
それで、とんでもない事実に気付いた
ここ、所謂ホテル街だ
って、ここでああいうって事は......
環那「......ひまりちゃん、その方法はあまりにも一時的すぎるよ。あまり賢い判断とは思えないかな。」
ひまり「分かってます。でも今日は、今日だけはそんな風にしないと忘れられないんです......!」
環那「っ!(そうか。)」
今回起きたのは今宮君の事だけじゃない
もう少しであの3人にそう言う事をされそうになって
それへの恐怖心もひまりちゃんに付きまとってる
これは、完全に誤算だった
環那「......一晩だけ。そこで終わりだよ。」
ひまり「......!」
環那「悪いけど、初々しい雰囲気は期待しないでね。」
ひまり「はい......ありがとうございます。」
これで、果たしてひまりちゃんは救われるのか
今日の悲劇を忘れられるのか
本当にこの手段は正しいものだったのか
その答えを俺が出すことは到底出来なかった