今は何月何日何曜日だろうか
それすらも、分からない
あの日からただひたすら走って、訓練をしてる
今までの人生で一番と言っていいほどに
ノア「はぁ、はぁ、はぁ......っ!!」
まだ、足りていない
今の俺ではどう足掻いても普通の状態では奴には届かない
だが、ヒントはある
あの感覚さえ掴めれば......
篤臣「__おう、なにしてんだァ、銀郎ォ。」
ノア「......浪平篤臣か。」
橋の下でしばらく立ち止まってると
暗闇から浪平篤臣が姿を現した
こいつとは最近やけに会う気がする
篤臣「訓練好きとは聞いてたがァ、異常だなァ。まるで、何かデカい敵を倒そうとしてるみてェだ。」
ノア「......ふん。」
そう言えば、こいつは南宮環那の派閥だったな
一大組織の棟梁がガキに付き従うとは
とんでもない化物が生まれたものだ
ノア「貴様には、関係ないことだ。」
篤臣「......まさか、お前ェ、環那とやり合う気かァ?」
ノア「......そうだ、と言ったら?」
一筋の風が俺の頬を撫でる
ここでこいつとやり合う覚悟はある
そして、勝つ自信も
篤臣「おすすめはしねェなァ。勝てねェぞ?確実にィ。」
ノア「そんなことは分かっている。」
篤臣「!」
そう、分かっているのだ
何度か俺は奴に敗れている
いや、戦いにすらなっていない
奴にとっては、戯れ程度だっただろう
ノア「それでも、やらねばならん理由があるのだ。」
篤臣「なんだァ?その、お前ほどの男を動かす理由ってのはァ?」
ノア「......」
その言葉が俺の頭の中に響く
普段なら、俺は勝てない戦いはしない
負ける前提の戦いなど、俺のプライドが許さん
だが、今回はそうも言ってられないのだ
その理由は、ただ一つ
ノア「本物を偽物にしたまま、終わらせるわけにはいかん。」
篤臣「......どういう意味だァ?」
ノア「そのままの意味だ。」
別に、何か特別なものがあるわけではない
顔を合わせた回数も数回程度だ
だが、なぜか、俺を激しく掻き立てる
ノア「奴を覚醒させたのは他でもないこの俺だ。その責任を果たさずして、おめおめと逃げるわけにはいかん。責任は全て果たす。」
篤臣(......あの銀狼が、ここまで覚悟を決めるかァ。)
ノア「だが、勝てるなどと思い上がってはいない。一矢報いて、気づかせられればいい。」
いや、今の奴の前ではそれすら思い上がりか
完全に覚醒した奴は文字通りの化物だ
攻撃はすべて無効にされ、本気を出されれば瞬殺されるだろう
だが......
ノア「その策はある。無策などではない。」
篤臣「......なにィ?」
ノア「だが、これはあくまで最終手段。使うのには条件もだが......何よりも覚悟がいる。」
もし失敗すれば、最悪死に至るだろう
だが、もしかすれば一矢報いることが出来るかもしれん
篤臣「......気ぃつけろよ。」
ノア「止めんのか?」
篤臣「あぁ、止めはしねェよ。だがァ。」
浪平篤臣はそう言い
少し厳しい表情を浮かべた
篤臣「また、あいつだけが悪役になるのはァ、勘弁願うぜェ。」
ノア「心配ない。今の奴には、心を通わせた者たちがいる。そして、何より......」
篤臣「?」
ノア「これは、正義も悪もない。男と男の戦いだ。」
篤臣「......そうかァ。」
ノア「もう行くぞ。時間が惜しい。」
俺はそう言って、また走り出した
奴へ挑む覚悟が出来るまで、もう少しかかる
一刻も早く、決めなければいけないな
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“友希那”
リサ「環那ー!お弁当食べよー!」
環那「あ、うん。いいよ。」
リサ「じゃあ、今日もおかず交換ね!今回のは自信作だよー!」
環那「そりゃあいい。」
エマ「私も審査員をする。」
友希那「......」
文化祭の日から数日が経った
環那は変わった
あの、燐子の誕生日パーティーの時の姿を見て、確信した
友希那(......そうよね。)
環那はリサ達を選んだ
別に、何ら不思議な事じゃない
見ていれば、環那の気持ちの変化なんて分かったもの
友希那(仕方ない、わね。)
私は環那に色々してしまったもの
あそこまでしてそのままの関係でいられるとは思ってない
むしろ、良かったと思ってる
あの4人の中の誰かなら、心配ないもの
友希那(......でも。)
何の?この気持ちは
少女漫画で見るようなモヤモヤじゃない
消失感にも似たような、暗い感情
それがずっと、胸の内に渦巻いてる
友希那(......これは、なんなの?)
あの日からずっと、分からない
環那はあの4人を選んだ
それが分かってから、ぽっかりと胸に穴が空いた気がする
友希那(......寒いわね。)
心の隙間から、冷たい風が吹き抜ける
この隙間は何で埋まるのかしら
友希那(......分からないわね。)
こんな感覚は生まれて初めてかもしれない
悲しいというのとはまた違う
この、気持ち悪い感情
なんなの、これは?
友希那「......どうすれば、いいのかしら。」
寒くて、重い
これはどうすれば、解消されるのかしら
何をどうすれば、いつも通りになるのかしら
友希那(......そう言えば。)
あの日、私の話を聞いてくれた人
あの人に吐きだした時間は、少し心が楽だった
けれど、気になったのは
少し、あの人が思いつめた顔をしていて
そして、どこか、あの地震の日の環那に似ていた
覚悟を決めたような、けれど危うい、あの雰囲気と
友希那(何をする気なのかしら?)
顔を合わせたのは数回程度
強いて言うなら、話を聞いてもらった恩がある位
けれど、無性に気になる
友希那(......なぜかしら?)
いや、理由は分かってる
環那にどこか似てるから
あの片腕を失った日とフラッシュバックするから
友希那(......何が起きようとしてるのかしら。)
私はそんなことを思いながら
1人静かに教室を出た
流石に、今は気まずくてそんなに長く教室にはいられないわ
いつになったら直るかは、分からないけれど