文化祭の日から数日経った
俺はいつも通りの日常を過ごしてる
最近の調べでは特に何も動いてないし
しばらくは、何かが起こることはないだろう
リサ「環那ー。」
環那「ん?」
リサ「友希那と話せた?」
お昼休み
席にボーっと座ってるとリサがそう言ってきた
その問いに俺は大きなため息をついてから答えた
環那「全然。」
リサ「初めてだね、こんなこと。環那が友希那と一週間も話さないなんて。」
そう、俺は友希那と一週間は話してない
捕まってるときを除いて、こんなの人生で初めてだ
どうすりゃいいんだろ
環那「どうするのがいいんだろうね。」
リサ「倦怠期のカップルみたいになってんじゃん。」
環那「そう言うものではないでしょ。」
そんなに安いものじゃない
俺と友希那の関係はもっと難しい
こじれさせたのは俺なんだけど
環那「俺と友希那の間に恋愛感情はなかった。カップルのそれとは違う。」
リサ(......そっか。環那は気づいてないんだ。)
環那「こうなった原因は俺だし、何とかしないとね。」
と言っても、解決の手立てはない
時間に任せるって言う選択肢もなくはないけど
ほんとにそれでいいんだろうか?
リサ「まっ、ゆっくり考えなよ。」
環那「そうするよ。まだ、感情を読み取るのには慣れてないから。」
リサ「頑張れ。(大丈夫かな。また、傷つかないといいけど......)」
まだまだ、経験が足りてない
けど、問題ない
経験はいくらでも積める
俺の脳はそれに特化してるんだから
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“友希那”
もう、一週間が経つ
最近は環那どころかリサとも話しずらい
いや、仲のいい2人を避けてしまっている
入る余地がないから......
紗夜「__ストップ!湊さん!」
友希那「っ!」
紗夜のそんな声でハッとした
練習中に他のことを考えるなんて
しまったわ......
紗夜「どうしたんですか?今日......と言うより最近、声の出が悪いですよ?」
友希那「......」
紗夜(......と、厳しくは言いますが、仕方のないことなんでしょうか。)
不覚だわ
歌ってるときは大丈夫だと思っていたのに
この迷いはそこまで根深いの......?
あこ「ま、まぁまぁ、紗夜さん。」
紗夜「分かってますよ......流石に。」
リサ、燐子「......」
2人はバツが悪そうに下を向いてる
別に、そんな必要はないのに
悪いのは、2人じゃない
悪いのは......
紗夜「皆さん。今日のところは終わま__」
環那「__失礼しまーす。」
Roselia「!?」
その時、部屋の扉が開き
どこか緩んだ声が聞こえてきた
全員の視線がそっちに向くと
そこには環那とエマが立っていた
“環那”
環那「2人の進路調査票、不備があったからってパシられて来たんだけど。」
リサ「あ、あー......」
紗夜(なんてタイミングで来てるんですか!?)
あこ(う、うわー、最悪のタイミングで......」
え、なに?この空気
まさか、不味いタイミングだった?
確認しないで入っちゃったんだけど
環那「練習は終わってる......のかな?」
紗夜「えぇ。(いや、むしろこれはチャンスなのでは?)」
環那「じゃあ、取り合えずこれは渡しておくね。」
リサ「あ、うん。」
取り合えず、俺は本来の目的を果たした
これは、あんまり長居しないほうがいいかな
さっさと帰ろう
環那「じゃあ、俺たちは帰るねー。失礼しま__」
紗夜「少し待ちなさい。」
環那「痛いんですが......紗夜さん。」
俺が帰ろうとすると
紗夜ちゃんはすごい力で俺の肩を掴んだ
なんか、めり込んでるんだけど
紗夜「もう練習が終わるんですが、湊さんを送ってください。エマさんは私たちが見ているので。」
環那「は、はい。分かりました。なので肩を離していただけないでしょうか......?」
このまままじゃ骨がポッキリいっちゃうよ
パワーすごすぎでしょ
紗夜「湊さん。」
友希那「紗夜......」
紗夜「ここでキチンと話してください。決着を付けろとは言いません。ただ、話してください。」
紗夜ちゃんは友希那にそう念押しし
俺の方に押し出した
それを見て、俺は友希那に声をかけ
一緒に部屋を出ることにした
___________________
“友希那”
ライブハウスを出て数分
私と環那は帰りに通った公園のベンチに座ってる
久しぶりかもしれない、環那と2人きりになったのは
環那「......元気だったみたいだね。」
友希那「......えぇ。」
思ったように会話が続かない
ここ最近の対応で
今までのように会話ができない
環那「......ごめんね、友希那。」
友希那「え......?」
環那「俺は友希那のことは大切に思ってる。でも、大切なだけなんだ。それ以上の感情は、ない。」
友希那「......っ」
分かってた
環那にとっての私は言ってしまえば信仰の対象で
恋愛対象などではない
いくら私が思っても、その気持ちは全部、すり抜けていく
環那「だから、ごめん。」
環那は申し訳なさそうにそう言う
けれど、環那は悪くない
変わらない人間はいない
今、環那には良い変化が起きてる
それを邪魔をしてるなら、むしろ、悪いのは私だもの
友希那「そんなに気にしなくていいの。私は__」
ノア「__いいや、良くない。」
環那「!(ノア君?)」
友希那「あなたは......」
その時、あの時の男の人、ノアが現れた
なんで、ここにいるの?
そう疑問に思った
けれど、なぜか安心のような感情もあった
ノア「湊友希那の思いは、そんなに安いものではない。」
友希那「い、いいの。私は......」
ノア「よくないから、ここに来たのだ。」
友希那「......!」
彼から、確固たる決意を感じる
それはまさしく、あの日の環那のそれだった
自分を犠牲にする覚悟が体に纏わりついてる
ノア「俺と戦え、南宮環那。」
環那「......なんだって?」
ノア「貴様を覚醒させたのは他でもないこの俺だ。その責任を果たすためにも、俺は戦わねばならん。」
環那「......本気、みたいだね。」
友希那(ま、まって......)
彼は本気だ
本気で今の環那と戦おうとしてる
けど、そんなのダメよ
勝てるわけがない、どうやっても......
ノア「そんな心配そうな顔をするな。」
友希那「!」
ノア「勝とうなどと思い上がってはいない。ただ、示したいものがあるだけだ。」
友希那「の、ノア......それは......?」
ノア「さぁ、どうする?南宮環那。」
環那「......(なるほど。)」
ノアからすごい圧力を感じる
けど、怖くはない
普通なら怖いはずなのに
なぜか、恐怖心よりも心配が前に出る
環那「......いいよ。」
友希那、ノア「!」
環那「本気でやり合おうか。ノア君。」
ノア「っ......!!(これは......!!)」
環那から、異様な空気が流れる
なんなんの?この感覚は
底の見えない恐怖心に襲われる
友希那「大丈夫、なの......?」
ノア「......見届けてくれ。」
友希那「!」
ノア「本物は、ここにもあったと証明するときを。」
友希那「......えぇっ」
私はそう頷き、ベンチから立ち上がった
彼は、大丈夫なの?
今の環那を相手に生き残れるの?
そんな心配を抱きつつ
彼が決めたという決戦の地に向かった