安らぎ
あれから、何分経ったんだろう
ここに突っ立ってるうちに倒れてた奴らは逃げて
俺はあれを使った疲労からかその場で倒れてしまった
環那(......静かだ。)
ここは静かだ
開けた場所だから、星空がよく見える
だから、星がさっきより移動してるのが分かりやすい
この感じなら、結構時間が経ってるな
環那(あー......もっと騒げよ。寂しいじゃんか。)
いつもみたいにもっと騒いで欲しい
クソ野郎とかろくでなしとか異常者とか
今はそう言う声が恋しいよ
?「__いた。」
環那「......?」
そんなことを思ってると
どこかから砂利を踏みしめる音が聞こえ
同時に、聞きなじみのある声が聞こえた
リサ「__まーた、悪役やってんの?環那。」
環那「んぁー......リサ?」
そんなことを思ってると、その足音は止まり
頭上から、呆れたような声が聞こえてきた
死線を上げるとそこでは、リサが溜息でも付きたそうな顔をして座って
俺の顔を覗き込んでいた
環那「今日は赤なんだねー......しかも、結構大人な__」
リサ「バカ!///」
環那「恥ずかしいなら横から話しかければいいのに。」
俺はそう言いながら体を起こした
体力と血流はほとんど戻ってる
もう動いても問題ないでしょ
環那「それで、どうしたの?こんな所まで来て。」
リサ「友希那がノアさんと一緒にいるのを見かけてさ。心配になったから、2人に話を聞いて、ここに来たの。」
環那「そう言うことか。別に心配はいらなかったんだけどね。」
あいつらがまた仲間を連れてこようが問題ない
体力は回復してるし、十分対応できる
心配される要素なんてない
......と、思うけど
環那(......なんか、安心したかも。)
リサ「で、また1人で悪役やってるの?」
環那「さぁね。生まれついての悪だから分かんない。」
リサ「......」
軽口を叩きやすい
この距離感はやっぱり落ち着く
心が安らぐ
リサ「環那って、頭いいのに馬鹿だよね。」
環那「急だね。」
リサ「そりゃそうでしょ。誰かの幸せの為にいつも自分を悪役にして、どんなにつらい思いをしても口にも顔にも出さない。バカ、って言うしかなくない?」
環那「買い被りだよ。俺はそんなのじゃない。」
そんな聖人君主じゃない
ただ、自分のしたいことをしてるだけだ
そこに相手の感情なんてない
あるのは、好奇心と目的意識だけ
全部、他の誰でもない、自分の為だ
環那「物語は美しく紡がれなければいけない。その為には主人公や主要人物だけじゃない。必ず、ジョーカーが必要になる。そこに自分を置くのが物語を進めることにおいて、一番効率がいい。」
リサ「......ほんと、馬鹿だね。」
環那「そう?」
リサ「バカだよ大バカ。自分は主人公やエースになれる器なのに悪役ばっかりして、バカとしか言いようがないじゃん。ほんと、色んな人に謝ってほしいよ。」
環那「別に、俺はそんなんじゃ__」
リサ「でもさ。」
環那「!」
俺の軽口をリサに止められた
リサの表情を見て息を飲む
そうしてると、リサは言葉を続けた
リサ「......あたしはそんな環那、好きだよ?」
環那「!」
そう言いながら、リサに手を握られた
あったかくて柔らかい
何か、不思議な力でもあるのかな
心が安らいで、ホッとする
リサ「誰かの為に頑張ってる環那が好き。」
環那「そこまで、大層なものじゃないよ。」
リサ「いいや。すごいことだよ。」
リサはそう言って、手を強く握った
ちょっと痛い
リサ「14年、ずっと友希那のために頑張り続けたんだから。もっと、その時間を褒めてあげて良いと思うよ。」
環那「っ......」
別に褒めるようなものじゃない
こんなエゴにまみれた人生なんて
俺は救う以上に多くの人間の人生を潰してるから
環那「......ちょっと甘いんじゃない。」
リサ「うん。でも、今の環那には甘える人が必要かなって。」
環那「......!」
......敵わない
俺のことよく見すぎでしょ
観察力の使いどころ間違えてるよね
リサ「環那だって、泣きたいときは泣いていいんだよ。」
環那「......泣かないよ。」
リサ「そう?意外と泣きそうになってるけど?」
環那「......そうでもない。」
俺は別に悲しくもなんともない
だから泣くことなんてありえない
いや、悲しくたって泣かない
リサ「意地張らないでいいよ。ほんとは、寂しいんでしょ?」
環那「......」
俺はそう言われ、顔をそむけた
理解され過ぎてるのも嫌だな
マジで、ほんとにさ......
リサ「ハンカチ、貸そうか?」
環那「......別に、いい。」
こういう時になると、感情預けてたいって思うよ
人間って、理性で制御できる感情に限りがあるから
今までの俺じゃ考えられない反応だよ
リサ「環那がちゃんと泣くとこ、初めて見たね。」
環那「......揶揄わないでよ。」
リサ「揶揄ってないって。」
この感情は、寂しいか
喪失感とはまた少し違う
ジンワリと広がっていく、喜怒哀楽の哀
胸の内がチクチクと痛んでくる感じがする
リサ「今の寂しさは、環那が友希那の為に頑張って来た証だよ。」
環那「っ......!!」
リサはそう言いながら、俺を顔を胸に押し付け
そのまま、抱きしめてきた
柔らかくて、お日様みたいな匂いがする
リサ「......お疲れ様、環那。」
環那「......別に。」
昔は、俺の服の裾を掴んで後ろをついて来てたのに
今となってはこうか......
人生、分からないものだよ......
リサ「あたしはずっと、隣にいるよ。」
環那「......うん。」
リサ「珍しく素直なんだね。」
環那「......」
心が温まる
さっきまで、あんなに寒かったのに
もう、全然、寒くない
環那(......なんだろ。この感覚は。)
リサ「今は甘えてもいいよ。何時間でも。」
心臓があれを使ってる時みたいに激しく動いてる
胸の内が少しくすぐったくなって
喉が渇いたような感覚に襲われる
......そうか、これが
環那(......そういうことか。)
立ち込めてた雲が晴れるのを感じる
なるほど、これがずっと見えかかってた感情か
やっと、実態......答えが見えた
環那「......リサ。」
リサ「環那?」
環那「......こんな時に、言うことじゃないけどさ。」
リサ「!?(ま、まさか......!///)」
リサの背中に手を回した
さらに体が密着して
リサの感触を感じられる
そんなことを思いながら、俺は口を開いた
環那「......胸、大きくなったね。」
リサ「......へ?」
環那「俺の顔が埋もれるくらいだし、かなりのサイズに__」
リサ「~っ!!!///ば、バカ~!!!///」
環那「おっと。」
俺は振り下ろされたリサの手をよけ
少しだけ離れた
あぶなぁ......
リサ「バカバカバカ!///なんでこのタイミングでそれなの!?///」
環那「だから言ったじゃん。こんな時に言うことじゃないって。」
リサ「そう言う意味!?///」
環那「え?むしろ、どういう意味だと思ってたの?」
リサ「え?そりゃあ......告白、みたいな......って、言わせないでよ!ばか!///」
リサは顔を真っ赤にしながら手を振り回してる
その様子はすごく可愛らしいくて
さっきまでとは全然雰囲気が違う
環那「......まぁ、それはもうちょっと待ってよ。もっと最高の舞台を用意したいからさ。」
リサ「え?今なんか言った?」
環那「なんでも。」
俺はそう言って、リサに背中を向けた
時間、結構遅くなったな
エマと琴ちゃんの夕飯、用意しないと
環那「帰ろうか。送るよ。」
リサ「う、うん。ありがと。(ほんとに今、なんて言ったんだろ?)」
そんな会話の後、俺とリサは歩き出した
俺の中で答えは出た
なら、後は舞台を整えよう
それで準備が整ったその時には......