羽丘の元囚人   作:火の車

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最終回:正解

 近所にある、特に特別でもない河川敷

 

 大きめな川と少し広めの原っぱがある、ただの河川敷

 

 昔はもっと子供が遊んでたりしたんだけど、今はあんまり人がいない

 

 時代なのかなぁ

 

リサ(懐かしい。)

 

 さっき、ここは特別じゃないって言ったけど

 

 あたしにとっては、特別な場所

 

 だって、あたしはここで、環那のことを好きになったから

 

環那「__ここが、始まりの場所なんだね。」

リサ「あ、環那。遅かったね?」

環那「......少し、人と会っててね。」

 

 環那は苦しそうにそういった

 

 きっと、燐子に会ってきたんだと思う

 

 付き合えないって言うために

 

リサ「......お疲れ様。」

環那「初めてだよ。こんなに死にたいって思うのは。」

リサ「後悔、してる?」

環那「死ぬほどしてる。」

 

 そういって、環那は地面に腰を下ろした

 

 それを見て、あたしも芝生に腰を下ろして、環那の顔を見た

 

 こんなに辛そうにしてるの、初めて見たかも

 

環那「結局、全員泣かせちゃったよ。」

リサ「そりゃあね。あたしもフラれたら、泣いてた。」

環那「......そっか。」

 

 この1週間、環那はずっと難しい顔をしてた

 

 最後まで、皆を傷つけない方法を考えてた

 

 けど、この世には、環那にすら出来ないことが存在して

 

 ずっと、辛そうだった

 

環那「胸が張り裂けそうって、ネタだと思ってたよ。」

リサ「今、張り裂けそうなの?」

環那「うん......マジで痛い。」

 

 環那は胸を抑えながら、そう言った

 

 ほんとに苦しそうだ

 

 今にも、死んじゃいそうなくらい

 

リサ「慰めてほしい?」

環那「いや、いい。泣く。」

リサ「はい、嘘。」

環那「ひどい。」

 

 ちょっとだけ、いつもの調子になった

 

 出来れば、環那には元気でいてほしい

 

 あの3人もきっと、そう思ってるはず

 

 そんなことを考えてると、環那は沈んでいく夕日の方を見た

 

環那「......俺、リサを幸せにできなかったら、殺されても文句言わないよ。」

リサ「重いよ。」

 

 環那の言葉に、あたしはそう返した

 

 重い、っていうのは、決意の話

 

 昔から環那は自分に課す十字架が大きすぎる

 

 あたしが、支えにといけないね

 

リサ「そんなに気負わなくていいのに。」

環那「仕方ないじゃん。重いんだから。」

リサ「!」

 

 ギュっと、手を握られる

 

 左手だから、ちゃんと温度がある

 

環那「絶対に、誰よりも幸せにする。」

リサ「......うん。」

 

 あたしは深く頷いた

 

 ちゃんと、分かってるから

 

 環那の重さは1人分じゃない

 

 みんなの気持ちとか、犠牲が、全部乗ってるんだ

 

環那「リサは、ここから始まったんだよね。」

リサ「うん。」

 

 ふぅっと息をつき、環那はそう言って

 

 噛み締めるようにこの景色を見てる

 

 そして、静かに口を開いた

 

環那「そこから、13年間。俺を思い続けてくれたリサへ、最大の敬意と感謝を込めて。」

リサ「......///」

 

 環那はあたしの方を向いて、小さく頭を下げた

 

 まるで、女王に傅くように

 

 言葉の通り、最大の敬意と感謝を込めて

 

 そして......

 

環那「俺と結婚してください。」

リサ「......///」

 

 その言葉とともに、綺麗な指輪を差し出された

 

 正真正銘の、プロポーズ

 

 環那が、生涯の伴侶として、あたしを選んだ証だ

 

リサ「はい......!///」

 

 その答えに迷いはなかった

 

 左手の薬指に、指輪がはめられる

 

 青い宝石があしらわれた、綺麗な指輪

 

 これが証なんだって思うと、どうしようもなく愛おしくなる

 

リサ「でも、これで終わり......?///」

環那「え?」

リサ「まだ、やることあるじゃん......?///」

環那「......あぁ。」

 

 あたしが小さくアピールした

 

 すると、環那は顔をゆっくり近づけて来て、あたしは目を閉じた

 

 環那の息遣いをすぐそこに感じる

 

 そして......

 

リサ「ん......っ///」

 

 そのまま、唇が重なった

 

 優しい、満たされる

 

 愛されてるのを感じる

 

 今までの環那の苦労、辛かった記憶

 

 その全部を思い出して、ジンワリと涙が滲む

 

環那「__リサ。」

リサ「環那......///」

環那「人生最後の日、『世界一幸せだった』って言わせてみせる。」

リサ「......うんっ!///」

 

 環那の言葉に、あたしはそう答えた

 

 きっと、環那は死んでもこの誓いを果たすんだと思う

 

 けど、あたしは、環那に『世界一幸せだった』って言わせるんだ

 

 そんな誓いを、あたしは心の中で密かにたてた

____________________

 

 “友希那”

 

 あれから季節が流れて、3月

 

 私たちの卒業の季節になった

 

 環那とリサが交際......というか、婚約してから、色々あった

 

 改めて、本気で人を好きになるというのがどういうことか分かった

 

 そんな様々なトラブルはあったけれど、それも落ち着いて

 

 ついに、卒業式の日を迎えた

 

 ......の、だけれど

 

友希那「環那はどうしたの?」

エマ「さぁ。昨日も今井リサとどこかに行ったきりだし。」

友希那「あ、相変わらずね。」

 

 まぁ、あの2人なら心配ないけれど

 

 特に、環那がいるし

 

 何か大変なことに巻き込まれてるということはないわね

 

琴葉「みなさーん!そろそろ講堂に移動しますよー!」

友希那「先生?環那とリサは......」

琴葉「後で来ますよ!南宮君曰く、『諸事情があるから、卒業証書だけもらいに行くー。』らしいです!」

友希那(それでいいの?教師として。)

琴葉「まぁまぁ!行きましょう!」

 

 浪平先生にそう言われ

 

 私たちは卒業式会場である講堂に向かった

 

 本当に、あの2人はどうしたのかしら?

____________________

 

 あれから時間が経って、卒業式が終わった

 

 特に学校生活に関心があったわけではないけれど

 

 雰囲気でジーンときた

 

琴葉「みなさ、ごそつぎょ、おめでとうございます......!」

エマ「琴葉、涙と鼻水拭いて。」

 

 浪平先生はやはり卒業式で泣くタイプだった

 

 それはもう、ドン引きするレベルで泣いてる

 

 生徒思いの先生だとわかるわね

 

琴葉「もっ、ほんとにぃ......!」

「琴葉ちゃん泣きすぎー!」

「なんかこっちの涙引っ込んだわ!」

琴葉「ひどいですー!」

 

 浪平先生はそう言って、まだワンワン泣いてる

 

 これはもうしばらく泣き止まないわね

 

 この雰囲気をぶち壊す人間でも来ない限r__

 

環那「__おはよー。って、うわ、何その顔?」

リサ「お、おはようございまーす。」

琴葉「みなみやく、に、いまいさ......!」

友希那(あ、いたわね。)

 

 そんな時、環那とリサが教室に入ってきた

 

 2人とも、ちゃんと制服は来てる

 

環那「よ、妖怪みたいだね。」

リサ「だ、大丈夫ですか?」

琴葉「だいじょうぶです~!」

 

 苦笑いを浮かべながらそんなことを言ってる

 

 そんな2人に私は近づいていき、声をかけた

 

友希那「遅かったわね、2人とも。」

リサ「あ!友希那!」

環那「卒業おめでと~!」

友希那「おたがいにね。」

 

 この2人の祝い方、両親のそれね

 

 私を何だと思ってるのかしら?

 

 別にいいのだけれど

 

エマ「お兄ちゃん。私も卒業。」

環那「エマもおめでとう。今日はみんなでご飯食べようね。」

エマ「うん。」

 

 と、こんな感じに会話を楽しんでるけれど

 

 確認したいことは山ほどあるのよ

 

 まず......

 

友希那「2人はなんでこんなに遅れたの?」

環那「え?あ、そうだったね。」

リサ「ちゃんと説明しないと、ね。」

友希那、琴葉、エマ「?」

 

 私が質問すると、2人は真剣な雰囲気になった

 

 教室中が静まり返る

 

 さっきまでの卒業式の雰囲気は完全に消え去った

 

環那「俺達、来年に結婚式を挙げるんだ。」

琴葉、エマ「えっ。」

クラスメイト「えぇぇぇ~!!!???」

リサ「あ、あはは~///」

 

 その言葉に、クラス中が絶叫した

 

 この2人はクラスどころか学校公認のカップル

 

 結婚自体は驚くことじゃないけれど、来年というのは急すぎるし

 

 しかも、早すぎる

 

 けど......おかしいわね

 

友希那「あの、2人とも?結婚式はすごくおめでたいことなのだけれど、なぜ来年なの?環那なら、『来月にやるね!』くらいは良いそうなのに。」

環那「そこに気づくとは、流石は友希那だ。それが、今日このタイミングで来た理由なんだ。」

リサ「まぁ、こっちの方が本題かもね。」

環那「俺から話す?」

リサ「これは、あたしから話すよ。」

 

 リサはそういうと一歩前に出て

 

 少しだけ視線を落とした

 

 そして、数秒が経ち、ゆっくり話し出した

 

リサ「今、私のお腹に環那との赤ちゃんがいるの......///今、妊娠1か月///」

友希那、琴葉、エマ「えっ?」

クラスメイト『うえぇぇぇぇぇ~!!!???』

 

 また、クラスメイトが絶叫した

 

 それはそうよ

 

 私たちも叫びたいくらいだもの

 

 けれど、驚きすぎて声が出なかったわ

 

琴葉「に、にんし、え?今井さんのお腹に南宮君との子供が?」

環那「そうだよ?」

エマ「???????」

友希那「エマ!?大丈夫?エマ!?」

環那「......まー、これが卒業式に来なかった理由かな。体冷やすとよくないし。」

 

 教室内はまさに阿鼻叫喚

 

 あのエマも、壊れた機械みたいになってる

 

 むしろ、まだ冷静な私がおかしいわ

 

琴葉「ふ、2人とも、学生の身分で妊娠なんて__って、彼には当てはまりませんよね......」

 

 浪平先生は深呼吸をしてから、そう言った

 

 確かに、環那はちゃんと定職に就いてるし、貯金も十分

 

 そこら辺の大人よりもしっかり?してるし

 

 正直、20歳をしようが今しようが変わらないんだわ

 

エマ「お、おおおにちゃ、こっこれからもいいっしょにくらせる?」

環那「うん。もうしばらく琴ちゃんの面倒見る約束してるし。エマは家族だからね。」

エマ「よ、よかった......」

 

 エマは安心したように胸をなでおろした

 

 それを見て、環那はうんうんと頷き

 

 浪平先生の方を見た

 

環那「琴ちゃん。今日から、俺達、新しい家にお引越しだからね?」

琴葉「え?」

環那「リサが妊娠したって篤臣さんに報告したら、皆で住めって新しいマンション契約してくれてさ!今日からそこにお引越し!」

琴葉「ほんとに急ですね!?」

 

 浪平先生はそうツッコミを入れた

 

 もう、さっきの涙は引っ込んだようね

 

環那「つまり今日は、卒業記念兼新築お披露目パーティーだね!あはは!」

 

 環那は大きな声で笑いながら、リサの手を取った

 

 そして、教室のドアを開けた

 

環那「じゃあ、地図はグループに送っておいたから、皆で来てねー!」

リサ「あたし達、たくさんお料理作って待ってるからさ!」

友希那「え、えぇ。」

環那「じゃ、行こっか!」

リサ「うん!」

 

 2人はそう言って、教室を飛び出していった

 

 クラスは未だに騒然としている

 

 本当に、嵐のような2人だったわね

 

 きっと、これから先も苦労させられるわ......

 

 けれど......

 

環那『今日なに作ろっかー?』

リサ『みんなの大好物作ろうよ!全部!』

環那『そーだね!』

 

友希那(本当に、おめでとう。)

 

 今まで、行き違いをし続けてきた2人が結ばれて、あるべき正しい形になったように感じる

 

 幼馴染であり、最高の理解者であるリサと結ばれることが、環那の正解だったのだと思う

 

 だからこそ確信する

 

 あの2人は必ず幸せになるし、誰もそれを阻めはしないと

 

 だって、あの2人は、運命を超えた繋がりがあるのだから

 

 そんなことを考えながら、私は雲一つない青空の下を歩く2人を見送った

 

 

 

 




これにてリサルート終了です。
次回から燐子ルートに入ります。
時間が共通ルートの最終話に戻ります。
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