羽丘の元囚人   作:火の車

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当日

 クリスマス。それは、イエス・キリストの誕生を記念する年中行事だ。

 

 まぁ、日本はキリスト教徒が多いわけじゃないから、そういう面は少ない。

 

 けど、ある意味では日本にとっても大事な日だ。

 

 無論、俺にとっても。

 

環那(さて。)

 

 そんなクリスマスを明日に控えた俺はいつも通りだ。

 

 今の俺に気負いなんてものはない。

 

 直前になって焦るのは準備が足りないからだ。

 

 きっちり準備しておけば、他のことに神経を割け、ミスに気付ける。

 

 それが、余裕と言うものだよ。

 

環那(仕事は順調。予想できる限りのトラブルの対策も取ってる。うん、おおよそ大丈夫だろう。)

 

 頭の中で情報を整理してから、体を伸ばした。

 

 時間も11時そこそこだし、この辺りでいいでしょ。

 

環那(疲れた......)

 

 部屋にあるソファに腰を下ろした。

 

 なんか、すごい疲れてる。

 

 ちょっと、張り切りすぎたかも。

 

人見「__環那さん。今、お時間ありますか?」

環那「......人見。何か用か?」

 

 部屋の隅から、人見が現れた。

 

 笑みを浮かべながら暗い部屋にいるのは軽くホラーだ。

 

 知り合いじゃなかったらショック死しそう。

 

人見「デートを前日に控えた環那さんにお話でもと。」

環那「なんでそんな話しに来るんだよ。友達か。」

人見「いいじゃないですか。私もうら若き乙女ですよ?」

環那「君、アラサーじゃん。」

人見「女はいつでも乙女なんですよ?」

 

 そういうもんか。

 

 いや、老婆までいくと流石に勘弁願いたいけど。

 

 目に毒ってレベルじゃないし。

 

人見「準備は整っていますか?」

環那「当然だ。」

人見「私の紹介したお店がお役に立ったようで、光栄です。」

環那「その節は助かったよ。」

 

 そう言いながら、俺は部屋に備えてるコーヒーを自分と人見の分淹れ、それをテーブルに置いた。

 

 店を紹介してもらった分はお礼しておこう。

 

人見「あら、ありがとうございます。」

環那「別にそんな手間でもないよ。君と同じで。」

人見「左様ですか。」

 

 人見はコーヒーに口をつけた。

 

 ほんとに見た目だけなら気品のある女だ。

 

 内面は悪魔そのものだけど。

 

環那「てか、君も変わってるよねぇ。ここまで俺についてくるなんて。」

人見「あなたとは万が一にも敵対したくないので。明石さんもそうですわ。」

 

 そんなに敵に回したくないものかな?

 

 まぁ、仮にこいつが敵になっても平気で潰すだろうけど。

 

 ......あ、こんな性格だからか。

 

環那「俺が君たちを裏切らないという保障は?」

人見「私たちなど騙すに値しないでしょう。」

環那「そんな保障の仕方ある?」

 

 事実そうなんだけど。

 

 別にいつでも勝つ手立てはあるし。

 

人見「まぁ、私は生涯あなたに敵対することはありませんわ。」

環那「そうかい。」

人見「あなたにお子様が出来たら、可愛がりに行きますね。」

環那「来るな(迫真)」

 

 絶対に変なことを教えるぞ、こいつ。

 

 取り合えず、絶対に近づけさせない。

 

 近づいてきたら、本気で止めよう。

 

人見「冗談は置いておくとして。」

環那(聞こえない。)

人見「クリスマスは是非ともお楽しみください。お仕事の方は私の方で捌いておきますわ。」

環那「......あぁ、感謝するよ。」

 

 そう言って、俺はコーヒーを口に含んだ。

 

 まっ、こいつの能力は信用してるし、明日は任せよう。

 

 そんなことを考えてから、俺は人見と雑談をした。

____________________

 

 “燐子”

 

 今日は12月24日。クリスマスです。

 

 いつもアタフタしてる私ですが、今日は特にそうです。

 

 朝5時に起きてお風呂に入って、持ち物の確認をして、服のチェックをして......下着を選んで、それらを身に付けて。

 

 準備はもう万端です。

 

燐子(これで、大丈夫......かな?)

 

 出来る限りの確認は終わった。

 

 後は環那君のお迎えを待つだけ。

 

 でも、待つだけの時間って緊張する。

 

 緊張しすぎて、部屋で正座しちゃってるし......

 

燐子(もうお昼だし、そろそろ来るのかな......?)

 

 そんなことを考えながら、私は自室から出た。

 

 落ち着かないし、これなら外に出た方がいい。

 

 部屋にいたら緊張で気絶しちゃうよ。

 

燐子(そう言えば環那君、何で来るんだろう?)

 

 家で待っててって言われたけど、何で来るんだろう?

 

 また車とか呼んでるのかな?

 

 環那君っていつでもそう言うの呼べるらしいし。

 

燐子(もしかしたら、すごいので来たりして。)

 

 環那君には常識が通用しないし。

 何か、私が考えられない乗り物に乗って来るかも。

 まぁ、そんなものはそうそうないだろうし......普通の車かな?

 

燐子(もうそろそろかな?)

環那「__おーい!燐子ちゃーん!」

燐子「!」

 

 遠くから環那君の声が聞こえてくる。

 

 声のした方に目を向けると、見たことのない車があった。

 

 って、あれ?なんだか、運転席が家の車と反対にあるように見える。

 

 それに、運転席に環那君が乗ってるように見える......

 

環那「お待たせ。ちょっと遅くなったなかな?」

燐子「う、ううん、大丈夫、だけど......」

環那「?」

燐子「その車、どうしたの......?」

 

 私は震えた声でそう尋ねた。

 

 ま、まさかね......?

 

 すごいって言っても環那君はまだ高校生だし、ね......?

 

環那「え?この前買ったのだけど。」

燐子「」

 

 私の問いに、環那君はあっさりと答えた。

 

 うん、まぁ、薄々そうだとは思ってたよ?

 

 でもね、まさか外車で来るとは思わないよね?

 

環那「燐子ちゃんの彼氏たるもの、これくらいは持ってないとだよねー。」

燐子「私、そんな大層な人間じゃないよ......」

 

 環那君の私への評価、ちょっと高すぎると思う......

 

 友希那さんの時から思ってたけど、環那君って好きな人には盲目になるのかな?

 

 嬉しいと言えば嬉しいんだけど......

 

環那「まっ、乗りなよ。俺が助手席の乗せる女の子第1号だ。」

燐子「......2号もいるの?」

環那「それは未定かな。」

 

 車に人を乗せるのは別に何も不思議なことじゃない。

 

 けど、ちょっとだけムっとした。

 

 私って嫉妬深いのかな......?

 

燐子(むぅ......)

環那「あはは、燐子ちゃんは可愛いなぁ。心配しなくても大丈夫だよ。意地でも燐子ちゃん以外は乗せないから。」

燐子「それは大丈夫なの......?」

環那「まぁ、大丈夫でしょ(適当)それより、デートに行こう。」

燐子「う、うん。」

 

 私が頷くと、環那君は車から降りた。

 

 そして、私の手を握った。

 

 私の手より、ずっと大きい手に包み込まれてる。

 

環那「席までご案内しますよ。お姫様。」

燐子「~!////」

 

 環那君はそう言って、私の手を引いて助手席の方に歩き出した。

 

 こういう事恥ずかしげもなく言うの、本当に良くないと思う......

 

 けど、すごく嬉しいし、かっこよかった......

 

 そんなことを思いながら、私は環那君の車に乗り込んだ

 

 

 

 

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