羽丘の元囚人   作:火の車

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琴葉ルート
帰宅


 広々とした砂利広場で寝転がって、星々が輝く空を見上げている

 

 体力はもうすでに回復してる

 

 けど、なぜか動く気が起きない

 

環那(疲れた。)

 

 肉体的には大丈夫だけど、精神的に疲れた

 

 不器用な二人を繋ぐのは大変だ

 

 まぁ、あそこまですれば、もう大丈夫でしょ

 

環那「......はぁ、そろそろ帰るか。寝転がってるけど、汚いし。」

 

 そう呟いて、俺は体を起こした

 

 別に寝てたわけじゃないけど、体がだるい

 

 回復したと思ってたけど、まだ完全じゃなかったみたいだ

 

 俺が自身の状態を見誤るとは

 

環那「......帰ろう。」

 

 今の俺の気持ちは早く家に帰りたい学生のそれと同じだ

 

 特に理由はないけど、家に帰りたい

 

 俺はそんな何も考えてないような状態で、ゆっくり歩きだした

__________________

 

 “琴葉”

 

琴葉(はぁ、今日も疲れました......)

 

 仕事を終え、家に帰ってきて、私はソファに腰を下ろした

 

 教師の仕事は思ったより大変で、毎日ヘトヘトです

 

 でも、ずっと目指してた仕事ですし、この苦労も教師の証ですよね

 

琴葉(それにしても、南宮君もエマちゃんもいないんですね。何か連絡は......)

 

 私はカバンから携帯を出しました

 

 あの2人はマメな性格ですし、報連相はしっかりします

 

 なにかあれば、メッセージでも来てるでしょう

 

琴葉「?」

 

 確認すると、誰からもメッセージは来ていませんでした

 

 珍しいですね

 

 軽い買い物にでも行ってるんでしょうか?

 

琴葉(まぁ、細かい連絡なんていらないんですけどねー。)

 

 元は監視対象ということで、つど連絡してといってましたが

 

 今となっては家族みたいなものなので、いらないんですよね

 

 あの2人がそういう性分ならいいんですが

 

琴葉(それにしても、いい関係になったものです。)

 

 最初こそ、同居人という感じで、特に仲良くもしていませんでした

 

 でも、今となっては騒がしくも楽しい日々を過ごせています

 

 人間、どういう風に変わるか分からないものです

 

 本当に......

 

琴葉(普段はあまり意識しないようにしていますが、1人になると......///)

 

 冷静に考えると、好きな人と一緒に住んでるってすごい状況ですよね

 

 そもそも、教師が生徒に思いを寄せること自体、不純ではあるんですけど

 

 でも、好きになったのが偶然生徒だっただけです

 

 そもそも、彼を学生という枠組みにするのは無理があるでしょう

 

琴葉(早く、帰って来てくれませんかね......///)

 

 早く、彼と他愛のない話をしたい

 

 もちろん、エマちゃんとも一緒にいて楽しいですけど

 

 南宮君は、特別なんです

 

琴葉(いつ頃、帰ってくるのでしょうか。)

(ガチャ)

琴葉「!」

 

 私がそんなことを考えていると、玄関扉が開く音がしました

 

 この音の感じは、南宮君です

 

環那「__ただいま。」

琴葉「おかえりなさい!南宮......くん?」

環那「?」

 

 リビングに入ってきた彼を見て感じたのは、違和感でした

 

 一見すればいつも通りですが、なぜかいつもと違うと感じました

 

 具体的にどう違うかというと、どこか寂しそうな、そんな感じです

 

環那「どうしたの?」

琴葉「あの、何かありましたか?」

環那「!」

 

 あまりにも気になって、私は彼にそう尋ねました

 

 すると、少し目を丸くして

 

 そのあとにニコリと微笑みました

 

環那「何かあったら慰めてくれる?」

琴葉「え?」

 

 その言葉を聞いて、驚きました

 

 彼がこんな風に返答してくるのが意外だったからです

 

 いつもの彼なら、こちらが気にしないように笑顔を作るところなのに

 

 言い方として適切かわかりませんが、弱音を吐くなんて

 

 これは......

 

琴葉「話してください。何があったのか。」

環那「......」

 

 私はそう言い、彼の眼を真っすぐ見つめました

 

 なんとなくですけど、今の彼は近くにいてくれる人を求めてる気がします

 

 そして、私の前に来たのは、何かの示し合わせな気がします

 

 今は、私が彼を支えないといけない

 

環那「......やっぱり、安心するよ。琴ちゃんといると。」

琴葉「!///」

 

 小さな声で呟いてから、彼は私を抱き締めました

 

 その状況に、一気に顔が熱くなります

 

 これは、一体......?

 

琴葉「み、南宮君!?///」

環那「......俺、全部終わらせてきた。」

琴葉「......!」

 

 彼は小さな声で、そう言いました

 

 それですべてを察しました

 

 やっと、本当の意味で解放されたのだと

 

 そして、執着したものがなくなって、寂しさを感じてるのだと

 

琴葉「お疲れさまでした。」

環那「......」

 

 気づけば、そんな言葉が出ていました

 

 彼の人生を少し知っているからでしょうか

 

 労いの言葉が自然と出てきました

 

琴葉「......1人にはしませんから。」

環那「!」

琴葉「寂しくなんて、させませんから......!」

 

 彼の苦労を考えると、涙が出てきました

 

 きっと、辛かったはずです

 

 あんな常軌を逸した能力を手に入れてしまうくらいなんですから

 

 いくら天才といっても、血の滲むような努力もしたことでしょう

 

環那「なんか......あれだ。」

琴葉「......?」

環那「俺よりも琴ちゃんのほうが悲しそうだ。」

 

 そう言って、彼はふわりと笑いました

 

 そして、ぎゅっと抱き締める腕に力を入れました

 

環那「なんか、さっきまでちょっと悲しいって思ってたのが馬鹿らしく感じる。」

琴葉「なんで!?」

環那「自分よりテンション高い人いたら、冷静になっちゃうものでしょ。」

琴葉「確かに......」

 

 言われてみればそうですよね

 

 なんだか、彼があまりにも寂しそうだったので、つい泣いちゃいました......

 

 うぅ、恥ずかしい......

 

環那「でも、琴ちゃんはそれでいいと思うよ。」

琴葉「なんでですか!?面白いからですか!?」

環那「そういう琴ちゃんが好きだからだよ。」

琴葉「!?///」

 

 彼はそう言い、抱き締めてた腕を放しました

 

 それを少し寂しいと思ったことは置いておいて

 

 少しでも元気になってくれてよかったです

 

環那「ご飯にしようか。」

琴葉「はい!」

環那「ついでに、今日一緒に寝る?」

琴葉「!?///」

環那「冗談だよ。」

 

 彼はそう言って、キッチンのほうに歩いていきました

 

 本当に、元気になったらなったで揶揄われますね......

 

 まぁ、それに慣れてる私も私なんですけど

 

 でも、一緒に寝るっていうの......あれは、ちょっといいですね

 

 後でお願いしたら、してくれるのでしょうか......?

 

 

 

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