朝、いつも通りの時間に学校に来た
外靴から履き替えるため下駄箱を開けると
何か、靴以外のものが入っていた
環那「なんだろこれ。」
入ってたのは何かの手紙
単純な差出人の書かれてない白い封筒だ
俺は包んでる紙を開け中身を見た
環那「......」
手紙の内容は要約すると、
『この手紙を見た後校舎裏に来い』だ
ラブレター?
いや、そんなにかわいいものじゃないね
だってこの字、見覚えあるもん
環那(まぁ、待たせるのもあれだし行こうか。)
俺は手紙を鞄にしまい少しため息をついた後
差出人がいるであろう校舎裏に向かった
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校舎裏は太陽の位置的に薄暗い
夏の避暑地としては最高だろう
そんな事を考えんガラ歩いてると
校舎裏に1つの影が見えた
環那「ラブレターはもう少し可愛らしく書いた方がいいよ。そっちの方が男子は心惹かれるし......そう思わない?友希那。」
友希那「冗談は存在だけにしてくれないかしら。」
環那「あはは、手厳しいね。」
手紙の差出人は友希那だ
もちろん、分かってた
筆跡が中学の時から変わってなかったし
なにより、内容に棘があったし
環那「じゃあ冗談は置いといて。何か用かな?大嫌いな俺にわざわざ。」
友希那「そうね本題に入りましょう。賭けについてよ。」
環那「まぁ、そうだよね。」
俺は少し肩を落とした
別に話すことはないと思ってたけど
何か話したいことがあるんだろう
聞いてあげるとしようかな
環那「それで、何を話したいの?」
友希那「宣戦布告、と言うところかしら。」
環那「......」
友希那「あなたは大きなミスを犯したわ、南宮環那。」
環那「ミス?」
友希那はあざ笑うような表情でそう言った
別に俺はミスをしたつもりはないけど
友希那には何かが見えてるみたいだ
友希那「昨日の賭けの話で私のモチベーションは極限まで高まったわ。今まででもトップクラスよ。」
環那「そっか。」
友希那「これで価値のあるライブをするなんて、この世で最も簡単なことよ。」
友希那はそう言いながら歩み寄って
俺の目の前で足を止めた
その瞬間、俺は足に重みと痛みを感じた
友希那は俺の足を踏みつけたんだ
環那「!」
友希那「地獄に叩き落としてあげる。私の手で......!」
環那「......」
友希那は嬉しそうな顔をしてる
それほど調子がいいんだろう
こんな顔を見るのは初めてかもしれない
環那「そっか、頑張れ。」
友希那「!!」
俺はそう言って振り返った
よかった、友希那が嬉しそうで
そんな事を考え少し笑った
環那「俺、最低クズ男だから賭けに勝ったら友希那に裸になってもらおうと思ってたんだけど。」
友希那「!?」
環那「まぁ、その必要はなそうだね。」
俺は友希那に笑いかけ歩き始めた
あんなに動揺して、変わらないなー
昔、成人向け雑誌見つけた時もあんな顔だったね
友希那「強がる必要はないわ。誰だって死ぬのは怖いものね?だからそうやって私を動揺させようとしてるのでしょう?」
環那「そう考えるなら、そうなんじゃないかな?」
俺はそう言ってその場を去った
ていうか、同じクラスなんだけど
友希那、どのタイミングで帰って来るんだろう
俺はそんな事を考えながら教室に行った
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放課後、俺は1人で帰ってる
ライブ間近でリサは忙しいみたいだ
いつも通りの様子だったし、友希那は賭けの事ははなしてないみたい
まぁ、予想通り
エマ「__かーな。」
環那「え?」
エマ「やっほー。」
道を歩いてると
電柱の陰にエマがぽつんと立っていた
いや、なにしてるの?
俺は純粋に疑問に思った
エマ「かーなに警告しに来た。」
環那「警告?」
エマ「かーな、ライブに行かない方がいい。」
環那「え?」
エマの言葉に俺は首を傾げた
ライブのこと知ってるのはもういい
けど、行かない方がいいってなんだ?
エマ「それだけ。」
環那「え、どういう事?」
エマ「それは言えない。けど、行かない方がいい。」
エマはそれだけ言って歩いて行った
全く意味が分からない
元から分かりずらい子だけど
今回は本当に分からない
環那(何を考えてるんだ、エマは。)
紗夜「__見つけました。」
環那「紗夜ちゃん?」
紗夜「探しましたよ。」
エマが去って行くと入れ違いで紗夜ちゃんが歩いてきた
羽丘の方から来たあたり
多分だけど俺を探していたんだ
環那「何か用?」
紗夜「ライブのチケットを渡しに。」
環那「あ、もう出てたんだ。」
紗夜「はい、どうぞ。」
環那「どうもー。」
俺は紗夜ちゃんからチケットを受け取った
まぁ、ライブの日程は調べてたし
2,3日以内には来ると思ってた
紗夜「あの。」
環那「ん?」
紗夜「あなたは、本当に暴力事件を起こしたのですか?」
環那「どういうこと?」
これまたわからないな
そう言われてるんだったらそうだろうに
なんでわざわざそんな事を聞くんだろう?
紗夜「私にはあなたが暴力を振るうようには見えません。むしろ、程遠い人間に感じます。」
環那「んー、それは確かによく言われるね。でも、残念ながらほんとなんだ。」
紗夜「!」
環那「俺は確かに、隣のクラス40人に男女関係なく暴力を振るった。」
俺は笑いながらそう言った
ほんと、俺ってそんなにいい人間に見えるのかな
紛れもなく犯罪者なのにね
紗夜「......なら、その理由は?」
環那「理由?」
紗夜「仮に本当だとして、あなたは何の理由もなくそんな事をしますか?私にはそうは見えません。」
環那「理由、かぁ......」
これ、何気に初めて聞かれた
警察すらこんなの聞かなかったよ?
問答無用で俺を檻に突っ込んだし
環那「ムカついたから。」
紗夜「......え?」
環那「あはは、紗夜ちゃんは俺の事を勘違いしてるね。」
俺は更に笑った
俺の事を聖人君主とでも思ってたのかな
全く、普通の女の子は甘いなぁ
紗夜「な、何を言って......?」
環那「だから、勘違いだよ。俺がそんなにいい人間な訳ないじゃないか。」
俺は紗夜ちゃんの用に歩み寄った
紗夜ちゃんは目に見えて警戒して
少しずつ俺から離れて行ってる
環那「いやぁ、楽しみだ。賭けに勝ったことを考えるとねー。」
紗夜「え......?」
環那「俺は大事なものを貰えるんでしょ?だったら、紗夜ちゃんも燐子ちゃんも俺が好きにできるわけだ。」
紗夜「っ!!」
パシンっと乾いた音が響いた
頬に鋭い痛みを感じて
目の前の紗夜ちゃんはこっちを睨みつけてる
紗夜「最低です。もしかしたら......そう思ってましたが、湊さんの言う通りでした。決めました、私はあなたを絶対にこの町から出て行かせます。」
環那「あはは、出来るかな?」
紗夜「やります。あなたを放置しないためにも。」
紗夜ちゃんはそう言って走って行った
その後姿を見送った後
俺は少しだけ溜息をついた
環那(はぁ、危なかった。)
もう少しで賭けが成立しない所だった
あんな風に迷われると面倒なんだよね
気分次第で演奏って変わりそうだし
環那「まぁ、これで準備は整った。」
俺はそう呟いて家に帰った
さぁ、こっちの準備は整った
後は精々頑張ってもらおうかな