神社を出て、俺たちはしばらく町を歩いていた
軽く食べ歩きとか、写真を撮ったりとかした
それで、なんだかんだで部屋に入れる時間になって
のんびり歩きながら旅館に戻った
環那「__おー、良い部屋だねー。」
琴葉「すごいですね。」
今回泊まる部屋は、思ったよりも広くてきれいだった
部屋の中に露天風呂もあるし
普通の人間じゃ、会計の時に目玉が飛び出すだろうなぁ
環那「なんだかんだで、もう夕飯の時間だね。」
琴葉「今日は食べてばっかりですね。体重計の乗るのが怖いです。」
ま、そんなに変わってないと思うけどね
最近はあんまりご飯も喉を通ってなかったし
それを加味しての今日の食事量だ
琴葉「少し座りましょうか。疲れました。」
環那「そうだね。」
俺は置いてある座椅子に腰を下ろした
いやぁ、座るとなんか安心するなー
琴葉「よっこいしょ......」
環那「隣座るの?対面の方が広いと思うけど。」
琴葉「ここがいいので。」
環那「そう?」
まぁ、少し元気にはなってるけど、依存はどうしようもないよね
それで俺が困ることなんてないんだけど
むしろ、ウェルカムくらいの気持ちはあるんだけど
環那、琴葉「......」
和室特有のにおいが鼻孔をくすぐる
ま、和室にいい思い出ないんだけど
雰囲気とか匂いは嫌いじゃないね
環那「楽しい?旅行。」
琴葉「楽しいです。あなたと一緒ですから。」
環那「自分で言うのもなんだけど、俺と一緒に旅行して楽しめるのっておかしいと思うよ。」
正直、旅行行くならリサとかの方がいい
俺は自分と旅行なんかしたくないね
絶対に楽しくないもん
琴葉「それならそれでもいいです。」
環那「いいんだ。」
琴葉「あなたといて楽しいなら、いいんですよ。」
環那「そっか。」
我ながら愛されてるな
普通なら、俺なんかおすすめしないとか言うんだけど
今は特に言おうと思わないな
それでいいと思ってるから
琴葉「あなたはどうですか?いつもと様子、変わりませんけど。」
環那「琴ちゃんが楽しいなら楽しいよ。」
琴葉「私が楽しくなかったらどうするんですか。」
環那「琴ちゃんといるだけで楽しいって言うよ。」
琴葉「そ、そうですか///」
なんか、適当な理由付けな気もするけど、珍しく本音だ
琴ちゃんといると、楽しいしね
だから、ここまで一緒に生活してきたわけだし
琴葉「あなたも大概、私のこと好きですよね......///」
環那「え、そうだけど。」
琴葉「!?///」
俺、最近は割と素直だったと思うんだけど
てか、ここまで来て気づいてなかったのか
鈍感な子だな
琴葉「.......じ、じゃあ、私と、その......///」
環那「ん?」
琴葉「!」
口ごもってる琴ちゃんに顔を近づける
久しぶりにこんな近くで見るけど、綺麗な目だ
澄んでて、純粋で
環那「俺と、どうなりたいの?」
琴葉「~!///」
環那「俺は琴ちゃんが好きだよ。だから、君が欲しい。」
今、この子にキスしたらどうなるのかな
顔真っ赤にして恥ずかしがるかな?
それとも、嬉しそうに笑うのかな?
琴葉(み、南宮君が、私を好き!?///ど、どうすれば!///ていうか、顔、近づいてきて__)
(コンコン。)
環那「!」
琴葉「!?///」
琴ちゃんとの距離がほぼゼロになりかけた瞬間、部屋のドアがノックされた
な、なんて間の悪い
いや、旅館の人は時間守ってるだけだから、何も悪くないんだけど
環那「はーい。」
『お夕飯をお持ちいたしました。』
環那「ありがとうございます。どうぞ、お入りください。』
そう言うと、何人かの中居さんが入ってきた
そして、大きい机の上に料理が並べられていく
流石に高級なだけあって、結構な食材が使われていると見受けられる
「お飲み物はどうされますか?」
環那「俺は水でいいです。彼女には、お酒を出してあげてください。」
琴葉「いいんですか?」
環那「最近飲んでなかったでしょ?ここなら、いいお酒もありそうだし。」
琴葉「じゃあ......」
琴ちゃんは渡されたメニュー表を見て、いくつかお酒を注文した
ま、今日くらいは好きに飲ませてあげようか
体調崩さない程度にね
環那「じゃ、いただこうか。」
琴葉「はい。」
俺は琴ちゃんの体面に移動した
そして、軽く手を合わせて
並べられた夕飯を食べ始めた
__________________
あれから1時間くらい、談笑しつつ夕飯を食べた
琴ちゃんは久しぶりにお酒を飲んで、良い感じに酔ったみたいだ
気持ちよさそうに寝息を立ててる
俺はそんな琴ちゃんをベッドに寝かせて、お風呂に入ることにした
環那「はぁ~......」
頭と体を洗って、湯船に浸かった
いつもはシャワー派だけど、こういうのもいいね
露天風呂っていうのも、雰囲気があっていい
環那「さて......(結構、順調かな。)」
俺の予定よりも早く、琴ちゃんは回復してる
この調子なら、職場復帰もすぐだろう
環那(仕事、か。)
恐らく、俺は琴ちゃんと恋人になるんだろう
そして、多分だけど、結婚もする
年齢のこともあるし、あまり待たせられないし
そうなった時、琴ちゃんはどうなるのか......
環那(......琴ちゃんは教師、続けたいだろうな。)
こんなことは容易に想像がつく
きっと、あの子は何が何でも教師でいるだろう
そう言う生命体なんだろうし、それに......
環那「教師じゃない琴ちゃんは、なんだか嫌だしね......」
琴葉「__南宮君......」
環那「っ!?」
そんな独り言を呟いてると、背後から声が聞こえた
声の主なんて1人しかいない
だからこそ、余計に驚いた
環那(ハプニング......ってわけでもないか。)
琴葉「一緒に入っても、いいですか......?」
環那「いいよ。」
俺がそう言うと、琴ちゃんはゆっくりと湯船に入ってきた
最初から服を着てないってことから、こうするつもりだったのが分かる
何がしたいかは分からないけど
環那、琴葉「......」
琴ちゃんが湯に入ってからしばらく、沈黙が流れる
なんて声をかけるべきか分からない
こんな雰囲気の琴ちゃんは初めてだから
琴葉「......南宮君。」
環那「どうしたの?」
琴葉「私は、あなたのことが好きです......」
環那「知ってる。」
俺はそう答えた
それに、これに関しては俺も同じだ
俺は......
琴葉「あなたも、私のこと、好き......なんですよね......?」
環那「まぁね。」
琴葉「......」
また、黙ってしまう
何がしたいのか、未だに分からない
それくらい、今の琴ちゃんはおかしい
琴葉「......私は、誰も愛したくないんです。」
環那「え?」
琴葉「だって、私が愛したら、死んでしまうから......っ」
環那「!」
心臓が、少し痛くなった
そして、やっとすべての意図に気づいた
多分、今、琴ちゃんの中では綱引きが行われているんだろう
愛するか愛しないかの
琴葉「お母さんも、お父さんも、みんな、死んじゃいました......っ。わたしがっ、愛したからっ。」
ポタポタと、お湯に涙が落ちていく
何度目だろう、この子の涙を見るのは
胸が締め付けられて、自分にイライラする
琴葉「あなたのことは、好きですっ。でも、あなたにいなくなられる、くらいならっ。私は__っ!?」
環那「......」
涙声で喋る琴ちゃんの唇に指を当てた
彼女は驚いたように目を見開いている
完全に勢いだけで動いた
けど、どう動くべきかは、分かってる
環那「私はあなたを諦める......とか、そういうの受け付けてないから。」
琴葉「ん......っ。」
そう言って、琴ちゃんの唇を奪う
少しお酒のにおいがする、けど、甘い
あの日と同じだ
環那「__2人のことは、決して琴ちゃんのせいじゃない。」
琴葉「でも__」
環那「これからは、俺がそうさせない。」
琴葉「!」
もしかしたら、そう言う呪いめいたものがあるのかもしれない
けど、そんなのは関係ない
俺が全部、壊せばいいだけだ
そのためのこの能力なんだから
環那「好きだよ、琴ちゃん。」
琴葉「......わた、しも......」
か細い声で、琴ちゃんは話している
まだ、不安なんだろう
でも、ここで手は貸せない
この子が自分の力で進まないといけないからだ
琴葉「私も、大好きですっ。南宮君が......っ!」
環那「そっか。よかった。」
琴葉「んっ......っ///」
そうして、俺はまた、琴ちゃんにキスをした
それは、さっきよりも深く、少し乱暴で
俺の欲望がそのまま表れたようだった