一連のことを終えて、俺と琴ちゃんは湯船に浸かってる
さっきとは違って、彼女はリラックスしていて
俺の脚と脚の間にすっぽり収まってる
琴葉「私、教師を続けてもいいのでしょうか......」
環那「ん?」
琴ちゃんはそんなことを言い出した
なんか、訳アリっぽいな
取り合えず、話を聞こう
琴葉「私は、教師と言う仕事が好きですし、誇りも持ってます。ですが、それでも、教師であるより、あなたと一緒にいられることの方が、幸せだと感じてしまうんです.....」
そんな私が教師でいてもいいのか
そう言わんばかりの声音だ
正直、嬉しい気持ちはあるね
でも......
環那「やめたいならやめてもいいけど、好きなら続けた方がいい。」
琴葉「!」
環那「後悔する琴ちゃん、見たくないからさ。」
そう言って、軽く頭を撫でた
きっと、教師としてのこの子の幸せは、俺では与えられない
まっ、俺はそれ以上に幸せにするけどね
環那「でも、産休はちゃんと取ってよ。心配だから。」
琴葉「分かってます......///」
後ろから、琴ちゃんを抱きしめる
触れてると、幸せを感じる
好きな子と触れ合うのって、こういうものなんだ
環那「愛してるよ。」
琴葉「私も、愛しています///」
そう言葉を交わし、キスをした
少しだけ長めの、優しいキスだった
穏やかで、幸せな時間
俺がこの子を幸せにするんだって、そう思った
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“琴葉”
彼と一緒になって、1ヶ月ほどでしょうか
私たちは平和に暮らしています
彼はますます会社の改革を進め、短期間で社内環境を改善
利益も前年の倍以上になり、いきなり伝説になると言われています
私の方は、職場復帰をして、生徒たちの受験を手助けをしています
琴葉「それでは、この大学で決定と言うことでよろしいですね?」
「はい!」
琴葉「そうですか。おめでとうございます。大学でも、頑張ってください。」
「ありがとうございます!さようなら!」
琴葉「はい。さようなら。」
今は、合格した子と最終確認をしていました
この学校の生徒たちは優秀なので、そこまで長引くことはありません
琴葉(やはり、いいものです。)
喜んでる生徒たちを見るのは、この職業一番の喜びです
いなくなってしまうのは、少し寂しいですが
それでも、喜びの方が大きいです
環那「__やっほー。」
琴葉「南宮君?」
環那「今、空いてる?」
1人で感傷に浸っていると、ドアを開け、彼が入ってきました
似合わない制服に身を包んで、いつも通り軽い雰囲気で
私の方に歩いてきます
琴葉「珍しいですね。放課後に学校にいるなんて。」
環那「暇だったし、進路のことでも喋ろうかなって。」
琴葉「?」
彼はそう言って、ふぅと息をつきました
そして、真剣な表情になりました
環那「実は、新事業を海外の企業としようってなったんだ。」
琴葉「え?」
私は一瞬、呆気にとられました
彼の会社はこの間まで、ブラック気質が酷くて、状態は悪かったのに
なんでいきなり、そんなことに?
環那「それで、向こうで俺が行かないといけなくなった。」
琴葉「それは、どのくらいの期間なんですか?」
環那「まぁ、3、4年くらいになると思う。」
3、4年......
感覚としてはさして長くもない時間
ですが、彼と会えないとなると、話が変わります......
琴葉(私は......)
環那「取引相手が、折角だから海外の大学はどうだとも言ってたから、向こうの大学に通うことになると思う。」
琴葉「そう、なんですか......」
話が入ってきません
彼がしばらく日本にいなくなる事実が胸を締め付けてきます
私は、どうすれば......
環那「はい、聞いて。」
琴葉「っ!」
環那「もー、泣かないでよ。」
彼はパンっと手を叩き、笑みを浮かべました
いっぱいいっぱいで気づいてなかったですが
いつの間にか、泣いてたみたいです
環那「別に、ずっと向こうにいるわけじゃないから、たまには帰って来るよ。」
琴葉「でも、今よりも一緒にいられないじゃないですか......
環那「まぁ、そうだよね。だから、俺も準備してきたわけだし。」
琴葉「?」
彼は鞄を開けて、中から何かを取り出しました
小さな箱です
あれって......
環那「結婚しよう。」
琴葉「......!」
環那「俺はどこにいても、君を愛してるよ。」
琴葉「///」
この1年、彼と一緒にいたからこそわかる、心からの言葉です
これは、本気のプロポーズです
琴葉「はい......///」
上手く思考が出来ない中、私は辛うじてそう答えました
嬉しい、幸せ
そんな言葉が頭の中に浮かんできます
環那「よかった。結婚式は大分先になっちゃうけど、待っててね。」
琴葉「はい///何年でも、待ちます///」
環那「じゃあ、ちゃんと卒業してから、婚姻届けだそうね。」
琴葉「はい///」
私は彼の言葉に何度も頷きました
もう、今の私には思考する余裕がなくて
彼に指輪をはめられる間は、一瞬たりとも動けないまま、されるがままになっていました
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“環那”
風が冷たい季節が過ぎ、暖かい風が吹くようになった
俺に関わってた皆は、大学に言ったり進級したりして、頑張ってるらしい
自分で言うのもなんだけど、結構、人の人生引っ搔き回したからね
いい方向に進んでるようで、安心した
環那「__さてと。」
空港に来て、去年の出来事に思いをはせていた
恐らく、あの1年は俺にとって、最も大切になるだろう
そう思うくらいには、色々と変わった
リサ「なーに黄昏てんのー?それとも、日本離れるの寂しくなった?」
環那「別にそうでもないよ。今生の別れでもないし。」
友希那「相変わらずね。」
燐子「環那君はそういう人だもんね。」
紗夜「もう少し、人情的なものがあってもいいと思うんですけど。」
あこ「ムリじゃないですかねー。」
イヴ「まるで人の心がないです!」
環那「それは褒めてる?」
人の心の有無は正直懐疑的だけど
まぁ、昔よりはマシでしょ
エマ「私も、行きたかった......」
環那「すまないね。でも、エマには期待してるよ。日本で一番の医者になるんだよ。」
エマ「うん......」
俺はエマの頭を撫でた
寂しがってくれる家族っていうのも悪くない
昔の俺じゃ、考えられなかったな
リサ「環那と話さなくていいんですかー?浪平先生ー?」
琴葉「わ、分かってます。こ、心の準備だけ__」
環那「ふぅ。」
琴葉「__ひょわああああ!///」
俺は深呼吸をしてる琴ちゃんの後ろに忍び寄って
耳に軽く息を吹きかけた
すごい声が出て、面白かった
琴葉「な、何するんですか!///」
環那「いや、つい。」
琴葉「ついってなんですか!///」
相変わらず、この子は面白い
この数か月間、結婚生活を送って、すごく楽しかった
幸せと言うのをよく噛み締められたと思う
琴葉「私のこと、叩けば鳴るおもちゃと思ってますよね......///」
環那「思ってない思ってない。」
琴葉「なんだかてきとうです!///」
ちゃんと真面目に言ってるけど
まぁ、よく鳴くとは思ってるんだけど
夜の声、大きいし
環那「まぁ、そろそろ搭乗時間だし、ちゃんと話そうか。」
琴葉「!」
俺は少し、真面目な顔をした
一応、愛しの奥様としばしの別れだしね
それらしいことはしておかないと
環那「ちゃんと落ち着いたら、結婚式挙げようね。篤臣さんに、ウェディングドレス、見せてあげたいし。」
琴葉「......はい///」
琴ちゃんはコクンと頷いた
正直、楽しみだ
この子のドレス姿を見られるのが
絶対に可愛いからね
環那「琴ちゃんは何か言いたいことある?」
琴葉「えっと......///」
琴ちゃんは少しだけモジモジして
少しして、意を決したように口を開いた
琴葉「ちゃんと、毎日、連絡してくださいね......///」
環那「うん、分かった。」
琴葉「ビデオ通話ですからね......///」
環那「分かってる分かってる。」
琴葉「それと、浮気は絶対にしないでくださいね......///どんなの美人な人がいても......///」
環那「するわけないじゃん。」
琴葉「帰ってきたら、うんと甘やかしてくださいね......?///」
環那「分かった。」
ほんとに可愛い子だ
このくらいの要求、余裕で叶えられる
てか、浮気とか考えたこともなかった
琴葉「私からは以上です......///」
環那「随分と可愛らしい要求だったね。」
琴葉「ひゃ!?///」
俺はそう言って、琴ちゃんを抱き寄せた
寂しいというか、惜しいな
日本でやるべきことがなかったら連れて行ってる
そう言うわけにもいかないから、しばしの別れなんだけど
環那「愛してるよ、琴葉。」
琴葉「んっ///」
周り「!?」
搭乗時間間近、俺は琴ちゃんにキスをした
いつも通りの優しいキス
琴ちゃんは最初こそ驚いてたけど、すぐに受け入れて
なんなら、俺の頭に手を回してた
それもまた、可愛いと思った
環那「じゃあ、行ってくる。」
琴葉「はい!///帰りを待ってますよ、あなた!///」
そんな会話を交わし、俺はゲートの方に歩いた
後ろで、バタバタと動いてる気配がある
琴ちゃんが両腕を振ってるんだろうって、予想がつく
環那「じゃあ、またねー。ちょっくら世界変えてくるー。」
Roselia、イヴ(そんな軽いノリで言う事じゃない......)
エマ「行ってらっしゃい、お兄ちゃん。」
軽く手を振りながら、俺は歩みを進めた
さてと、俺の人生で5番目くらいに難しい仕事をしに行くか
日本に帰ってきたら、1番難しい、琴ちゃんを幸せにするって言う仕事が始まるんだ
今回の案件くらい楽勝でこなさないと、示しがつかないや