羽丘の元囚人   作:火の車

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しばしの別れ

 一連のことを終えて、俺と琴ちゃんは湯船に浸かってる

 

 さっきとは違って、彼女はリラックスしていて

 

 俺の脚と脚の間にすっぽり収まってる

 

琴葉「私、教師を続けてもいいのでしょうか......」

環那「ん?」

 

 琴ちゃんはそんなことを言い出した

 

 なんか、訳アリっぽいな

 

 取り合えず、話を聞こう

 

琴葉「私は、教師と言う仕事が好きですし、誇りも持ってます。ですが、それでも、教師であるより、あなたと一緒にいられることの方が、幸せだと感じてしまうんです.....」

 

 そんな私が教師でいてもいいのか

 

 そう言わんばかりの声音だ

 

 正直、嬉しい気持ちはあるね

 

 でも......

 

環那「やめたいならやめてもいいけど、好きなら続けた方がいい。」

琴葉「!」

環那「後悔する琴ちゃん、見たくないからさ。」

 

 そう言って、軽く頭を撫でた

 

 きっと、教師としてのこの子の幸せは、俺では与えられない

 

 まっ、俺はそれ以上に幸せにするけどね

 

環那「でも、産休はちゃんと取ってよ。心配だから。」

琴葉「分かってます......///」

 

 後ろから、琴ちゃんを抱きしめる

 

 触れてると、幸せを感じる

 

 好きな子と触れ合うのって、こういうものなんだ

 

環那「愛してるよ。」

琴葉「私も、愛しています///」

 

 そう言葉を交わし、キスをした

 

 少しだけ長めの、優しいキスだった

 

 穏やかで、幸せな時間

 

 俺がこの子を幸せにするんだって、そう思った

__________________

 

 “琴葉”

 

 彼と一緒になって、1ヶ月ほどでしょうか

 

 私たちは平和に暮らしています

 

 彼はますます会社の改革を進め、短期間で社内環境を改善

 

 利益も前年の倍以上になり、いきなり伝説になると言われています

 

 私の方は、職場復帰をして、生徒たちの受験を手助けをしています

 

琴葉「それでは、この大学で決定と言うことでよろしいですね?」

「はい!」

琴葉「そうですか。おめでとうございます。大学でも、頑張ってください。」

「ありがとうございます!さようなら!」

琴葉「はい。さようなら。」

 

 今は、合格した子と最終確認をしていました

 

 この学校の生徒たちは優秀なので、そこまで長引くことはありません

 

琴葉(やはり、いいものです。)

 

 喜んでる生徒たちを見るのは、この職業一番の喜びです

 

 いなくなってしまうのは、少し寂しいですが

 

 それでも、喜びの方が大きいです

 

環那「__やっほー。」

琴葉「南宮君?」

環那「今、空いてる?」

 

 1人で感傷に浸っていると、ドアを開け、彼が入ってきました

 

 似合わない制服に身を包んで、いつも通り軽い雰囲気で

 

 私の方に歩いてきます

 

琴葉「珍しいですね。放課後に学校にいるなんて。」

環那「暇だったし、進路のことでも喋ろうかなって。」

琴葉「?」

 

 彼はそう言って、ふぅと息をつきました

 

 そして、真剣な表情になりました

 

環那「実は、新事業を海外の企業としようってなったんだ。」

琴葉「え?」

 

 私は一瞬、呆気にとられました

 

 彼の会社はこの間まで、ブラック気質が酷くて、状態は悪かったのに

 

 なんでいきなり、そんなことに?

 

環那「それで、向こうで俺が行かないといけなくなった。」

琴葉「それは、どのくらいの期間なんですか?」

環那「まぁ、3、4年くらいになると思う。」

 

 3、4年......

 

 感覚としてはさして長くもない時間

 

 ですが、彼と会えないとなると、話が変わります......

 

琴葉(私は......)

環那「取引相手が、折角だから海外の大学はどうだとも言ってたから、向こうの大学に通うことになると思う。」

琴葉「そう、なんですか......」

 

 話が入ってきません

 

 彼がしばらく日本にいなくなる事実が胸を締め付けてきます

 

 私は、どうすれば......

 

環那「はい、聞いて。」

琴葉「っ!」

環那「もー、泣かないでよ。」

 

 彼はパンっと手を叩き、笑みを浮かべました

 

 いっぱいいっぱいで気づいてなかったですが

 

 いつの間にか、泣いてたみたいです

 

環那「別に、ずっと向こうにいるわけじゃないから、たまには帰って来るよ。」

琴葉「でも、今よりも一緒にいられないじゃないですか......

環那「まぁ、そうだよね。だから、俺も準備してきたわけだし。」

琴葉「?」

 

 彼は鞄を開けて、中から何かを取り出しました

 

 小さな箱です

 

 あれって......

 

環那「結婚しよう。」

琴葉「......!」

環那「俺はどこにいても、君を愛してるよ。」

琴葉「///」

 

 この1年、彼と一緒にいたからこそわかる、心からの言葉です

 

 これは、本気のプロポーズです

 

琴葉「はい......///」

 

 上手く思考が出来ない中、私は辛うじてそう答えました

 

 嬉しい、幸せ

 

 そんな言葉が頭の中に浮かんできます

 

環那「よかった。結婚式は大分先になっちゃうけど、待っててね。」

琴葉「はい///何年でも、待ちます///」

環那「じゃあ、ちゃんと卒業してから、婚姻届けだそうね。」

琴葉「はい///」

 

 私は彼の言葉に何度も頷きました

 

 もう、今の私には思考する余裕がなくて

 

 彼に指輪をはめられる間は、一瞬たりとも動けないまま、されるがままになっていました

__________________

 

 “環那”

 

 風が冷たい季節が過ぎ、暖かい風が吹くようになった

 

 俺に関わってた皆は、大学に言ったり進級したりして、頑張ってるらしい

 

 自分で言うのもなんだけど、結構、人の人生引っ搔き回したからね

 

 いい方向に進んでるようで、安心した

 

環那「__さてと。」

 

 空港に来て、去年の出来事に思いをはせていた

 

 恐らく、あの1年は俺にとって、最も大切になるだろう

 

 そう思うくらいには、色々と変わった

 

リサ「なーに黄昏てんのー?それとも、日本離れるの寂しくなった?」

環那「別にそうでもないよ。今生の別れでもないし。」

友希那「相変わらずね。」

燐子「環那君はそういう人だもんね。」

紗夜「もう少し、人情的なものがあってもいいと思うんですけど。」

あこ「ムリじゃないですかねー。」

イヴ「まるで人の心がないです!」

環那「それは褒めてる?」

 

 人の心の有無は正直懐疑的だけど

 

 まぁ、昔よりはマシでしょ

 

エマ「私も、行きたかった......」

環那「すまないね。でも、エマには期待してるよ。日本で一番の医者になるんだよ。」

エマ「うん......」

 

 俺はエマの頭を撫でた

 

 寂しがってくれる家族っていうのも悪くない

 

 昔の俺じゃ、考えられなかったな

 

リサ「環那と話さなくていいんですかー?浪平先生ー?」

琴葉「わ、分かってます。こ、心の準備だけ__」

環那「ふぅ。」

琴葉「__ひょわああああ!///」

 

 俺は深呼吸をしてる琴ちゃんの後ろに忍び寄って

 

 耳に軽く息を吹きかけた

 

 すごい声が出て、面白かった

 

琴葉「な、何するんですか!///」

環那「いや、つい。」

琴葉「ついってなんですか!///」

 

 相変わらず、この子は面白い

 

 この数か月間、結婚生活を送って、すごく楽しかった

 

 幸せと言うのをよく噛み締められたと思う

 

琴葉「私のこと、叩けば鳴るおもちゃと思ってますよね......///」

環那「思ってない思ってない。」

琴葉「なんだかてきとうです!///」

 

 ちゃんと真面目に言ってるけど

 

 まぁ、よく鳴くとは思ってるんだけど

 

 夜の声、大きいし

 

環那「まぁ、そろそろ搭乗時間だし、ちゃんと話そうか。」

琴葉「!」

 

 俺は少し、真面目な顔をした

 

 一応、愛しの奥様としばしの別れだしね

 

 それらしいことはしておかないと

 

環那「ちゃんと落ち着いたら、結婚式挙げようね。篤臣さんに、ウェディングドレス、見せてあげたいし。」

琴葉「......はい///」

 

 琴ちゃんはコクンと頷いた

 

 正直、楽しみだ

 

 この子のドレス姿を見られるのが

 

 絶対に可愛いからね

 

環那「琴ちゃんは何か言いたいことある?」

琴葉「えっと......///」

 

 琴ちゃんは少しだけモジモジして

 

 少しして、意を決したように口を開いた

 

琴葉「ちゃんと、毎日、連絡してくださいね......///」

環那「うん、分かった。」

琴葉「ビデオ通話ですからね......///」

環那「分かってる分かってる。」

琴葉「それと、浮気は絶対にしないでくださいね......///どんなの美人な人がいても......///」

環那「するわけないじゃん。」

琴葉「帰ってきたら、うんと甘やかしてくださいね......?///」

環那「分かった。」

 

 ほんとに可愛い子だ

 

 このくらいの要求、余裕で叶えられる

 

 てか、浮気とか考えたこともなかった

 

琴葉「私からは以上です......///」

環那「随分と可愛らしい要求だったね。」

琴葉「ひゃ!?///」

 

 俺はそう言って、琴ちゃんを抱き寄せた

 

 寂しいというか、惜しいな

 

 日本でやるべきことがなかったら連れて行ってる

 

 そう言うわけにもいかないから、しばしの別れなんだけど

 

環那「愛してるよ、琴葉。」

琴葉「んっ///」

 

周り「!?」

 

 

 搭乗時間間近、俺は琴ちゃんにキスをした

 

 いつも通りの優しいキス

 

 琴ちゃんは最初こそ驚いてたけど、すぐに受け入れて

 

 なんなら、俺の頭に手を回してた

 

 それもまた、可愛いと思った

 

環那「じゃあ、行ってくる。」

琴葉「はい!///帰りを待ってますよ、あなた!///」

 

 そんな会話を交わし、俺はゲートの方に歩いた

 

 後ろで、バタバタと動いてる気配がある

 

 琴ちゃんが両腕を振ってるんだろうって、予想がつく

 

環那「じゃあ、またねー。ちょっくら世界変えてくるー。」

Roselia、イヴ(そんな軽いノリで言う事じゃない......)

エマ「行ってらっしゃい、お兄ちゃん。」

 

 軽く手を振りながら、俺は歩みを進めた

 

 さてと、俺の人生で5番目くらいに難しい仕事をしに行くか

 

 日本に帰ってきたら、1番難しい、琴ちゃんを幸せにするって言う仕事が始まるんだ

 

 今回の案件くらい楽勝でこなさないと、示しがつかないや

 

 

 

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