羽丘の元囚人   作:火の車

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役割

 朝、目を覚ますと俺はホテルのベッドの上で寝ていた

 

 布団は全体的に乱れていて、湿り気のある部分もある

 

 この情報から、昨夜の記憶が呼び覚まされる

 

イヴ「すぅ......すぅ......」

環那(......イヴちゃん。)

 

 昨夜の彼女は、綺麗だった

 

 彼女を利用したようなものだったのに、優しく受け入れて

 

 それどころか、俺を憐れんでいるようにすら見えた

 

環那(よかったのか?俺は、この子を利用してしまって。)

 

 多分、本人は気にしないんだろう

 

 もし仮に俺がイヴちゃん意外と付き合うとしても

 

 今日の話を持ち出すことはないし、怒ることもない

 

 この子はそういうのじゃない

 

 だからこそ、罪悪感を覚えてしまう

 

イヴ「んん.......っ、カンナさん.......?」

環那「おはよう、イヴちゃん。」

イヴ「おはようございます!」

 

 しばらくすると、イヴちゃんが目を覚ました

 

 起きてすぐにスイッチが入るの、すごいな

 

 流石だ

 

環那「今日はお仕事ある?」

イヴ「この後にありますけど、大丈夫です!」

環那「それはよかった。」

 

 今、俺の頭はスッキリしてる

 

 これはイヴちゃんのお陰だ

 

 楽な道を選ばせてくれて、それでできた余裕で、頭を整理できた

 

環那「よかったの?イヴちゃん。」

イヴ「え?何がです?」

環那「俺に大切な体を利用されて。君には何のメリットもないのに。」

イヴ「いいんですよ!カンナさんのためですから!それに、私はカンナさんと繋がれましたから......///」

環那「......そっか。」

 

 予想通りの返事だ

 

 思った通り、全く気にしていない

 

 口で言ってるだけの可能性もあるけど、あまりそう言う気配を感じない

 

環那「不思議な子だ。」

イヴ「え?」

環那「俺が言えたことじゃないけど、イヴちゃんも大概、変な子だね。」

イヴ「えぇ!?」

 

 分かる、イヴちゃんの気持ち

 

 同機は違うとはいえ、誰かのために手を尽くす

 

 俺もきっと、そうだったから

 

環那「あの場所に来たのが、君で良かった。」

イヴ「え?」

環那「何でもないよ。そろそろ、部屋から出ないとね。」

イヴ「あ、シャワー浴びて来てもいいですか?」

環那「うん、いいよ。帰りは車で送っていくから。」

イヴ「ありがとうございます!」

 

 イヴちゃんはそう言って、お風呂場の方に走って行った

 

 それを見送って、俺は携帯を取り出して

 

 取り合えず、車を呼んで、大量に来てる連絡を返していった

__________________

 

 “イヴ”

 

 あれから、私はシャワーを浴びて、現場まで送ってもらいました

 

 それに、新しい服と下着も買ってもらっちゃいました

 

 お仕事に行くのに、昨日着てた服のままじゃ気になるだろうからと

 

 ありがたいですが、すごく申し訳なかったです.......

 

日菜「おっはよー!イヴちゃーん!」

イヴ「おはようございます!ヒナさん!」

日菜「ん?」

イヴ「?」

 

 ヒナさんは後ろから抱き着いてきました

 

 そして、クンクンと鼻を鳴らしました

 

 どうしたんでしょうか?

 

日菜「......イヴちゃん、環那君と何かあった?」

イヴ「!?///」

日菜「具体的に言うならー......」

イヴ「ひ、ヒナさん!///」

日菜「あ、ごめんごめん!」

 

 な、なんで分かるんですか?

 

 ちゃんとシャワーも浴びて来たのに

 

日菜「昨日、環那君探し行ってたし、やっぱりその流れ?」

イヴ「......はい///」

日菜「そっかー。」

 

 全部バレているみたいで恥ずかしいです

 

 ヒナさんだけにしか気づかれていないのが幸いですね......

 

日菜「多分、昨日、イヴちゃんが環那君を見つけたことには意味があるよ。」

イヴ「え?」

日菜「他の3人じゃ出来ない、イヴちゃんだけに出来ることがあるのかもね。なんとなくだけど!」

 

 ヒナさんはそう言って、クルッと振り返りました

 

 そして......

 

日菜「環那君が好きなら、その役割みたいなもの果たせばいいんじゃないかなー。あたしにはあれの良さは分からないけどねー。」

イヴ「そ、そうですか......」

 

 役割......

 

 他の人たちじゃできない、私だけに出来ること

 

 あるんでしょうか?そんなの

 

日菜「頑張りなよー。」

イヴ「は、はい!」

 

 ヒナさんはヒラヒラと手を振りながら歩いていきました

 

 なんだか、すごく難しいことを言われた気がします

 

 私がカンナさんに出来ることとは、何なのでしょうか?

__________________

 

 “環那”

 

 あれから一週間が経ち、月は11月に突入した

 

 空気は段々と冷え込み、冬と呼べる季節になっている

 

 冬に外に出るの、よく考えたら久しぶりだ

 

 俺は基本、檻から出されなかったからね

 

環那「はぁ......」

 

 白い息が出てる、懐かしい

 

 昔はこのくらいの時、何してたっけ?

 

 リサと友希那と遊んでた記憶はあるな

 

環那(久しぶりだなー。)

 

 俺は商店街を歩いてきて、羽沢珈琲店の前で足を止めた

 

 コーヒーの良い匂いがする

 

 最近は仕事が忙しくて足が遠のいてたし、久しぶりに入ろう

 

 そう思い、俺は店の扉を開けた

 

イヴ「__へいラッシェーイ!!」

環那「!」

イヴ「あっ。」

 

 扉を開けてすぐに聞こえる、元気な声

 

 聞くだけで元気になれるようで

 

 まるで魔法だな

 

イヴ「か、カンナさん!///」

環那「イヴちゃん、このお店はカフェだよ。元気なのは、いいけどね。」

イヴ「す、すみません......///お、お席にご案内します......///」

 

 俺はそう言うイヴちゃんについて行き、カウンター席に座った

 

 この時間はお客さんは少ない

 

 落ち着いてコーヒーを飲むにはいい時間だ

 

つぐみ「いらっしゃいませ、南宮さん!」

環那「やぁ、つぐちゃん。元気にしてた?」

つぐみ「はい!」

環那「それはよかった。」

 

 看板娘のつぐちゃんも元気そうだ

 

 ここは何も変わらない

 

 良いお店だと思う

 

イヴ「か、カンナさん!///ご注文はいつものですか?///」

環那「あぁ、お願いするよ。それと......」

イヴ「?///」

環那「イヴちゃんと話す時間が欲しいな。」

イヴ「!///は、はい!///少々お待ちください!///」

 

 イヴちゃんはパタパタと走っていく

 

 ほんとに、可愛い子だ

 

 そして......

 

環那(暖かいな。)

 

 まるで、彼女のいる場所だけが春になっているみたいだ

 

 ほっとして、心にしみわたる

 

 居心地がいい

 

イヴ「お、お待たせしました!///ブレンドコーヒーとチョコレートケーキです!///」

環那「ありがとう。イヴちゃんも座りなよ。」

イヴ「はい!///」

 

 この子といると、安心できる

 

 なんとなく、俺が強くなくても一緒にいられそうだから

 

 この子になら、弱みを見せても大丈夫だと思えるからかな

 

 色々理由はありそうだけど、今、俺が思っているのは......

 

 もう少し、この子と一緒にいたい、かな

 

 

 

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