羽丘の元囚人   作:火の車

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求めるもの

 あの日から、カンナさんが羽沢珈琲店に来ることが増えました

 

 しばらくはお仕事の関係であまり来れていませんが

 

 最近は、ほぼ毎日来ているらしいです

 

環那「今日はカフェモカとチーズケーキにしようかな。」

イヴ「かしこまりました!」

 

 カンナさんは全メニューを制覇しようとしているらしいです

 

 羽沢珈琲店は特別高級なお店ではありませんが、ほぼ毎日通うのは学生の身では難しいです

 

 まぁ、カンナさんには関係ないですけど

 

イヴ「__お待たせしました!カフェモカとチーズケーキです!」

環那「ありがと。」

 

 準備が終わって、注文された品物を出すと、カンナさんはニコっと笑いました

 

 今は他のお客さんはいませんし、カンナさんと話しても良いでしょうか?

 

イヴ「カンナさん、リサさん達とは最近どうですか?」

環那「みんな受験勉強で忙しそうにしてるよ。もう佳境に入ってるからね。バンドに勉強に、必死そうだよ。」

イヴ「た、大変そうですね。」

 

 そう言えば、皆さんはもう大学受験でしたね

 

 私もそう遠い話ではないんですが

 

 あまり、現実感がないですね

 

イヴ「カンナさんは大学には行かないんですか?」

環那「俺はまぁ、行く必要ないから。」

イヴ「確かに、そうですね!」

 

 カンナさんは社長さんです

 

 そんな人にとっては大学に行く必要もないですよね

 

 ただでさえ、お仕事で忙しいですし

 

環那「だから俺は、残りの高校生活を楽しむよ。」

イヴ「いいですね!私とも遊びましょう!」

環那「俺はいいけど、時間あるの?」

イヴ「大丈夫です!」

環那「そっか。なら、追々ね。」

 

 やりました!カンナさんとデートの約束が出来ました!

 

 私は他の皆さんと比べて遅れを取っていますし

 

 ここで少しでも追いつかないと!

 

環那「じゃあ、、俺はそろそろ行くよ。」

イヴ「もうですか......?」

環那「仕事があるから。悪いね。」

 

 少し寂しいですが、お仕事なので仕方がないです

 

 私はカンナさんがお店を出ていくのを見送り

 

 バイトのお仕事を再開しました

__________________

 

 “環那”

 

 最近、俺に不思議なことが起きてる

 

 その内容を簡単に言うと、仕事後とかに何かを求めるようになった

 

 その何かについてはよく分かってないけど

 

 多分、癒しを求めてるんだと思う

 

環那(......これじゃない。)

 

 今、俺が求めてるもの

 

 それを探してる

 

 動物の動画とか、リラックスできる音楽とか、色々なものを試してる

 

 でも、全部、何かが違う

 

 今はこれを求めてない

 

環那(なんなんだろ。)

 

 そもそも、前提が間違っているのか?

 

 俺が求めてるのは、癒し......

 

 そう思っていたんだけど

 

環那(少し、違うのかもしれない。)

 

 最近、これが満たされたように感じたのは......

 

 それを考えながら、携帯を操作する

 

 そうしてるうちに、画面はメッセージアプリに行きつき

 

 ある子のトークルームを開いていた

 

環那(......イヴちゃん、か。)

 

 恐らく、本能なんだろう

 

 俺が求めているものは、この子が持ってる

 

 なんとなく、そんな気がする

 

環那「また、羽沢珈琲店に行くか。」

(ピッ)

環那「あ?」

 

 疲れて腕をバタンとベッドに叩きつけた瞬間、無機質な機械音が鳴り響いた

 

 そして、すぐに、誰かに電話がかかる音がする

 

 ......これ、やばいかも

 

環那(やばっ。さっさと切って、べんめ__)

イヴ『__はい、もしもし?』

環那(はやっ。)

 

 驚きの早さだ

 

 これ、どうしようか

 

環那「あー、間違えてかけっちゃったんだ。ごめんね。」

イヴ『大丈夫ですよ!それにしても、すごい偶然ですね!私のトークルームを開いてるなんて!」

環那「......」

 

 何も意図はないのは分かってる

 

 けど、なんだ?

 

 少しずつ追いつめられてる気がする

 

イヴ『カンナさん?』

環那「......なんだろ。あんまりよくないかもなんだけど......」

イヴ『?』

環那「今から会えないかな。」

イヴ『えぇ!?///」

 

 なんとなく、俺はそう言ってしまった

 

 けど、彼女と会いたくなったのは事実だ

 

 特に何かしたいとかはないけど

 

 そんなことを考えながら、俺は彼女からの返事を待った

__________________

 

 “イヴ”

 

 夜の10時

 

 外に出るのには少し遅い時間です

 

 11月と言うこともあり、風も冷たくなっています

 

 そんな時に私は外に出て、近くの公園に来ています

 

 街灯がポツポツとついていて、所々明るいです

 

イヴ「あ、お待たせしました!」

環那「いや、待ってないし、呼んだの俺だから。」

 

 カンナさんはベンチに座ったまま、笑いかけてきました

 

 そんな風にされると、胸がドキドキします

 

環那「急に呼んでごめんね。」

イヴ「い、いえ///それよりも、どうして、会いたいなんて.......?///

環那「.......」

イヴ「.......?///」

 

 カンナさんは静かになりました

 

 そして、ジーっと私のことを見て

 

 少しして、口を開きました

 

環那「君に会いたかった。」

イヴ「え!?///」

環那「確かめたいことがあってね。それは、一目見て終わったけど。」

 

 確かめたいこと......?

 

 何か気になることがあったんでしょうか?

 

 そんなに隠すようなことはないんですが......

 

環那「やっぱり、そうだ。」

イヴ「えっと、どうしたんですか?」

環那「最近、仕事の後に疲れを感じることが多くなってね。その時に、求めてるものを探してたんだ。」

イヴ「えっと、それに私はどう関係してるんですか?」

環那「俺が求めてるのは、イヴちゃんだった。」

イヴ「!///」

 

 カンナさんの言葉に、顔が熱くなりました

 

 私が、求められてる

 

 リサさん達じゃなく、私が

 

 それが、嬉しいです

 

環那「イヴちゃんといると、心が安らぐ。だから、最近、羽沢珈琲店に行くことが増えたのかもしれない。」

イヴ「そ、そうなんですか///」

環那「あ、これ、暖かい飲み物。寒いでしょ?」

イヴ「い、今は少し、暑いです......///」

環那「?」

 

 な、なんだか、カンナさんがおかしいです

 

 まるで、これじゃ、私を.......

 

 い、いや、ウヌボレはダメです

 

 で、でも......

 

環那「今日は、少しだけお話したいな。それと、仕事後に電話できるときはしてくれると嬉しいな。」

イヴ「も、もちろんです!///毎日でも!///」

環那「あはは、ありがと。お言葉に甘えることになるかもしれないね。」

 

 カンナさんはそう嬉しそうに笑いました

 

 それからの私たちは飲み物を飲みながらお話をしました

 

 なんだか、少しだけ、距離が縮まった気がします

 

 それに、ヒナさんの言っていた役割......

 

 その答えに近づいているような気がします

 

 

 

 

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