朝、目を覚ますと、いつもと違う匂いがした
爽やかだけど、甘い
なんだ、この匂い......
イヴ「すぅ......ん.......っ」
環那「......(あぁ、そうだった。)」
あの後、俺は寝てしまったんだ
寝落ちとか久しぶりにしたかも
イヴちゃんの家って言うのもあるのかな
環那(俺にとっていいことなのか。この楽さは。)
つい、この子といると緩んでしまう
なんとなく、俺のワガママを受け入れてくれそうな気がするから
環那「......」
イヴ「ん......」
俺は布団を被りなおして、彼女を抱きしめた
暖かくて、柔らかい
こうしているだけで、多幸感が押し寄せてくる
環那「......ほんと、可愛いな。普段の姿も、勘違いばっかりしてるところも。」
俺はそう呟いて、目を閉じた
今日はお互い休みだ
もう少し、寝ても大丈夫でしょ
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“イヴ”
イヴ「!???///」
朝起きると、カンナさんに抱きしめられていました
暖かくて、なんだか病院のような匂いがします
こんなに密着するなんて、すごくドキドキします
イヴ「......///(カンナさん......///)」
好きと言う気持ちが溢れてきます
こんな風にいられるのは、お互いの立場上、滅多にありません
出来ることなら、ずっと、こんな風にしていたいのですが......
イヴ「......もし私が、アイドルじゃなかったら、普通の恋愛が出来たのでしょうか......?」
誰にも詮索されず、好きなようにデートをして
そして、ゆくゆくは2人で家庭を持って、幸せに暮らす
そんな普通の幸せが、今はなによりも欲しい......
イヴ(もっと、一緒にいたい......)
離れたくない、邪魔されたくない、何も気にせず......大好きな人と一緒にいたい
そんなことを、つい考えてしまいます
数か月にたまにあるマイナスな考えになってしまう日なのでしょうか
アイドルじゃない私では、カンナさんの隣には立てませんよね
イヴ(変なことは考えず、今日も1日がんばりましょう!今日はカンナさんもいますし、朝食を作らないと!)
私は渦巻いていた色々な考えを振り払い、ベッドから出ました
ともかく、シャワーを浴びてから、朝食を作りましょう!
ちゃんとアピールしないとですし!
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“環那”
環那(天使の本音......と言ったところか。)
間が良いのか悪いのか
俺には別に人の本心を盗み聞く趣味はないんだけど
今回は有効な情報として受け取っておくとしよう
環那(純白の天使に見えた陰りか。)
いつもは明るく振舞っていても、不安や不満は蓄積される
明るい彼女の暗い部分に触れられるというのは、喜ばしいことだ
天使の陰りの理由が自分だっていうのも、良い感覚だ
環那(おっと、いけないいけない。)
これじゃ、俺を救った恩人であり、彼女である人が悩んでるのを喜んでるみたいだ
もちろん、これは良い状態とは言えない
イヴちゃんは元気な姿で笑顔を浮かべているのがよく似合う
それに、外野ごときに彼女との関係を邪魔されるのも不愉快だ
環那「さて、と。」
俺はベッドから降りて、部屋を出た
そして、ゆっくりと階段を下りていく
その途中、リビングの方から、何かが焼ける音と良い匂いがした
俺はその方向を目指し、歩を進めた
環那「おはよう、イヴちゃん。」
イヴ「カンナさん!おはようございます!」
リビングに入り挨拶をすると、彼女は弾けんばかりの笑顔で挨拶を返してきた
やはり、彼女は綺麗だ
朝、最初に彼女と言葉を交わせるというのは、幸せなことだと思う
イヴ「予備の歯ブラシがあるので、ぜひ使ってください!」
環那「おっと、それはありがたい。君の前に出るのに、清潔でないのは、無礼と言うものだからね。」
イヴ「私は気にしないですが......」
環那「俺の心持の問題さ。」
俺はそう言い、リビングを出て、洗面所に向かった
ここはまるで天国だな
ただ、俺が居心地がいいと思える、変な天国だ
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洗面を済ませ、俺は卓についた
パンに目玉焼き、ウィンナー、サラダと、良い朝食だ
環那「いただくよ。」
イヴ「はい!」
俺は軽く手を合わせ、箸を持った
どれも、丁寧に作られているのが分かる
自分の為に彼女が少し気合いを入れたんだと思うと、すこぶる気分がいい
環那「__うん、美味しいね。」
イヴ「よかったです!でも、料理はカンナさんには敵いません。」
環那「俺のそれは大したものじゃないさ。俺には作れないからね。ある特定の人にとって、何よりも美味しく感じる物は。」
イヴ「!」
俺は確かに、味覚的に美味なものは作れる
ただ、それは決して難しいことではない
先人が作り出した完全なるバランスを再現すればいいだけだからね
でも......
環那「この朝食は、三ツ星レストランのディナーよりも美味しいよ。俺にとってはね。」
イヴ「そ、それは、褒めすぎです......///」
環那「大袈裟でもないよ。実際に、そう思ってるんだから。」
俺はそれぞれの料理を口に運んだ
どれも、彼女の気持ちというものが感じられた気がした
好意というのは、分かりやすいな
見抜こうとするまでもなく、向こうから教えてくれるんだから
環那「__ご馳走様。」
イヴ「お粗末様です!」
環那「美味しかったよ。とてもいい朝になった。......そのお礼と言っては何だけど。」
イヴ「?」
俺は軽く姿勢を正し、イヴちゃんの目を見た
すると彼女は頬を赤く染めながらも、目を合わせてる
良い子だ
環那「デートしよ。クリスマスの日。日程の確認は日菜ちゃんに聞いてるよ。」
イヴ「!(初めて、誘われました。)」
環那「どうする?」
イヴ「い、行きたいです!絶対に!」
環那「そっか。じゃあ、来る日、お迎えに上がろう。」
俺はそう言って、席を立った
そして、卓上にある2人分の食器を取った
環那「これを洗った後、今日はお暇するよ。」
イヴ「そ、そんな!私がしておきますよ!?」
環那「折角、作ってくれたんだ。洗い物位するよ。あと、何かしてほしいこととかある?」
イヴ「それは......」
俺がそう尋ねると、イヴちゃんは軽く俯いた
そんな様子で数秒が経ち
上目遣いでこっちを見た
イヴ「き、キスを、したいです......///」
環那「それはお応えできないな。」
イヴ「えぇ!?」
環那「だって__」
イヴ「!///」
俺は彼女の頬に手を当てた
手がひんやりしてたのか、少しビクッと震えていた
可愛らしいな
環那「より良いタイミングがあるんだから。今するのはもったいないでしょ?」
イヴ「は、はい......///」
環那「じゃあ、俺は洗いものして、帰るよ。」
俺はそう言って、キッチンの方に歩いた
さて、約束も取り付けたことだし、準備をしよう
手始めにすることは、向こうから来るし
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数分後、俺はイヴちゃんの家を出た
取り合えず、準備の第一段階を終わらせないと
さっきも気配感じたし、その辺に......
環那「__みーつけた。」
「ひっ......!」
近くの物陰にいた、1人の男
恐らくこいつは、ジャーナリストだ
パスパレは人気上昇中
揚げ足取るにはいい時期でしょ
環那「感心しないなー。気配駄々洩れ、身なりも汚い。何より......喧嘩を売る相手を見誤る。」
俺は目の前の男をにらみつけた
こういう時、手っ取り早いのは消すことだ
だが、俺はあまり推奨しない
足が付くのも嫌だし
だから......
環那「あまりお勧めしないよ。俺を付け回すのは。」
「あ、あ......」
環那「.......この件から手を引け。長生きしたいならね。」
「ひぃぃぃぃぃ!!!」
男は悲鳴を上げながら逃げて行った
カメラもメモ帳も携帯も回収済み
後はデータ確認して、交番にでも届けておこう
環那「邪魔するもんじゃないよ。人の恋路は。」
俺はそう呟いて、その場を後にした
さて、デートの準備をしないと
天使を満足させないと、ほんとに地獄に落とされてしまう