羽丘の元囚人   作:火の車

18 / 200
真意

 ”リサ”

 

リサ「__環那。」

 

 あの地震から1週間が経った

 

 結構大きな地震だったみたいで

 

 町には所々被害を受けた場所もあった

 

 勿論、Circleもその1つ

 

 でも、Roseliaのメンバーは全員無事

 

 友希那もかすり傷だけで済んだ

 

環那「あ、いらっしゃい。リサ。」

リサ「うん......」

 

 でも、環那だけは違う

 

 落ちて来た瓦礫から友希那を守って

 

 ......環那は、右腕を失った

 

環那「どうしたの?座りなよー。」

リサ「分かった......」

 

 完全に不幸な事故だった

 

 落ちて来た瓦礫の中に大きなものがあって

 

 それに環那の右腕が下敷きになって

 

 切断するしかなくなってしまった

 

 環那がそれを知ったのは意識が戻ってから

 

 でも、なぜか悲しそうな顔を見せなかった

 

リサ「環那、調子どう?」

環那「全く問題ないよー。すぐに動けるようになるってー。」

リサ「そっか、よかった。」

環那「ありがとうねー、毎日お見舞い来てくれて。」

リサ「いいよ。あたしが来たいだけだから。」

 

 環那はいつも通り笑みを浮かべている

 

 本当にいつも通り

 

 それはとても、重症の患者には見えない

 

リサ「お腹すいてない?りんご持ってきたよ。」

環那「あー、食べたいー。」

リサ「じゃあ切るから待っててね。」

環那「りょーかーい。」

 

 環那が緩い声でそう答え

 

 あたしは袋からリンゴを出し

 

 ゆっくり皮をむき始めた

 

 ”環那”

 

環那「いただきまーす。」

 

 俺はりんごが乗った皿をテーブルに置き左手にフォークを持った

 

 いやぁ、幼馴染が向いてくれたリンゴ

 

 果たして何割増しで美味しくなってるんだろ

 

 俺はそんな期待を抱きながらりんごを1つ口に入れた

 

環那「美味しいー。」

リサ「そっか、よかった。」

環那「リサが向いてくれたから何割増しにも美味しく感じるよー。」

 

 俺はそう言いながらりんごを口に運ぶ

 

 その間、ずっとリサから視線を感じる

 

 なんだか思いつめた顔をしてる気がする

 

リサ「......ねぇ、環那。」

環那「んー?」

 

 ちょうどりんごを食べ終えたころ

 

 リサが静かな声で話しかけて来た

 

 俺は使い終わったフォークを置き

 

 リサの方に顔を向けた

 

リサ「なんで、友希那を助けたの?」

環那「えー?それは、幼馴染だかr__」

リサ「あたしだって、幼馴染だよ......?」

環那「!」

 

 リサは悲しそうにそう言った

 

 俺はそれを聞いて息を飲んだ

 

 この雰囲気、いつものリサじゃない

 

 こんな悲しそうな顔、初めて見たかも

 

リサ「正直に言ってよ。あたしより、友希那を助けたかったって......」

環那「......っ。」

リサ「そうなんでしょ......?」

環那「......そうだよ。」

リサ「っ!」

 

 俺はリサの問いかけにそう答えた

 

 だって、事実だから

 

 俺はどんな状況でも友希那を助けに行った

 

 あの時、友希那とリサの立場が逆だったとしても

 

 自分が1番それを分かってる

 

環那「......俺は友希那を死なせたくなかった。だから、ああしたんだ。」

リサ「......」

環那「結果はこうなったけど、別に気にすることもないよ。今から左利きになればどうにでもなるさ。」

リサ「......そうじゃないじゃん......!」

環那「っ!」

 

 リサは語気を強めそう言ったかと思うと

 

 ベッドの上に乗って俺を押し倒した

 

 急な出来事で反応できず、俺はされるがままの状態になった

 

リサ「なんで、またあたしを蔑ろにするの!?」

環那「り、リサ......」

リサ「いつも、そうじゃん......中学の時だって、友希那へのいじめを止めるために1人で隣のクラスに乗り込んで......それであたしを捨てて捕まった......」

環那「......!」

 

 俺の胸元に何かの水滴が落ちて来た

 

 リサの涙だ

 

 大粒の涙が大きな瞳から滴り落ちてる

 

リサ「ちょっとはあたしを見てよ!!ちょっとは、あたしを好きになってよ......」

環那「......ごめん。」

リサ「っ......!!」

環那「俺に、友希那以上は考えられない。」

 

 俺は静かな声でそう言った

 

 リサには本当に悪いと思ってる

 

 けど、今言ったのは本当なんだ

 

リサ「なんで、なんでなの......?」

環那「......話そうか。」

 

 ”リサ”

 

 あたしは環那の上から降り

 

 取り合えず、布団とかを綺麗にした

 

 環那も体勢を戻して話せる体勢になり

 

 そして、ゆっくり口を開いた

 

環那「俺と友希那が出会ったのは実はリサより少し早いんだ。」

リサ「え?待って、それはおかしいよ。だって、公園で出会ったとき環那も友希那もお互いの事分かってなかったじゃん。」

環那「俺は覚えてたよ。でも、友希那は覚えててくれなかった。まぁ、いいんだけど。」

 

 環那は少し笑った

 

 あたしの記憶では、環那と出会ったのは幼稚園のいる最後の年

 

 いや、そのくらいなら忘れててもおかしくない?

 

環那「俺はね、4歳の時に祖父母の家に預けられたんだ。」

リサ「それは知ってる。でも、理由は......知らない。」

環那「理由は、男が欲しくなかったから。それだけだよ。」

リサ「え......?」

環那「バカみたいだよね。だったら生まなきゃいいのに、何故か俺は生まれたんだもん。」

 

 環那は自らをあざ笑うようにそう言った

 

 昔から疑問に思ってた

 

 なんで祖父母と住んでるのか

 

 その話は昔聞いたけど、理由ははぐらかされてた

 

 だから、初めて知った......

 

環那「その時の俺は不幸にも理解力があってね、祖父母が俺に無関心なことも分かって、流石に落ち込んだよ。男であることも生まれたことも後悔した。」

リサ「......」

環那「そんな風に俺は落ち込んで自分を呪う事で日々を食いつぶしてた。」

 

 環那のこんな顔、初めて見た

 

 今まで頑なに辛そうな顔は見せなかった

 

 そんな環那がこんなになってるなんて

 

環那「......そんな時だった。」

リサ「!」

環那「現れたんだ、俺の人生の1番が。」

 

 環那は左手の拳を握り込んだ

 

 その顔は嬉しそうに笑ってるようにも

 

 何かを渇望してるような顔にも見える

 

環那「その女の子は美しい銀髪をなびかせ、不思議そうな顔で俺の事を見ていた。きっと、1人公園で座ってるのがおかしかったんだろうね。けど、その子は俺の話を聞いてくれた......まぁ、理解してたかは別としてね。」

リサ「......じゃあ、その子が?」

環那「そう、友希那だよ。友希那は俺の話を聞くと明るい笑顔を浮かべ......歌ったんだ。」

 

 環那は純粋な笑顔を浮かべている

 

 こんな顔、初めて見た

 

 あたしがどんなに嬉しいと思う事でも、どこかつまらなそうに笑ってた

 

 けど、今はそんなのとは全然違う

 

環那「友希那は歌い終わると、俺に笑えって言ったんだ。それで俺は笑ったんだけどさ、友希那、なんて言ったと思う?」

リサ「分かんない。」

環那「変なのーって言ったんだ。きっと、笑顔が下手だったんだろうね。友希那はそれはもう大笑いしてた。」

リサ「そう、なんだ。」

環那「でも、そっちの方がいいとも言ってくれた。その時間は確かに俺は悲しみを忘れていて、その時を思い出せば全てがどうでもよくなった。親も祖父母も、何もかも有象無象にしか感じなくなった。」

 

 環那はそう言って窓の方を見てスッと目を閉じた

 

 その表情は凄く穏やか

 

 いつもの環那そのもの

 

環那「そして、2回目に会ったのがリサの記憶にあるのだよ。」

リサ「あたしと友希那が鬼ごっこをして、友希那が転んだときだね。」

環那「俺はその時、友希那の涙を見た。それで、もう2度と見たくないと思った。」

リサ「!」

環那「だから決めた。俺は友希那を幸せにしてみせると。例えそれで死ぬことになっても、そのことに一切の後悔はしない。腕を失ったことも、友希那に殴られて左目が見えなくなったこともどうだっていいのさ。友希那さえ幸せなら。」

リサ「......」

 

 環那が友希那に執着する理由が分かった

 

 きっと、環那にとってこれは大きな出来事で

 

 何物にも代えられない大切な思い出なんだ

 

リサ「......環那には、友希那しか写ってないの......?」

環那「!」

リサ「環那が友希那を特別に思ってるみたいに、あたしだって環那が特別なんだよ......?」

 

 あたしはそう言葉を零した

 

 環那の話を聞いて納得しない

 

 そんなあたしはきっとダメなんだ

 

リサ「環那みたいな大きな理由じゃない。けど、どうしようもないくらい特別で何にも代えられないんだよ......?」

環那「リサ......」

リサ「いっつも、我慢した。どんな約束をしてても友希那に何かあればそっちに行くし、遠足とかでも2人でお弁当食べたいのに友希那を呼ぶし、何かでペアを組む時も友希那が組めるのを待って絶対にあたしをすぐに選んでくれなかった。けど、あたしはずっと我慢した。これが環那のやりたいことだからって......」

 

 言葉が止まらない

 

 だって、ずっと悲しかったから

 

 あたしはいつも環那の中で2番目

 

 いつも上には友希那がいた

 

 それが、どんなに......

 

リサ「一回くらい、あたしを選んでよ......!」

環那「っ!!」

 

 ”環那”

 

 リサの心の叫び

 

 それ聞いて胸が痛くなった

 

 13年間、友希那以外を見ていなかった

 

 けど、決してリサを雑に扱う事はしてない

 

 そう今までは思っていた

 

 けど、実際は全く違った

 

環那(でも、それが分かってどうなんだ?)

 

 ずっと固執してきた

 

 それを今さら捨てるなんてできない

 

 俺はリサにどう言えばいいんだ......

 

リサ「......もう、良い。」

環那「__!」

リサ「ん......っ///」

 

 俺が考え込んでると

 

 リサは何か小さく呟き

 

 その瞬間、視界がリサの顔で一杯になった

 

リサ「はぁ、ん......チュ......///」

環那(な、なが......!)

 

 口をふさがれ息が続かない

 

 でも、リサは離そうとしない

 

 それどころかさらに深くキスしてくる

 

リサ「好きだよ、愛してるよ、環那......///」

環那「何を、してるの?」

 

 リサはまた俺のベッドに乗ってきた

 

 けど、今はさっきみたいな顔じゃなく

 

 恍惚としてかつどこか虚ろとしている

 

 そのリサは俺の服に手をかけてきて

 

 上半身はもう何も来てないのと同然になった

 

リサ「心が得られないなら、体だけでも......///いいよね?ひまりとシてるんだから///」

環那「!?(し、知ってたのか。)」

リサ「この時間だけはあたしだけを見て......?///」

 

 それからの事ははっきり覚えてる

 

 リサの気持ちも、何もかも分かった

 

 でも、やっぱり

 

 急に俺の気持ちは変えることは出来ない

 

 俺は、リサにどうしてあげればいいんだ

__________________

 

 ”病院の外”

 

 環那が入院する病院の前

 

 そこに1人立ち尽くす少女の姿があった

 

 その表情は影かかっていて見えずらい

 

紗夜「__湊さん?」

友希那「......?」

紗夜「どうしましたか?こんな所に来て。」

友希那「紗夜......!」

紗夜「え?」

 

 その時、病院に紙袋を持った紗夜が歩いてきた

 

 友希那はそれを見ると

 

 突然、紗夜に近づいて縋りついた

 

友希那「私、どうすればいいの......!」

紗夜「ど、どうしたんですか!?」

友希那「私、私......!」

紗夜「い、一旦落ち着いてください!静かな場所に行きましょう。そこでお話を聞きます。」

友希那「あ、ありがとう......」

 

 紗夜は友希那を引き連れその場を離れた

 

 その時の友希那の表情は大粒の涙を流して

 

 ひどく何かに怯えているようだった

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。