羽丘の元囚人   作:火の車

19 / 200
踏み出す歌姫

 入院してから9日が経った

 

 別にもう大丈夫なんだけど、病院はまだ退院させてくれない

 

 早く退院して元の生活に戻りたいな

 

 琴ちゃん、どうせ部屋とか散らかしてそうだし

 

環那(家に帰ったら掃除だねー__ん?)

 

 俺がそんな事を考えてると、病室のドアが叩かれた

 

 それを聞いて、俺は入室の許可を出した

 

 すると、ドアがゆっくり開きある人物が入ってきた

 

エマ「__かーな。」

ノア「笑いに来てやったぞ、ガキ。」

環那「あ、2人も来たんだ。」

 

 入ってきたのはエマとノア君だった

 

 2人はお見舞いとかしなさそうなのに

 

 俺も案外、人望ある方なんだねー

 

ノア「って、貴様、その腕は。」

環那「あはは、無くなっちゃったー。」

ノア「ちっ、だからエマの警告を聞けというんだ。」

エマ「いいよ、ノア。」

ノア「!」

 

 エマがそう言うとノア君は完全に黙った

 

 ノア君、この見た目でエマには従順って

 

 ......なんだか絵面が危ないね

 

エマ「かーな、可哀想。」

環那「そう?別に気にならないけど。」

ノア「利き腕だろう。嫌でも影響は出て来るぞ。」

環那「大丈夫。左利きになればいいだけだからね。」

 

 俺は笑いながらそう言った

 

 別に右利きが左利きになれない言われはない

 

 こういうのの問題はやるかやらないか

 

 つまり、気合の問題と言う事だね

 

エマ「期待以上。」

環那「え?」

エマ「かーなの執着心は私の想像を超えた。普通じゃない、最高の研究成果だよ。」

環那「そっか、それはよかったね(?)」

 

 エマは珍しく嬉しそうな顔をしてる

 

 ていうか、言葉選びが12歳じゃない

 

 いや、元々天才なのは知ってたけど

 

 あまりにも凡人の俺とは違う

 

エマ「家で初めて見た時から、ずっと期待してた。流石だよ。」

環那「家?」

エマ「あ、なんでもないよ。帰るよ、ノア。」

ノア「あぁ。」

環那「?」

 

 エマはそう言って俺に背中を向け歩き

 

 ノア君もそれに続いて行った

 

 気になることはあるけど、別にいいや

 

 俺にはどうでもいい事だし

 

エマ「......報酬を払おうか。」

環那「え?」

エマ「ふふっ、じゃあね。」

 

 エマは何かを言って出て行った

 

 何を言ってたんだろう

 

 少し遠いし声も小さいから聞こえなかった

 

環那「寝よーっと__」

ひまり「__南宮さーん!お見舞来ましたー!」

環那「わっ!」

巴「おい、病院の中だぞ?」

モカ「やっほー、かーくんー。」

つぐみ「だ、大丈夫ですか!?」

蘭「家も落ち着いたから来た......けど、ただ事じゃないみたいだね。」

 

 エマが去った後、入れ違いで5人が入ってきた

 

 いやー、本当に人望あるねー

 

 最初の事を考えれば上々の成果だ

 

ひまり「って、腕ぇ!?」

蘭「いや、言ってたじゃん。」

ひまり「だ、だだ大丈夫なんですか!?」

環那「全然大丈夫だよー。ザ、健康体ー。」

巴「いや軽いな。」

環那、モカ「あははー、それほどでもー。」

つぐみ「笑い事じゃないですよ!モカちゃんも!」

 

 なんだかおもしろいね

 

 変に重い空気出されるよりこっちの方がいいや

 

 気が滅入るのは勘弁してほしいし

 

蘭「ねぇ、環那。」

環那「ん?」

蘭「そこまでして湊さんを守るのに意味はあった?」

環那「!」

 

 蘭ちゃんは静かな声でそう尋ねて来た

 

 あー、俺と友希那のこと知ってたんだ

 

 まぁ、派手にやったし噂も出るか

 

環那「もちろんあったさ。」

蘭「!」

環那「何1つの後悔もない。むしろ、友希那を見殺しにした方が後悔してたさ。」

蘭「......そっ。」

環那(友希那、元気にしてるかな。)

 

 それからしばらく5人は病室にいて

 

 学校での話をしたり、トランプとかをしてた

 

 病院内は暇だから

 

 こういう時間を過ごせたのは凄く楽しかった

__________________

 

 ”友希那”

 

 分からなくなった

 

 病院で聞いた、南宮環那の真実で

 

 いや、あの日の行動からかもしれない

 

友希那(どうすれば、良いの......?)

 

 裏切られた、そう思ってた

 

 あの日、血に濡れた姿を見て

 

 もう優しい彼は帰ってこないと絶望した

 

 なのに......ずっと、彼は彼だった

 

 それなのに、私は......

 

友希那(腕だけじゃなく、左目の視力まで、奪ったというの......?)

 

 今になって、あの日の右手の感覚を思い出す

 

 あれで、壊れた......壊した

 

 あの日、彼は目から血が出てた

 

 あんなことをすれば、目に良くない事なんて分かる事だった

 

リサ『__友希那。』

友希那「っ!リ、リサ......」

リサ『少し、話さない?』

友希那「え、えぇ......」

 

 正直、怖い

 

 今のリサの怒りは想像できるけど出来ない

 

 もしかしたら、嫌われてるかもしれない

 

 そんな恐怖を抱きながらも

 

 罪の意識から私は窓を開けた

 

友希那「何か用かしら、リサ......」

リサ「すごいクマだけど、寝てないの?」

友希那「......えぇ。」

 

 リサはいたっていつも通り

 

 それがむしろ怖い

 

 何を考えてるのか分からない

 

友希那「リサは、怒っていないの......?」

リサ「!」

友希那「私のせいで......」

リサ「......怒ってるに決まってるでしょ。」

友希那「っ......!!」

 

 リサは語気を強めそう言った瞬間

 

 手を伸ばして私の胸倉を掴んできた

 

 これまでにない怒りの表情

 

 こんなリサ、見たことがない

 

リサ「環那がああなったのは全部友希那のせいなんだよ?」

友希那「っ!!」

リサ「それなのに環那は怒ることも、悲しむこともしないいで友希那だけを心配してる......!!」

 

 リサの手に力が込められる

 

 まるで怒りを表すかのように震え

 

 段々、私の首を絞めつけてくる

 

リサ「目を見えなくされて、あんなに酷いことも言われたのに、あたしが友希那は無事だよって言ったとき......環那はなんて言ったと思う?『よかった。ならなんでもいいや。』って言ったんだよ!?」

友希那「え......?」

リサ「どんなに、それが悔しかったと思う!?どんなに惨めだったと思う!?」

 

 リサは嘆くようにそう言った

 

 当然よね

 

 だって、リサはずっと彼に連れ添って

 

 私が何かした時はずっと怒ってたもの

 

リサ「あたし、友希那が憎いよ。今すぐにでもこのまま突き落としたい。」

友希那「......っ。」

リサ「なんで、あたしがずっと2番目でいないといけないの?あたしの方が環那のことを分かってるのに、あたしのほうが環那を支えてたはずだったのに......!!」

友希那「り、リサ......」

リサ「......でも、捨てられないの。」

 

 リサは小さな声でそう言い

 

 いきなり手を離した

 

 私は少しだけ息を上げながらリサの方を見あ

 

リサ「あの3人でいた時間をあたしは捨てられない。憎くても、友希那だって幼馴染だから嫌いになれないんだよ......!」

友希那「!!」

リサ「もう、環那は元通りにならない。けど、心だけなら、戻れるじゃん......」

友希那「ここ、ろ......」

 

 私はそう口にした

 

 心だけなら戻れる?

 

 そんなこと、ありえない

 

 私の罪は形として残ってる

 

 彼だって、もう......

 

リサ「環那は、待ってるよ。」

友希那「え......?」

リサ「きっと待ってる、友希那の事。」

友希那「ほ、本当に......?」

リサ「分からないけど、そうだと思う。」

 

 リサは私に肩に手を置いた

 

 そして、優しく微笑みかけて来た

 

 私はそれを見て目を見開いた

 

リサ「友希那はどうする?」

友希那「私も......出来るなら、昔みたいに環那と一緒に......」

リサ「なら、環那が退院してからゆっくり話しなよ。」

 

 私はそう言われ頷いた

 

 環那は、許してくれるの?

 

 この愚かな私の事と

 

 昔みたいに、笑ってくれるの......?

 

 本当に戻れるの......?

 

 もし戻れるなら、私はまた彼の事を__

__________________

 

 リサと話した日から5日後

 

 今日は環那が退院する日

 

 私は病院の環那の病衣室の前まで来た

 

 何か手伝えればいいと思ったけれど

 

 今までの態度の手前、入ることができない

 

環那『__ねぇ、琴ちゃん。』

友希那「!(か、環那!)」

 

 病室の前で立ち止まってると

 

 環那の声が聞こえて来た

 

 中には同居人の浪平先生がいるのか

 

 何かを話している

 

琴葉『はい、なんですか?』

環那『俺の監視期間ってもう終ってるんだよね?』

琴葉『えぇまぁ。でも、どうせ行く当てもなさそうですし家にはおいておいてあげますよ。』

環那『そのことで、言っておきたいことがあるんだ。』

友希那「?」

 

 声の調子ではよく分からない

 

 けれど、少しだけ真面目な感じがする

 

 私が聞き耳を立ててると

 

 環那は次の言葉を口にした

 

環那『__俺、学校辞めてこの町から出て行くよ。』

琴葉『え?』

友希那「え......?」

 

 その言葉を聞いて私は体の力が抜けた

 

 体が震えて周りの音が全て遠くに聞こる

 

 その時、私の頭の中は真っ白になった

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。