羽丘の元囚人   作:火の車

196 / 200
最終回:愛とは

 朝起きて最初に感じたのはやっべぇだった

 

 彼女4人いるってだけでも非現実的だったのに、まさか抱くことになるとは

 

 人生、何が起きるか分からないね

 

環那「......」

 

 寝ても覚めても、全員の感触が鮮明に思い出せる

 

 普段とは違う、あの乱れた表情......

 

 俺としては非常に好みだった

 

環那(改めて、覚悟決めないとな。)

 

 グっとこぶしを握る

 

 俺にはこの4人全員を幸せにする義務がある

 

 そのためには生半可な努力は許されない

 

環那(根本的な考え方を変えよう。)

 

 今までの俺は大切な人が幸せなら、そうするのが自分じゃなくてもいい

 

 そう思っていた

 

 けど、これからそれは通用しない

 

 俺だけの力で、4人全員を幸せにする必要がある

 

環那(でもまぁ、大丈夫か。)

 

 今の俺は何にも負けやしない

 

 降りかかる不都合も脅威も全部ぶっ潰せばいい

 

 そして、願わくば......

 

環那(何十年後、全員が幸せそうに笑ってくれていれば。俺の人生に意味はあったと言えるんだろう。)

 

 俺はそんなことを考えながら、ふと笑った

 

 ここから、4人がどういう風になっていくのか

 

 楽しみながら、使命を遂行するとしよう

__________________

 

 あれから1年と少し

 

 俺は高校を卒業してから、ある程度のリソースを仕事に割き

 

 さっさと改革を推し進めた

 

 本社はもちろん、支社も、全部の状態を改善する

 

 流石に少し疲れた

 

 けど、俺が見て回った感じ、社員が良い感じに働いてたし

 

 おおよそ、俺の役割は完遂されていると言ってもいいだろう

 

拓真「__社長。レポートの作成、終わりました。」

環那「預かるよ。じゃあ、このデータの分析をお願いね。」

拓真「分かりました。」

 

 拓真君は高校生になった

 

 それと同時に俺が与える課題と簡単な業務をやらせてる

 

 監視するために社長室に置いてね

 

環那「......ふむ。」

 

 拓真君のレポートに目を通す

 

 これには、実際に見た本社や支社で気づいたこと

 

 改善するべき部分などを書かせてる

 

 どこまで人と全体を見られるか

 

 これを通して、彼の成長を測ってる

 

環那「拓真君。」

拓真「は、はい。(もう読み終わったのか......?)」

環那「中々やるじゃん。合格点はあげてもいい。」

拓真「ほ、本当ですか!」

環那「でも、一つ、ダメ出しをするとしたらここ。」

 

 俺が指をさしたのが、本社の男性社員が最近、業務に身が入っていないように見える、と書かれた部分だ

 

 これは俺も把握してる

 

 ここで拓真君は何か深刻な理由があるのではないかと考察してる

 

 けど、これは間違いだ

 

環那「彼、もうすぐ結婚するからって浮かれてるだけだよ。」

拓真「えぇ!?」

環那「惜しいねぇ。いい異常と悪い異常の見極めも大切だよ?もっと観察すれば、彼の口角がいつもよりも数ミリ上がってる、机の上に彼女の写真があるくらいの情報は読み取れるよ。」

拓真(読み取れるかっ!!!)

環那「ま、これは非常に難しい。着実に成長してるんだ。ここで焦るようなミスは侵さないように。」

 

 あのころに比べれば、彼は幾分かマシになった

 

 技能は俺、身体に関してはノア君に鍛えられてる

 

 哲司君もあの一族の癌と離婚したみたいだし

 

 彼はこれから順当に成長していくだろう

 

メリ「拓真さん、コーヒーが入りました。」

拓真「あ、ありがとうございます!」

環那「あ、いたんだ。」

メリ「いたわ!......じゃなくて、えぇ、先刻より。」

環那「本性出てるじゃん。」

 

 笑いながら茶化す

 

 彼女もこの会社に入れた

 

 大学で遊ばせるより、ここで来てる方がマシと言う判断だ

 

 今の彼女は髪の色は明るめの茶髪で爪の長さも一般的に

 

 言葉遣いもマシになったし、頭もまぁ俺以外には本性表さないくらいには理性的になった

 

環那「頑張りなよー、将来の社長秘書。」

メリ「分かってます。」

環那「君たちの実力はまぁ、この会社の中堅くらい。(拓真君はちょっとだけ高いけど)けど、君たちに求められるのは圧倒的な実力だよ?」

拓真「分かってます。」

メリ「承知しています。」

 

 2人の表情が強張る

 

 まぁ、急ぐ必要はないけど、緊張感も必要だ

 

 もう少しプレッシャーかけとこ

 

環那「せいぜい、俺の期待を裏切らないようにね。」

拓真「っ!(本当にこの人......)」

メリ「......(怖い。)」

環那「じゃ、俺はそろそろ帰らせてもらうよ。」

 

 俺はそう言って、椅子から立ち上がった

 

 色々忙しいからね

 

 仕事ばっかりしてられない

 

拓真「お疲れ様です。」

メリ「本日もお疲れ様でした。」

環那「あぁ。あとは任せるよ。何かあれば連絡するように。」

 

 俺はそう言って社長室を出た

 

 まぁ、こっちに何も連絡は来てないから大丈夫だろうけど

 

 状況が状況だし、早く帰らないと

__________________

 

 30分ほど車を運転して、俺は広い駐車場に車を止めた

 

 世間一般的に豪邸と言われるその家に俺たちは住んでる

 

 なんでこんなところに住んでるかと言うと

 

 篤臣さんがテンション上がって買ったからだ

 

環那「__ただいまー。」

リサ「あ、おかえりー。」

燐子「おかえりなさい。」

琴葉「お仕事お疲れ様です。」

イヴ「おかえりなさい、カンナさん!」

 

 リビングに入ると、4人にそう声を掛けられる

 

 一緒に住むようになってもう1年は経つけど、みんな変わった

 

 どう変わったかって言うと

 

 一番は、みんなに抱っこされて眠ってる赤ちゃんとイヴちゃんの膨らんだお腹かな

 

環那「大丈夫?何か問題起きてない?」

琴葉「見ての通り大丈夫ですよ。この子たちもよく眠ってますし。」

環那「それならよかった。」

燐子「エマちゃんも手伝ってくれるし、大助かりだよ。」

リサ「ていうか、問題起きそうなのは環那の方だよ。夜泣きの時、積極的に起きてくれるから全然寝てないじゃん。それで仕事して......」

イヴ「そうです。私もお手伝いしたいのに、妊娠中だからと何もさせてくれませんし......」

 

 みんな、心配そうな目で俺を見てる

 

 まぁ、一切疲れないと言えば嘘になるけど

 

 自分の子どもなんだし

 

 みんなはお昼に家事育児をしてくれてる

 

 夜くらいゆっくり寝てもらわないとね

 

環那「大丈夫に決まってるじゃん。俺だよ?」

琴葉「妙な説得力がありますね。」

環那「みんなの疲れてやつれた顔なんて見たくないからね。俺のことは俺が上手く折り合いつけるよ。」

 

 俺はそう言いながら、イヴの方に歩み寄る

 

 イヴは今、妊娠中だ

 

 安定期とはいえ、何が起きるか分からない

 

 状態を見ておかないと、不安になる

 

環那「イヴ、調子はどう?」

イヴ「すっごく元気です!私も、この子も!」

環那「......うん、そうみたいだね。」

 

 見た感じ、体に異常は見られない

 

 まぁ、この家にはエマもいる

 

 早々、異常事態は起きないだろう

 

イヴ「見るだけではなくて、触ってみてください!」

環那「じゃあ、失礼して。」

イヴ「ふふっ、お父さんですよ!」

 

 イヴのお腹を撫でると、少し、動いたのを感じた

 

 もう3人の妊娠を見てるけど

 

 大変であり、幸せだと思う

 

イヴ「今、蹴りましたよ!」

環那「うん、そうだね。」

イヴ「この子も喜んでいますよ!お父さんに撫でてもらえて!」

環那「そうだといいな。」

 

リサ(ほんと、変わったなー。)

燐子(優しい笑顔、出来るようになったね......!)

琴葉(まさか彼が、こんなにいい父親になるなんて。出会ったころでは考えられませんでしたね。)

 

 イヴの変化には目を光らせておかないと

 

 何か違和感があれば即対応できるように

 

 準備はエマと協力してしてるし

 

リサ「ほらー、妊娠中のイヴも大事だけど。こっちにも環那の子どもいるんだよー。」

環那「分かってるよ。」

 

 リサにそう言われ、次は3人の方に行く

 

 みんな、すやすや眠ってる

 

 この子たちはよく寝る子供だ

 

 夜泣きも1人なら言うほど多くないし

 

リサ「ほら、(ゆき)~。パパだよ~。」

環那「寝かせてあげなよ。」

?「だぁ~......」

燐子「あ、起きた。」

??「あう~!」

琴葉「あ、こちらも。」

 

 少し話過ぎたのか、燐子と琴葉に抱かれてる赤ちゃんが目を覚ました

 

 2人は赤ちゃんの顔を覗き込んで、穏やかな笑みを浮かべている

 

燐子「(あい)ちゃん。パパだよ。」

琴葉「那乃葉(なのは)も。お父さんに挨拶して。」

逢「う~!」

那乃葉「あい~!」

環那「ただいま。お母さんの抱っこは心地いいかい?」

 

 俺はそう言いながら、2人を優しく撫でる

 

 もう首はすわってるけど、まだまだ心配になる

 

 ほんとに首すわってるのかって

 

リサ「自分の子どもに好かれてるね~。あたし達といるときより嬉しそうじゃん~。」

琴葉「本当に。最初にこの子たちが喋る言葉がパパになりそうで。」

燐子「嬉しいような、ママって言ってほしいような......」

環那「俺は後でもいいんだけどね。」

 

 2人の頬を人差し指で突いてみる

 

 うん、プニプニだ

 

 こうしてるだけで疲れ吹っ飛びそう

 

環那「もちろん、最初に呼ばれるのは嬉しいけど、この子たちが生れた時が一番幸せだったから。これ以上を望むのは贅沢ってものさ。」

琴葉「少し前までは、こんなことを言うなんて考えられませんでしたね。」

環那「みんなの夫で、この子たちの父親だからね。人間、少しは変わるさ。」

琴葉「私は愛してますよ。昔のあなたも、今のあなたも。」

環那「!」

 

 琴葉はそう言って、そっと手を添えてくる

 

 昔の俺を良い人間とは思わないけど

 

 でも、そうだな、あれは皆と出会った時の俺か

 

リサ「あたしも!環那のこと、ちゃんと愛してる!」

燐子「私も、愛してるよ......///ずっと......///」

イヴ「もちろん私もです!愛してます、カンナさん!」

環那「......」

 

 人を愛すことはあっても、愛されることは少なかった人生

 

 だから、愛されるのにはいまだ慣れない

 

 けど、一つ確かなのは、愛されるというのはいい気分だということだ

 

 特に、自分が愛する人たちからだと

 

環那「あぁ、俺も愛してるよ。リサ、燐子、琴葉、イヴ。」

リサ、燐子、琴葉、イヴ「うん!(はい!)」

 

 愛されなかったからこそ、愛を注げると思ってる

 

 4人の奥さんにも、子ども達にも

 

 今の俺が生れたのも、昔の境遇があったからこそ

 

 そう思えば、俺の幼少期も思ったほど悪いものではないのかもしれない

 

 いや、そう思えるのは皆のお陰なんだろう

 

 変な感じで始まったこの関係だけど、幸せだなぁって思う

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。