羽丘の元囚人   作:火の車

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EX2
ケジメ


 合宿の日から、環那君への気持ちが大きくなるのが止まらない

 

 あの日、私と環那君の心は確かにつながった

 

 お互いに好き同士だと思ってる

 

 でも、環那君は普通の人とは違う

 

 色んな能力も思考も私とは違う

 

リサ「ねぇねぇ、燐子!今度、環那誘って服でも買いに行こうよ!好みのリサーチもかねて!」

燐子「いいですね......!私も__っ......!!」

紗夜「白金さん?」

 

 バンドの練習の帰り、私は突如、吐き気に襲われました

 

 胃がむかむかして、気持ち悪いような感覚

 

 なんで、いきなり......?

 

あこ「だ、大丈夫!?」

リサ「え、えっと、あ、そこのトイレまで我慢できる!?」

燐子「は、い......」

 

 私は今井さんに手を引かれて、近くのトイレまで来ました

 

 そこからのことはあまり覚えていません

 

 ただ、気持ち悪いのが少しマシになったと思ったら、またすぐに気持ち悪くなりました

__________________

 

紗夜「__ただの体調不良......とは思えませんね。病院に行くべきでしょう。」

 

 少し落ち着くと、氷川さんにそう言われた

 

 確かに、これはなんだかおかしい

 

 こんな症状、産まれて初めてです

 

友希那「そうね。燐子は最近、色んなことがあったもの。体調を崩してもおかしくはないわ。」

リサ「一応、家まで送って行こうか?それで__」

エマ「__こんなところで何してるの?」

紗夜「エマさん?」

 

 公園のベンチで座ってると、落ち着いた声が聞こえた

 

 エマちゃんだ

 

 袋を持ってるから、スーパーの帰りかな?

 

エマ「燐子、顔色が悪い。どうしたの?」

あこ「なんか、急に気分が悪くなって......」

エマ「それ以外は?」

紗夜「ずっと、その状態が続いていて、今は少し落ち着いたようですが。」

エマ「なるほど、嘔吐と倦怠感......」

 

 エマちゃんが近づいてきて、私の方をじっと見てる

 

 そう言えば、お医者さんも出来るんだっけ

 

 もしかしたら、これの原因も分かるのかな?

 

エマ「......他には何かある?(検査してないから分からないけど、ウィルスの類ではないはず。)」

燐子「さっきから頭痛も......」

エマ「......まさか。」

 

 エマちゃんは何かを呟くと、袋を置いてどこかに行った

 

 みんな、困惑した様子で見送って

 

 それから十分くらいでエマちゃんは何かを持って帰って来た

 

エマ「__燐子。これを使ってみてほしい。使い方は私が教える。」

燐子「え、エマちゃん......?」

 

 私はエマちゃんに手を引かれ、またトイレに入った

 

 この数分後、私はひどく取り乱すことになる

 

 これは私にとって、あまりに想定外なことだったから

__________________

 

 “環那”

 

 俺は今日、エマに呼び出されてる

 

 何か重要な話があるらしい

 

 一体、何があったのか......

 

 色んな事を考えつつ、俺は目的地のファミレスに到着した

 

環那「お待たせ__って、燐子ちゃん?」

燐子「こんにちは、環那君......」

環那「うん。」

 

 席にはエマと燐子ちゃんが座っていた

 

 一体、何があったんだ?

 

エマ「お兄ちゃん、取り合えず座って。」

環那「うん。」

 

 エマにそう言われ、俺は席に着いた

 

 けど、そこから、少しの沈黙が生れた

 

 燐子ちゃんの方を見ると、迷いが見えた

 

 この時点で燐子ちゃんが関係しているというのが分かった

 

環那「要件はなに?何か問題でも起きた?」

エマ「問題になりかねない。お兄ちゃんにとっても、燐子にとっても。」

環那「......?(どういう意味だ。)」

 

 エマは昨日、家に帰ってきてから、何かを考えこんでた

 

 それがこれなのは間違いない

 

 けど、俺にも燐子ちゃんにも問題になりかねない

 

 それは、なんだ?

 

燐子「えっと、あのね、環那君......」

環那「何があったの?ゆっくり話して。」

燐子「......できちゃった......」

環那「できた......って?」

燐子「環那君との赤ちゃん......出来ちゃった......」

環那「っ......!」

 

 その瞬間、脳天から金槌でも振り落とされたような衝撃を受けた

 

 自分の感情が理解できない

 

 何を言えば良いのか分からない

 

環那「あの時......かな。」

燐子「多分.......」

環那「そうか......」

 

 想定外......は言い訳がましいか

 

 十分、想定できたことだ

 

燐子「......ごめんね。」

環那「!」

燐子「あの時、私が誘惑したから......ごめんね......」

環那「っ!!」

 

 燐子ちゃんが泣いている

 

 別に彼女だけが悪いわけでもないのに

 

環那「別に、燐子ちゃんだけの責任じゃないよ。」

燐子「環那君......?」

環那「受け入れたのは俺だし。それを気にするのは俺の役割。」

 

 正直、こうならないようには出来ただろう

 

 でも、あの時の俺はそうしなかった

 

 あれはある種、俺の意思だ

 

環那「責任は取るよ。」

燐子「それって、どういう意味.......?」

環那「.......うーん、少し待っていて欲しい。エマ、燐子ちゃん、どのくらい待たせて大丈夫?」

エマ「出来れば数日で済ませられれば。」

環那「うん、十分だ。燐子ちゃん、少し待ってて。そして、無理はしないで。」

燐子「うん。(何をする気だろう?)」

 

 俺は燐子ちゃんにそう言って、席を立った

 

 思ったよりも、早く時が来てしまった

 

 でも、よかったのかもしれない

 

 待たせてしまうくらいなら

__________________

 

 “燐子”

 

 あれから3日が経ちました

 

 私は体調は悪い中で体育祭の準備をしています

 

 環那君は多分、けじめをつけに行ってます

 

 私以外の環那君を愛した人たちに

 

 今井さんも、その一人です

 

リサ「大丈夫?燐子。」

燐子「だ、大丈夫です。今は落ち着いてます。」

リサ「そっか。」

 

 今日は体育祭の予行の日で、今は休憩時間です

 

 私の様子を見て、今井さんが連れて来てくれました

 

 でも......」

 

燐子「その、どうして、親切にしてくれるんですか......?」

リサ「え?」

燐子「私は、その、環那君と......」

リサ「そういうこと。」

 

 私がそう言うと、今井さんは納得したように頷きました

 

 そう、私は今井さん達を出し抜いたんです

 

 一緒に同じ人を好きになった、仲間だったのに......

 

リサ「3日前さ、いきなり環那に呼び出されたんだ。イヴと浪平先生も一緒に。」

燐子「!(あの後、すぐに?)」

リサ「それでさ、燐子の妊娠のことを聞いてさ。すごいショックだった。けど、環那の様子を見てたら、そうも言ってられなくなったんだ。」

燐子「環那君の、様子......?」

リサ「なんていうか、確固たる決意っていうの?「俺を憎んでくれてもいい。でも、燐子ちゃんだけは許してあげて欲しい。」って、そう言ってた。」

 

 今井さんの言葉を聞いて、驚く

 

 環那君、そんなことを......

 

 本当は2人で背負わなきゃいけないものなのに.......

 

リサ「それでさ、その日はあたし達大泣きしたんだけど、環那は何も言わず、ジッとあたし達の前にいた。まるで、あたし達の感情を全部、受け止めるみたいに。それでさ、思っちゃったよね。あぁ、本気なんだなって。」

 

 今井さんはふんわりと笑って、こっちを見た

 

 優しくて、慈悲深い瞳

 

 こんな目を向けられて、良いのかと思ってしまう

 

リサ「元々はあたし達が勝手に好きになっただけなのに、環那は勝手に重い十字架を背負ってしまう。それが嫌だから、みんな、祝福しようって思った。」

燐子「......はい。」

リサ「それに、条件はみんな同じだった。燐子は何も卑怯なことはしてない。だからさ......」

燐子「今井さん......?」

リサ「胸を張って、環那の隣にいて欲しいな。もう、独りぼっちの環那の姿は見たくないから。」

燐子「......!!」

 

 この人は本物だと思った

 

 環那君のことを思って、前に進もうとしてる

 

 私なら、どうだっただろう

 

 こんな風に、出来たのかな

 

リサ「環那は多分、今も傷を負ってると思う。だから、側にいてあげて。」

燐子「はい......私、自信ないけど、頑張ります......!」

リサ「うん!その意気!あ、子どもの顔はちゃんと見せてよ?」

燐子「はい......!」

 

 私は力強く頷きました

 

 今井さんの為にも、ウジウジしていられません

 

 私は私に出来ることをしないと

 

 環那君と、お腹の子の為にも

 

 

 

 

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