羽丘の元囚人   作:火の車

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復活

 ”リサ”

 

 あれから2日

 

 環那は2日も、学校に来なかった

 

 浪平先生に聞いたけど、家には帰って来てないみたい

 

 研究室とか言ってたけど、大丈夫かな......

 

紗夜「__湊さん、今井さん、練習に身が入ってませんよ?」

リサ「え?あ、ごめん......」

友希那「......ごめんなさい。」

 

 練習の途中、紗夜は機嫌が悪そうな声でそう言ってきた

 

 環那の事を気にしすぎて集中できてなかった

 

 珍しく友希那も言われてるって事は、やっぱり環那が心配なんだ

 

紗夜「どうせ、彼の事を心配してるんでしょうが、友達と言ってたでしょう?大丈夫ですよ。」

あこ「何があっても『友希那ー!』って言いながら帰って来そうですもんねー。」

紗夜「控えめに言って化け物ですからね。」

友希那「環那は化け物じゃないわよ!」

リサ(それは......否定できない。)

 

 って、そんな場合じゃない

 

 今は環那のことだよ

 

 そもそも、報酬って何のこと?

 

燐子「......」

あこ「りんりん、どうしたの?」

燐子「な、なんでもないよ。」

紗夜「もう練習しても仕方ないので終わりましょう。」

 

 紗夜は呆れたようにそう言った

 

 まぁ、友希那ですらこれだし

 

 流石に練習なんて出来るわけないか

 

紗夜「時間があるので、気になるなら探しに行くなりなんなりしなさい。(見つかるかは微妙ですが。)」

友希那「そ、そう!なら......!」

リサ「行ってくる!」

あこ「はやっ!?」

燐子「......」

 

 あたしと友希那はライブハウスを出ていった

 

 全く居場所の検討はつかないけど

 

 取り合えず、町中探し回ってみよう!

__________________

 

 ”環那”

 

『__お前はいらない子供だ。』

環那(......はぁ。)

 

 この言葉、何回くらい聞いたかな?

 

 俺が祖父母に家に預けられたのが4歳のとき

 

 なんなら、祖父母にも言われ続けて来たし

 

 合計すると......うん、分からないね

 

 あまりにも多すぎて数えてなかった

 

環那(てゆうか、いらないなら産まなきゃいいのに。バカだったのかな?)

 

 自我が芽生えてからいろいろ家の中は見たけど、女の子用の服しか用意してなかったし

 

 そもそも、前もって性別分かんなかったの?

 

 もしも、分かってなかったならただのバカ

 

 まぁ、俺の生みの親なんだけど

 

 そう考えたら、ちょっと悲しいね

 

 バカの子供って事になるし

 

環那(そもそも、あの2人から女の子は生まれたのかな?多分、またすぐに作ったんでしょ?)

 

 天罰なんてものがあるなら、きっと生まれてない

 

 きっと、顔面R指定レベルのブ男でも生まれてるだろう

 

 まぁ、そんな訳ないかな

 

 どうせ、3~4人くらい作ってたら1人くらい生まれてるよ

 

 単純な確率で言えば50%なんだし

 

環那(ていうか、何?この夢。気持ちわるっ。)

 

 さっきから腐った記憶が止めどなく入ってくる

 

 俺を見た時の両親のため息

 

 祖父母の残念そうな顔と何もしてないのに言われた俺への恨みつらみ

 

 そして、両方とも共通の俺に対する蔑むような視線

 

 それを思い出すと何だろ......気分が悪い

 

環那(まさか、俺がまだ人並みに恨みを持ってる?......って、そんな訳ないか、バカバカしい。)

 

 人に恨み?俺が?ありえないありえない

 

 俺のモットーは人に恨まれ、人を恨まず

 

 赤の他人はただの有象無象

 

 関わった人間はお友達

 

 リサは幼馴染で

 

 友希那は、俺の人生における神

 

 そう思い、今まで生きて来た

 

環那(じゃあ、何なんだろうね。)

 

 この寒気というか、気持ち悪い感じ

 

 なんか、変なんだよね

 

 存在そのものに嫌悪感を覚える物体が近くにあるみたいな

 

 本当に不愉快な感じ

 

環那(まぁ、いいや。気にしても仕方ない。)

 

 俺はそう思い、夢の中でまた目を閉じた

 

 夢の中で寝れば覚めるって聞いたし

 

 こうしてればいつかは起きるでしょ

 

 俺は暢気にそんな事を考えながら

 

 夢の中で寝るという前代未聞な行動に出た

__________________

 

環那(......ぁ。)

 

 瞼越しに光が入ってくる......

 

 そうだ、俺はエマの報酬を受け取ってたんだ

 

 それで、睡眠薬打たれてそのまま寝た

 

 どんなに強い薬使ったんだろう?

 

 まだ、五感がぼんやりとしてる

 

エマ「__ちゃ__るよ__」

環那「......?」

 

 耳からの情報がまだ完全に入って来ない

 

 けど、エマの声だというのは分かる

 

 段々と瞼も開いて来た

 

 手術用に置かれた照明が俺を明るく照らして

 

 目には何だか変な感じがある

 

 端的に言うと、鬱陶しい

 

環那「......んっ、今、何時......?」

エマ「あ、起きたんだ、かーな。」

環那「エマ......おはよ。」

エマ「おはよう。」

環那「それで、今はどういう状況?」

 

 やっと、意識が完全に覚醒して、自分の置かれてる状況が分かってきた

 

 ここは俺が手術を受けた部屋

 

 そして、手術用ベッドの上で俺は寝転んでる

 

 ......ただし、エマの膝枕で

 

 そんな事を思ってると、エマがゆっくり口を開いた

 

エマ「とある文献に、膝枕は好まれるって書いてた。」

環那「それは時と場合によるとか相手によるって言うことは書いてなかった?」

エマ「書いてなかった。」

環那「じゃあ、今後それは参考にしない方がいいよ。」

 

 俺はそう言いながら体を起こした

 

 流石に、小さい女の子に膝枕されるのは気が引ける

 

 ロリコンって言うあらぬ誤解を招きそう

 

 エマが何歳かなんて知らないんだけどね

 

環那「俺はどのくらい寝てたの?すごい怠いんだけど。」

エマ「2日。」

環那「2日かー、それは凄く寝たね__って、え?」

 

 俺はいつになく驚いた声を出した

 

 2日も寝てたの!?

 

 怠いわけだよ

 

 夢を見てるって事は眠りが浅いってことだし

 

 最悪の目覚めってこれのことだね

 

エマ「麻酔と睡眠薬が強すぎた。2日で起きたのは奇跡。」

環那「ねぇ、エマは俺を何日眠らせる気だった?」

エマ「分からない。」

環那「えぇ......(困惑)」

 

 まぁ、結果的に起きたからいいんだけど

 

 起きなかったら俺はどうなってたんだろう?

 

 もしかして、社会の闇に葬られてた?

 

 ......いや、考えないでおこう

 

エマ「そんな事より、どう?」

 

 エマは興味深そうにそう尋ねて来た

 

 相変わらず主語がない

 

 けど、この状況なら意味を理解するのは難しくない

 

 俺は少しだけ笑って、エマの方を見た

 

環那「うん、大丈夫。異常はないよ。」

エマ「ならいいね。私の研究成果の1つは完全に実用段階になった。」

環那「全く、恐れ入るよ。こんな事までできるなんて。」

エマ「趣味だから、医療は。」

 

 流石に天才

 

 言う事の規模が違う

 

 世の凡人はその趣味で大儲けできるんだけどね

 

 羨ましい限りだ

 

環那「ていうかこれ、違和感ないね。」

エマ「別にゴツゴツしたのでもよかったけど、日本じゃ難しい。」

環那「良かった、エマに普通の感覚があって本当に良かったよ。」

 

 俺はエマに手術された部位を見た

 

 本当に、恐ろしくも素晴らしい

 

 だって......

 

環那(俺の右腕、復活しちゃうんだしなぁ......)

 

 俺は新しい自分の右腕を見た

 

 一見すれば、元通りの腕

 

 だけど、実際は高度な機械なんだよね

 

 本当にどうなってるの?

 

環那「これ、普通に生活して大丈夫なんだよね?」

エマ「大丈夫。かーなは気にせず生活したらいい。そうすれば、私の研究成果はさらに証明される。」

 

 エマはいつも通りの無表情のままそう言う

 

 俺より5歳くらい年下のはずなんだけど

 

 なんだろう、この一流研究者みたいな雰囲気

 

 いや、実際にそうなんだけど

 

環那「そう言えばノア君は?」

エマ「ノアはかーなの同居人に接触してる。」

環那「あぁ、そう言う事。(だから、膝枕されてても殺されなかったんだ。)」

エマ「あ、かーながもういいなら帰っても良いよ。必要な調整はもう終らせてあるから。」

環那「はいはい。ありがと、エマ。」

 

 俺はそう言いながらベッドから降りた

 

 平衡感覚がいまいちだけど

 

 まぁ、家に帰るだけなら何の問題もないかな

 

環那「じゃあ、帰るよ、エマ。3か月......かは分からないけどまた来るよ。」

エマ「いつでも来て良いよ、お......」

環那「お?」

エマ「間違えた。なんでもない。」

環那「そう?」

 

 俺は首を傾げながら、エマの研究室を出た

 

 部屋を出る時、エマがジーッとこっちを見てたけど

 

 まぁ、いつもの奇行だろうね

 

 俺はそう思い、取り合えず、怒られるの覚悟して家に帰った

 

 

 

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