白金燐子は不思議な子だ
今日、また夕食を共にしてそう思った
俺は人に嫌われやすいと自負してる
そりゃあもう、第一印象は最悪以外聞かない
あの子は特に印象なんて最悪のはず
なのに、嫌うどころか友好的な態度を見せてる
環那(__なんなんだろう。)
欲しい言葉をくれる
一緒にいると楽しい
こんな感覚、友希那とリサ以外で初めてだ
いや、厳密に言えば違う
燐子ちゃんといる感覚は2人とは異なる
あの子の場合は形容しがたい、不思議な感覚だ
燐子『__み、南宮君?大丈夫ですか......?』
環那「燐子ちゃん?」
燐子『あの、お風呂に長く入っているので、のぼせてないかなって......』
環那「あー、大丈夫だよ。ごめんね、すぐに上がるよ。」
燐子『はい......』
俺がそう答えた後
お風呂場から燐子ちゃんが出て行った気配があった
そろそろ出ないと本当にのぼせそうだ
環那(答え、出かかってるんだけどなぁ。)
俺はそんな事を考え頭を押さえ
出かかった答えを考えながらお風呂を出た
__________________
お風呂から出た後、燐子ちゃんの部屋に来た
女の子の部屋に普通に入るのはおかしいんだけど
本人が良いって言うし、良いんだと思う
環那「__お邪魔しまーす。」
燐子「は、はい......!」
部屋に入って最初に目に入ったのは燐子ちゃん
白色の綺麗なパジャマを着て
座布団の上にちょこんと座って本を開いてる
この姿を可愛いかアンケートを取れば
大体、98%の人間はイエスと答えるだろう
燐子「あ、どうぞ......」
環那「ありがとう。」
燐子ちゃんは自分の隣に座布団を置いて
俺はそこに座らせてもらった
てゆうか、結構近い
燐子「あの、少しお話しませんか......?」
環那「いいよ。でも、何の話するの?」
燐子「えっと......南宮君の事が知りたいです......」
環那「......俺?」
俺の事を知りたい、か
普通なら色々な勘違いをするんだろうけど
今回に関しては雰囲気が少し違う
どうやら、真面目な話みたいだ
環那「そんなに知りたいことってあるかな?」
燐子「ずっと......南宮君が捕まった理由が気になってたんです。」
環那「!」
燐子ちゃんは真剣な声でそう言った
これには流石に驚いた
こんなこと聞かれたの初めてだ
でも、これは好都合かもしれない
環那(反応を見れば、燐子ちゃんがどういう子か分かるかも。)
燐子「あの......」
環那「話すよ。友希那以外に隠す必要もないし。」
燐子「!」
正直、この話をするのは気が進まない
色々なリスクを考えると広めるべきじゃないし
でも、燐子ちゃんなら大丈夫だろう
”回想”
友希那は誤解されやすい子だった
口下手で無意識に人を怒らせて、その弁明も出来ない
だから、誤解されることが多かった
友希那『うっ......っぅ......なんで、なんで......っ』
環那『......っ!(友希那......!)』
そのせいで、友希那はイジメられた
無視、私物の窃盗、女子からの軽い暴力など
数えればキリがないほど友希那は被害を受けた
でも、学校が気づけばどうにかしてくれる
そう思い、俺は隣のクラスの担任、春日春希のもとを訪ねた
春日『__イジメなんて、ありません。』
環那『は?冗談はやめてくださいよ。あんただって何回か見てるでしょ?』
春日『私は何も見てません。うちのクラスは平和そのものです。』
けど、奴は知らぬ存ぜぬ
このバカじゃ話にならない
そう思い、今度は校長の所に行った
だが、その時に気付いた
校長『春日先生、イジメについては全力で隠蔽しなさい。どこにも雇い手がなかった貴女を採用してあげた、その意味はお分かりですよね?』
春日『は、はい......』
校長『もう他の先生にも湊へのイジメは無視するよう通達してあります。あなたのやることは何も変わらない。ただ、尽くし、媚びればいい。』
春日『こ、校長先生、こんな所で__』
環那『......(許せない......!!)』
あの学校は腐ってた
学校のトップである校長ですらあの様
他の教師もあてにならないと分かった
環那(どうすればいい?)
学校は友希那を助けてくれない
あのクラスが自発的にイジメをやめるわけがない
だったら、もう俺がどうにかするしかない
二度と友希那に手を出せないようにする
そうするにはどうすればいい?
環那(全員、殺してしまえばいい。)
勿論、こんなのは俺の自己満足
友希那はこんなことを望んでない
そんな事は全部わかってた
けど、そう思った後の行動は早かった
リサの安全を確保するために別れて
教師に復讐するための情報収集
そして、あとは実行するための状況づくり
リサに頼んで、友希那を呼び出してクラスから遠ざけてもらった
環那『__お前らを殺す。』
『な、何だよお前!』
環那『友希那を苦しめた罪......その安い命だけで済むと思うなよ。』
それからした凄惨な事はよく覚えてる
男女関係なく思う存分殴って
こんなこと友希那は喜ぶだろうかと焦燥して
その後また、脚を縛りつけて引きずり回して
気絶してる奴を掃除道具入れに詰め
主犯格はあえて意識を残して恐怖を植え付けた
中には虫の息で『助けて......』と言う奴もいた
友希那『__か、環、那......?』
環那『......友希那。』
校長『こ、これは......!?』
そんな現場を見た友希那の顔は忘れられない
絶望したように死んだ目が見開いて
俺を恐れるように黒目は揺れていた
その時、もう、俺は友希那といられないと悟った
校長『南宮環那......!!』
警官『通報があったのはここ......か?』
警官2『な、なんだ、これは......!?』
警官『......君を放置はできない。署に来てもらう。』
環那『いいよ、別に。』
俺は大人しく手錠をつけられた
そして、警官に連れ出されるとき
小さな声で校長に話しかけた
環那『......俺は知ってるよ。春日春希とのことも、あんたが出した命令のことも。何もかも、全部。』
校長『っ!!?』
環那『お前らが友希那を傷つけた時......俺はいつでもこの惨状を作りにやって来る。今度は、教師共々。』
その言葉を最後に俺は捕まり
色々な判断の結果、少年院に入った
”回想終了”
環那「__と言うわけだよ。」
燐子「......」
一通り話し終えると燐子ちゃんはうつ向いた
横からじゃ表情は分からない
一体、どんな顔をしてるんだろう
燐子「......南宮君は......異常です......」
環那「......」
しばらく様子を見てると
燐子ちゃんは消え入りそうな声でそう言った
異常、か
まぁ、そう思われるのは当然か
燐子「南宮君のしたことは......犯罪です......捕まって当然です......」
環那「......そうだね。」
燐子「でも......」
環那「!」
燐子ちゃんの手に力が入る
握ってるパジャマに細かなしわが出来てる
声も、心なしか力がこもってる
燐子「大切な人を傷つけられれば、私だってそうしたいと思います......」
環那「えっ?」
俺は目を見開いた
燐子ちゃんからは想像もつかない言葉だ
この子なら、どんな理由はあっても暴力はダメ
そう言ってもおかしくないのに
燐子「今、南宮君に友希那さんがイジメられてた話を聞いて......許せないって思いました。イジメてた人たちのされた事を聞くとなんだか......心がスッとしたんです。」
環那「っ!?」
燐子「何と言うか......『やった。』って、そう思ったんです......」
そういう燐子ちゃんの表情は複雑そうだ
理由は分かってる
優しいから、そう思ってることを申し訳なく思ってるんだ
燐子「きっと誰だって、南宮君の立場なら同じような事を考えます......でも、異常だと私は思いました。」
環那「......」
燐子「でもそれは、私が南宮君みたいに出来ない人間だからです。」
環那「......!!」
燐子「出来るなら、きっと、私だってそうします。」
この子は、肯定してるのか?
誰一人としてしなかった
友希那やリサですらしなかった
なのに......
燐子「南宮君のしたことは正しくはないです......でも、私は肯定します......だって、南宮君は凄く優しい人だから。」
環那「優しい?俺が?いやいや、そんなことはないよ。」
燐子「あります。それは十分、証明してくれてます。」
燐子ちゃんは笑顔を向けてくれる
なんて、綺麗なんだろう
ただ茫然と見つめてしまう
燐子「初めて会った時もここに来てからも、南宮君はずっと優しいです......!だから、私は南宮君のことを信じます......!」
環那「__っ!!」
その言葉の後、心臓が激しく動いた
また、この感覚だ
ピースがはまったように嬉しくなって
満たされたような、そんな感覚だ
環那(......そうか。)
燐子「?(どうしたんだろう......?)
分かった気がする
燐子ちゃんがなんなのか
論理もなにもない
けど、色々な物を総括すると
こう言った方が辻褄が合う
環那(燐子ちゃんは運命の人......なのかもしれない。)
燐子「南宮君?」
環那「なんでもないよ。ありがとう、燐子ちゃん。なんだかスッキリしたよ。」
燐子「え、は、はい。よかったです。」
運命の人
もし、燐子ちゃんがそうだと言うなら
俺の醜い部分も、受け入れてくれるのかな?
......なんて