”琴葉”
私は今日、死のうと思う
理由は、もうなんだか疲れたから
南宮君が出て行って
その日から毎日、誰かから殺害予告が来る
その度、罪悪感に襲われて、疲れた
琴葉「......南宮君......」
彼にとって私は、利用価値のある人間
気に食わなければいつでも切れる
つまり、良くて使える道具、それだけ
そんな事、分かってる
琴葉(なら、なんで、こんなに悲しいんだろう......)
どうでもいいと言われた前
そこから、ずっと、私は悲しい
この感覚をなぜか私は知ってる
あれは確か......小学生の時だっけ?
琴葉(いつ、だったかな......)
あれは確か、5年生
私は暗殺者の家系に生まれて、普通に生きられなかった
だから、人並みに憧れて
隣の家の高校生に......
琴葉「......あ、そっか。」
分かった、この悲しみの理由
でも、もう、時すでに遅し
今さら出る答えでは決してない
ほんと、だから彼氏いない歴=年齢なんですよ
琴葉「もういいでしょう......=生涯と言うのも、潔くて。」
私はそう呟いて屋上の柵を超えた
もう少し生きて殺される
それは暗殺者としては正解
けど、どうせなら、普通の女性として死にたい
死に方くらい選ばせてくれたっていいでしょ
琴葉「......謝りませんよ。どうせ、謝っても聞かないんですから。変態軽薄男。」
最後、どうせいないし悪口もいいでしょう
どうせ、すぐ、いなくなるんですから
生憎、殺してきた身なので死に恐れはないんですよ
私は表情を変えないまま一歩を踏み出し
空に、その身を投げた
琴葉「さようなら__っ!!?」
環那「忌々しい......本当に忌々しい女だよ。」
そう思ったのに私の体は落下せず
上を見上げると言葉通りの忌々し気な表情を浮かべ
見るからに怒ってる......南宮君がいた
”環那”
浪平琴葉の死に場所が学校である確率
これが1番高い事なんて最初から分かってた
妹は俺に『見せてあげる。』と言った
つまりこの時点でパターンは絞られ
1つは学校で殺す
2つは俺が発見できる場所に死体または死体の一部を放置する
もしくは、殺した後で俺を呼び出す
だが、これは俺の中ですぐに省いた
その理由は主犯は俺の妹だから
環那(......甘いんだよ。)
俺と似た思考回路を持ってるとしたら
まず、憎い相手を楽には殺さない
徹底的に追い詰め、苦しめて殺す
そして、妹は俺より大分、性格が悪い
だから、自ら手を下さないことは分かってた
だったら後はどういった方法、場所で死ぬか
それはさっきの教師が喋ってくれた
『見た人がいる』、つまり学校にいる
学校で死ねる場所なんて限られる
だから、単純な浪平琴葉が思いつきそうな屋上へ最初に来た
琴葉「な、なんで、ここに......?」
環那「死なれちゃ困る事態になった。」
琴葉「っ!!」
俺はそう言って浪平琴葉を引っ張り上げた
てゆうか、普通に危なかった
下手したら俺も一緒に落ちてたし
環那「で、誰が変態軽薄男だって?」
琴葉「いひゃいでふ......」
環那「変態じゃないでしょ。全く。」
琴葉(軽薄は認めてる......)
さて、ここで1つ問題
俺は正直、かなり用心深いほうだ
妹も同じだとしたら?
俺が妹と同じ立場なら、この1手で終わらせる?
その答えは......否
俺は浪平琴葉の顔の側面を義手側で覆った
琴葉「っ!?」
環那「ほら、来ると思った。」
ガキン!!っと金属同士がぶつかる音がした
そして、直後に銃弾が転がった
ほら、あると思ったよ
保険の暗殺者
環那(見えない方から来た。位置が掴めなかったな。でも、この威力なら壁抜きはない。)
琴葉「!!」
俺は浪平琴葉を引っ張り建物内に入った
本当に妹とは思考が似てる
あぁ......仲良くなれなさそうだ
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建物の中に入って少しだけ走った
学校は窓が多い、つまり射線が通る
だから1番安全なのは窓がない、倉庫だ
環那(ここまで来れば、大丈夫かな。)
流石に侵入してくるとは考えずらい
もう、こっちの勝ちだ
狙えるものなら是非とも狙ってもらいたい
そんな神業、出来る人間がいるならね
琴葉「......なんで、助けたんですか。」
環那「言ったでしょ、死なれちゃ困る事態になったって。」
俺は頭を掻きながらそう答えた
理解できない気持ちは分かるよ
俺だって全く理解してないんだから
ほんと、忌々しい
浪平琴葉も......俺も
環那「......浪平琴葉は、居心地がいい。」
琴葉「え?」
環那「死なれちゃ困る事態なんて、そんなものだよ。」
そう、だから忌々しい
浪平琴葉を俺は割り切れなかった
今まで数多の人間を切り捨ててきた俺が、だ
こんなに甘くなかったんだけど
俺も段々、人間になってるのかな
琴葉「うぅ......グスッ......」
環那「!?」
琴葉「ほんきで、死のうとしてました......あの日から、罪悪感が凄くて......得意でもない料理して、南宮君に食べてもらったりして......それでも、罪悪感は消えなくて、殺害予告が何通も来て......もう辛かった......」
環那(料理......って、あのお弁当か。)
気になる言葉が多い
料理は多分、あの味が違うお弁当
それ以上に気になるのは殺害予告
なるほど、そうやって三重で精神を追い詰めたわけか
それで、自殺までかかる時間を短縮した
って、今は考えてる場合じゃないでしょ
環那「......ん。」
琴葉「っ!(抱かれてる......?)」
俺は琴ちゃんを抱き寄せた
もう、意地を張る事もないでしょ
浪平琴葉って呼ぶの、長い
そして何より、慣れない
環那「もし、生きるのが辛いなら、俺のために生きてよ。」
琴葉「っ......!?」
環那「浪平琴葉って言う居場所が欲しいから。でも、タダでとは言わない。」
そう言って、静かに琴ちゃんの涙を拭った
言質取ってもらわないといけないから
涙で見えませんとか、言われたくないし
環那「俺は元暗殺者のくせに弱い琴ちゃんの強さになる。それでいいでしょ?」
......なんだそれ
言っといてなんだけど、そう思う
こんなバカなこと言うの俺くらいだよ
こういうのは世間が認めるイケメンの役目だって
はぁ、柄じゃない
琴葉「......十分ですっ。」
環那「ははっ、くすぐったいよ。」
琴ちゃんは頭を擦り付けてくる
これじゃ、どっちが年上か分からないや
まぁ、これも俺と琴ちゃんっぽいでしょ
琴葉「__きです。」
環那「ん?なんて?発音してないから分からないんだけど。」
琴葉「今は何でもありません......///」
環那「そっか。じゃあ、なんでもないね。」
これで、仲直りって事でいいかな
運命の人に居場所、か
羽丘に戻ってきてからこういう事が良く起こる
......妹も、またその一つ
環那「琴ちゃん、俺はそろそろ行くよ。」
琴葉「あ、そうですか......」
環那「その泣き顔と落ちたお化粧、直してからおいで。琴ちゃん、俺がいる掃除場所の担当だから。」
琴葉「!......はい、南宮君!」
環那「元気があってよろしい。じゃあね、待ってるよ。」
琴葉「っ///」
俺は軽く笑顔を見せてから体育倉庫を出た
琴ちゃん、嬉しそうだし笑顔を作った甲斐があった
......何も考えないでいたら
ちょーっとだけ、まずい顔になっちゃうし
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倉庫を出て、人気の少ない校舎裏に来た
まだ、校内清掃は始まってない
俺は軽く周りを軽く確認し、携帯を取り出した
それと同時に携帯に着信が来た
環那「......来ると思ったよ。」
『失敗しちゃったよ。なんで助けたの?お兄ちゃん?』
環那「その理由は、君も持ってるはずだよ。」
『......!!』
環那「動揺したね。」
普段、俺の声に圧はない
そういうイメージを持たれるようにしてるから
まぁ、それでむしろ不気味がられるけど
けど、今回はさ......イメージとか言ってられない
環那「......琴ちゃんにこれ以上手出ししたら、俺は君を殺さなく行けなくなる。今、近くの建物に潜んでるスナイパーたちさ......退かせてくれない?」
『......分かった。この件からは手を引くよ。』
妹は不服そうにそう言った
愛されてるねー、俺
まぁ、そんな歪んだ愛は勘弁だけど
環那「あっ、そうそう。」
『?』
環那「俺、もう君の正体に気付いちゃってるんだよね。」
『!!』
環那「答え合わせも必要ない。そして......君、俺に喧嘩売ったよね?」
『......』
今、俺はきっと怒ってる
何をしたいか分からないけど、無性に何かに当たってしまいたい気分だ
こんな怒り、種類は違うけど、あの時以来かな
環那「やってやるよ。異常者同士の兄妹喧嘩。覚悟しろよ、妹。」
『......ふふっ。』
環那「!」
俺がそう言うと、妹は笑った
気が狂った?いや、そうじゃない
本当に嬉しそうなんだ
ボイスチェンジャー越しでも分かる
『やっと、殺意を持ってくれたね、お兄ちゃん。いいよ、しようか、兄妹喧嘩。』
環那「後悔するなよ。」
ドスの利いた声でそう言った後、電話を切った
そして、義手じゃない方の左手を握り込んだ
取り合えず、今は我慢しないと
この後、校内清掃でみんなと一緒だし
怒った顔とか、見られたくないし
環那「......もう少し隠れてから、戻ろう。」
俺は校舎の壁にもたれ掛かって座った
はぁ......どうしよ
あと10分そこらで、この表情戻せるかな