”リサ”
7月に突入した
もう夏って感じで太陽はギラギラ輝いてる
あたしは夏用に買った服を着て
いつも通り、バンドの練習に向かってる
リサ(今日はクッキーも焼いたし、皆に食べてもらおっと♪)
「__君、今井リサさんだね。」
リサ「え?」
家を出てすぐ、あたしはおじさんに話しかけられた
知らない人、と思った
けど、マジマジと見ると、見覚えがある事に気が付いて
それが誰かに気付いた瞬間、背筋が寒くなった
リサ(か、環那の、父親......!)
この人は南宮源蔵
父親が経営する大企業を継いで、結構優秀な人だって聞いてる
けど、正直、私はこの人が嫌い
......だって、環那を捨てた人だから
源蔵「少し質問しても良いか。」
リサ「は、はい。(なんだろ。)」
てか、なんでここにいるの?
聞いた話じゃ、環那が捕まってから引っ越したはず
自分の両親が近いって言っても、なんでいるの?
源蔵「あれが退所した事は聞いている。どこにいるか教えて欲しい。」
リサ「......?」
あたしは頭が真っ白になった
なんで、今さら環那のことを?
昔の環那の事を思い出して、イライラしてきた
リサ「......あたしは知りません。」
源蔵「嘘だな。君の家にあれが入って行くのを見たと父に聞いている。」
リサ「......っ。」
見られてたんだ、あれ
もっと警戒しとくべきだった
あたしのせいじゃん......
リサ「仮に知ってるとして......環那に何する気ですか?」
源蔵「君には関係ない。ただ情報だけを提供すればいい。」
リサ「大切な幼馴染なんで、理由も分からないまま売れないです。」
源蔵「......」
高圧的な目
けど、ここで屈したら駄目
この人に言ったら環那が何されるか分かんないし
源蔵「......妻が倒れた。」
リサ「はい?」
源蔵「病気で、それを治すにはドナーが必要だ。」
だから居場所を教えろ
そう言わんばかりの顔をしてる
腹が立った
この人、本気で言ってるの?
環那にあんな事したのに?なんで助けると思ってんの?
リサ「......助けないですよ、環那は。」
源蔵「関係ない。親の意思は子供の意思。血縁上の親の言う事は絶対だ。」
リサ「......っ!!」
ぶん殴ってやりたい
可能ならいっそ殺してしまいたい
何なのこの人?頭おかしいんじゃないの?
源蔵「さぁ、理由は言った。居場所を教えろ。」
リサ「......」
源蔵「あれが親の役に立つ。一度捕まったクズが挽回するチャンスだ。君がそれを奪うのは可哀想だと思わないかね?」
あ、ダメだ
自分が偉いって事を一切疑ってない
いや、実際偉いんだろうけど
それでも、この人の言ってることはおかしい
リサ(......ダメだ、逃げないと。)
環那「__おーい、リサー?」
リサ「え、か、環__」
源蔵「現れたか。」
環那「......って。」
ヤバい
そんな言葉が頭によぎった
この状況で環那の登場、目の前にはあの親
絶対に碌なことにならない
環那「リサ......」
リサ「か、環那!今すぐ逃げ__」
環那「まさか、その人、知り合い?」
リサ「え?」
源蔵「......」
環那は首を傾げながらそう言った
え、マジ?
これ本気で言ってんの?あんなに恨んでたのに?
源蔵「実の親の顔も忘れるとは、家計の恥だな。」
環那「あはは、そんなに怒らなくてもいいじゃん☆冗談だし!」
リサ(さ、流石に冗談だった......)
あたしは肩を落とした
まさか、この状況でこんな冗談言うなんて
図太いと言うか、おかしいと言うか
なんか拍子抜けしてしまう
環那「で、何の用で来たの?大嫌いな俺の所に。」
源蔵「お前の内臓を渡せ。」
環那「内臓......はないぞー、ってね☆」
源蔵「......」
リサ(嘘でしょ!?)
つ、つまらない
表情を見る限り、完全にふざけてる
環那のお父さんはずっと真顔でいる
環那「で、内臓って、なんでまた?」
リサ「......?」
源蔵「お前の母親が倒れた。お前には助ける義務がある。」
環那「ほうほう、なるほどなるほどー。」
環那はいつものテンションだ
いや、ちょっと煽ってるかも
まぁ、心底どうでもよく思ってるんだろうけど
環那「で、どこの臓器が必要なわけ?」
源蔵「腎臓だ。」
環那「へぇ。」
環那は生返事
けど、ちょっと違和感がある
不思議なくらいに怒ってない
むしろ、恐ろしいほど落ち着いてる
環那「適合してるかしてないか、それすら分かってないんでしょ?交渉はそれからでしょ。」
源蔵「......交渉?おかしなことを言うな。」
環那「そんな事言っていいの?別にこっちは逃げようと思えば逃げられるんだよ?」
源蔵「......今週の土曜日。ここの近くの大病院だ。逃げるなよ。」
環那のお父さんは高圧的な態度のままだ
人にものを頼む態度ではない
いやでも気になる
なんで環那は平気そうにしてるの?
環那「でさ、適合したら何してくれんの?」
源蔵「......」
環那「流石に、タダで臓器よこせとか、大企業の社長様がいう訳ないよね__!!」
リサ「環那!?」
環那が笑いながら話してると
南宮の祖父母の家の方から野球のボールが飛んできた
壁に当たった音的に本物
人に当たったら冗談じゃ済まない
環那「最近、話してる途中に物が良く飛んでくるねー。この前はエアガン、今日は野球のボールか......って。」
?「はぁ......はぁ......!」
環那「あれ、君は......」
リサ「あっ!」
ボールが飛んできた方を見ると
環那が中学に行った時に話してた男の子がいた
男の子は少し息が乱れてて
血走った眼で環那の事を睨んでる
源蔵「拓真君、どうかしたのかね。」
拓真「そこの、クソ男......!!」
環那「君は......あぁ、あの時のいい子か!久しぶりだね!」
拓真「笑ってんじゃないぞ!」
男の子は環那に近づいて捲し立てた
確か、環那が正義感の強い良い子だって言ってた
拓真「お前、本当にダメ人間だな!!」
環那「へぇ、どのあたりが?」
拓真「どのって、自分の母親を助けるのに見返りを求める辺りだよ!育ててもらった親を助けるなんて、お願いしてでもする事だろ!!」
環那(うわぁ、いい子だ。)
環那は感心したような表情を浮かべてる
本当に、この子はいい子だ
だからこそ、不憫に感じてしまう
環那「俺の事、どういう風に教えたの?」
源蔵「ありのまま、だ。」
環那「じゃ、自分の汚点は隠したんだね。」
拓真「あ?なんだお前!春日先生の事と言い......最低だぞ!」
環那「春日?(あぁ、アバズレか。)」
拓真「あの後、春日先生は教師を辞めた......何も悪い事をしてないのに......お前のせいで......!!!」
男の子は怒気を含んだ声でそう言う
可哀想だ
信じてるものすべてが間違ってる
環那「......仕方ない。」
拓真「!」
環那「検査代さえ支払ってくれるなら、検査は無償で受けるよ。」
源蔵「......いいだろう。条件を飲む。」
環那「じゃあ、契約成立だ」
源蔵「......」
リサ(え、ど、どういう事?)
環那のお父さんはそれだけ聞くと去って行った
やっぱり、違和感を感じる
今日の環那、おかしい
拓真「逃げんなよ、クズ男!!」
環那「逃げないよ、冴木拓真君。契約は絶対だからね。」
拓真「ふんっ!!」
男の子も去って行った
環那は軽く手を振りながら見送って
少しして、あたしの方を向いた
”環那”
環那「いやー、災難だったねー。」
俺は軽い声音でそう言った
朝からあれに絡まれるなんて
リサって本当に可哀想だね
リサ「か、環那?いいの?あんな約束しちゃって?」
環那「ん?そんなにヤバい約束した?」
リサ「だって、臓器の提供って......」
リサは言いずらそうに口をつぐんでる
あー、そういう事か
環那「あはは、リサは面白いね。」
リサ「面白くないよ!環那に何かあったら......」
環那「大丈夫大丈夫!」
リサ「!///」
俺はリサの頭を撫でた
サラサラで柔らかい感触
いい髪してるな~
環那「俺を信じて。」
リサ「い、いや、信じてないわけじゃないけど......///」
環那「じゃあ、練習行こっか。俺、迎えに来たんだ。」
リサ「う、うんっ///」
そんな会話の後、俺とリサは歩きだし
Roseliaの皆が待ってるCircleに向かった
それにしても、リサの将来心配だなー
いつか、詐欺に遭いそうで
まっ、そこは俺がどうにかするけど