土曜日
いつもなら別にどうでもいい曜日だけど今日は違う
俺は今日という日を楽しみにしてた
楽しみ過ぎて眠れなくなりそうだった
エマ「__お兄ちゃん。」
環那「あ、エマ。おはよう。」
エマ「うん、おはよう。」
早起きしてリビングのソファに座ってるとエマが歩いてきた
その手にはタブレット端末が握られている
頼んでたの、準備出来てたみたいだ
エマ「これでいい?お兄ちゃん。」
環那「......うん、完璧。ありがとう、エマ。」
エマ「ううん、お兄ちゃんの頼みだから......♡」
タブレットに表示された内容を確認し
その後にエマの頭を撫でた
エマは嬉しそうに目を細めてる
エマ「それにしても、滑稽。あんな仕打ちをしたお兄ちゃんを頼るなんて、無様そのもの。」
環那「いやいや、まだ早いよ。」
エマ「!」
そう、まだ我慢だ
まだあいつらをあざ笑うには早い
もっと上げられる
その時まで、もう少しの我慢だ
環那「もっといいものが見れるさ。きっとね。」
エマ「やっぱり、私も行きたい。」
環那「ダメだよ。エマが来たら計画が成立しない。」
エマ「でも......」
そう、全ては計画のもとに動いてる
今日の事もこの先の事も想定内
俺が出所した時点で始まってるんだ
環那「もう少し待ってて。」
エマ「お兄ちゃんが言うなら......♡」
環那「いい子だね。」
俺の計画が完遂する日もそう遠くない
今日はただの計画の過程に過ぎない
けど、美味しい部分であるのは間違いない
環那「そう言えば、冴木拓真って子を覚えてる?」
エマ「あぁ、いたかも、そんな奴。あの母親の姉の子供で、私の2つ上。」
環那「じゃあ、中3なんだね。」
いたかもって......本当に興味なしなんだね
まぁ、俺達とは正反対の人間だし、それもそうかな
環那「さて、そろそろ行こうかな。」
エマ「うん。気を付ける......こともないね。」
環那「あぁ、失敗はありえない。」
俺はそう言い、軽く手を振りながら家を出た
家を出た後もしばらくエマは見送っててくれて
いい気分のまま病院に向かえた
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ここから1番近い大病院
一定以上のお金を持ってないと入りずらい
なんとなくそんな雰囲気のある場所だ
俺もここに入ったのは初めてだ
環那「~♪」
源蔵「__来たか。」
環那「まぁ、待ち合わせ10分前に来たのにいてくれるなんて!待たせちゃった?」
俺はふざけて女みたいな口調でそう言った
すると、父親は顔をしかめ
冷たい視線を俺に向けて来た
源蔵「......早く行くぞ。」
環那「はいはい。冗談くらい笑って流してよ。」
俺は軽い口調でそう言いながら
父親の後ろについて病院に入って行った
さて、遊びの始まりだ
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病院の中は相変わらず薬品のにおい
忙しなく仕事をしてる看護婦
医療現場はいつでも忙しそうだ
環那「__おぉ。」
拓真「......なんだ、本当に来たのかよ。」
環那「久しぶりだね♪」
「あれが、南宮環那か。」
?「か、環那......」
環那「!」
病室に入ると何人かの親戚っぽい人
そして、ベッドの上
病気のせいか少し老け込んでるけど、面影がある
その姿を見て、俺は鼻で笑った
環那「ははっ、久し振り。元気そうで......何より♪」
?「......」
こいつは南宮椿姫
俺の実の母親で社長夫人
外見は老け込んでも優れてるのは分かる
まぁ、お飾りにはもってこいって感じ
椿姫「......これが、元気に見えてるのかしら。」
環那「あぁ、見えないさ。皮肉♪」
拓真「お前な......!」
おっと、拓真君が怒ってるな
本当に正義感強いよねー
何食べて育ったんだろ?
怪しいお薬とか?
柳「拓真、大人しくなさい。」
拓真「でも、母さん!」
柳「......もう少しの辛抱よ。」
今、何か耳打ちしてたな
何言ってるのかは知らないけど
てか、重要でもないか
源蔵「さっさと検査を受けろ。」
環那「分かってるって。そこの看護婦さんについて行けばいい?」
源蔵「あぁ。」
環那「はいはーい。」
俺はそう返事して看護婦さんの方に歩き
その途中、拓真君の耳元に口を寄せ
ゆっくり小声で話しかけた
環那「......教えてあげるよ。」
拓真「なに、なんのことだ__」
環那「じゃあ、行ってきまーす。」
さて、まずはドナーの検査を楽しもう
滅多に受けるものでもないし、いい経験だ
俺はそんな感じにルンルンで病室を出て行った
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検査は結構数が多いらしい
血液検査、尿検査、レントゲン、新機能検査とか
あげて行けばキリがない
中には時間のかかる検査もあって、割と冗談じゃないレベルの時間が過ぎてる
今は問診ってのをしてて
目の前には優しそうな顔の医師が座ってる
医師「__なるほど、分かりました。」
環那「ドナーって大変なんですねー。こんなに質問しないといけないなんて。」
医師「やはり、リスクのある手術です。こちらも慎重にしないといけない。」
この人、いい雰囲気を身に纏ってる
プロ、亀の甲より年の功って感じ
流石に高い病院で医師をしてるだけある
医師「君は、とても親孝行なんだね。」
環那「そうですかねー?」
医師「あぁ、勿論。折角の休日なのに家族のためにこんな時間を使える、心が優しい証拠だ。」
環那「ははっ、お上手ですねー。そんな事言われたら、臓器の1つくらい差し出しちゃいそー。」
医師「あはは、そんなに気にしなくてもいい。君はまだ若い。ドナーは本人の意思が優先されるし、怖いなら断るのも勇気だ。」
環那「!」
うん、本当にいい医師だ
物腰柔らかで、気遣いも十分
素晴らしい
環那「......じゃあ、素晴らしい医師であるあなたに1つ。」
医師「なにかな?」
環那「俺の母親がいる病室、誰か騒ぎを収める人を呼んでおいた方がいいですよ。」
医師「......?」
環那「病院に対する配慮ですよ。失礼しました。」
俺は良しに目配せしてから部屋を出て行った
部屋を出て行った後、医師が何か話してるのが聞こえた
やっぱり、理解のある人は素晴らしい
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検査を終え、病室に戻って来た
そこにはさっきいた親戚+違う親戚がいた
広い病室と言っても圧迫感が凄い
ちょっと呼び過ぎじゃないかなー?
環那「はい、検査の結果。」
源蔵「......」
俺は父さんに検査結果を渡した
結果は『適合』
流石に実の親子って所かな
その結果を受け、周りの親戚は声を上げ始めた
「や、やった!」
「これで椿姫さんは助かる!」
「良かったわ!」
椿姫「えぇ......!自慢の息子です......!」
環那「......」
皆、類を見ないほどいい笑顔をしてる
『勿論提供してくれる。』
そんな言葉が何となく浮き出て見える
あー、どうしよう......お腹痛い
笑いが、笑いが漏れる......!
環那「......クフフ。」
親戚一同「!!」
環那「あ、いっけなーい☆笑っちゃった☆」
俺が笑いを漏らすと、親戚全員こっちを見て来た
笑いすぎて目尻に涙が溜まってる
それを拭い、俺は親戚の方に向き直した
環那「契約はここまでね、じゃ。」
椿姫「え......?」
そう言い放つと、多種多様な反応を見せた
驚きで震える奴、困惑してる奴、状況が掴めてない奴
そして、怒りに震えてる奴
「ど、どういう事だ!」
環那「だから、そこの父さんとの契約は検査を受けて満了したんだ。もうここに居る理由はないよね!」
源蔵「......そう言う事か。」
環那「嘘はついてないでしょ?検査『は』無償で受けるって言っただけだし。」
こうなれば俺の優位は動かない
あの契約至上主義の社長にとって契約は絶対
たとえ口約束でも、それは適用される
まぁ、人はそれを融通が利かないって言うんだろうけど
「て、適合したら提供するのが筋だろう!」
「そうよ!しかも相手は母親でしょ!?」
「恩を返すときでしょ!」
環那「恩?不思議な事を言うね。」
「は?」
環那「あんた達が1番分かってるんじゃないのー?」
そう言うと、全員ハッとした表情をした
それはそうだ
だって、4歳から誰も俺に会った事ないもんね
恩なんて無いのは全員分かってることだ
......1人を除いて
拓真「この野郎!」
環那「わお、すごいパンチー。」
柳「拓真!?」
俺の目の前をすごいパンチが通過した
風を切り裂き、地を割る......程でもない
けど、結構速いし痛そうだ
環那「ねぇ~、空手をやってる子がそんな事しても良いの~?」
拓真「っ!な、なんで知ってる!」
環那「君の事は調べさせてもらったよ。文武両道で学校では生徒会長、教師からの評価も高く、生徒人気も高いらしいね。」
これはあのおじいちゃんから聞いた
中々使える情報源だった
これからも有効に使ってやろっと
環那「それに、春日春希のセ〇レでしょ?」
拓真「!?」
柳「え......?」
拓真「そ、そんなのじゃない!」
拓真君は大声でそう言った
もちろん、こんな事は知ってる
あーあ、単細胞は楽だなー
発言を引き出すのが簡単だ
拓真「先生とは、真剣に付き合ってるんだ!!」
柳「た、拓真......?」
環那「あぁ、知ってるよ。ラブラブだったもんねー。」
拓真「っ!(しまった!!)」
頭脳明晰なのに......
まっ、所詮は勉強だけの人間なんでしょ
頭の使い方をちゃんと学んでない
環那「君の事だし『僕が先生の事を守ります!』とか言ってたんでしょ?」
拓真「......!」
柳「ほ、本当なの......?」
環那「ほら、証拠。それはタダであげるよー。」
俺は準備してた写真を渡した
そこにはもうラブラブな2人の姿が写ってる
なんでこんなの持ってるかと言うと、盗撮してた生徒がいて、貰ってきた
柳「う、嘘......」
環那「年上趣味は否定する気はないけど......女の趣味は悪いね。」
って、冗談はこの辺にしとこ
こんな遊びには何の意味もないし
軽く教育でもしてやろ
環那「ねぇ、君は春日の正体を知ってる?」
拓真「は......?」
環那「教えてあげようか?今でも関係を続けてる君には知る権利がある。」
俺は朝に貰ったタブレット端末にある画像を表示
それを拓真君の前に出した
拓真君は見る事をためらって目を背けてる
けど、数秒して、意を決したように画面を見た
拓真「っ!!?」
すると、拓真君は一気に顔を青くした
俺が映したのは校長と春日の行為中の画像
それを見せたまま、話を始めた
環那「俺の幼馴染のイジメを揉み消すために親以上に年齢が離れたおじいちゃんに股を開いたんだ。つまり、君の春日先生はおじいちゃんの中古品なんだよ。かわいそ。」
拓真「イジメを、揉み消す......?」
環那「......まぁ、そういう反応するよねぇ。」
拓真君は小学生の時にイジメられてたらしい
結局、自然消滅で解決したらしいけど
自分の好きな人がそんな事してたらショックだろうね
拓真「そ、そんな、ありえない......」
環那「証拠はここにあるよ。」
拓真「っ!」
俺は拓真君のポケットに写真を入れた
これはさっきの画像だ
使い道は、本人次第
問い詰めるもよし、他の用途も良しだ
環那「いらないならいいよ?前にも言ったように、自分の信じたいものを信じればいい。」
拓真「......」
環那「そう言った絶望や後悔が、君を少しずつ大人にしてくれる。」
拓真「......!!」
柳「拓真!」
拓真君は走って病室を出て行った
彼はとてもいい子だ
だから、これから絶対に絶望する
泣き叫んで、声も枯れて、人を信じられなくなる
まっ、俺はあの子が嫌いだしいいんだけど
柳「な、なんで、こんな事に......」
環那「そんな事はどうでもいい。じゃ、俺も用が済んだし帰るねー。」
源蔵「......待て。」
環那「だよねー。」
部屋を出て行こうとすると父さんに止められた
まぁ、逃がしたくはないよねー
契約が切れたら更新するまで
利用価値のあるものは利用する精神だろうね
源蔵「契約を更新する。お前は臓器を提供しろ。」
椿姫「そうよ......母を助けなさい。生まれた価値をつけてあげる。」
「そうだ!」
「望まれてない子供だろ!」
「今更惜しむ命でもないくせに!」
色々言われてるなー
流石、自称天才家系
命に対する差別意識がすごーい
こういうのを選民思想って言うんだね
環那「皆、おかしなこと言うね?」
「どういうことだ?」
環那「腎臓の移植、これは確かにリスクはある。けど、確実に死ぬわけじゃない。」
源蔵「......!」
環那「なんで、命についての話が多いのかな?」
俺は笑いながらそう質問した
親戚全員、焦ったような表情を浮かべてる
「そ、それは、なぁ?」
源蔵「......お前が知る必要はない。さっさと同意書を書け。」
環那「やーだね、それ、心臓移植でしょ?」
源蔵、椿姫「......!!」
親戚一同「!!」
そう言うと、全員が凍り付いた
バレない、とでも思ってたのかな?
そんなの普通にあり得ないんだけど
環那「心臓ドナーの条件は脳死判定された健康な心臓。大方、体よく俺を処分してババアも回復でばんざーい!って感じでしょ?」
椿姫「ば、ババア......!?」
環那「浅いんだよ、思考が。天才家系なんだろ?もっと上手くやれよ。」
あー、演技するの疲れた
父さんとか母さんとか、内心で呼ぶのもキツかった
......楽しい、気持ちい、清々しい気分だ
源蔵「書け。親の意思は子の意思、お前に拒否権はない。」
椿姫「そうよ。あなたなんて死んだほうがいい人間なの。せめて私の役に立って死んで頂戴。」
「産んでもらったんだ、大人しく提供しなさい。」
「喜ぶべきことよ?クズが心臓を渡すだけで親を助けたって言う名誉を貰えるんだから。」
親も親戚も口々にそう言ってくる
あー、うるさいなー
どんなに唯我独尊な連中なんだか......
まぁ、今はそれに感謝してるけど
環那「......クフフ。」
源蔵「......何がおかしい。」
環那「いやー......こんな簡単にそんな言葉を吐いてくれるなんてね。」
源蔵「......!」
俺はポケットから携帯を出した
その画面には録音アプリが表示されており
それを見て全員、今の状況を理解したらしい
環那「クフ、あはは!馬鹿だねぇ!学歴自慢の家系が!」
あ、学歴しかないのか
そんな言葉を口走りそうになったけど
逆上されたら面倒なので我慢我慢
環那「知ってる~?ドナーって兄弟でも4分の1、それ意外だと数百~数万分の1なんだって~。低いね~。」
源蔵「......お前が提供すれば済む話だ。」
環那「なんでですか~?俺はそんな事のために来たんじゃないんですよ~。」
そう言った後、俺はババアを指さした
さぁ、そろそろお察しだろ
だったら、もう攻めていこうかな
環那「俺はねぇ、死ぬ前の無様な姿を見に来たんだよ!あはは、ざまぁないねぇ!無様だねぇ!」
源蔵「貴様......!」
環那「手を出すならいいけど、相手を考えた方がいいよー?やろうと思えば、あんたの会社を潰せる証拠をメディアや警察にでも流せるんだよー?」
俺はタブレットと携帯をチラつかせる
この中にはさっきのこいつらの発言
それに加え、昔の俺への虐待の証拠も入ってる
仮にこれを壊されても別端末に保存してる
つまり、俺の優位はほぼ動くことはない
椿姫「う、うぅ......!!」
環那「残念だったねぇ、少しでも恩を売ってればよかったのに。」
柳「つ、椿姫......な、なんでこんなことに......」
あー、楽しい
ババアの命は俺の手のひらの上
いや、もう地面に放り捨てて足蹴にしてる
環那「残りの余生、精々自分の行いを振り返りながら死ねば~?まっ、どっちにしろ行くのは地獄だから。」
俺はそう言ってドアの方に歩いた
もうここに用はない
いやー、馬鹿の相手は疲れるねぇ
「この、異常者!」
「お前は人間じゃない!死ね!」
環那「クフフ、俺がいつ自分を人間って自称した?」
「は......?」
環那「人の心なんてとっくの昔に捨てた。残念ながら、欠落してるんだよねぇ!だから俺は犯罪者なんだよぉ!」
俺はそれだけ言い残し病室を出た
さぁ、これで1人はほぼ死んだ
もう満足だ
家に帰って琴ちゃんとエマにご飯を作ろう
今日は、いつもより美味しく食べられそうだ