羽丘の元囚人   作:火の車

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脱却

 朝、俺はベッドの上で目を覚ました

 

 琴ちゃんの家のじゃない

 

 けど、何故か妙に親しみがある

 

燐子「すぅ、すぅ......」

環那「......?(ん???)」

 

 横を見ると、何故か燐子ちゃんが眠っていた

 

 良く周りを見るとここは燐子ちゃんの部屋で

 

 まぁ、何日か止めてもらったし親しみもあるか

 

 ......なんて、そんな問題じゃない

 

環那(まず状況整理だ。)

 

 俺の横には眠ってる燐子ちゃん

 

 服装は昨日のままで浴衣は少し着崩れてる

 

 けど、そういう行為をした形跡はない

 

 そして、俺も昨晩の記憶がない

 

 つまり、分からないって事だ

 

環那「(取り合えず起こそう。)り、燐子ちゃーん?朝だよー?」

燐子「んぅ......南宮君......?」

環那「い、今の状況、分かるかなー?」

燐子「......」

 

 燐子ちゃんは上半身を起こし

 

 周りの状況を確認し始めた

 

 ”燐子”

 

 朝起きると、南宮君が隣にいた

 

 一瞬、まさかと思った

 

 けど、聞いたことがあるような体の状態じゃない

 

 だから、それは大丈夫だって分かった

 

燐子「!?///」

環那「朝起きたらこうなってたんだけど、何かわかるかな?」

燐子「え、えっと......///」

 

 私は必死で昨日の事を思い出した

 

 すると、寝ぼけた頭が段々と覚醒してきて

 

 それを思い出すことが出来た

 

燐子「......あっ。」

環那「何か思い出した?」

燐子「そう言えば......」

 

 私は昨日会った事を話した

 

 あれは、短冊を笹の葉に括り付けた後

 

 折角だから何かしようってなって

 

 それでその時に私がNFOのくじ引きの屋台を見つけて

 

 当たりが出ない事が南宮君の気に障ったみたいで

 

 それで確率の計算を店主に叩きつけて、クジを全部買い取るって言ったら店主が逃げて行って

 

 詐欺犯を捕まえたお礼にって飲み物を貰って

 

 それを飲んだ途端に南宮君の様子がおかしくなり

 

 取り合えず、私の家に運んで、それで......

 

燐子「南宮君がその、変な雰囲気になって......私が目を閉じたら寝ちゃって......///」

環那「変な飲み物?__っ!!」

燐子「南宮君!?」

 

 突然、南宮君が頭を押さえた

 

 それに、なんだか嗅いだことのある変な匂いがする

 

 あれ、このにおいって......

 

環那「思い出した......あの飲み物、お酒みたいだ。」

燐子「えぇ......!?///」

環那「なるほど、だからいつもより頭が回らないんだ。アルコールの効果は絶大だ。」

燐子「れ、冷静、だね......」

環那「焦ることは何もなかったしね。燐子ちゃんに何もなくてよかった。」

 

 安心したように南宮君はそう言った

 

 やっぱり、優しいな

 

 自分の事は置いておいて私の心配をしてくれてる

 

環那「それにしても、悪かったね。わざわざ面倒見てくれたみたいで。」

燐子「大丈夫だよ......///」

環那「このことのお礼はまた改めてするよ。」

燐子「そ、そんな、この程度の事で///」

環那「いや、俺は凄く助かった。何か、欲しい物でも考えておいて。」

 

 南宮君はそう言うとベッドから出て

 

 頭を働かせたいのか少し叩いてる

 

 そして、少ししてこっちを向いてきた

 

環那「そう言えば、今日の放課後は勉強会だね。一旦帰ってから学校行かないと。」

燐子「あ、そうですね......時間は__え......?」

環那「ん?__あっ。」

 

 私が時計を見ると、針は9時を指していた

 

 それを見て、絶句した

 

 遅刻どころか1限目にも間に合わない

 

 あ、あれ?なんで?

 

環那「うーん......これは所謂、ヤバいってやつだね。」

燐子「ひゃぁぁぁ!!」

 

 私は慌てて制服の所に走った

 

 マズい、早く用意して行かないと

 

 そう思い、自分の服に手をかけた

 

環那「燐子ちゃん!?まだ脱いじゃ駄目だめ!」

燐子「きゃあ!///」

環那「ご、ごめん!出て行くよ!また、放課後に会おう!」

燐子「は、はい!///また......///」

 

 南宮君はそうして部屋を出て行き

 

 私は服を脱いで制服に着替え

 

 遅刻が確定してる学校まで走って行った

__________________

 

 ”環那”

 

 今日の学校は遅刻確定

 

 携帯を見たらリサから結構な数の連絡が来てる

 

 いやー、何かやらかした気分だ

 

環那(『燐子と何かあったの!?』かぁ、何もなかったけど、状況を考えれば疑うよねぇ。)

 

 弁明が大変そうだ

 

 放課後、燐子ちゃんに手伝ってもらおう

 

 て言うか、学校に今から行くのかー

 

 エマの様子見ないとだし、早く行かないと

 

環那「今日も大変そうだな__!」

「ブブーッ!!!」

環那(突っ込んできた!?)

 

 道を歩いてると、1台の車が突っ込んできた

 

 俺はそれを思いっきり飛びのいて回避

 

 すると、黒塗りの少し高そうな車は民家の塀に衝突

 

 車からは煙が上がり大きく破損した

 

環那「無差別な轢き逃げ犯......って感じもしないな。」

社員「う、うわぁぁぁ!!!ごめんなさいぃぃぃ!!!」

環那「ん?」

社員「悪気はなかったんですぅぅぅ!!!」

 

 破損した車から出て来たのはスーツを着た女性

 

 推定20代前半、社会人になって日が浅いように見える

 

 そんな人がなんで......って、あ

 

環那(あー......そういう事か。)

 

 この車、よく見たら覚えがある

 

 これはとある会社の社用の車

 

 はい、これ以上は言うまでもないね

 

環那「脅されてる、のは確実ですよね?」

社員「分かってくれるんですか......?」

環那「まぁ、多分、あなたを脅した奴の子供ですからね。」

社員「えぇ!?」

 

 社員さんは驚いた声を出した

 

 この人、メチャクチャに被害者だな

 

 可哀想に......

 

環那「でも大丈夫。」

社員「!」

環那(これでよし、かな。)

 

 俺はドライブレコーダーを切り

 

 他の盗聴機器がないかを確認した

 

 けど、それと思われるものは何もなかった

 

 甘いなぁ

 

環那「一応、ボディチェックもさせてください。」

社員「は、はい。」

 

 と言っても、触ったらセクハラ

 

 全てのポケットの中、鞄

 

 髪飾り、ネクタイピン

 

 それら全てをチェックした

 

 けど結局、盗聴機器はなかった

 

環那「じゃあ、事情を教えてください。まず、お名前を。」

結実「私は芹澤結実(ゆうみ)です......株式会社Palaceの社員です。」

環那「やっぱりねー。」

 

 この会社は今はあのジジイの会社

 

 世間では割と名前が知られてる大企業

 

 平均年収もそこそこ良くて人気の会社

 

 ただし、学歴審査で高学歴じゃなければ弾かれる

 

 まぁ、旧態依然どころじゃない制度を取ってる

 

環那「で、なんて脅されてここに来たんですか?」

結実「......えっと、言わないと駄目ですか?」

環那「大丈夫、他言はしませんよ。」

結実「うぅ......」

 

 結実さんは泣きそうな目をしてる

 

 その時点で内容の最低さは分かった

 

結実「社長と関係を持つか、あなたを事故に見せかけて殺すか、です......」

環那「うわっ。(最低だ。)」

結実「社長の奥様が亡くなってから、更に荒れ始めて......新入社員の私にこんな命令を。......」

環那「ふむ、なるほど。」

 

 なんだ、ババアはもう死んだのか

 

 もう少し持つと思ってたし、持ってくれた方が都合が良かったんだけど

 

 なーんだ、死んだのかー、面白くないなー

 

結実「ごめんなさい......本当は嫌だったんです。でも、私も......」

環那「いや、いいよ。」

結実「え......?(口調が......)」

 

 よし、問題ナシ

 

 ババアが死んだのも別に無問題

 

 命を狙って来るのも予想通り

 

 そして、良い材料も手に入った

 

環那「ねぇ、俺と契約しようよ。」

結実「契約......?」

環那「さっきの話を聞く限り、あんたの職場の環境は決して良くはない。どうですか?」

結実「間違いないです......あの社長は女性社員にセクハラ、モラハラ、パワハラ。高学歴が集まって、その中でもまた優劣をつけようとするし......収入がいいからまだ我慢してますけど、正直もう......」

 

 限界、とでも言いたげだ

 

 新入社員って言ってたのに

 

 まだ3か月くらいでしょ?

 

 あのジジイ、何やったの?

 

環那「そこでだ、あなたが俺に協力してくれるなら、今の環境からあなたを救い出して見せましょう。」

結実「そ、そんなこと出来るんですか......?」

環那「出来なければ、契約なんてしないと思いますけど?」

結実「......」

 

 結実さんは何かを考えてる

 

 まぁ、大企業に入社できたんだ

 

 多少我慢をすれば社会的地位は安泰

 

 方やこっちは男子高校生

 

 失敗すれば目も当てられない結果になる

 

 賢ければ賢いほど、悩むだろうな

 

環那「俺は是非、あなたに協力して欲しい。あなたは素晴らしい人材だ。」

結実「なんで、そう思うのですか?私は学歴だけが取り柄で......」

環那「素晴らしい。」

結実「え?」

 

 俺は気づいたらそう口走ってた

 

 よし、この人だ

 

 この人なら素晴らしい協力関係を築ける

 

環那「冠位十二階って知ってますよね?」

結実「え、えぇ、勿論。」

環那「俺は学歴だけしか見ない南宮家が大嫌いなんです。社会に出れば学歴は名刺同然。高学歴はただの良い紙を使っただけの名刺とすら思ってる......そこで、あなただ。」

結実「えっと、意味がよく分かりません......」

 

 結実さんは困った顔をしてる

 

 良い、この人は良いぞ

 

環那「学歴を誇示せず、自分の身のために他人を殺そうとする異常性も持ってる。」

結実「異常性!?」

環那「もし、あなたが今の環境から脱却する野望と勇気があるなら......あなたは革命の先駆者となる。」

結実「革、命......」

 

 結実さんの目が曇って行く

 

 いい目だ

 

 欲にくらんだ、純粋な目だ

 

 これ、決まりだ

 

結実「私、あなたに協力します。けど、役に立つのですか......?勉強以外は普通の人間ですが......」

環那「勿論、革命は誰でも役に立てるんですよ。関わって、成功すれば全員が英雄だ。」

 

 俺は明るい声でそう言った

 

 そう、これはあくまで革命

 

 能力なんて別に何の意味もない

 

 ただ、必要なのは同士だ

 

環那「これからは利用関係。今日の終業後、今から言うマンションに来てください。」

結実「はい、かしこまりました。」

 

 それから、俺と結実さんは分かれ

 

 塀にぶつかって破損した車は住民の通報で回収された

 

 

 さぁ、これから面白くなりそうだ

 

 世界一楽しい革命、始めちゃおう

 

 

 

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