羽丘の元囚人   作:火の車

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試験休み

 今日は試験休みだ

 

 夏休みに入ればRoseliaの合宿

 

 久しぶりの夏休みだし、楽しみだ

 

?『__って言うのが、ここまでで得た情報かな~?』

環那「あぁ、ご苦労様。」

 

 そんな日の昼下がり

 

 俺はある人物と電話で話している

 

 この人は獄中での俺の友達だけど

 

 今は頼んで仕事をしてもらってる

 

?『あの親父、かなり浮気に慣れてるよ~?前科があるんじゃない~?』

環那「だろうね。あれはそういう人間だよ。」

?『このまま続けたら、環那ちゃんが計画の達成は簡単だね~。予定早める?』

環那「いーや、予定通りに行こう。」

?『オッケー、徹底的にやる感じね~?』

環那「そう言う事。」

 

 俺は軽く頷いた

 

 理解が早くて助かる

 

 この調子なら、楽しい時間を過ごせそうだ

 

環那「じゃあ、引き続き粗さがし、お願いね。」

?『りょうか~い。環那ちゃんも色々と頑張ってね~。』

環那「俺が頑張ることはもうほぼ終わってるよ。」

?『いやいや~、お嫁さん探しとか~。』

環那「いや、まだそんなの無いから......」

?『あはは、それはどうかな?じゃあね~。』

 

 そう言って、友達は電話を切った

 

 その後、俺は軽くため息をつき

 

 ボーっと天井を眺め始めた

 

環那(全く、悪ノリする癖は相変わらずだな。)

エマ「__あの人から電話?」

環那「ん?あぁ、そうだよ。楽な仕事だそうだ。」

エマ「あんなクズの粗を探すなんて簡単。1+1の方が難しいくらい。」

環那「確かに。」

エマ「......♡」

 

 エマはそんな話をしながら俺の横に座ってきた

 

 俺はそんなエマの頭を撫で

 

 また、ボーっと天井を眺めた

 

環那(はぁ......呆気ない。)

 

 あまりにもあの父親は呆気ない

 

 何が天才家系だ

 

 天才なんてエマくらいじゃないか

 

 その他は平凡か、ちょっと出来るくらいだ

 

 ほんと、呆れて物も言えない

 

エマ「お兄ちゃん?どうしたの?」

環那「あまりにもつまらなくてね。逆に絶望してるんだ。」

エマ「所詮その程度の人間だったって事。あの程度の連中がお兄ちゃんに敵う訳ない。」

 

 エマは嬉しそうにそう言ってくる

 

 なーんでこんなに過大評価されるんだか

 

 別に俺は普通なのに

 

環那「俺は普通だよ。ただ、やりたいことをやって生きてるだけ。」

エマ「自由奔放なお兄ちゃんも魅力的......♡」

環那「あはは、ありがと。出来ればその魅力を失わないようにしたいよ。」

 

 と、軽く冗談を返して

 

 俺はソファから腰を上げた

 

 ずっとボーっとしてるわけにもいかない

 

 何かするとしよう

 

環那「すこし出かけてくるよ。エマはどうする?」

エマ「私は研究の続きがあるから、もう少し部屋に籠るかも。」

環那「あれの研究かな?」

エマ「もうすぐ完成する。待っててね。」

環那「焦らなくてもいいよ。確実にキツイのを頼むよ。」

エマ「うん、確実に。」

環那「期待してるよ。」

 

 そう言った後、俺は財布だけを持って

 

 特に目的もないけど外に出た

__________________

 

 目的もなく外に出るのは暇だ

 

 いつもの俺ならこんな非効率的なことはしない

 

 けど、あまりにも虚しくて外に出たくなった

 

環那(はぁ、退屈......)

 

 俺は呆れを通り越したような感情を抱いてる

 

 本当にあのジジイはつまらない

 

 折角、楽しい復讐になると期待したのに

 

 このままじゃ、何もかも上手く行ってしまう

 

 普通なら嬉しい事なんだろうけど、俺にはそれが退屈で仕方がない

 

環那(まぁ、これも想定内か。)

 

 考えないといけない事なんていくらでもある

 

 最近は女性関係についても問題があるし

 

 そっちを優先してみるのもいいのかもしれない

 

環那(と言っても、俺にはあんまりそう言う気持ちは未だに分かりかねるんだよねぇ。)

リサ「__あれ、環那?」

環那「ん?リサ。」

リサ「なにしてるの?」

 

 公園のベンチで座ってると、リサが歩いてきた

 

 時間的にお夕飯の買い物かな

 

 両手で重そうな袋を持ってる

 

環那「家にいるのも暇だったからね。考え事ついでに外に出たんだよ。」

リサ「考え事?鼻血大丈夫?不眠症は?」

環那「今の所は何もないよ。はい。」

リサ「?」

 

 俺はリサの前に手を出した

 

 リサは首を傾げて俺の顔を見てる

 

 流石に言葉足らずだったかな

 

環那「その荷物、持つよ。」

リサ「え?いや、いいよ。あたしの家の買い物だし。」

環那「いやいや、幼馴染の女の子が重そうな荷物持ってるのを無視するわけにもいかないよ。ね?」

リサ「!///(手が///)」

 

 リサの手から袋をひったくった

 

 持ってみると、結構重いな

 

 スーパーから公園まで距離あるのに

 

環那「持つよ。時間あるし。」

リサ「で、でも......///」

環那「いいんだよ。ちょうど、リサも関係する事を考えてたし。」

リサ「え?」

 

 俺はそう言ってリサの進行方向を向いた

 

 リサは顔を赤くしたまま止めようとしてる

 

 けど、それを無視して、俺は歩きだした

 

リサ「もう、なんで今日はそんなに強引なの?」

環那「リサと話す口実作りだよ。」

リサ「......からかってる?///」

環那「全然?俺はいつでも本当の事しか言わないよ。」

リサ「それは嘘。」

 

 リサに光の速さで否定された

 

 心外だなー

 

 リサには一番本音で話してるはずなのに

 

リサ「環那は平気な顔で嘘ついてからかって来るし。」

環那「ひどいなー。これでもリサの事は純粋に信頼してるんだよー?」

リサ「信頼って、環那は意外と誰にでもそう言うじゃん。」

環那「いやいや、そんな事ないよ?信頼にだって種類があるんだ。」

リサ「信頼の種類?」

 

 リサは不思議そうにそう言った

 

 まぁ、これは完璧な持論なんだけどね

 

環那「商売に関する信頼と友達への信頼......みたいな。」

リサ「なんとなく分かる気もする。」

環那「リサはその中でもかなり信頼してる方だよ。」

リサ「付き合いが長いからでしょ?」

環那「そうそう。」

 

 ほんと、何年の付き合いだろう

 

 親といる時間よりは確実に長いね

 

 友希那とリサは実質家族かな?

 

環那「10年の付き合いだからね。リサの人柄は大体わかるよ。」

リサ「あたしも環那の事は大体わかるよ。」

環那「あはは、俺もそれは助かってるよ。」

 

 本当に助かるんだよね

 

 ある程度の事は察してくれるし

 

 以心伝心みたいなこともできる

 

リサ「なにー?すごい褒めてくれるじゃん。より戻したくなったー?」

環那「うーん、どうなんだろう。」

リサ(あ、否定しないんだ。)

 

 それも悪くないと思う

 

 けど、今それを即決することはできない

 

 気がかりなことも多いし

 

環那「最近、よく分からないんだよね。人生にイレギュラーが起きてるんだ。」

リサ「燐子とか?」

環那「そうだね。あの子も未知だ。」

 

 他にも琴ちゃんやエマが該当する

 

 それに、色んなターニングポイントを迎えてる

 

 5年も外に出ない間にやっぱり変わったのかな

 

リサ「結局、環那は燐子が好きな訳?」

環那「運命の人だと思ってるよ。けど、好きかどうかはまた別。」

リサ「運命の人って......環那にしては珍しいね。スピリチュアルって言うか。」

環那「それくらい、あの子には驚かされてきたんだ。」

 

 あの子と付き合えたら幸せだろうなぁ

 

 添い遂げるにしても素晴らしい女性だ

 

 非の打ちどころがない

 

環那「まっ、恋愛とかはもう少しだけ後でいいかな。」

リサ「あたしは早く選んでほしいんだけど~。」

環那「もう少しだけ待ってよ。くふふ......」

リサ「?」

環那「さぁ~、リサの家までレッツゴー。」

 

 そう言って俺とリサは喋りながら歩き

 

 距離のあるリサの家に向かった

__________________

 

 リサの家近くに来た

 

 そう言えば、友希那のお父さんにも会わないとと思いつつ、住宅街の中をリサと2人で歩いてる

 

拓真「......」

環那、リサ「あっ。」

 

 すると、向こうから拓真君から歩いてきた

 

 それを見て、俺とリサは気まずそうな声を出した

 

 なんだか、前に見た時より少し痩せた気がする

 

 苦労でもしたのかな?

 

拓真「......ちっ。」

環那「やぁ、元気?痩せたねー。」

拓真「......!!」

リサ「環那!?」

 

 俺がからかうようにそう言うと

 

 拓真君は俺に向かって殴りかかってきた

 

 けど、体力が落ちてるのかキレがない

 

拓真「なっ......!」

環那「ちゃんとご飯食べなよ。倒れるよ。」

拓真「う、うるさい......!もとはと言えば、お前の......」

環那「俺のせい、なんて言わないよね?」

拓真「っ!」

環那「あのアバズレババアに事情は聞いたんでしょ?俺のどこに落ち度があった?言ってみてよ。その天才家系の頭脳で。」

拓真「くっ......」

 

 拓真君は何も言い返せないみたいだ

 

 まぁ、俺から春日には事実を突きつけただけ

 

 それが分かったから、何も言えないんでしょ

 

 だって、春日の行動は彼の正義に反するんだから

 

環那「で、あれとはどうなったの?別れた?」

拓真「......いや。」

環那「わお、君なら即切り捨ててると思った。」

拓真「......人は、反省することができる。過去に失敗しても、頑張って、努力して、取り返すことができるんだ。そして、人はその権利は平等に享受するべきなんだ。」

環那「ふむ。」

 

 割ともっともなこと言うな

 

 まぁ、それなら俺への対応は何ってなるけど

 

 これは言わないでおいてあげよう

 

 彼なりにあれを守りたいんだろうし

 

リサ(この子の言う事は最もだけど......なんかなー。)

拓真「そんな機会を奪ったお前はクズだ!母親だって見捨てやがって!」

環那「......君さぁ。」

リサ、拓真「!!」

 

 俺は低い声を出し、拓真君を睨みつけた

 

 この子、やっぱり嫌いだなー

 

 間違った正義ほどの害悪はないよ、全く

 

環那「俺が奪ったって言うけど、そいつが何を奪ったかは考えてる?」

拓真「何を奪ったか、だって......?」

環那「君、身内の集まりでも俺に会った事なかったでしょ?」

拓真「......そう言えば。」

環那「でも、俺と君はあの祖父母と同じ家にいたことはあるんだ。」

拓真「え......?」

 

 驚いてるねぇ

 

 まっ、そうだろうね

 

 平和にノウノウと能天気に生きて来たんだから

 

 自分の家系の汚点になんて気付くわけもない

 

環那「俺、ずっと屋根裏部屋にいたんだよ?開かずの間だっけ?聞いたことない?」

拓真「あの、鎖と南京錠で閉ざされてた部屋......」

環那「そうそう。そこの中にいた妖怪が俺ってわけ。」

拓真「な、なんだって......!?」

リサ(そ、そんなのあったんだ。)

 

 あーあ、知っちゃった

 

 可哀想だから黙っててあげたのに、ムカつかせるから

 

 信じたものが間違えてる気分って最悪だよね

 

 きっと今頃、吐き気でもしてるんだろうなぁ

 

拓真「し、信じないぞ......」

環那「勝手にすれば?どっちが正しいかなんてすぐに分かるよ。」

拓真「っ!」

環那「あ、ちょっと待って!」

 

 俺は走り去ろうとする拓真君を呼び止めた

 

 ついでだし、教えてあげよう

 

環那「近々、君を取り巻く環境は劇的に変化するよ。もう、爆弾抱えた列車は暴走しちゃってるから。」

リサ「......?」

拓真「......」

 

 拓真君は俺の言葉を聞いて、どこかに走って行った

 

 まっ、彼が理解する必要はないけど

 

 所詮、まだ何の力もない子供だし

 

 あんまり影響を受ける家庭でもないし

 

リサ「ねぇ、今のどういう事?爆弾がどうのこうのって。」

環那「もうすぐ、分かるよ。これから、俺も世間も動き出すさ。」

リサ「......?」

友希那「__あら、どうしたの?2人とも?」

 

 拓真さんが去ってすぐ、友希那が家から出て来た

 

 さっきまで部屋にいたのかラフな格好

 

 どうしよう、神々しすぎて眼球が焼ける

 

環那「友希那ー!」

友希那「何をしていたの?誰かと話してたようだけれど。」

環那「ちょっとしたアンケートだよ!気にしないで!」

リサ(うわぁ、あの子の扱い雑ぅ......)

環那「友希那は何してたの?」

友希那「私は新曲を考えていたところなの。」

環那「そっかー!(あぁ~!可愛い可愛い可愛い!!)」

 

 友希那と会えた幸運に感謝

 

 外に出てみるものだよねぇ

 

 だって、友希那のこんな姿中々見れないよ?

 

 キャミソールにショートパンツ

 

 白い腕や鎖骨、脚が惜しげもなくさらされて

 

 チラッと見える柔らかそうなお腹がなんとも素晴らしい

 

 なんて、目に毒な格好なんだ......!

 

リサ「ちょ、環那!?」

環那「ん?なに?」

友希那「鼻血が出てるわよ?どうしたの?」

環那「なんでもないよ。あはは。」

リサ(むぅ~......!)

環那「いひゃいいひゃい!」

 

 リサに頬を抓られた

 

 さ、流石にバレたか

 

 今の友希那に見惚れて思考回数が上がったの

 

友希那「大丈夫?」

環那「大丈夫だよ。あ、おじさんいる?」

友希那「えぇ、今日はいるわよ?」

環那「折角だし、お話していきたいな!」

友希那「いいわよ。話しておくわ。」

環那「じゃあ、俺はリサの荷物持っていくよ!」

リサ「あたしもお邪魔しよ~っと!」

 

 それから俺はリサの家に荷物を持っていき

 

 冷蔵庫に入れたり収納ボックスに入れたりしてから

 

 友希那とおじさんが待ってる家に向かった

 

 おじさんと会うの、久し振りだな~

 

 

 


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