合宿に出発する当日になった
空は青く、太陽はテンションマックス
俺の両手には自分とエマの荷物と......
もう、合宿へのやる気は真っ直ぐだ
もっとも、俺は何もしないんだけどね
九十九「__へいへーい、環那ちゃーん!」
環那「九十九?どうしたの?」
九十九「環那ちゃんがいなくなる前に最終確認!」
環那「なるほど。」
流石に電話だけじゃ無理あるか
メールは都合上出来ないし
環那「九十九たちは合宿の間に詰める所を詰めて、逐一俺に報告。」
九十九「了解了解♪それで?」
環那「エマの方も準備は整ってる。だよね?」
エマ「うん、例の物はいつでも使える。あいつらの揃うタイミングも、調べはついた。」
じゃあ、もう99.8%は準備が終わってるわけだ
だったら、無駄に引き延ばすことも無いかな
さっさと終わらせてしまおうか
環那「よし、決行は8月8日。3日以内に終わらせよう。」
九十九「お~!環那ちゃんの本領発揮って感じ~?」
環那「本領も何もないよ。ただ、その時その時サイコロを振って、出た目の数だけ駒を進める......罰ゲームの無いすごろくって所かな?」
九十九「あはは!最高!」
まぁ、あれもこれも南宮家が無能なだけなんだけどね
ほんと、天才家系なんて言ってたら嘲笑されるよ
金持ち家系なら......まぁ、納得はされるかな?
九十九「それを聞けて満足したよ!じゃあ、あたしは仕事に戻るね!」
環那「分かった。後の事は九十九主導で動いて、人見と新太の報告をまとめてね。」
九十九「了解!それでは~!」
九十九は手を振りながら走って行った
俺は特にそれを見送らず
横にいるエマの方を向いた
環那「行こっか。確か、電車で行くんだよね?」
エマ「うん、時間まであと20分だから、もう行こう。」
環那「そうだね、行こっか。」
そんな会話の後、俺とエマは歩きだし
待ち合わせ場所である駅前に向かった
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朝が早いのもあって、まだ人は少ない
まぁ、1時間後にはすごい人ごみになるんだけど
その中を7人で歩くのは、考えたくないね
環那「__お待たせー。」
エマ「お待たせ。」
リサ「あ、来た来た!」
待ち合わせ場所にはもう全員が揃っていた
これでも待ち合わせ時間前なんだけど
みんな、真面目だねぇ
紗夜「南宮さんの言う時間通りに来たら、これですよ。よく調べましたね。」
環那「フッフッフッ、俺が友希那のための情報収集に手を抜くわけがないじゃないか。過去の監視カメラのデータを全部確認して、利用する人間の傾向を洗いざらい調べた。」
紗夜「ストーカーみたいですね。」
環那「ひどいね!?」
エマ「お兄ちゃんがしてるのはそんな程度の低い事じゃない。」
エマのフォロー、若干だけどズレてるよ......
なんかストーカーの上位互換みたいになってるし
友希那「でも、昔、リサのストーカーをストーカーしたことあるわよね?」
あこ「えっ?リサ姉?珍し。」
燐子「友希那さん関連以外の話題、初めて聞いたかも......」
環那「え、そう?リサのエピソードもいっぱいあるけど。」
なんか皆、俺のこと勘違いしてない?
流石にリサとも十数年の付き合いだよ?
友希那と同じくらいの期間一緒にいるんだから、同じくらい面白いエピソードあるよ
環那「2人が小さい頃とか大変だったよ?幼稚園にお母さんと来た時とか__」
リサ「わー!わー!///」
環那「どうしたの?」
リサ「何恥ずかしい事口走ろうとしてんの!///」
環那「え?いやいや、これは可愛いものでしょ。」
友希那「......///(そうだったわ、環那、私達の昔話が好きなんだったわ......///)」
幼稚園でお母さんの分かれる時に泣いてたくらい、可愛いものだよね?
それで、2人をなだめるのは俺の役割で
いい思い出だなぁ......
燐子(わ、私の事も......もっと知ってもらわないと......!)
環那「あ、そろそろ電車が来る時間だね。行こう。」
紗夜(この流れをぶった切る根性......)
あこ(環那兄......)
俺はそう言った後、駅に入り
皆も後ろをついてきた
さて、電車の方はすいてるかなー
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駅に来た電車は予想通り、かなりすいていた
これなら6人とも座れるペースがあるね
いやぁ、よかった
環那「__皆、今のうちに座ってて。」
友希那「えぇ。」
俺は取り合えず、皆の荷物を網棚に乗せ
皆が座った席の前に立った
あこ「環那兄は座らないの?」
環那「俺は良いよ。座る必要はないしね。」
リサ「環那って昔から座らないよね~。」
立ってる方がいざって時に動きやすいしね
友希那を守ったり、荷物を持ったり
そういう時間を効率化するなら、立ってる方がいい
エマ「これは私達を守るためでもある。あらゆる方向に牽制もしやすい、いい位置取り。」
紗夜「そ、そんなのがあるんですね。」
エマ「電車で痴漢に遭う確率は1年以内でも15%~30%と意外と高いんだよ。」
リサ「へぇ、詳しいね。」
環那「俺やエマみたいな人間はデータが大好きだからね。色んなデータを流し見たりしてるんだよ。」
エマ「そう、それが研究者。」
それは関係あるかよく分からないけど
俺とエマがデータ好きなのは確かで研究者だし
まぁ、いいや
燐子「研究......って、何をしてるの?」
環那「最近はエマと共同で研究......と言うか開発をしてるかな?」
リサ「何作ってるの?」
環那「ははっ、秘密だよ。」
リサ(え、エマが関わってるのが怖い......)
いやー、エマがいると効率がいいんだよね
天才って言うのはやっぱり規格外だ
ほんと羨ましいよね、才能って
あこ「エマって環那兄の腕まで作っちゃうんだもんね~。すごいよね~。」
エマ「私が凄いのは認める。」
環那(認めるんだ。いや、事実だけど。)
リサ「あはは、エマは面白いよね~。」
そう言って笑うリサにエマは少し不服そうな表情を浮かべてる
まるで姉と妹みたいだ
確執もあるかと思ってたけど、仲よさそうで何より
リサ「そんな顔しないで!可愛い顔が台無しだぞ~☆」
エマ「ウザい。」
リサ「正直!?」
環那「こういう子だからね、仕方ないよ。」
そんな話をしてると、電車が停車駅に着いた
そうすれば勿論、乗ってくる人がいるわけで
1人、杖を突いた老人が入ってきた
老人「......」
環那(なんか、見られてるなぁ。)
燐子「エマさん......そういうことはもう少し......オブラートに。」
エマ「燐子は好き。」
リサ「なんでぇ!?」
友希那「うるさいわよ。もう少し静かにしなさい。」
老人「......」
環那(やっぱり、おかしいな。)
あの老人、乗ってきてからずっとこっちを見てる
しかも、杖を突いてる割に空いてる席にも向かわない
でもこっちを......いや、厳密には友希那達を見てる
老人「ゴホン......!!」
リサ「!」
あこ「な、なに......?」
老人は大きな咳払いをした
友希那達どころか、他の乗客全員が注目してる
老人「......若い奴らが大勢で座り込んで、迷惑じゃのう。」
環那(エマ。)
エマ(うん、無視だね。)
老人「目の前に杖を突いた老人がいるというのに、席を立つこともしない......」
なるほど、この老人、席乞食なのか
いや、正確には若者にいちゃもん付けたい感じ?
まぁ、どっちにしても面倒くさいね
老人「無視無視無視......黙ってればいいとでも思ってるのかのう。これだから最近の若いもんは。」
環那「!」
リサ「っ!(か、環那!?)」
環那「......あの、杖、足に乗ってるんだけど。」
老人「ほっほっほ、気のせいじゃないかの?」
こ、この人、めんどくさ
どの位面倒かって言うと......
例えるなら、カレーを焦がした鍋を洗うくらい
老人「わしのお気に入りの席がそこなんだがのぉ......」
環那「公共の場にお気に入りも何もないでしょ。」
老人「......チッ、若者風情が。」
環那「......(普通に痛い。)」
エマ(......殺そうかな?)
杖をグリグリ動かし始めた
結構足腰に余裕あるんだね
平気で自分の足で立ってるように見えるんだけど
環那(まぁ、俺に来てるだけなら我慢しよう。下手に動くと損しそうだし。)
燐子「あの......!」
環那(燐子ちゃん!?)
老人「?」
燐子「南宮君の足に......杖を乗せないでください......!」
燐子ちゃんは震えた声でそう言った
なんで、人見知りなのに話しかけるの!?
いや、俺を庇ってくれるのは嬉しいけどさ
老人「失礼な女じゃ......の!」
燐子「ひっ......!」
友希那、紗夜「!!」
老人は燐子ちゃんに手を伸ばした
角度からして、手は碌な位置に向かってない
......あーあ
老人「うぬっ......!?」
環那「......」
エマ(来た。)
俺は老人の腕を掴んだ
ほんと、馬鹿だなぁ
俺だけで我慢しとけばよかったのに
老人「は、はなせ......!」
環那「俺、老人が嫌いなんだよね。」
老人「な、なにを......!!」
環那「監禁してくるジジババ、いじめの隠ぺいをしたクソジジイ......老人には碌な奴がいない。」
せっかく我慢してあげてたのに
燐子ちゃんに手を出そうとするからこうなる
環那(駅に着くまで、あと1分ほど。)
老人「この!__痛い!!」
環那「あんたの年齢は......大体70歳って所かな?還暦は迎えてるだろうに、こんな事して恥ずかしくないの?」
老人「う、うるさいぞ......!」
年齢を否定しないって事は、大体あたりか
70歳かぁ......
見た感じはまぁまぁ元気そうだし
ある程度やっても......死にはしないか
『次は~○○~○○~』
環那「別にこの場で殺してもいいけど、また捕まるのは勘弁だし......」
老人「う、うぅ......!」
腕を掴む力を強める
ここまで来たら、やることは一つでしょ
そう考えてると、電車のドアが開いた
幸い、乗ってくる人はいないみたいだ
環那「このくらいで......!」
老人「っ!!」
老人をドアの前まで引っ張り
思いっきり力を入れた
環那「勘弁してあげるよ......!!」
老人「う、うぉぉぉ!!!」
友希那、リサ「環那!?」
俺は老人を駅のホームに投げ飛ばし
間抜けな顔で倒れてる老人を見下ろした
環那「乗って来るなよ?次は......電車とホームの間にその汚い顔面挟んで、捻り切るから。」
老人「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」
そう言うと、老人は蜘蛛の子散らすように逃げていった
てか、杖使ってないじゃん
あれ、飾りだったんだぁ......
環那「あー、スッキリした!大丈夫?燐子ちゃん。」
燐子「は、はい。」
環那「よかったよかった。あれの手が燐子ちゃんに触れてたら、あの程度じゃ済まさなかったよ!」
紗夜(あ、あんな風になったのは初めて見たわね。)
あこ(環那兄、怒るとあんな感じなんだ......)
エマ(お兄ちゃん、素敵......♡)
ほんと、はた迷惑なのもいたものだよ
まぁ、いいや
ボコボコにして(?)スッキリしたし
環那「さて、到着までまだかかるし、何か話そうか!」
友希那「そうね。」
燐子(南宮君、私のために怒ってくれたんだ......///)
紗夜(南宮君は......)
あこ(怒らせちゃいけないタイプだ......!)
それから、目的地に到着するまで皆と喋っていた
なんだか、周りの人に見られてた気がするけど
まっ、悪目立ちしたし、しかたないかな