羽丘の元囚人   作:火の車

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落下

 朝の4時30分頃、俺は1人で海辺へ出た

 

 旅行の時ってなんで早く起きちゃうんだろう

 

 不思議な現象だよね~

 

九十九『__て言うのが報告。』

環那「なるほど。」

 

 俺は少し離れた場所にある防波堤に腰掛け

 

 九十九からの報告を聞いた

 

 どうやら、向こうも何か動いてるみたいで

 

 一応、こっちに確認の連絡をよこしたらしい

 

 まぁ、報告を聞いた結論としては......

 

環那「全く問題ないね。」

九十九『あはは、だよねー。100手遅いって感じー?』

環那「最初から手遅れだよ。何もかも。」

 

 遅いねー、動くのが

 

 ババアが死んで脳みそも死滅した......

 

 いや、元から死滅してるか、おもしろ

 

環那「九十九、人見、新太、もう全員休んでいいよ。」

九十九『おぉ、ちょうどやることなくなってたんだよねー!』

環那「そんな事になってると思ったよ。お疲れ様。」

九十九『いやいやー、最後まで付き合うよー!あたしも暇だからねー!』

環那「そう?じゃあ、それならそれで。」

九十九『うん!またねー!』

 

 九十九のそんな声の後、電話が切れ

 

 俺はボーっと海の向こうを眺めた

 

環那(青いなぁ、海。)

エマ「__お兄ちゃん。」

環那「ん?エマ、どうしたの?」

エマ「部屋に忍び込んだらいなかったから、探してた。」

環那「息をするようにとんでもない事言うね。」

 

 俺は溜息を付きながらそう言った

 

 エマ、俺のことちゃんと兄と思ってるのかな?

 

 元からだけど、視線が兄に向けるそれじゃないね

 

エマ「もうすぐだね、お兄ちゃん。」

環那「そうだね。もうすぐ、全部終わる。」

 

 エマは俺の隣に座って、そんな事を言ってきた

 

 その声はいつもの無機質な声と違い

 

 優しく、年相応な可愛い声だった

 

エマ「終わらないよ。」

環那「?」

エマ「私達の時間はまだ終わらない。これからたくさん一緒にいるから。」

環那「......そうだね。」

 

 エマに手を握られた

 

 小さい手だ

 

 本当に14歳なのかな?

 

エマ「愛してるよ、お兄ちゃん。」

環那「ありがと。」

エマ「子供作ろうよ。」

環那「あはは、またその冗談?面白いけど、子供の状態を保証できないからダメだよ。」

エマ「むぅ......」

 

 エマは横で不服そうな顔をしてる

 

 こういうの、ブラコンって言うのかな?

 

 まっ、このくらいの冗談なら可愛いし

 

 背伸びしてるみたいで微笑ましいね

 

環那「さて、そろそろ戻ろうか。皆の朝ごはんの準備をしないと。」

エマ「お手伝い、する。」

環那「ありがとう、いい子だね。」

エマ「......♡」

 

 エマの頭を撫でた後

 

 俺達は防波堤から離れ

 

 一緒に合宿場に戻った

__________________

 

 朝の7時になったころ

 

 皆はほぼ一斉に起きて来た

 

 俺はそれに合わせてキッチンに立ち

 

 朝ごはんの仕上げを済ませた

 

環那「__はーい、今日の朝ごはんはスフレパンケーキだよー。」

リサ「わぁー!めっちゃオシャレじゃん!」

環那「トッピングははちみつ、生クリーム、バニラアイス、後いちごもあるよ!」

あこ「環那兄、女子力高いね。」

紗夜「昨日から思ってたんですが、そのエプロンは何ですか?」

 

 と、みんな思い思いの感想を言って来る

 

 ちなみに、エプロンは4月くらいに買ったお気に入り

 

 小学校の先生が料理するならエプロン着ろって言ってたから買った

 

エマ「私ははちみつと生クリームマシマシ。」

環那「分かってるよー、はい。」

エマ「美味しそう。」

リサ「朝からこれって、罪悪感凄いね~。」

燐子「あ、あはは......」

友希那「大丈夫よ、きっと。」

 

 うんうん、女の子の会話はいいね

 

 でも、体重の話は聞かなかったことにする

 

 女の子の体重の話に男が介入するのはご法度だって言うし

 

 紳士の心で黙っておこう

 

リサ「今日は近くの山に行こ!すごい綺麗だって評判らしいし!」

環那「そう言うと思って、準備してるよ。」

友希那「準備?」

 

 友希那が首を傾げてこっちを見てる

 

 まぁ、海と山がある場所に来て、海だけで遊ぶなんてないだろうし

 

 取り合えず、色んな物を用意してた

 

環那「虫よけスプレー、帽子、スポーツドリンクに非常食とか、色々。」

あこ「準備いいねー。」

環那「友希那を守るために準備を欠かしたことなんて無いよ。」

紗夜(この人、適当なのかそうじゃないのかよく分からないわね。)

 

 山登りは小学生の遠足以来かな

 

 友希那をおんぶして上った記憶が大きい

 

リサ「よし、じゃあ、食べたらすぐ行こっか!」

あこ「はーい!」

環那(じゃあ、俺はもろもろの用意を進めよっと。)

 

 そんな感じで皆は朝ごはんを食べて

 

 俺は山登りの準備を始した

__________________

 

 合宿上から徒歩10分の距離にある山

 

 そこが今回、山登りをする場所だ

 

 いい感じの傾斜と豊かな自然があって

 

 初心者向けの登山コースとネットに書いてた

 

 熊とかイノシシの被害は偶に出るらしいけど

 

 そこの対策はしてるし、大丈夫でしょ

 

環那「のどかだね~。」

エマ「都会より空気が綺麗。」

 

 山は良い

 

 気持ちのいい自然に澄んだ空気

 

 そして何より、可愛い友希那!(平常運転)

 

環那「その服装も可愛いよ!こっち向いてー!」

友希那「もう、環那ったら。」

 

あこ「あのカメラ、どこから出したんでしょうね?」

紗夜「分かりません。構えが早すぎます。」

リサ「プロだからね。」

 

 カメラを連写しつつ

 

 皆で道なりを進んで行った

__________________

 

 歩いて汗ばんでいく友希那も可愛いと思いつつ歩いてると

 

 段々、基礎体力の差が出て来た

 

 俺はその子に歩み寄った

 

燐子「__はぁ、はぁ......」

環那「大丈夫?燐子ちゃん。」

燐子「大丈夫......」

 

 やっぱり、燐子ちゃんは体力がないみたいだ

 

 女の子らしい体力で、可愛いね

 

 昔の友希那みたいだ

 

あこ「わぁ~!魚いる~!」

紗夜「宇田川さん、あまり身を乗り出したら駄目ですよ?」

あこ「大丈夫ですよ~!りんりんも見てよ~!」

燐子「う、うん......」

 

 あこちゃんに呼ばれて

 

 燐子ちゃんは川の中が見れる場所に移動した

 

 その2人の姿はまるで姉妹みたいだ

 

 うん、微笑ましいね

 

 “燐子”

 

 あこちゃんの横で魚を見てる

 

 ここの川はすごく綺麗で魚が綺麗に見える

 

 けど、底は全然見えない

 

 結構深いのかな?

 

あこ「ねぇねぇ、りんりん?」

燐子「どうしたの?」

あこ「あこね、環那兄を見て気付いたことがあるんだ。」

燐子「気付いたこと?」

 

 私は首を傾げた

 

 あこちゃんは少しニヤついてる気がする

 

 南宮君について気付いたことってなんだろう

 

あこ「多分だけど......」

燐子「うん?」

あこ「環那兄、りんりんのこと好きだよ。」

燐子「えぇ!?///」

 

 私は思わずそんな声を上げてしまった

 

 皆の視線がこっちに集中してる

 

 それに気づいて、恥ずかしくてまたしゃがみこんだ

 

燐子「ど、どういうこと......?///」

あこ「なんとなく、環那兄、りんりんに優しいから。友希那さんとは違う感じで好きなんじゃないかなって。」

燐子「そ、そんなこと......///(あれば、いいな......///)」

 

 南宮君が私を好きなら

 

 付き合ったりしたいって思う

 

 けど、私なんかで、いいのかな......?

 

あこ「きっと行けるよ!」

燐子「そ、そうかな......///」

あこ「うん!」

リサ「__2人ともー!そろそろ行くよー!」

 

 向こうから、今井さんの声がした

 

 休憩時間は終わりかな?

 

燐子「あ、はい......!」

あこ「今行くー!」

 

 今井さんの声にそう返事し

 

 私とあこちゃんはその場を立ち上がった

 

 けど、その時......

 

燐子「__きゃ!!」

あこ「うわぁ!!」

 

 目の前を黒い影が通り過ぎていった

 

 突然の事で私は体勢を崩してしまい

 

 濡れた石で足を滑らせ

 

 そのまま、川に落ちてしまった

 

環那「燐子ちゃん!?」

 

燐子「......!!(え、な、何が起きて__)」

 

 一瞬、状況が理解できなかった

 

 けど、私の体を包む冷たい感触がそれを教えてくれる

 

 体、と言うより服が重たくて動けない

 

燐子(お、溺れる......!)

環那「燐子ちゃん!!」

燐子「み、な、みや、くん......!?」

環那「ちっ!(服が重くなって、上手く動けない!!)」

 

 私が溺れる直前

 

 近くで水しぶきが起きたかと思うと、南宮君が私を抱きかかえていた

 

 けど、南宮君も動きづらそうにしてる

 

燐子「だ、ダ、メ......!南宮君も、死んじゃう......!!」

環那「大丈夫!!なんとかする!!」

 

リサ「環那!!燐子!!」

友希那「早く上がりなさい!!」

エマ「お兄ちゃん!右方向、2m先に木の根が出てる!」

 

環那「!(ナイス、エマ!)」

 

 南宮君は右方向に手を伸ばし

 

 川に飛び出ている木の根を力強く掴んだ

 

 けど......

 

環那「っ!!(なっ!?)」

燐子「え......!?」

 

 南宮君が掴んだ枝は腐っていたのか、砕け散り

 

 水流で私と南宮君は川の真ん中に流された

 

 この状況に、絶望する

 

 この川は深くて、岸まで遠く、しかも流れが速い

 

 なのに、私なんて抱えてたら......

 

燐子「南宮君、逃げて......!」

環那「大丈夫!!このくらいの状......況!?」

燐子「......!!?」

 

 神様は、優しくない

 

 悪い予感だけ、的確に的中させてくる

 

 激しく流れる川の先には轟轟と一層激しく流れる水

 

 その先には川が続いてるのが見えなくて

 

 その事に、私は恐怖した

 

環那「うっそぉ......」

燐子「きゃあああ!!」

 

リサ「2人とも!!早く!!」

紗夜「む、無理です!!間に合いません!!」

 

環那(これは、運の尽きかな?)

燐子「!!」

 

 私は、南宮君に抱きしめられ

 

 その時、走馬灯のようにあこちゃんの言葉を思い出した

 

 『環那兄、りんりんのこと好きだよ。』

 

 あの言葉がもし本当なら......

 

 そんな予感は、的中し

 

 私の耳元で、南宮君の声がした

 

環那「......守るよ、なんとか。」

燐子「__!!」

リサ「か、環那ぁー!!」

あこ「りんりんー!!」

 

 体に感じる妙な浮遊感

 

 それと同時に聞こえる皆の呼ぶ声

 

 私はそれらを感じながら滝から落下し

 

 恐怖で、強く瞳を閉じた

 

 

 

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