羽丘の元囚人   作:火の車

55 / 200
遭難

 暗い、何も見えない空間

 

 頭の中には、冷たくて苦しい記憶

 

 ただ、途方もない恐怖だけが襲って来る

 

 死んじゃうかもしれない

 

 好きな人を死なせてしまうかもしれない

 

 そんな恐怖が延々と頭に流れ込んでくる

 

燐子「__っ!!!」

環那「あ、起きた?」

燐子「わ、私、生きてる......?」

環那「あはは、生きてるよ。」

 

 南宮君はそう言いながら笑いかけてくれる

 

 それを見て安心した

 

 私も南宮君も生きてる

 

 本当に良かった......

 

環那「生きてるのは良いんだけど、結構流されちゃってるから、ここがどこかは分からないかな。俺も流石に気絶したから。」

燐子「か、帰れるかな......」

環那「うーん、まぁ、何とかなるよ。」

 

 この絶望的な遭難と言う状況

 

 けど、南宮君がいれば

 

 どんな状況でもなんとかしてくれる

 

 そんな気がする

 

環那「俺も燐子ちゃんも携帯は持ってないけど、向こうにはエマがいるし、すぐに手を打ってくれるよ。(ノア君もいるし。)」

燐子「あ、そっか......!」

環那「まぁ、1日野宿するくらいは想定しておかないとね、っと。」

燐子「!」

 

 南宮君はそう言って立ち上がり

 

 森の方に目を向けた

 

 野宿......

 

 本格的に遭難したんだって実感が湧いてきた

 

燐子「ごめんね......巻き込んじゃって......」

環那「いやいや、問題ないよ。俺は野宿のプロみたいなものだからね。大船......は言いすぎだけど、まぁ、漁船くらいに乗った気でいてくれたらいいよ。あっはは!」

 

 そう笑いながら、森の方に入って行った

 

 取り合えず、私も出来る事を探さないと

 

 そう思って、立ち上がり、南宮君が歩いて行った方について行った

__________________

 

 “環那”

 

環那「__うぐっ......(やっぱ、ダメージあるか。)」

 

 燐子ちゃんから離れた場所に来て

 

 俺は木にもたれ掛かり、ズルズルと座り込んだ

 

 流石にあの状況じゃノーダメージとはいかなかった

 

環那(背中はかなり強打、勢い殺すために岩掴んだ左手も結構抉れてる。幸いなのは、義手の損傷がない事か。塗装に防水の効果があって助かった。)

 

 体のダメージはあれど、何とかなる

 

 片腕が取られてたら多少厳しかったけど

 

 両腕あるならやりようはある

 

環那「(でも、少しダメージを回復しないと。)少し、休もう......」

 

 ここからの行動パターンを考える

 

 俺達が落ちた滝は山間部より少し上くらいにあった

 

 そして、ここの川は比較的に曲がりは緩やか

 

 つまり、帰り道はある程度用意されてる

 

 けど、ここで問題なのは時間だ

 

 どの位気絶してたか分からないけど

 

 もう若干、陽が沈み始めてる

 

環那(暗くなる前にある程度移動するか......それとも、今は食料確保を優先して安全に事を運ぶのが良いか。)

 

 俺1人なら前者でも問題ない

 

 けど、今回の目的は燐子ちゃんを無事送り届ける事

 

 そう考えると、今は体力回復を優先すべきか

 

環那「......よし、方針は決まった......けど、流石にきついな。痛みが引いたら、山菜集めて、魚捕まえて火を起こして......あと、雨風凌げる場所を探さないと。」

 

 俺はそう考えて軽く目を閉じ

 

 一旦、思考を停止させた

 

 “燐子”

 

燐子(__み、南宮君......)

 

 南宮君に付いて来て、独り言を聞いてしまった

 

 あんなに、苦しそうな顔をしてた

 

 私を庇って、怪我しちゃったんだ......

 

 チラッと見えたけど、背中には大きな痣があった

 

燐子(わ、私のせいで......私のせいで......)

 

 私が、川に落ちたから

 

 無理矢理にでも南宮君を引きはがさなかったから

 

 南宮君の優しさに付け込んで、結局、死ぬのを怖がったんだ......

 

 そのせいで、南宮君が傷ついた......

 

燐子(......何かしないと。南宮君の役に立たないと......!)

 

 何ができるかは分からない

 

 私に出来る事なんてたかが知れてる

 

 けど、何か、何かあるはず

 

燐子「......山菜集め、しないと。南宮君、するって言ってたから......!」

 

 私はそう呟いて走り出し

 

 山菜集めをすることにした

 

 なんとか、役に立たないと

__________________

 

 “環那”

 

 体中が痛い

 

 拘束されてるように動けない

 

 この感覚、なんだか久しぶりだ

 

 こんな感覚を感じたのは、いつ以来だろう

 

 そう、確か......

 

環那(4歳の時、だっけ。)

 

 ジジババに蹴られ殴られ

 

 肋骨が折れたまま監禁されてたあの日

 

 あの時だけか、死ぬほど痛かったのは

 

環那(けど、その痛みもすぐ消えたっけ......)

 

 あの日、家を抜け出して

 

 1人で茫然とベンチに座ってた時

 

 あの時に友希那と出会ったんだっけ

 

 あの時から友希那は天使で__

 

燐子「__み、南宮君......!?」

環那「あ......ここにも天使が......」

燐子「ふぇ......?///」

環那「ん?あぁ、おはよう、燐子ちゃん。」

 

 ちょっと夢、見てたかも

 

 もしかしたら走馬灯?

 

 なんかよく分からないけど

 

 寝てたのは間違いない

 

 目の前には心配そうな顔をしてる燐子ちゃん

 

 うん、天使だ

 

 友希那と遜色ないくらいに

 

環那「ごめんごめん、つい寝ちゃったよ。」

燐子「い、いや、大丈夫だよ......?疲れてるだろうし......」

 

 俺は心配そうにしてる燐子ちゃんを横目に立ち上がり

 

 肩を回したり、色んな部位を動かして

 

 軽く体の状態を確認した

 

環那(うん、まぁまぁ回復したかな。頭もスッキリしてる。)

燐子「あ、あの......」

環那「どうしたの?」

燐子「山菜、集めて来たよ......」

環那「おぉ、すごいね!すごく助かるよ!それにしても、よくどれがどれって分かったね?」

燐子「昔、図鑑で見たことがあったから......///」

 

 なるほど、博学だ

 

 正直、今から集めてたら間に合わなかった

 

 まっ、寝てた俺が悪いんだけどね

 

環那「取り合えず、移動しよう。夜の森は危ない。」

燐子「!///」

 

 俺はそう言いながら、燐子ちゃんを抱き寄せた

 

 ここがどこか分からないし

 

 いつ野生動物が出て来るかもわからない

 

 流石に生身で勝てるわけもないしね

 

環那「あまり外で過ごすのは嫌だし、洞窟とか見つけたいね。一旦、俺達が流れた川辺りに戻ろう。」

燐子「う、うん......///」

 

 それから、俺は周りを警戒しつつ歩きだし

 

 元居た地点に戻ることにした

 

 あのあたりは崖の下だったし

 

 もしかしたら、洞窟とかないかな?

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。