羽丘の元囚人   作:火の車

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回想

 ”環那達が戻って来る数分前”

 

 昨晩、俺はちょっと神を見直してた

 

 本当は結構いいものかもしれない

 

 そう思ってた、けど......

 

熊「zzz......」

環那、燐子「......」

 

 前言撤回、神はクソだった

 

 死ねばいいのに(直球)

 

環那「うわぁ、あれはやばいね。」

燐子「う、うん......」

 

 目の前にいる熊はおよそ2m

 

 日本にいる中だと結構大きい方かも

 

 これには流石に俺もビビってる

 

環那(......状況を整理しよう。)

 

 熊がいるのは500m先くらい

 

 普通に考えれば十分な距離だけど

 

 時速50km以上で走れると考えたら危ない

 

 熊の嗅覚的に俺達の位置も掴まれてる可能性がある

 

 ......ちょーっとだけ厳しいな

 

環那「熊の嗅覚は犬の7倍、3㎞先のにおいも感じてるって言われてる。」

燐子「そ、その情報、すごく不安になるよ......」

環那「......だよね。」

 

 迂回して、安全に合宿場を目指すか

 

 いや、もう一匹熊がいるリスクがある

 

 燐子ちゃんを安全に送り届けるなら、ここを通るのが確実だ

 

環那(このまま距離を保って、最短でゴールを目指そう。幸い、すぐそこだし。)

燐子「......!///」

環那「......行こう、燐子ちゃん。大丈夫、絶対に守るから。」

燐子(て、手を......///)

 

 俺は燐子ちゃんの手を握った

 

 正直、昔の俺なら1人で逃げてた

 

 なぜなら、そっちの方が合理的だから

 

 けど、今は違う

 

 燐子ちゃんを守りたいって思ってるから、ノコノコ1人で逃げられないよね

 

環那「......足元に注意して。枝とか踏まないように気を付けて。」

燐子「う、うん。」

 

 そう言った後、俺と燐子ちゃんは歩きだした

 

 少しずつ、着実にゴールを目指すんだ

 

 バレたら流石に人生終了だ

 

燐子(み、南宮君の手、やっぱり女の子とは全然違う......///逞しくて、かっこいい......///)

環那(ゴールまで、あと400mちょっと。熊と競争するには厳しい。)

 

 100mくらいなら、燐子ちゃんを抱えて逃げられる

 

 あと300mだ、そんなに長い距離じゃない

 

 このまま上手く行けば、逃げられる

 

環那、燐子「__っ!!」

 

 そう思っていた、けど

 

 ガサガサガサ!と横の草が激しく揺れ

 

 もう1つ、丸々とした黒い影が姿を現し

 

 向こうの熊と違って、完全にこっちと目が合った

 

猪「......!!」

環那「マジか。」

燐子「ひ、ひぃ......!」

 

 神は流石に俺のこと嫌い過ぎじゃない?

 

 よくもまぁ、ここまで俺に不利な条件揃えたよ

 

 ほんと......クソだ

 

猪「......!......!!」

環那「......そっちがその気なら嫌い同士、張り合おうか。」

燐子「!」

 

 この絶望的な状況を覆す

 

 神からの試練?嫌がらせ?

 

 そんなもの関係ない

 

 生まれた時から敵同士なんだ

 

 全面戦争するしかないでしょ

 

環那「神?天罰?関係ないね、全部手の平で転がしてやるよ。」

燐子「え__っ!?///」

環那「逃げるよ、燐子ちゃん。」

 

 俺は燐子ちゃんを抱きかかえ

 

 動き出しをスムーズにするため重心を落とした

 

 さぁ、一か八か、負ければ燐子ちゃんと心中だ

 

 まっ、それはそれでいいのかもね

 

環那「__起きろよー!!!デブ熊ー!!!!」

猪「!!!」

 

熊「__!!!」

 

 俺はとびっきりの大声でそう叫んだ

 

 遠くで熊が起きたのを確認し

 

 同時に目の前の猪も動き出した

 

環那「燐子ちゃん、舌噛んじゃ駄目だよ!」

燐子「え__きゃああ!!」

猪「!!」

 

 声にビックリして突っ込んできた

 

 俺はそれにタイミングを合わせて飛んで

 

 ある方向に向かって猪を蹴り飛ばした

 

環那「チッ!!(重いよ、何食べてるんだか!)」

 

 俺はそんな事を考えながら走り出した

 

 勿論、このまま簡単には逃げられない

 

 精々、100m逃げるのが関の山

 

 ......普通なら、ね

 

熊「グルル......!!!」

猪「......!!!」

 

環那(よしっ、狙い通り!)

燐子(す、すごい!熊と猪を喧嘩させてる!)

 

 ここから計算式を展開する

 

 今の風向き、風速、道の傾斜、摩擦の強さ

 

 その全てを計算し、ベストな動きをする

 

 人間やっぱり知の力が全てでしょ

 

環那「あはははは!神、ざまぁみろ!!人のことバカにしてるからこうなるんだよ!!」

燐子「っ!(み、南宮君、鼻血が!?)」

 

 俺はそんな事を叫んでハイになりながら

 

 ゴールに向かって坂を駆け下りて行った

 

 この時、あまりに体が軽くて

 

 自分が自分じゃないみたいだった

__________________

 

 ”現在”

 

環那「__って言う感じだったんだ。」

リサ「いや、ヤバすぎでしょ。」

 

 ここに戻って来るまでの経緯を話すと

 

 まず最初にリサにそう言われた

 

 まぁ、本当にギリギリの状況だったしね

 

 かなりヤバかった

 

あこ「でも、環那兄かっこいいね!ヒーローみたい!」

エマ「お兄ちゃんなら当然。その気になれば、クマも倒せた。」

環那「それは流石にきついよ。燐子ちゃんいたし。」

紗夜(いなかったら出来たと聞こえるんですが?)

友希那「これはまた、大変な目に遭ったわね。」

 

 いやぁ、中々にヘビーな体験だった

 

 まぁ、燐子ちゃんと心中にならなくてよかった

 

 もう少し生きて一緒にいたかったし

 

 ......後、計画も終わらせちゃいたいし

 

リサ「さて、2人が遭難してる間に合宿1日延長したし、なにする?」

環那「そうだなぁ、取り合えず......ちょっと休みたい(切実)」

燐子「わ、私も......」

友希那「一晩野宿だったもの、疲れてるわよね。休んだらいいわ。」

紗夜「お夕飯は私達の方で準備しますので。」

 

 助かるなぁ......

 

 リサがいるし料理は安心だし

 

 ここはゆっくり休ませてもらおうかな

 

環那「夜になったら、花火でもしようか。買ってるし!」

あこ「わーい!花火だー!」

紗夜(どこまで用意してるのでしょうか......)

エマ(花火......お兄ちゃんと......///)

 

環那「行こっか、燐子ちゃん。」

燐子「うん......///」

 

 そんな会話の後、

 

 俺と燐子ちゃんはリビングを出て

 

 それぞれ、割り当てられた部屋に向かった

__________________

 

燐子「__み、南宮君......///」

 

 部屋に入る直前に燐子ちゃんに呼び止められた

 

 なんだか顔が紅い

 

 うーん、可愛い

 

環那「どうしたの?」

燐子「あの、このあと花火の時......線香花火、一緒にしたいなって///」

環那「線香花火?別にいいけど、好きなの?」

燐子「うん、好きだよ......///」

環那「っ!」

 

 やばっ、あの夜から燐子ちゃんを意識してるな

 

 意図は全く違うはずなのに

 

 表情と声色でそうとしか聞こえない

 

燐子「ま、また後でね......///」

環那「う、うん。おやすみ。」

燐子「うん......///」

 

 燐子ちゃんは頷いてから部屋に入って行った

 

 あーもう、俺のキャラ崩壊してるなぁ

 

 こんな簡単にかき乱されるなんて

 

環那「......今は、寝よっ。」

 

 俺は軽く頭を掻いてからドアを開け

 

 部屋には言ってベッドにダイブして

 

 それからは疲れからか、すぐに眠りについた

 

 

 

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