琴葉「ん、んん......っ?」
目を覚まして最初に感じたのは倦怠感
そして、激しい頭痛とお酒のにおい
所謂、二日酔いと言うものです
琴葉「あれ......なんでベッドに......?」
飲み始めてからの記憶がない
流石に今日は飲み過ぎましたね......
南宮君はどうしてるでしょう......?
琴葉(取り合えず、リビングに行きましょう......)
私はそう考え、ふらついてる体に鞭打ち
リビングに向かう事にした
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扉の外から見た感じ電気が付いてる
外も暗かったし、もう夜ご飯でしょうか?
体の状態的に全く食欲はないんですが......
琴葉(彼は今、何を__!)
環那「っ......」
リビングの扉を開け、見えた彼の姿を見て息を呑んだ
いつもの飄々とした雰囲気は成りを潜め
目つきが鋭く、険しい表情を浮かべてる
琴葉(あの表情は......?)
怒ってる......のは間違いない
けど、彼が怒るなんて
そんなこと、滅多に......
琴葉(と、取り合えず入ってみましょうか......怖いですけど。)
私は一つ息をついた後
思い切って、リビングの扉をあけた
琴葉「お、おはようございます。」
環那「あ、おはよー、琴ちゃん。」
琴葉「......?」
リビングに入ると、彼はいつも通りの笑みを浮かべた
さっきまでの表情が嘘みたいです
あの表情は一体......
環那「顔色悪いねー。シジミの味噌汁作ってるから飲みなよ。」
琴葉「あ、は、はい。」
私は彼に割れるがまま席に着きました
彼はキッチンに立って味噌汁を温めて
こっちまで味噌とシジミのいい香りが漂ってきてます
環那「かなり酔ってたからね、今気持ち悪いでしょ?」
琴葉「は、はい。」
環那「シジミは二日酔いに効くらしいから、まぁ、明日はマシになるんじゃないかな。」
いつも通りの呑気な声
多重人格だと疑うほどのギャップ
彼の情緒はどうなってるんでしょうか
環那「はい、お待ちどうさま。シジミのお味噌汁に塩ゴマのおにぎり、タコときゅうりの酢の物。」
琴葉「二日酔い特化料理ですね。」
環那「これくらいしか食べられないでしょ。」
この女子力ですよ
二日酔いにも理解があるし、ご飯も美味しい
同居人としてこんな優良物件いませんね
琴葉「そう言えば。」
環那「?」
琴葉「飲み始めてからの記憶がないのですが、何かありましたか?」
少し探りを入れてみる
もし、あの表情の原因が私なら
そう考えると少し怖い......
環那「特に何もなかったよ。ただ、酒臭くて、ウザ......いつもより元気だっただけ。」
琴葉「今、ウザイって言おうとしましたよね!?」
環那「気のせいだよ。あはは。」
琴葉(絶対に気のせいじゃない。)
酔ってる時の私ってそんなにウザいんですか?
記憶がないからすごく不安なんですけど
まさか、今まで彼氏が出来なかったのもそれが原因!?(違う)
琴葉(さっきの険しい表情は......)
環那「そろそろエマも帰って来るね。今日は簡単なご飯で済ませよっと。」
そう言って彼はまたキッチンに立ちました
自分とエマちゃんの分のご飯を用意するのでしょう
そう思ってボーっと眺めてると、こっちに話しかけて来た
環那「琴ちゃん、3日後、俺とエマ用事で家を空けるから。」
琴葉「そうなんですか?」
環那「多分、少しの間家を空けるけどご飯は......何とか頑張ってね。」
琴葉「それはいいんですが、いや、いいんですかね?」
環那「その反応、すごく心配になるんだけど。」
彼はため息をついてそう言いました
流石に少しの間くらいなら大丈夫ですよ?
自分の部屋以外は
琴葉「冗談ですよ!」
環那「まぁ、そうだよね。」
そんな会話の後、彼はご飯を作り始め
ちょうど完成した時にエマちゃんも帰ってきて
いつも通りの穏やかな時間を過ごした
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“環那”
合宿から帰って来てから3日が経った
今日の朝は少し、特別に感じる
まるで、何年も前に立てられた仮説が証明される日みたいな
何かが動き出すような、そんな感じだ
環那「変わってないな、ここ。」
エマ「変わらないよ。ここにいる奴ら、バカだから。」
環那「辛辣だね。」
俺達が今立ってるのは俺が10年過ごした家の前
なんだか懐かしいな
何回ここで死にかけたって?
環那「エマ、作戦通りに行く。この家の間取り、頭に入ってるね?」
エマ「うん、問題ない。お兄ちゃんは......言うまでもないね。」
環那「ははっ、今日はあくまで交渉だから。」
さて、こんな会話も程々にしておこう
今日はある意味で一番大切な日だし
手早く、ただし丁寧に事を進めよう
環那「エマ、所定の位置に。」
エマ「了解。」
俺が指示を出すとエマは庭の方に歩いて行った
それを確認し、俺はインターフォンを押した
『__誰だこんな時間にアポも取らないで。』
音が鳴って数秒、ドアの向こうからそんな声が聞こえて来た
年老いた男の声
昔に何度も俺をなじってきた声だ
この声を聞くと少しの怒りと懐かしさを感じる
「誰だ、常識が__っ!?」
環那「あ、久し振り~。」
「な、なぜ貴様が__!?」
環那「おっと。」
俺は締まりそうなドアを手で止め
無理矢理家の中に押し入った
さて、これで第一段階クリア
環那「まるで幽霊でも見たような顔だね。剛蔵おじいちゃん♪」
剛蔵「い、今さら何の用だ!実の母親を見殺しにしたろくでなしが!」
環那「あはは、知らないよ、そんなの。勝手に死んだんでしょ?」
まーだあのこと根に持ってたんだ
ねちっこいなぁ......
環那「まぁ、そんな事はどうでもいいんだ。今日は交渉に来ただけだから。」
剛蔵「交渉、だと?」
環那「あんたらが損する話じゃないよ?ばあさんも呼びなよ......ね?」
剛蔵「っ!!」
俺が放つ雰囲気を察してかじいさんは俺を家に上げ
予想通り、客間に通された
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「なっ......!?か、環那......!?」
環那「おひさー、歌代おばーちゃん。」
俺を見たらみんな似たような反応するな
もう少し捻った反応見せて欲しい
存在自体がお笑い芸人みたいなもんなのに
歌代「な、何しにここに......?」
環那「交渉だって。そんなに警戒しないでよ。」
俺は笑いながらそう言った
この一族、俺の事嫌い過ぎじゃない?
悲しくて泣いちゃいそうだ......嘘だけど
剛蔵「交渉とはなんだ。貴様がここに来るということは、碌なことではないのだろう。」
環那「それは立ち位置によるさ。けど、あんたらは悪いようにはしないよ。月に米一合貰ってた分は優しくしてあげるよ。」
剛蔵「......要求は。」
低い声でそう尋ねて来た
ふむ、このじいさん、意外と頭使えるな
まっ、関係ないけど
環那「この家の財産の全て、それと株式会社Palaceの全権利を俺によこせ。現会長、南宮剛蔵殿。」
剛蔵、歌代「!!!」
そう言うと2人は目を見開いた
あはは、まぁ、そう言う反応になるよね
そして、絶対に受け入れるわけないよね?
普通なら......の話だけど
剛蔵「そ、そんな要求が通ると思ってるのか!?たわけが!」
環那「まっ、答えを出すのは少し待ってよ。持ってきたお土産でも見てから、ね。」
剛蔵「こ、これは__なっ.....!?」
そう言って、スッと俺はある書類を机に置き
それを見た瞬間、じいさんの顔が青ざめた
まぁ、そうなるよね
控えめに言って、対南宮家最強兵器だし
環那「情報の方はまだ俺と協力者達しか知らないよ。まぁ、これが外に漏れたりしたら。」
剛蔵「......わ、我が社は、終わりだ......」
歌代「えぇ......!?」
環那「クフフ......あはははは!」
じいさんはカタカタと震え
ばあさんの方は冷や汗をダラダラと書いてる
やっと自分の置かれた状況を理解したみたいだ
......とんでもない、窮地って事に
環那「さぁ、どうする?答えは一つだと思うけど?」
剛蔵「......き、貴様の要求を呑む。この家の財産もすべて生前贈与するものとする......っ」
歌代「あなた......!」
剛蔵「仕方あるまい......こいつの持ってる情報が外に漏れれば、社員全員が路頭に迷う事になる......」
環那「賢いねぇ。じゃあ、この書類にサインして、一筆書いてね。」
なんだ、意外とちゃんと経営者してるじゃん
ちょっと見直した
まぁ、だからと言って容赦はしないけど
剛蔵「......出来たぞ。」
環那「要求は通ったし、あんたらの身の安全は保障するよ。」
全ての記入が終わり
俺は軽く肩を回した
すると、じいさんが目を見開いて俺の方を見た
剛蔵「貴様、すべて奪う気だったのか......!?最初から......!?」
環那「さぁ、どうだろうね。」
俺はそう答えながら書類をまとめ
それらを鞄にしまった
あまりに順調すぎて面白くないな
準備が完璧すぎた
環那「あ、そう言えば。」
剛蔵「今度は何だ......」
環那「あのバカ親が俺を嫌ってる本当の理由、知ってる?」
剛蔵、歌代「......!!」
環那「知ってるんだ。」
面白いくらいわかりやすい
まぁ、これは少し気になってたのだし
別に知ろうが知るまいがどっちでもいい
環那「ついでだし教えてよ。」
剛蔵「......それはお前が__だからだ。」
環那「......」
歌代「だからあなたは、望まれてない子供だったのよ。」
環那「......ふーん。」
これは、良いネタゲットだ
思いもよらぬところで拾い物しちゃった
これは明日、かなり使えそう
環那「情報提供、ご苦労......さようなら。」
剛蔵、歌代「え__っ!」
エマ「......」
俺がそう呟いた瞬間
エマは後ろから2人の首元に注射針を突き刺した
2人は愕然とした表情を浮かべながら
俺とエマの姿を見上げてる
歌代「あ、あなた、は......」
剛蔵「エ、マ......な、ぜ......」
エマ「これもすべてお兄ちゃんのため。あなた達への恨みはそこまで強くないけど、お兄ちゃんのために大人しくしてもらう。」
老人2人は畳の部屋に寝ころび、動かなくなった
だけど、別に死んだわけじゃない
今死なれても都合悪いしね
生かせる駒は最後まで使い潰すのが基本だから
環那「エマ、この2人はノア君に頼んで研究室へ。」
エマ「もう連絡済み。ことが済めば施設にでも突っ込む。」
環那「それでいいよ。身の安全を保障するって言う約束は守ってるし。」
さて、ここでやることは全部終わった
後はメインイベント
今日得た武器も使って、クソジジイをぶっ潰す
......どんな顔するかな
環那「帰ろうか。」
エマ「お兄ちゃん。」
環那「?」
歩きだそうとするとエマに呼び止められた
俺は後ろを振り向き
少しだけ視線を落とした
エマ「私はお兄ちゃんがどんな存在でも愛してる。」
環那「ははっ、そっか。嬉しいよ」
エマ「......♡」
環那「帰るよ。今日、これ以上南宮の奴らとエンカウントする予定はないから。」
エマ「了解、お兄ちゃん♡」
俺達はそんな会話の後、家を出て
すぐに琴ちゃんの家に直帰し
九十九と人見と新太に成功の連絡をし
明日に備えるように指示を出した