“リサ”
合宿から帰って来て4日
あたしは今、友希那と一緒に宿題をしてる
流石にしないわけにもいかない
だけど......
リサ「わ、分かんない......」
友希那「何よ、これ......」
あたし達は絶賛、数学で躓いてる
こういう時に環那がいればなぁ......
数学最強で教え方上手いし
リサ「受験生だからってこんな問題出す?」
友希那「環那かエマ、日菜しか解けないんじゃないかしら......?」
リサ「マジでそれ......」
今日に限って環那は用事だし
エマも勿論くっ付いて行ってるし
日菜に関してはアイドルの仕事以前に教えるのに向いてない
間が悪いなぁ......
友希那「これは後回しにして今度環那に教えてもらう方がいいわね。」
リサ「そうだねー__ん?」
友希那「電話?」
友希那と話してると、机に置いてる携帯が鳴った
画面を確認すると、電話の相手は燐子からで
衣装の確認かな?と思い、通話を開始した
リサ「もしもーし、どうしたのー?」
燐子『あ、い、今井さん......』
リサ「え!?ど、どうしたの!?」
電話での燐子の声を聞いて、驚いた
今にも泣きだしそうな声
いや、もう泣いてるかもしれない
これはただ事じゃない
燐子『お父さんが......もう、バンドも......うぅぅぅ......!!』
リサ「え、お、お父さん!?バンドが何!?え、ほんとにどうしたの!?」
友希那「リサ、何が起きてるの?」
リサ「わ、分かんない。ちょ、今から家行くから!」
あたしはそう言って電話を切り
バッと友希那の方を向いた
リサ「り、燐子の家行こ!今すぐ!」
友希那「え、えぇ!」
あたし達はそう言って立ち上がって
一応、環那にメッセージを送ってから
急いで燐子の家に向かった
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真夏の空の下を走って
あたし達は燐子の家に来た
そこには紗夜とあこもいて
2人の表情からも事の重大さが伝わってきた
リサ「紗夜、あこ!一体何があったの!?」
紗夜「わ、分かりませんよ。白金さんが泣いてて、私達も大慌てで来たんですから!」
燐子「__あ、み、皆さん......」
あこ「りんりん!?どうしたの!?」
家の前で話してると燐子が出て来た
泣いてたのか目が真っ赤に腫れ上がってる
ほんとに、何があったの......?
燐子「......お父さんが、会社をクビになって、身に覚えのない責任を負わされて......会社にお金を請求されてて......」
紗夜「なんですかそれは!?」
リサ「燐子のお父さんの会社て?」
燐子「palace銀行......です。」
リサ、友希那「っ!(そ、その会社......!)」
覚えがある会社の名前
この会社、環那の親の会社だ
確か、色んな事業をしてて
日本の中でも数多くグループの会社がある
リサ(ま、まさか......)
環那「__燐子ちゃーん!何があったのー!?」
燐子に事情を聞いてると環那がいきなり走って来た
その傍らでエマも抱えられてる
けど、その状況に突っ込んでる暇はない
リサ「今日、用事なんじゃなかったっけ?」
環那「燐子ちゃんが泣いてるって言うから死ぬ気で走って来た。」
環那は涼しい顔でそう言った
けど分かる
この表情、絶対にキレてる
『燐子ちゃんを泣かせた奴は地の果てまで追いつめてやる』って分かりずらいけど顔に出てる
環那「リサ、状況を説明して。」
リサ「えっと、まず__」
あたしは燐子に効いた内容を説明した
話が進む度、環那の額に青い血管が浮かんできて
話してるあたしが正直、一番怖かった
環那「......なるほどね。孫請け会社だから、燐子ちゃんのお父さんに圧力かけたわけか......俺と仲いいから。」
あこ、紗夜「っ!!」
話を終えると環那は目に見えてキレた
怒鳴り散らすタイプじゃないけど
見た瞬間にキレてるって分かる
てか、若干だけど血管破裂してない?
環那「ごめん燐子ちゃん、これは俺のせいだ。」
燐子「え......?」
エマ「やってくれたね、あのゴミども。よりによって燐子に被害を出すなんて。」
環那「はぁ......マジでぶっ殺す、あいつら。臓物抉り出してハンバーグにして黒焦げに焼いて詰め直してから豚の餌にしてやる。」
紗夜「み、南宮さん!?」
環那「あぁ、ごめん、つい本音ゲロっちゃった。」
やばいやばいやばい
今まで見たキレ方で一番ヤバい
中二のあの事件の時よりヤバいかも......
環那「中々、悪くない手を打ってくれるなぁ......1億手おせぇけど。」
あこ(く、口調すら変わってるよ......)
環那「いやぁ、本当に申し訳ない。申し訳なさ過ぎて殺意が湧いてきた。」
こりゃダメだ
目が完全に血走ってる
瞳孔開きまくってるし、人殺しそうな目してるよ
環那「けど、大丈夫。あいつらの愚行は全部あいつらに帰るよ。」
燐子「......!」
環那はそう言って、燐子の頭を撫でた
安心させるような優しい手つきだ
エマ「お兄ちゃん、あいつ、殺す?」
環那「殺す......のもいいけど一瞬で終るじゃん?もっと良い事思いついた。」
友希那(こ、怖いわね。)
環那「まぁ、みんな何も問題ないさ。今頃、あいつは......」
環那はスッと目を瞑り
少しだけ口角が上がった
環那「......自分の理解が及ばない事態に、困惑してる頃だよ。」
そう言って、環那は目を見開いた
その目はまるで濡れた刃物のようで
あたし達は喉元に刃物を突き付けられたような感覚に襲われた
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“とあるビル”
『__おいこら、クソ社長ー!!』
『今まで散々こき使いやがって!!』
『今までの事全部訴えてやる!!』
『やめちまえ無能が!!!』
真夏の日の高層ビルの前
そこで、何人もの社員の怒号が響いている
その口調は一つ一つが荒々しく
誘爆する爆弾のように声が広がっていた
源蔵「な、なんだこれは!?何が起きてる。」
「わ、分かりません!ですが、さっき取締役会から、社長を解雇すると......」
源蔵「なんだと!?そんな馬鹿なことがあるか!親父は何をしてる!?」
「それが、会長は昨日から連絡が途絶えていまして......」
源蔵「なん、だと......!?」
源蔵は理解できないと言った様子で机を叩いた
机の上にある書類がバサバサと床に落ちる
だが、そんな事を気にする余裕もなく
社長室の中を忙しなくウロウロしている
源蔵(どうなってる!?従業員の犯行、取締役会の裏切り、親父との音信不通......一体、私の身に何が起きているというんだ!?)
「しゃ、社長、お電話が......」
源蔵「誰だこんな時に!?」
源蔵はそう言いつつ電話に出た
もしかしたら、父親かも知れない
そう言う期待もあったのかもしれない
『__もしもーし、余興は楽しんでくれてるー?』
源蔵「っ!き、貴様は......!」
環那『環那だよー?可愛い可愛い息子のね♪』
電話の向こうからはピエロのような陽気な男の声
からかうような軽薄な口調
その奥から感じる邪悪な雰囲気
源蔵は受話器を耳に当てたまま背筋が凍った
源蔵「き、貴様、まさか......!」
環那『気付いちゃった?気付いちゃったよねぇ!そう、そうだよ!俺が全部奪ってやったよぉ!あはははは!』
源蔵「こ、このクズがぁ......!!」
電話の向こうの煽るような口調にイラついたのか
源蔵は激しく歯ぎしりをし
持ってる受話器を握りしめた
環那『オジーちゃん達、連絡取れないでしょ?』
源蔵「っ!」
環那『2人は今頃ボケてるんじゃない?その前に一筆書いてもらってさ、その会社と南宮の全財産、俺が全部貰っちゃったんだよねぇ!』
源蔵「なっ!?なんだと!?」
環那『勿論、あんたらの取り分はないよ?税金で持っていかれる分もあるし!』
源蔵はその言葉に愕然とした
まさかの味方だと思ってた身内の裏切り
予想しうる中で最も最悪な事態が起き
状況を理解することを頭が拒否してる
環那『絶望してる?してるよねぇ!?でも足りない......もっと、もっともっともっともっともっと!!絶望させるよ!!随分舐めたことしてくれたからねぇ!!』
源蔵「な、んだと......まさか、白金のことか......!」
環那『まぁ、もうお前には何の権限もない、ただのゴミだ!あはは、無様だねぇ!無様無様無様!!ザマァ!!』
そんな声に源蔵は頭を抱え
綺麗なカーペットを敷いた床に膝をついた
その額には脂汗が滲んでおり
今の精神状態を表しているようだった
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“環那”
環那「もしもし、私、環那さん。今、ビルの前の交差点にいるの。」
俺はどこかで聞いたホラーな女の子みたいなセリフを口にした
まぁ、この言葉通り
今、俺は高層ビルの前に立ってる
環那「じゃあ、また後で会おうねぇ。」
俺はそう言って電話を切った
あー、変な演技するの疲れた
喉ぶっ潰れるよ、ほんとに
新太「__これもすべて、お前が仕組んだことか。」
環那「ん?そーだよー。全部予定通り。いや、あいつらの嫌われ方は想定外だったかな。」
新太「流石は貴様の親族だ。」
エマ「お兄ちゃんを馬鹿にしないで、この無能。お兄ちゃんはあんな奴らとは違う。」
新太「......なんだと?」
環那(わー、また喧嘩してるー。)
この2人、ほんとに仲悪いな
まぁ、原因は10割俺なんだけどね
環那「行くよー2人とも。喧嘩は終わった後にしてねー。」
エマ「お兄ちゃん、奪いに行こう。」
環那「そうだね。役に立ってよ、新太。」
新太「......ふん、利害が一致してるうちはな。」
そんな会話の後、俺達は歩きだし
ビルの前に出来てる人混みの中に入って行った
物凄い怒号が飛び交ってる
下手したら鼓膜破られそうだ
結実「あ、か、環那さん!」
環那「あ、結実さん。おひさー。頑張ってるねー。」
前の方まで行くと見知った顔があった
結実さんに保奈さんに麗さん
この3人、拾い物だったけど大当たりだった
ここまでの賛同者を集めてくれるなんて
流石に優秀と言わざるを得ない
麗「妹さんに、そちらの方は?」
環那「今回の切り札だよ。」
保奈「えっと、その人、見たことあるんですけど......」
新太「......」
環那「かもねー、テレビとかで見たんじゃない?」
そう言いながらさらに歩を進め入り口の前に立った
けど、自動ドアは固く閉ざされて開く気配がない
慌てて閉めたのかな?
みんな良識があるだろうし、壊すような真似しないと思って
環那「まっ、人間が全員、良識があるとは限らないよ......ねっ!!」
新太、エマ「!」
周りの人間『!!!?』
俺は喋りながらガラスのドアを蹴った
すると、ガラスには大きなヒビが入って行き
数秒遅れて、入り口のドアのガラスは大きな音を立てて砕け散った
新太「......化け物め。」
環那「はいはーい、突撃突撃ー。」
エマ「お兄ちゃん、素敵♡私も壊されてみたい♡」
環那「いや、流石にしないよ。お気に入りのものは綺麗に取っておきたいから。」
エマ「お気に入りなんて......♡私は幸せ♡」
結実、麗、保奈「え、えぇ......(ドン引き)」
周りの人間(あ、あの人、何者......?)
そんな会話をしながら俺達はビルに入った
て言うか、エレベーター使えるかな
階段で登るの面倒くさいんだけど
なんて事を敵地に侵入してから考えるのだった