”源蔵”
生まれた瞬間から、私は勝者だった
名家と呼ばれる家に生まれ
日本でもトップと言われる大学を卒業し
元モデルで高学歴な妻、椿姫と結婚
その数年後、大企業の社長になった
正に順風満帆な人生、私こそ選ばれし者
その、はずだった......
源蔵(な、なぜだ!なぜ、また......!)
過去に1度だけ奪われたことがあるが
また魔の手が迫ってきている
なぜだ?
私は生まれついての勝者だったはずなんだ
なぜ、そんな私が、あのゴミなんぞに......!
環那「__お邪魔しまーす!クソバカ野郎☆」
源蔵「!!」
「ひ、ひぃ!お、お前はぁ!」
環那「潰しに来たぞ、可愛い可愛い燐子ちゃんの代わりに。」
その化け物は社長室の扉を蹴り破り
この前潰した男の娘の名前を呼びながら
温度を感じない目で私を見下ろしていた
”環那”
本当にこいつ、エレベーター止めてた
そのせいでマジで階段で上がらざるを得なかった
マジで殺したい
環那「うっ......!」
源蔵「!」
俺はクソジジイの顔面を見て頭を抱えた
頭が痛すぎる
あぁ、ダメだダメだダメだ
こいつを見てると......
環那「あー......殺意湧いて来たぁ。今すぐ臓物引きずり出して殺してぇなぁ。」
源蔵「っ!」
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
っと、ヤバいヤバい
燐子ちゃんを泣かされた怒りが溢れて来た
ちょっと落ち着いて殺......
じゃなくて、潰さないと
源蔵「これは、貴様の仕業か......!」
環那「だいせいかーい。よく出来ました~。お祝いとして良い物見せてあげる~。」
俺はそう言って目の前に写真と書類を出した
さて、まずはオードブルをサーブだ
源蔵「こ、これは......!」
環那「その写真、良く撮れてるでしょ~?」
源蔵「親父に、お袋......!?」
環那「見ての通り、2人はボケが始まりました~。もう読み書きどころか会話もできないだろうね!」
クソジジイに渡したのは
リサ達が使ってたカメラアプリで撮った写真
猫の耳とか付いてて素晴らしい写真だ
じいさんばあさんも12歳くらい若返ったように見える
環那「ちなみにそっちの書類はこの会社の主要な出資者と俺が話し合いした時に書かせた契約書。内容見れば、分かるよね?」
源蔵「み、南宮源蔵が代表取締役社長を継続する場合、出資を完全に打ち切るものとする......だと!?」
環那「いやぁ、弱みを握ったら簡単だったよ。」
源蔵「ば、バカな!!日本でも有数の資産家たちだぞ!?そう簡単に......」
環那「簡単にできるんだよね。その道のスペシャリストが俺のチームにいるから。」
そのスペシャリストは人見だ
人見は所謂、美人局を生業としてる人間で
今まで何人もの男を手籠めにして
お金を揺すり取ってきた、超スペシャリストだ
環那「さて、次だ。」
俺はそう言ってもう1つの書類を出した
正直、昨日までこれがメインデッシュだった
けど、それはあくまで昨日までの話だ
源蔵「な、なんだこれは......!」
「こ、この、印鑑は......」
環那「そう。それは正真正銘、現会長......いや、今は元会長かな?が書いたものだよ。」
源蔵「あ、ありえない......!なぜ、貴様なんぞに......!」
おぉ~、効いてる効いてる
こんなくっだらない事で
まだディナーで言うと肉料理なのに
環那「まぁ、つまり、今のお前は俺に全部奪われたんだよ。お前が誇ってきたものせーんぶ、ね?」
源蔵「ふ、ふん、この甘たれ小僧が。全部奪っただと?貴様が私からすべて奪うなど不可の__」
エマ「__本当にそう言える?」
源蔵「!!?」
環那(あ、出て来ちゃった。いいんだけど。)
エマが出て来てまた流れが変わった
クソジジイは彼女寝取られた男みたいな顔してる
そりゃそうか
だって、
源蔵「な、何故......エマが!?」
環那「何故、か。エマ。」
エマ「うん。」
俺が呼ぶと、エマはこっちに歩いて来て
ギュッと腕に抱き着いてきた
ここまでしろとは言ってないんだけど......
まっ、クソジジイがダメージ受けてるし、いいや
エマ「お兄ちゃん、愛してる♡」
環那「こういう事だよ。」
源蔵「な、な......っ!」
環那「あはは!奪っちゃったぁ!」
つい笑いが漏れてしまった
俺の想像以上に良い反応を見せてくれてる
間抜けでバカっぽくて滑稽で
......あー、楽しい
源蔵「き、貴様ぁ......!」
環那「ねぇ、どんな気持ち?クソババアの命奪われて、ご自慢の会社奪われて、ついには娘まで奪われてどんな気持ち?悔しい?悔しいよねぇ!?あははは!!」
源蔵「くっ、クソが......っ!」
環那「言葉遣いが汚いよー?......もっと弁えろよ、ゴミが。」
さて、そろそろトドメを刺して行くか
これ言ったら、どんな顔するかなぁ......
そんな事を考え俺は口角が自然と上がり
そのまま、クソジジイに話しかけた
環那「この奪われる感じ、懐かしいでしょ?」
源蔵「......っ!な、何を__」
そう言うと、クソジジイはピクッと反応した
そう、これが昨日できた新しい切り札
こいつにトドメを刺すのに、最高のカードだ
環那「お前のことが大嫌いなレ〇プ男にだーい好きなクソババアの処女奪われたときの気分、思い出して来たぁ?」
源蔵「っ!!」
環那「くふふっ。」
俺が煽るようにそう言った瞬間
クソジジイは俺に掴みかかってきた
けど、その動きがあまりにも遅すぎて
エマを抱きかかえながらそれを回避した
源蔵「この......!」
環那「俺、クソババアをレ〇プした男の子供だもんねぇ!そりゃ嫌いなはずだよねぇ!だって、俺を見るたびに惨めになって、敗北感味わって......あはははははは!!」
源蔵「黙れぇぇぇぇえ!!!」
クソジジイは性懲りもなく攻撃を仕掛けてくる
俺はそれを難なくかわし
ついでに鳩尾に膝蹴りをお見舞してやった
源蔵「ぐふっ!!!」
環那「学習しろよ。脳みそ入ってんのー?」
源蔵「き、さまも......あの男のように......!」
環那「んー?なんてー?」
そう言って俺は耳を傾けた
もう9割煽りモードだけど
そろそろ楽しい時間は終わりかな
源蔵「貴様の、あの男の様に殺して、山に埋めてやる......!!」
環那「えー、そんなことしたのー?(知ってるけどー)」
源蔵「あ、あぁ、そうだ。あの男は椿姫を襲った後に殺し、近くの山の奥に埋めてやった!お前も同じようにしてやる!このクズが!」
環那「へぇ、だって、新太ー。」
源蔵「は?」
俺は社長室の外に話しかけた
すると、壊れたドアの外から新太が入って来て
床で蹲ったまま表情が固まってるクソジジイの前に立った
源蔵「な、なぜお前がここに......!?」
新太「やっと捕まえたぞ、南宮源蔵。」
源蔵「け、警視総監、加持新太......!!なぜ、この男についてる......!!」
環那「クフフ、チェックメイト。」
これが今回の切り札、加持新太だ
新太は史上最年少で警視総監になった天才
学力、身体能力、信念が備わった最高の警察官
そう呼ぶ人間もいるほど、優秀な人間(駒)だ
新太「自白は取った。貴様を保護者責任遺棄罪、殺人罪、死体遺棄罪の容疑で逮捕する。」
源蔵「な、なんだと!?」
環那「あーあ、まんまと引っかかったねぇ。」
俺は溜息を付きながらそう言った
いやぁ、昨日の話聞いててよかった
想像以上に簡単に自白取れたよ
これがなかったら後15分はかかってた
源蔵「なぜだ!?なぜ、私が奪われないといけない!クズのお前に!クズの子のお前なんかにぃぃぃ!」
環那「知らないよ。ただ、お前が搾取される人間で、俺が搾取する人間だった。それだけの事でしょ。」
源蔵「うぐっ!く、クソ!殺してやる!何年かけてでも!貴様だけはぁぁ!」
新太「貴様が生きてる間に檻から出られたらな。」
新太はクソジジイに手錠をかけて取り押さえ
俺に向かってそう喚いていた
逮捕されたことはあるけど、人が逮捕されるのは初めて見た
うわぁ、おもしろ
新太「......貴様に協力するのはここまでだ。」
環那「うん、ありがとうね。新太。」
新太「ふん。」
源蔵「クソ!クソ!クソがぁぁぁ!!!」
クソジジイは新太に引っ張られ
段々と叫び声が遠のいて行った
残されたのは俺とエマ、そしてクソジジイの腰巾着
俺は腰巾着の方を睨みつけ、口を開いた
環那「もう帰っていいよ。君の処遇は追って伝える。」
「ひ、ひぃぃぃぃ!!」
腰巾着は情けない声を上げて逃げていった
まぁ、所詮はこの程度だよね
情けない
環那「......はぁ。」
エマ「お兄ちゃん......」
エマ以外誰もいない部屋の真ん中で腰を下ろした
あまりに呆気なかった
6歳から準備を始めたこの作戦
準備の長さの割に、美味しい部分少なかったな
環那(最終的に手に入ったのは会社だけか。下らな。)
正直、会社を手に入れたのもダメージを与えるためで
別にお金とか地位とかどうでもいい
好きなように生きられなくなるだけだし
環那「なんだか、疲れたね。」
エマ「私はお兄ちゃんに密着できて幸せだった。」
環那「ははっ、そっか。」
エマはどんな状況でもブレないなぁ
まぁ、面白いからいいんだけど
環那「......ほんと、何なんだろうね、俺。」
エマ「お兄ちゃんは、お兄ちゃん。」
環那「エマ?」
俺がそう呟くとエマは手を握ってきた
小さくて柔らかい手だ
けど、かなり冷たい
エマ「私の愛するお兄ちゃんはこの世で1人。」
環那「?」
エマ「しかも、父親が違うからスウェーデンで結婚できるよ♡」
環那「......ははっ、面白いね、エマは。」
俺はそう言って立ち上がって
恍惚とした表情を浮かべたエマの手を引いた
俺の作戦は終わったけど
結実さん達や他の賛同者との約束もあるし
もう少し、仕事あるや
環那「下の皆と九十九と人見に勝利宣言しようか。エマ、もう少しついて来てね。」
エマ「いつまでもついて行くよ♡私の命はお兄ちゃんの物だから♡」
環那「そっか。」
俺とエマはそのまま2人でビルを出て
ビルの前に集まってる皆に勝利宣言をした
その時に『社長、社長!』って祭り上げられ
すごい持ち上げられまくってたけど......
何と言うか......すごい面倒だった