羽丘の元囚人   作:火の車

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デート

 俺と燐子ちゃんはショッピングモールに来た

 

 ここに来たのは帰って来てから2回目だけど

 

 店も増えて、映画館とかもあって

 

 俺が捕まる前よりかなり進化してる

 

環那「__ここだよ、目的地。」

燐子「ここは......美術館?」

環那「そうだよ。」

 

 軽く頷いてそう答えた

 

 正直、行くところはかなり迷ったけど

 

 燐子ちゃん、騒がしい所は苦手だろうし

 

 友希那の意見も取り入れて、ここにした

 

環那「さっ、入ろっか。」

燐子「う、うん。(す、すごい雰囲気......)」

 

 俺と燐子ちゃんは少しだけ歩き

 

 受付のある場所に行った

 

受付「いらっしゃいませ。」

環那「この間予約した南宮です。」

受付「南宮様ですね。お話は伺っております。」

 

 受付は手早く端末を確認し、そう言った

 

 この人、仕事早いな

 

 流石は金持ちばっかり来る美術館の受付

 

受付「ごゆっくりお楽しみください。」

環那「はい、ありがとうございます。」

燐子「は、はい......(環那君、堂々としてる......)」

環那「行こう、燐子ちゃん。」

燐子「う、うん。」

 

 俺は軽く燐子ちゃんの手を引き

 

 美術館の中に歩いて行った

__________________

 

 美術館の中は中世の城のような内装で

 

 周りにはスーツを着た小綺麗な人間がいる

 

 まぁ、そう言う場所だから当然だけど

 

燐子「あ、あの......ここって......?」

環那「ちょっと金持ってる奴らが集まる美術館。静かだし、いい場所でしょ?」

燐子「ふ、雰囲気が......」

環那「大丈夫。燐子ちゃん、この空間にいる中で1番綺麗だから。」

燐子「それは違うと思うけど......そう言う問題なの......?」

 

 燐子ちゃんは不思議そうに首を傾げてる

 

 正直、俺もよくわかんないけど

 

 まぁ、可愛いは正義って言葉があるくらいだし

 

 問題ないでしょ

 

環那「ほら、これ見てよ。」

燐子「わっ、すごい。教科書で見たことあるのだ......!」

環那「俺は見たことないなぁ。中学は碌に通ってなかったし。」

 

 美術の授業かー

 

 俺、絵とかすごい下手なんだよね

 

 なんか作図みたいになって、豆腐みたいに味がしない

 

 なんて事を考えながら、心の中で嘲るように笑った

 

 “燐子”

 

燐子「なんだか、不思議だよね。」

環那「え?」

燐子「色合いは現実とは全然違うのに、なんだか妙に説得力があって。まるで、夢の中みたい。」

 

 ふと、そんな言葉を口にした

 

 なんだか絵を見たら色んな感情が浮かんできて

 

 それを環那君に言いたくなった

 

環那「夢の中......か。」

燐子「どうしたの......?」

環那「黒しかないなーって思って。」

燐子「......!」

 

 環那君は無機質な声でそう言った

 

 それを聞いて、失言だと思った

 

 夢はその人が一番強く残ってる出来事が出やすい

 

 黒って事は......真っ暗な場所

 

 そして、環那君が育ったのは屋根裏部屋......

 

燐子「か、環那君......!」

環那「え?」

燐子「もう、1人じゃないから......!あの部屋には戻らなくていいから......!」

環那「あの、何の話......?」

燐子「え......?」

 

 環那君の言葉に私は首を傾げる

 

 なんだか、会話がかみ合ってる気がする

 

環那「俺、夢とか見たことないから、その部分の記憶はなくて真っ暗だな~ってだけど。ちょっと誤解があったね。」

燐子「~!///」

環那(あー、本気で誤解させちゃったやつかー。燐子ちゃんには過去にあったこと、話してるもんね。)

 

 顔が一気に熱くなる

 

 まさか、こんな誤解してたなんて......

 

 恥ずかしすぎるよ......

 

燐子「う、うぅ......///」

環那「燐子ちゃんがいい子過ぎて感無量だよ。流す涙は枯れてるけど。」

燐子「は、恥ずかしいから......やめて......///」

環那「あはは、顔真っ赤だね。」

 

 環那君は楽しそうに笑ってる

 

 笑い事じゃない......

 

 けど、いいのかな

 

 私なんかで楽しんでくれてるから......

 

環那「まっ、見たい物まだあるし、行こっか。」

燐子「え、あ、うん......///(手......///)」

 

 自然な動作で手を握ってくれて

 

 無理のない範囲で私を引っ張ってくれる

 

 それがすごく逞しくて、かっこいい

 

環那「燐子ちゃんについて、友希那達に色んな話を聞いたんだ。」

燐子「え、そうなの......?」

環那「うん、中々面白い話を聞けたよ。」

 

 ど、どんな話を聞いたんだろ

 

 ちょっとだけ怖いけど......

 

 き、気になる

 

燐子「ど、どんな話を聞いたの......?」

環那「さまざまな芸術分野の才能を持ち、音楽とそれを合わせ、『自分の世界』を築ける人間......だって。」

燐子「そ、そうなんだ......///」

 

 そんなに褒めてくれてるんだ

 

 すごく嬉しい......

 

 環那君はどう思ってるのかな......?

 

環那「俺もそう思うよ。燐子ちゃんがピアノを弾いてる映像、見せてもらったから。」

燐子「え?そうなの?」

環那「うん。すごくいい演奏だった。ピアノの音色、演奏する燐子ちゃんの姿、その全てがかみ合ってて、見る者も聴く者も楽しませられる、芸術だと思った。」

燐子「......///」

 

 環那君もすごく褒めてくれてる

 

 言いすぎだと思うけど......

 

環那「Roseliaの衣装も燐子ちゃんが作ってるって聞いたし、ほんとにすごいと思う。」

燐子「そ、そんな......好きでしてることだから......///」

環那「ははっ、そっか。っと、着いた。」

 

 話をしながら歩いて

 

 少し奥の所にある、広い空間まで来た

 

 お城にあるみたいなキラキラしたシャンデリア

 

 そして......

 

燐子「__!」

環那「これを見せたかったんだ。」

 

 壁一面を覆いつくすほどの巨大な絵

 

 今まで見たことも無いはずなのに

 

 なぜか、妙に見覚えがある

 

 そう思って少し考えたら、すぐに答えが出た

 

環那「この絵はNeo Fantasy Onlineの旅立ちの村のモデルになった絵だよ。」

燐子「す、すごい......!ほとんどゲームそのまま......!」

環那(嬉しそうだなぁ。)

 

 自分の好きなゲームの題材になった絵

 

 何度も見た景色だけど、少しだけ違う所もある

 

 これがドラマのロケ地に来た時の気分なんだ(?)

 

燐子「な、なんでこれがあるって知ってたの?」

環那「ん?あぁ、製作者に聞いたからだよ。」

燐子「え?」

環那「?」

 

 え、今、製作者って言ったよね?

 

 会ったことあるの?

 

燐子「あ、会ったことあるの?」

環那「プログラマーにはちょっとしたコネがあってね。」

 

 環那君、やっぱりすごい人なんだ

 

 大企業の社長さんにもなったし

 

 NFOの製作者さんに会ったこともあるし

 

 普通の人とは全然違う

 

燐子「す、すごいコネだね。」

環那「コネはいくらあってもいいからね。プログラマーの他には新聞記者とか学者とか大学教授、あとはやく......」

燐子「やく?」

環那「......役者のお兄さんとかかな。」

燐子「?」

 

 今、環那君が一瞬だけ止まった?

 

 どうしたんだろ?

 

 役者のお兄さんが何かあったのかな?

 

環那「あ、役者のお兄さんは燐子ちゃんには会わせられないよ?燐子ちゃんがイケメンなあの子を好きになったら困るし。」

燐子「それはないよ。」

環那「く、食い気味だね。」

 

 ちょっとだけムッとした

 

 私、そんなに軽いつもりない

 

 外見だけがカッコいい人なんて興味ないもん......

 

燐子「私は......環那君だから、好きになったって思ってるから......///

環那「......そっか。ははっ、良かった。」

燐子「......///」

 

 環那君は嬉しそうに笑った

 

 また新しい表情を見られた

 

環那(......これは。)

燐子「?」

環那「行こうか、燐子ちゃん。」

燐子「うん。(どうしたんだろう?)」

 

 環那君はそう言って私の手を握り

 

 美術館の中をゆっくり歩いて

 

 色んな作品を2人で見たりして、時間を過ごした

__________________

 

 “環那”

 

 美術館を満喫して

 

 お昼になったので予約してたレストランに来た

 

 ショッピングモールから少し離れたビルにある場所で

 

 景色が綺麗で人気のある店だ

 

燐子「__こ、こんな所も予約してたんだ。」

環那「お昼時だからね。我ながらいい時間配分。」

 

 燐子ちゃんは落ち着かない様子で周りをキョロキョロしてる

 

 こういう場所に慣れてないのかな?

 

 なんだか可愛らしいな

 

ウェイター「お待たせいたしました。」

環那「あ、どうも。」

燐子「あ、ありがとうございます。」

 

 ウェイターが静かに料理を置いた

 

 綺麗な芸術品のような料理

 

 量的にはこれで足りるのかと思うけど

 

 まぁ、俺は足りるけど

 

燐子「こ、こんな良い物、食べてもいいの......?」

環那「大丈夫だよ。」

燐子「う、うん、そうだよね......」

 

 燐子ちゃんは軽く頷いてから

 

 オズオズと料理を口に運び始めた

 

 手つきを見た感じテーブルマナーは知らないと思う

 

 けどまぁ、気にしなくていいでしょ

 

環那「......(普通。)」

 

 料理の味は普通だ

 

 燐子ちゃんの料理の方が美味しかったかな

 

環那「どう?燐子ちゃん。」

燐子「え、えと......緊張で、味が分からない......」

環那「ははっ、面白いね。」

燐子「お、美味しいとは思うんだけど......」

 

 落ち着かない様子で食事する燐子ちゃんは面白い

 

 俺の期待通りの反応だ

 

 そんな事を考えながら、食事を進める

 

環那(っと、もう食べ終わっちゃった。やっぱり量少なかったな。)

燐子「あ、そ、そう言えば。」

環那「?」

燐子「その、こういうレストランって夜に来るイメージがあったけど、今日はお昼なんだね?」

環那「あー、そういう事ね。」

 

 燐子ちゃんがそんな疑問を口にした

 

 あー、俺の予想通りの疑問だ

 

 86%くらいの確率で言われると思ってた

 

環那「まぁ、色々事情があってね。夜はダメなんだ。」

燐子「事情......?」

環那「......聞きたい?」

 

 俺は少し、声のトーンを下げてそう言った

 

 これは流石に隠さないといけないからね

 

 ちょっと真面目な感じだしとこ

 

燐子「い、いいかな......?」

環那「あはは、だよね。」

燐子(い、一体どんな事情が......?)

 

 一体どんな事情が......って考えてるね

 

 今見られる情報だけで大体わかる

 

 お、驚くほど分かりやすい

 

環那「まぁ、ゆっくり食べなよ。」

燐子「う、うん......」

 

 俺がそう言うと

 

 燐子ちゃんは食事を再開した

 

 さっきよりも緊張がほぐれて

 

 食べるペースも良くなってる

 

環那(......もう少し、待ってて。)

 

 ここに夜に来れない理由

 

 それは、夜景をここから見たくなかった

 

 比較対象を作りたくなかったんだ

 

環那(いつか、俺が人間になれれば......)

燐子「......?」

 

 いつか、人間になって

 

 誰かを好きになるって言う事を理解できたなら

 

 その時はもっと、良い景色の見える場所で......

 

 なんて、俺はそれまで何年かかるんだか

 

 全然、想像つかないや

 

 そんな事を思いながら、俺はふと笑った

 

 

 

 

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