羽丘の元囚人   作:火の車

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エマの気持ち

 あの騒ぎの中心から離れ

 

 俺達が来たのは園内でも異彩を放つ建物

 

 白い顔面の人間の絵に悲鳴のBGM

 

 なんだこの建物は(困惑)

 

日菜「次はここにしよー!」

環那「ここは?」

あこ「お化け屋敷だよ!」

環那「お化け屋敷?」

 

 これがあのお化け屋敷か

 

 なんて言うか、変な建物だ

 

 怖い要素を詰め込もうとしたんだろう

 

 だけど、そのせいでむしろ怖くない

 

巴「......」

環那「ともちゃん、どうしたの?」

巴「んぁ!?な、何でもねぇぞ!?」

環那「そ、そっか。(あぁ......)」

 

 ともちゃん、怖いんだなぁ

 

 イケ女でも怖いものくらいあるか

 

 むしろ、そのギャップで更にモテるのでは?

 

紗夜「あなたは特に怖いものなんてなさそうですね。」

環那「そう?」

紗夜「そうですよ。あなたが一番怖いですから。」

環那「酷くない?」

 

 俺、未だに怖がられてるの?

 

 ちょっと傷つくんだけど

 

 うーん、何がいけないのだろうか

 

日菜「まっ、環那君が怖い話は置いといて!」

環那「置いとかないで?」

日菜「お化け屋敷に入るペアはもちろんおねーちゃんとで、後は怖さのレベル!」

あこ「怖さのレベル?」

日菜「そうそう!ここのおばけ屋敷、怖さにレベルがあって、怖がりの人でも楽しめるようになってるんだー!」

 

 へぇ、そうなんだ

 

 中々上手に作られてるなー

 

日菜「ちなみにレベルは絶叫、発狂、阿鼻叫喚で分かれてるよ!」

環那「へぇ、面白そう。エマはどこに行きたい?」

エマ「お兄ちゃんとなら、どこへでも。」

環那「じゃあ、無難に阿鼻叫喚かな。」

紗夜「無難とは?」

 

 正直、阿鼻叫喚が一番面白そうだ

 

 一体、どれくらいの怖さなのか

 

 おばけ屋敷とはどの位のレベルなのか

 

 それを学びたくなった

 

巴「あ、あたし達は__」

あこ「じゃあ、あこ達も阿鼻叫喚だね!」

巴「えっ?」

あこ「どーしたの?」

巴「い、いや!?なんでもないぞぉ!?」

 

 ともちゃんは震えを抑えるように大声を出した

 

 もうこれはダメだね

 

 引けないところまで来ちゃった

 

環那「ともちゃん、大丈夫なの?」

巴「あ、姉のプライドがあるんだ。何も言わないでくれ......!」

環那「あっ(察し)そっか。」

エマ「大変だね、プライドって。」

 

 ほんとにこれは大変そうだ

 

 俺がヘルプに入ってもいいけど

 

 姉のプライド的に許されないんだろうなー

 

日菜「じゃあ、あたし達も阿鼻叫喚だね!行こ、おねーちゃん!」

紗夜「え、えぇ。」

日菜「じゃあ、あたし達が最初に行くから、少ししたら順番に入って来てねー!」

環那「りょうかーい。」

あこ「オッケー!」

紗夜「お先、失礼しますね。」

 

 紗夜ちゃん達はそう言って建物に入って行った

 

 まぁ、あの2人は安心でしょ

 

 日菜ちゃんは言わずもがな

 

 紗夜ちゃんもおばけとか怖がるキャラじゃないし

 

巴「......阿鼻叫喚、か。」

環那「ともちゃん、膝震えてるけど大丈夫?」

巴「ふっ、環那さん。心配しないでくれ。あたしは姉だ。どんな時でもかっこよくないといけない。あこの憧れの姉でいるために頑張るさ。」

環那「そ、そっか。」

 

 ともちゃん、良いこと言ってるんだけど

 

 携帯のバイブレーションみたいに震えてる

 

 これ、大丈夫かな......?

 

環那「あ、あこちゃん?ほんとに阿鼻叫喚に行くの?」

あこ「うん!」

環那「そ、そっか。うん、そうだよね。」

 

 これはもうダメだ

 

 あこちゃん、目をキラキラさせてる

 

 ともちゃん、ご愁傷様......

 

あこ「そろそろ行ってもいいかなー?」

巴「え、も、もうか!?」

あこ「うん!」

 

 死は突然に

 

 そう言わんばかりの唐突さだ

 

 子供は時として残酷だね

 

あこ「行こ!おねーちゃん!」

巴「あ、あぁ!(やけくそ)」

環那「ともちゃん、グッドラック!」

エマ「グッドラック。」

 

 あこちゃんにともちゃんが引っ張られていく

 

 決めた

 

 俺は生涯、あの誇り高き姉の背中を忘れない

 

 あれこそ、妹のために頑張る年長者の理想像だ

 

環那「頑張れ、ともちゃ__」

巴『__うぎゃぁぁぁぁあ!!!』

環那、エマ「あっ......」

 

 始まってしまったか

 

 こんな所で尊い犠牲が......

 

 遊園地、恐ろしい場所だ

 

環那「さて、ともちゃんの断末魔も程々に。」

エマ「流石お兄ちゃん、切り替えが早い。」

環那「まぁ、経営者は切り替えが大事だからね。」

 

 俺は軽く息を付き

 

 ベンチに座ってマップを開いた

 

環那(さて、この遊園地の乗り物の配置。最初に一周回って確認した感じ、異常のありそうな乗り物はなかった。)

 

 この遊園地の経営状況は悪くない

 

 優待券なんて出すだけはあるって感じ

 

 園内の設備の管理もしっかりしてる

 

環那(警備は多少杜撰なところはあるけど、まぁ、総合的に見れば高評価か。将来的に利用するのも視野に入れておいた方がいいかも。うちの孫請けには警備会社もあるし。)

エマ「......」

 

 あの会社における俺の役割

 

 それを果たすのに必要な材料

 

 出来るだけ早くそれら集めないと

 

 それと、次世代を担う人材育成も......

 

環那(はぁ、さっさと決めてくれると助かるんだけど、最長であと4年あるからなぁ......)

 

 長く社長の座にいるとか、嫌だなぁ

 

 俺のラストプランのピースがまだ揃わない

 

 これはまた、気長な調整になりそうだ

 

エマ「お兄ちゃん......」

環那「ん?どうしたの?」

エマ「お仕事のこと考えてる顔してる......」

環那「あ、あぁ、ごめん。」

 

 エマの拗ねたような声に驚いて

 

 慌てて手に持ってたパンフレットを閉じた

 

 珍しいな、エマのこんな表情と声

 

エマ「今日はデートだから、もっと構って欲しい......」

環那「あーうん、ごめんね。」

エマ「いいの、ただの我が儘だから......」

 

 我が儘と言うには控えめ過ぎる

 

 ほんと、子供っぽくなくて困る

 

 もう少し子供になればいいのに

 

環那「さて、そろそろお化け屋敷に入ろう。時間的にもちょうどいいでしょ。」

 

 俺はそう言って立ち上がった

 

 今日は仕事の事は何とか忘れないと

 

 頭、疲れるし

 

環那「エマ。」

エマ「?」

環那「エマはちょっと大人すぎ。もっと子供らしくしなさい。」

エマ「子供、らしく?なに?」

 

 エマはそんなもっともな質問をしてきた

 

 まぁ、そうだよね

 

 子供らしくなんてあまりにアバウトだし

 

環那「もっと我が儘で、泣くときは泣いて、怒ったら周りに当たり散らす。そう言う事だよ。」

エマ「......面倒くさくないかな?それ。」

環那「面倒くさいよ。でも、それが子供なんだ。」

 

 俺は小さく笑った

 

 まっ、エマは俺の子じゃないけど

 

 親は両方死んだようなもんだし

 

 ある程度、俺が親みたいな役割を請け負わないと

 

環那「そして、それを受け入れるのが大人の役割。」

エマ「!」

環那「って言うのが俺の持論ね。じゃあ、行くよ。」

エマ「うん、分かった。」

 

 そんな会話の後

 

 俺達は一緒におばけ屋敷に入った

 

 エマの可愛い我が儘、叶えてあげないと

__________________

 

環那「__ふむ、中々おもしろい作りだった。」

 

 おばけ屋敷を出てから

 

 俺はそんな感想を口にした

 

 阿鼻叫喚レベルではなかったけど

 

 まぁ、作りとかは面白かった

 

巴「お、面白かねぇよ......」

環那「が、頑張ったね。」

紗夜「お疲れ様です、本当に。」

 

 ともちゃんは膝が笑ってる

 

 いやぁ、頑張ったねぇ......

 

 ちゃんとあこちゃんが離れるまで我慢して

 

 ちなみに妹3人はアイスを買いに行った

 

巴「あこの前で一叫びで済んでよかった......」

環那「外まで聞こえたけどね。」

紗夜「後ろから聞こえた巴さんの声が一番怖かったです。」

巴「えぇ!?」

環那「くふふ......あははは!」

 

 あー、面白い

 

 紗夜ちゃんも相当面白がってるし

 

 ともちゃん、結構イジリ甲斐あるな

 

巴「わ、笑いすぎでしょ!」

環那「いやぁ、イケ女が弱点晒してるのが面白くて。」

巴「いや、度々思ってたけど、イケ女ってなんだ?」

環那「超絶イケメンモテモテ王子様系女子の略。」

巴「その3文字にそんな意味込められてるのかよ!」

 

 今、1秒で考えた言葉だったけど

 

 結構しっくりくる言葉になった

 

 中々センスあるな、俺

 

環那「実はあの4人の中の誰かと付き合ってたりしないの?」

巴「しませんよ!?」

環那「えー。」

巴「なんで残念そうなんすか......」

 

 勿体ないなー

 

 ともちゃん、すごいイケメンなのに

 

 天は二物を与えないって事か......

 

巴「てか、付き合うって言えば、環那さんの方がその話豊富じゃないっすか?」

環那「俺ー?」

紗夜「そうですね。」

 

 豊富ねー

 

 そんな事あるかなー?

 

 別にそうでもないと思うけど

 

巴「リサさん、燐子さん、浪平先生、それに湊さん__」

環那「え?」

巴「なんだ?」

環那「いや、なんでも。」

 

 なんだ?今の違和感は

 

 途中式を間違えたときみたいな

 

 計算の前提自体を間違えてるときみたいな

 

 なんだか、変だ

 

紗夜「それに一番問題のある人物がいますね。」

環那「問題?なんのことー?」

紗夜「気付いてるのでしょう?......エマさんの事。」

巴「!?」

環那「......」

 

 流石は紗夜ちゃん

 

 お察しの良い事で......

 

紗夜「あの子のあなたを見る目は兄に向けるそれではありません。」

環那「まっ、そうだね。」

巴「あー、確かにそうかも。」

紗夜「それで、どうするつもりなんですか?」

 

 真剣な表情だ

 

 どうするつもりか......か

 

 ふーむ......

 

環那「紗夜ちゃんとともちゃんは源氏物語を知ってるよね?」

紗夜「えぇ、まぁ。」

巴「授業でちょっとやったしな。」

環那「かの光源氏は幼くして実の母を亡くし、母と言う存在にただならぬ憧れを持った......」

 

 人間とは自分の持ってないものを欲しがる

 

 だから貧乏はお金を欲しがるし

 

 愛がなければ愛を欲しがるわけ

 

環那「そう言うものでしょ、エマの感情は。」

紗夜「なるほど。」

環那「子供のそう言った感情を受け止めるのも大人の役目さ。」

 

 そう言って、俺は息をついた

 

 全く、難儀なものだよ

 

 エマは俺よりも人間的すぎる

 

 ちゃんと心があって、それを理解してる

 

紗夜「罪な人ですね。実の妹まで手籠めにするなんて。」

環那「一枠空けとくから入っちゃう?俺、個人的に紗夜ちゃんのこと買ってるんだけど。」

紗夜「死んでも嫌ですね。」

環那「酷い、泣いちゃいそう。」

紗夜「よく言いますよ。あなた、そこまで私に興味なんてないでしょうに。」

 

 あら、言い当てられちゃった

 

 紗夜ちゃんの言う通りだ

 

 あの高い能力には興味津々だけどね

 

環那「まぁ、将来うちの会社に来る気があったら面接受けに来てよ。能力を買ってるのは本当だからさ。」

紗夜「それ、暗に人としては興味ないって言ってますね。まぁ、高年俸なら考えておきますよ。」

巴(こ、こえぇ。この2人の会話こえぇ。)

日菜「__おねーちゃーん!買ってきたよー!」

あこ「おねーちゃんのはストロベリーチョコだよー!」

エマ「お待たせ、お兄ちゃん。」

 

 会話に一区切りがついた頃

 

 アイスを買いに行ってた3人が戻って来た

 

 意外と時間かかったな

 

 混んでたのかな?

 

エマ「お兄ちゃんは、チョコレート。」

環那「ありがと。」

エマ「私のとは別の味にした......///だから、その、シェアしよう......///」

環那「いいよ。ほら、食べなよ。」

エマ(お、お兄ちゃんからのあーんだ///幸せ......///)

 

 エマは嬉しそうに差し出したアイスを食べた

 

 幸せそうな顔してるなぁ

 

 まぁ、こういう所が可愛いんだけど

 

紗夜(さっきの話の後で......)

巴(確かに、危ないな。)

あこ(相変わらず、仲いいなー。)

日菜「アイス美味しー!」

 

 それから、俺達は皆でアイスを食べつつ

 

 次どこにいくかを話したりした

 

 まだ時間あるし、もう少し楽しめそうだ

 

 

 

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