羽丘の元囚人   作:火の車

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視察

 最近、俺に理解できない事が多すぎる

 

 そのほとんどが結構真剣なものなんだけど

 

 この前のことでエマの事もよく分からなくなった

 

 いや、ほんと、マジで

 

エマ「__おはよう、お兄ちゃん♡」

環那「......あ、はい。おはようございます。」

 

 仲のいい兄妹は一緒に寝るをする

 

 エマあまりに必死に言うからそうしたけど

 

 俺の常識とかなりズレてるんだよね......

 

エマ「どうしたの?敬語なんて使って。」

環那「なんでもないよ。寝ぼけてただけ。」

 

 そう言って俺は体を起こした

 

 うん、今日も体は健康だ

 

 最近ちょっと体調崩し気味だし、不安なんだよね

 

環那「それで、良い夢は見れた?」

エマ「見れた。聞きたい?」

環那「遠慮しておくよ。(怖いし。)」

 

 今まで逮捕とかヤクザとか色々あったけど

 

 人生でこんな恐怖を感じたのは初めてだ

 

 エマ、恐ろしい子だ......

 

環那「......俺は今日予定があるけど、エマはどうする?」

 

 気を取り直そう

 

 エマに動揺を悟られちゃいけない

 

 何故かそんな気がする

 

エマ「ついて行かない方がいいなら、私は部屋でお兄ちゃんの写真を眺めて1日を過ごす。」

環那「もうちょっとマシな過ごし方無いの?」

エマ「お兄ちゃん、この世には推しと言う言葉がある。」

環那「う、うん。」

エマ「言うなれば、お兄ちゃんは私の推し。何時間見てても飽きない。」

環那「......」

 

 り、理解できない......!

 

 もうエマの事はそっとしておいた方がいい?

 

 うん、その方がいい、絶対に

 

環那「そっか、うん、楽しんでね(?)」

エマ「うん、またお兄ちゃんの写真が増えてから、今日は楽しめそう......♡」

 

 この数年で相当メンタル鍛えられたけど

 

 そろそろ限界が近い

 

 ここまで俺の精神が削られるなんて

 

環那「......じゃあ、俺は行くね。」

エマ「行ってらっしゃい、お兄ちゃん。」

環那「うん、行ってくる。」

 

 俺はそう言って必要な物と服を持ち

 

 部屋を出て脱衣所に向かった

 

 さて、さっきまでの事は忘れよう

 

 主に俺の精神衛生のために

__________________

 

 今日の俺の予定

 

 それは、会社の状況を視察する事

 

 ある程度は把握してるけど、百聞は一見に如かず

 

 中途半端は許されない立場になっちゃったからね

 

環那(ふむ......)

 

 設備自体はそこまで悪いものじゃない

 

 大方、外面を保つための措置だろう

 

 俺の調べでは、南宮以外の労働環境はそこまで良いものではなかった

 

 ほんと、上手くやってたものだよ

 

環那(設備面での改善点はなさそうだ。必要なのは意識の改革だけか。)

結実「__環那さん?あ、いや、社長。」

環那「呼び方なんてなんでもいいよ。」

 

 まぁ、そりゃあいるよね

 

 今日、普通に出勤日だし

 

 いやー、社会人は大変だね

 

結実「じゃあ、環那さんで。それで、今日は何の用で?」

環那「視察だよ。確認しないといけないことが多いからね。」

結実「大変ですね。まだ高校生なのに。」

環那「そうでもないよ。」

 

 別に大変って程でもない

 

 むしろ、大変なのはこれから

 

 こんな下準備、何の問題でもない

 

環那「結実さんは総務部だっけ。」

結実「はい!」

環那「それで、今は資料運び中か。」

 

 完全にパシられてる

 

 まぁ、本人が楽しそうだから触れないけど

 

環那「麗さんと保奈さんは元気にしてる?」

結実「それはもう!ストレス製造機がいなくなったので!」

環那「我が身内ながら酷い言われようだね。別に興味ないけど。」

結実「社内の視察なら、私が案内しましょうか?」

環那「別にいいよ。建物内の配置はもう頭に入ってるし。」

結実「さ、流石ですね。」

 

 後は社員全員の名前を覚えるだけかな

 

 まだ80%くらいしか覚えてないんだよね

 

 ......面倒くさい

 

環那「じゃあ、俺はまだ見るところがあるから行くよ。」

結実「あ、ちょ、ちょっと待ってください!」

環那「ん?どうしたの?」

結実「その、環那さんの耳に入れておかないといけない情報がありまして......」

環那「?」

 

 結実さんは小さい声でそう言った

 

 俺が知るべき情報?

 

 そんなのは書類にしてまとめてるはずだけど

 

結実「その、新社長が高校生と言う事で、社長夫人の座を狙おうって話を聞いて......」

環那「へぇー。」

結実「あれ、興味なしですか!?」

環那「いや、面倒くさいなーって。」

 

 まぁ、想像できなくもない展開か

 

 お金欲しいよね、人間だもの

 

 それでも高校生狙うかって話になるけど

 

環那「よし、社内恋愛禁止にしよっと。」

結実「対策極端すぎ!?」

環那「冗談だよ。」

 

 けど、その辺の対策はしないとな

 

 回避方法の選択肢は多いんだ

 

 やりようはいくらでもあるでしょ

 

環那「てか、結実さんは玉の輿狙う側じゃないの?」

結実「環那さんのヤバさを知ってたら間違えてもそんな事思いませんよ。」

環那「人聞き悪いなー。俺は普通の男子高校生だよ。」

結実「それは絶対にないです。」

 

 音速で否定された

 

 俺の過大評価、加速してない?

 

 ほんと、何とならないのー?

 

環那「ほんとに俺は普通で__」

?「__おい芹澤!!」

環那「?」

結実「い、石井部長!?」

環那「あぁ。」

 

 営業部部長、石井彰浩か

 

 俺がちょっとチェックしてた人材だ

 

 数年前までは営業部の絶対的エースで

 

 南宮の奴らには嫌われてたって話だ

 

石井「これはこれは社長。おこしになっていたのですね。」

環那「はい、正式発表前に細かい確認をと思いまして。」

石井「殊勝な心掛けですな。」

環那「あはは、石井さんほどでは。」

 

 この人、俺のこと警戒してるな

 

 俺としては手に入れておきたい駒なんだけど

 

 まっ、時間がどうにかしてくれるか

 

石井「して、芹澤とはどういったご関係で?」

環那「ちょっとした知り合いですよ。」

石井「では、そろそろ仕事に戻らせてもよろしいでしょうか。」

環那「いいですよ。引き留めてごめんね、結実さん。」

結実「い、いえ、大丈夫です。」

 

 さて、俺もさっさと視察なんて終わらせよ

 

 確認したいこともそこまで多くないし

 

 他にもしたいこといっぱいあるんだよ

 

「__おっ、七光り社長君じゃないか。」

「もう女性社員に手出して石井さんに怒られてるんですかねー?」

石井「おい、お前ら、口を慎め。」

結実「そうですよ!あと、私は何もされてません!」

環那(......誰だっけ。)

 

 ヤバい、20%引いちゃった

 

 この2人、本気で誰か分からない

 

 でもなんだろう、この小物感

 

「いやいやー、父親が捕まってその息子が社長を継ぐとか、七光りもいいとこでしょう。」

「ほんと、今まで会社に貢献してきた俺達がスルーされて、どんな奴が社長になるかと思えばまだ高校生の若造ですよ?あーあ、こんなことなら俺が会社奪っちまえばよかったー。」

環那「あはは、面白い冗談言いますね。今すぐ退職してお笑い芸人にでもなればどうですか?」

「は?」

「なんだと?」

石井、結実「!」

 

 俺は茶化すように笑いながらそう言った

 

 この小物感、結構好きかも

 

環那「君達、入社何年目?」

「7年目ですが?」

「俺は、8年目だが。」

環那「つまりその年数分、会社を奪うチャンスがあったんでしょ?」

「っ!」

 

 7、8年かー

 

 俺ならそれくらいあれば片付けられる

 

 何回か言ったけど、やる気の問題だからね

 

環那「そうしなかったのは、君達に勇気がなかったからでしょ。失敗すれば高給の仕事を失うとか、そんな下らないことを恐れたんだ。」

「そ、それの何が悪いと言うんだ......」

環那「君達の覚悟の無さを俺のせいにしないでって言ってんの。分かんないの?」

「くっ......!」

石井「......!」

環那「君達は全員、楽で都合のいい道を選んだんだ。自分に出来ない事を成し遂げた人間を妬むのは分かるけど、文句があるなら俺から社長の座を奪うくらいの気概を見せなよ。別にいいよ?俺より仕事できるなら、ね。」

 

 俺はそう言いながらある書類を出し

 

 それを2人の方に見せた

 

「そ、それは......って、え?」

「は、ま、まさか......」

石井「そんな、まさか......」

結実「なんですかこれ?」

 

 この2人と石井さんは営業部だから分かるだろうね

 

 これがいかに強力な手札なのか

 

 結実さんはいまいち理解出来てないけど

 

「い、今まで契約を渋ってた大企業が契約だと......!?」

「し、しかも、3社も......!?」

石井「あ、ありえん。これが本当なら、我が社の年商は......少なくとも1.5倍にはなるぞ。」

結実「えぇ!?」

環那「まっ、そういう事。」

 

 そう言って書類を片付け

 

 2人の方に向き直った

 

 そして、優しく笑いかけた

 

環那「この()()の仕事が出来るなら社長の椅子なんてあげてもいいけど、どうする?」

「......ま、参りました......」

「申し訳、ございませんでした......」

環那「あはは、分かればいいんだよ。」

石井(な、なんというお方だ。営業部の2人を実力で黙らせた。こ、これが、新社長か。)

 

 なーんだ、根性無いなー

 

 やる気が足りないんじゃないのー?

 

 ほんと、無駄に年だけ食っちゃって

 

 大切な事なーんにも学んでない

 

環那「俺、実力ある人間を重宝するからさ、何か武器を身につけておきなよ。胡坐かいてると、置いて行かれるよ。」

「は、はい。」

「が、頑張らせていただきます。」

環那「うんうん!頑張れ!」

「し、失礼します。」

「失礼、します......」

 

 2人はそう言ってトボトボ歩いて行った

 

 名前はまだ覚えてないけど

 

 割と嫌いじゃないから顔は覚えとこ

 

環那「いやー、中々おもしろい2人だった。」

結実「あ、相変わらず相手の落とし方がエグイですね。」

環那「そう?実力を誇示して黙らせるのは当然の事じゃない?」

 

 まぁ、多少やりすぎたかな

 

 もしあの2人が天狗の方がいい種類の人間なら、俺の行動は失敗だし

 

 しっかり考えて行動しないと

 

環那「まぁでも、社長の座を譲るのはごめんだったから。」

石井「やはり、社長の座は惜しいですか。」

環那「そんなわけないじゃないですか。けど、俺にもプランがあるんですよ。」

結実、石井「プラン?」

 

 そう、俺の第二の計画

 

 このためには面倒だけど社長の座は守らないといけない

 

 ほんとに面倒くさい

 

環那「俺の後を継ぐ人間は、もう決まってるので。」

石井「なっ......!?」

結実「えぇ!?」

 

 っと、喋り過ぎた

 

 これは機密事項......って程でもないけど

 

 あんまり言わない方がいいんだよね

 

環那「じゃあ、俺は視察を続けるので。2人も業務に戻ってください。」

結実「は、はい。」

石井「社長も、ごゆっくり。」

環那「はい。」

 

 俺はそう言ってその場を離れ

 

 次に確認する場所に向かった

 

石井(この社長は、どこまでの未来を見ているというんだ......?)

 

環那(はぁ、面倒くさいなぁ......)

 

 最後のピースはいつになったら来るか

 

 これに関しては待つしかないけど

 

 中々、長い仕事になりそうだ

 

 俺はそんな事を考えて気が重くなり、大きなため息をついた

 

 

 

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