羽丘の元囚人   作:火の車

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誕生日プレゼント

 何とか面倒な生徒達から逃げ切れた

 

 俺はエマ、友希那、リサ、あこちゃんと一緒に学校を出て、予約したって言うお店に来た

 

 いやぁ、やっとここまで来た......

 

リサ「__お待たせー!紗夜、燐子!」

友希那「今日の主役が到着よ。」

環那「あ、あはは。」

 

 お店に入って、案内された個室に入った

 

 するとそこには、もう燐子ちゃんと紗夜ちゃんがいて

 

 テーブルの上にはケーキが置かれていた

 

燐子「環那君......!」

環那「待たせてごめんね。逃げ回ってたら少し遅れちゃったよ。」

燐子「全然大丈夫だよ......!」

紗夜「大変だったようですね。」

環那「うん、ほんとに。」

 

 ほんとに大変だった

 

 校舎に張り付いたり、跳び箱に入ったり

 

 体育館の天井にもぶら下がってたりした

 

 学校を出る時も塀飛び越えたからね?

 

紗夜「まぁ、ここからは楽しいお祝いですので安心してください。はい、どうぞ。」

環那「なにこれ?」

紗夜「襷ですよ。」

環那「襷......(???)」

 

 紗夜ちゃんに渡されたのは、『本日の主役』と書かれた襷だ

 

 待って、すごいニヤニヤしてるんだけど

 

 この子、絶対に面白がってるでしょ

 

 いや、いいんだけどね?

 

紗夜「ほら、着けてください。わざわざ買ってきたんですから。」

環那「あ、うん、ありがとう(?)」

 

 俺は紗夜ちゃんに圧をかけられ

 

 受け取った襷を身に付けた

 

 紗夜ちゃんはそれを見て笑ってる

 

リサ「ほらほら~、こっち座って~!」

あこ「お祝いしよ!」

環那「う、うん。」

 

 あこちゃんに手を引っ張られて席に着き

 

 リサにはとんがり帽子をかぶせられた

 

 これ、どこに準備してたんだろ

 

リサ「と言うわけで、誕生日おめでとう!環那!」

友希那「おめでとう。」

紗夜「一応、おめでとうございます。」

あこ「おめでとー!」

燐子「おめでとう、環那君......!」

エマ「お兄ちゃん、おめでとう。」

環那「あはは、ありがと。」

 

 お、おぉ、祝われてる

 

 驚きでありきたりな返事しか出来なかったよ

 

 もっと気の利いた事言いたかったのに

 

エマ「それじゃあ、私がお兄ちゃんへのお祝いメッセージを読ませてもらう。」

環那「!?」

 

 エマは100枚はありそうな原稿用紙を出した

 

 いや、いつの間に書いてたの?

 

 よくあんな量書いたね......

 

エマ「本気でお兄ちゃんへの気持ちを語ったら1週間はかかるから、かなり抜粋した。」

環那「エマ、それは帰ってから聞くよ。思う存分。」

エマ「えっ(ガーン)」

環那「出来れば、2人きりの時に聞きたいな。え、エマの気持ちは俺が独り占めしたいんだ。」

エマ「......!///」

 

 いや、どんな言い訳!?

 

 長くなり過ぎそうだから回避しようとしたけど

 

 何と言うか、妹に言う事ではないね

 

エマ「元から私はお兄ちゃんのモノだけど、そう言われたら仕方ない///これの披露はこの場では控える///」

環那「あ、あはは、楽しみにしてるよ(さようなら、睡眠時間。)」

紗夜(控えめに言って、死にましたね。)

あこ(環那兄、頑張れ......!)

 

 妹の愛は受け止めてあげないと

 

 拒否したら、またエマが暴走する

 

 ただでさえ寝てる間に何されてるか分からないのに

 

リサ「ま、まぁ、場も温まったし(?)プレゼント渡そうか!」

あこ「はーい!誰から行きますかー?」

紗夜「私から行きますよ。あまり気合の入った物ではないので。」

 

 紗夜ちゃんはそう言って小さな包みを取り出し

 

 それを俺の方に差し出して来た

 

 プレゼント、用意しててくれたんだ

 

 正直、何もないと思ってた

 

紗夜「私からはチョコレートです。日菜がお仕事で取材に行って、美味しいと言っていたので買ってきました。確か、甘党でしたよね?」

環那「うん、ありがとう。俺は紗夜ちゃんがプレゼントをくれただけで嬉しいよ!(何もないと思ってたから。)」

紗夜「流石に私へのイメージおかしくないですか?そこまで薄情な事はしません。」

 

 まぁ、年長者仲間だもんね!

 

 なぜか最近シスコンって呼ばれる同士だし

 

あこ「じゃあ、次はあこが渡すー!はい!環那兄!」

環那「ありがとうー。これはー?」

 

 あこちゃんに渡されたのは小さめの箱だった

 

 えっと、これは一体なんだ?

 

 持った感じ、質量はそこまでないけど

 

あこ「あこね、考えたの!環那兄の好きなもの!それで辿り着いたのが、りんりん!」

燐子「!?///」

環那「り、燐子ちゃん、関連のモノ......?」

 

 なんだかトンデモない物が入ってる気がしてきた

 

 え、ほんとに何が入ってるんだ?

 

 気になるのと恐怖心が半々なんだけど

 

あこ「あこのプレゼントは、『普段は見れないりんりんの姿!』だよ!今まで撮り溜めしてたのを現像してきたんだー!」

環那「ありがとう、あこちゃん。大切にするよ。」

燐子「環那君......!?///」

 

 それは何とも素晴らしいプレゼントだ

 

 部屋に飾っておこう

 

 写真の内容はまだ分からないけどね

 

あこ「環那兄が絶対に見たことない姿もあるから、部屋で1人で見てね!」

紗夜「いや、どんな写真撮ったんですか?」

燐子「う、うぅぅぅ......///(環那君に、あられもない姿を......///)」

 

 いやー、ありがたい

 

 これはゆっくり拝見させてもらおう

 

エマ「次は私が渡す。」

環那「エマかー。(ある意味想像つかないな。)」

 

 まぁ、プレゼントは大丈夫でしょ(フラグ)

 

 エマ、常識はまだ微妙にないけど

 

 流石にプレゼントでやらかすわけ......

 

エマ「プレゼントは......わ・た・し♡」

リサ「アウトー!」

エマ「えー。」

紗夜「き、兄妹の節度は守ってください。」

エマ「問題ない。一緒にお風呂に入るだけ。」

リサ、紗夜「それ割と問題!!」

 

 割とどころか完全に問題だけどね

 

 2人もエマに洗脳されてるなー

 

 いや、この場合は毒されたって言うべきかな

 

エマ「まぁ、半分は冗談。本命のプレゼントは家に置いてある。」

環那「え、そうなの?(家にあったっけ......)」

エマ「お兄ちゃんは最近、デスクワークをすることが多く、体が凝り固まってる。だから、マッサージチェアを開発し、それを置いてある。」

環那「そ、そうだったんだ。気付かなかった。」

リサ「ま、まともだ(感覚麻痺)」

 

 兄妹間のプレゼントにしては豪華すぎるけど

 

 まぁ、エマだから何となく納得した

 

 てか、半分しか冗談じゃないんだね

 

リサ「い、いやー、個性的なプレゼントがいっぱいだねー。じゃあ、次はあたしが渡そうかなー(ここで軌道修正しないと。)」

環那(リサが軌道修正しようとしてる気がする。)

 

 まぁ、ここまで、チョコレート、燐子ちゃんの写真、エマ自身またはマッサージチェアだしね

 

 うーん、世間的にまともな物の確率50%

 

 これは軌道修正も必要だよね

 

リサ「あたしはこれ!今年に流行りそうな秋服!環那、あんまり服とかに興味ないし、オシャレな服も必要かと思って!」

環那「あ、ありがとう!これは助かるなー!ありがたく着させてもらうよ!」

紗夜「流石、今井さんね。素晴らしいセンスよ。(軌道修正ね。)」

友希那「リサらしいプレゼントね。」

 

 よ、よし、軌道修正完了

 

 てか、リサってほんとに分かってるよね

 

 俺が全然服持ってない事、なんで分かるんだろ

 

リサ「あ、着たら写真送ってね!今後の参考にするから!」

環那「りょうかーい。」

紗夜(それはただ欲しいだけでは?)

 

 これから服の事はリサに任せよう

 

 一度エマに頼んだけどコスプレになったし

 

 やっぱり、常識とセンスがある子に限るね!

 

燐子「じ、じゃあ、次は私が......!」

環那「燐子ちゃんは安心できるね。(絶対的な信頼)」

燐子「が、頑張って選びました......!///う、受け取ってください......!///」

環那「あはは、なんで敬語に戻ってるの?まぁ、ありがとう。」

 

 俺はそう言いながらプレゼントを受け取った

 

 燐子ちゃんのプレゼントは万年筆だった

 

 しかも、かなり良いやつだ

 

 どこかの社長が使ってたのよりも

 

環那「結構予想外かも。なんで万年筆にしたの?」

燐子「えっと、社長さんは持ってるイメージがあったのと、それと、少し私の我が儘もあって......///」

環那「我が儘?」

燐子「い、言わないとダメかな......?///」

環那「嫌ならいいけど、気にはなるね。」

燐子「うぅ......///」

 

 燐子ちゃんは両手で顔を覆ってる

 

 けど、耳まで真っ赤だからあまり意味がない

 

 まぁ、紳士の心で触れないけどね

 

燐子「......万年筆は使う人にどんどん馴染むって聞いて///」

環那「よく聞く話だね。それが何で我が儘に繋がるの?」

燐子「え、えっと、その万年筆が馴染む頃には......私が、環那君の隣にいたいなって......///」

環那「っ!!」

あこ(おーっ!環那兄が反応した!)

紗夜(し、白金さん、すごいわね。)

 

 か、可愛いがすぎる......!

 

 他の人間だったらこの場で即入籍だよ

 

 俺ですらかなり今揺らいでるのに

 

環那「あ、ありがとう。その、大切に使うよ。ちゃんと馴染むように。」

燐子「うん......!///」

あこ(なんでこの2人付き合ってないんだろう。)

紗夜(どう見ても両思いなのに......)

リサ(ムムム、環那のことを知り過ぎたのが裏目に出た......!)

 

 これは、プロポーズでは?

 

 いや、燐子ちゃんの場合は無意識でこれか

 

 なんとも、心臓に悪い......潰れそうだ

 

友希那「......この流れで、渡すの?」

紗夜「はい。後は湊さんだけですから。」

あこ「友希那さんは何にしたんですかー?」

エマ「湊友希那の、ちょっといいとこ見てみたいー(棒)」

友希那「雑な煽りをするのはやめて欲しいのだけれど......」

 

 友希那は溜息を吐きながら席を立ち

 

 ゆっくりと俺の方に近づいて来る

 

 最後は友希那かー

 

友希那「そう、ね。もう14年も経ったのね。」

環那「?」

 

 俺の前に立つと、友希那はボソッとそう言った

 

 多分、出会ってからの年数だと思うけど

 

 急にどうしたんだろう

 

友希那「傷を負ったあなたと出会って、仲良くなって、ずっと一緒だった。14年間、私はずっとあなただけに負担をかけ続けて来た。」

環那(負担だなんて、別になかったけど。)

 

 ほんとに負担なんて感じたことはない

 

 したくてしてきた事だし

 

友希那「けど、最近のあなたは変わった。」

環那「え?」

友希那「たくさんの友人が出来て、大切な人が出来て、少しずつ自分の人生を本当の意味で自分のものにしつつある。」

環那(......?)

 

 今、自分の中で何かが綻んだ気がした

 

 なんだ、今のは?

 

 一体、何が起きたんだ?

 

友希那「そんな環那に、これからの幸せを願って、これを送るわ。」

環那「これは......」

 

 友希那が渡して来たのはロケットペンダントだ

 

 銀色で花のような模様があって、すごく綺麗だ

 

友希那「その蓋を開けてみて欲しいの。」

環那「開けるって......あっ、こう......か?」

リサ「どれどれー?......あぁ、あの時の。」

 

 ペンダントを開けると、写真が出て来た

 

 Roseliaの皆、エマ、琴ちゃん、と

 

 俺の身近にいる人たちが写ってる

 

 それを見て、今度は胸が締め付けられるような感覚に襲われた

 

あこ「あー!だから、あの時に写真撮ったんですね!」

紗夜(これ、私が写る必要あったのかしら?)

エマ「良いセンス。評価に値する。」

燐子「良いプレゼント......ですね。」

リサ(......なるほどねー。)

 

 ペンダントの写真を見つめる

 

 友希那と肩を組んでピースしてるリサ

 

 燐子ちゃんに抱き着いてるあこちゃん

 

 いつもと同じで仏頂面の紗夜ちゃん

 

 お人形みたいにちょこんと座ってるエマ

 

 無駄に気取ってる琴ちゃん

 

 何と言うか、楽し気で、わちゃわちゃした写真だ

 

環那「......これからの幸せ。」

リサ「環那?」

環那「守りたい人......か。」

リサ「どうしたの?」

 

 俺は、リサを守れてきたのだろうか

 

 いや、きっと出来てない

 

 それは、この数か月で痛感した

 

環那「......」

リサ(この表情は......)

環那「......そう言う事か。」

 

 俺はペンダントを握りしめ

 

 その手を胸に当てた

 

 最近感じてた、このざわめき

 

 それの正体が、少しだけ見えた

 

環那「さて、そろそろご飯食べよっか!(いけない、答えを急ぐのは。)」

友希那「そうね。」

あこ「やったー!いただきまーす!」

エマ「お兄ちゃん、お兄ちゃんの分は私が盛り付けてある。」

紗夜「山盛りですね。」

燐子「か、環那君......!いっぱい食べてね......!」

環那「え、あの、俺、食細い方なんだけど......」

 

 そう言ってももう手遅れで

 

 目の前には大量に盛られた料理

 

 あー、これは食べるしかないみたいだ

 

 俺はそう思って腹をくくり、食事を始めた

 

 

 


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