友希那へのイジメは1人の女から始まった
そいつの名前は加持イマリ、新太の妹だ
あのクソ女は何故か友希那に嫉妬し
持ち前の気さくな性格(嘲笑)を生かし、周りを巻き込み、友希那をイジメた
だからこそ、あの女は徹底的に追い詰めた
痛みを与え、目の前で取り巻きを締め上げ
一生消えないであろうトラウマを植え付けた
そして、今......
新太「俺達の要求は、お前が傷つけた人間全員に償いをすることだ。」
環那「......」
新太「具体的には、1人当たり600万。占めて2億3400万を支払うことだ。」
環那「......」
その兄である加持新太は妹の復讐ため
妹のすべての罪を度外視し
正義なんて言う曖昧で理不尽な武器を振りかざしている
そう、彼にとってはこれが正義なんだ
新太「どうする。今なら、これで許してやらんことも無い。」
環那「......くっ」
新太「!」
保護者達「!」
環那「くくっ、あははははは!」
彼らの要求を聞き終え、俺は大声で笑った
馬鹿だ、馬鹿だこいつら
脳みそにのみでも詰まってんのかな?
「な、なんだ、急に笑い出して。」
「おかしくなったの......?」
環那「あはは、おかしいのはお前らじゃん。お前らのとこのバカガキに600万相当の価値はないよ。」
「はぁ!?」
「この期に及んで......!」
本当にバカだ、こいつら
まさか俺が許しを請うて素直に要求を呑むと思ったのかな
おめでたいバカだよ
環那「新太。君はいつからそんな馬鹿になったの?」
新太「......なに?」
環那「この俺が、君達如きの企みに気付いてないとでも?」
新太「......!」
「そ、それがどうした......」
勝負は準備で9割決まる
けど、向こうはこれを勝負とは思ってない
ただ、俺の良心に訴えかけ、金を払わせる
言ってしまえば、カツアゲだ
環那「こっちは来るって分かってるんだから、準備するのは当たり前でしょ?」
新太「......準備、だと。」
環那「えーっと。」
俺は小さく呟き、携帯を確認する
そして、俺は3か所を指さした
環那「そこのボイスレコーダーを持ってる3人。残念ながら、それは対策済みだよ。是非とも今録音してる音声を聞いてみたらいいよ。」
「なっ......!?」
3人は慌ててボイスレコーダーを確認し始めた
そこから流れる音声は......
『ギギ......ガガ......』
『ピー』
『ザ......ザザザザ......』
「なんで!?」
「昨日買ったのに!?」
「どういうこと?」
答えは簡単
ただ、近くにある電化製品の動作を阻害するツールを開発しただけ
これの操作はエマに任せてある
環那「そして、こっちにはお前らのクソガキを追い詰める手札があるんだよ。エマ。」
エマ「うん。」
エマに指示を出し、プロジェクターを起動させ
そこに預けておいたパワーポイントを表示させた
これが2枚目の手札
「こ、これは......!」
環那「そう、これは友希那へのイジメのデータさ。」
正直、これを作ってるときは怒り狂いそうだった
けどまぁ、なんとか我慢して
こいつらを潰すために作った
新太「......こんなものがどうした。」
環那「ん?」
新太「こっちは警察だ。そんなもの揉み消せばいいだけの__」
環那「バーカ。」
新太「っ!」
環那「忘れちゃったの?こっちにどんな駒がいるのか。」
新太「......!九十九か......!」
やっぱり、バカと一緒にいるとバカになるんだね
わざわざ国家権力と丸腰で喧嘩するわけないのに
結局、この世で1番強い力は世論だよ
環那「新太。君は色々と勘違いしてるんだ。」
新太「......なんだと。」
環那「君は感じなかったのかな?違和感に。」
新太「違和感......?」
あー、気付いてなかったんだ
まぁ、そっちの方が幸せだったか
だって、総合的に見たら成功してるんだから
環那「仕方ない。解説してあげよう。君の人生を。」
俺はそう言って椅子から立ち上がり
新太の前に立って、笑いかけた
環那「君の人生を違和感その1。5年前、若かりし君と良い感じだった女性警察官が離れて行った事。」
新太「......!!」
環那「仲良かったよねぇ、及川三奈美と。」
これが俺が最初に行ったコントロール
加持新太を仕事に集中させるために彼女は邪魔だった
だからこそ、消えてもらった
環那「偶然、前もって調べてあった彼女が俺の牢の見回りをしててね。どうにかして君から彼女を引き離そうとしてると、なぜか彼女に思いを寄せられるようになってね。」
新太「なっ......」
環那「そしてある日、彼女は牢を開けて入って来て、俺は襲われた。」
これが俺の初体験だった
正直、抵抗しようと思えば抵抗で来た
けど、後の立ち回りが楽になるからあえて抵抗しなかった
環那「その後、彼女は自責の念にかられ、自ら警察官をやめて行った。」
新太「あれは、貴様のせいだったのか......!」
環那「いやいや、勘違いしないでよ。俺は別に君から彼女を引き離そうとしただけ。彼女が俺を好きになったのは完全な想定外だったんだから。」
今思えば、彼女も謎だったな
当時は一切興味がなかったけど
立場を超えた思いには今は興味がある
あの時の気持ち、少しだけ聞いてみたいな
環那「まぁ、いいや。2個目の違和感を解説しよう。」
気を取り直し、解説を再開する
次は、4年前から2年前まで
新太が大躍進を遂げた期間
環那「少なからず大切に思っていた彼女を失い、一念発起した君は仕事に打ち込んだ。そして起きた、あの事件。」
新太「......まさか!」
環那「気付いたようだね。」
「4年前......まさか!」
新太「4年前。日本にテロ組織が来襲した、事件。」
環那「その事件にいち早く気付き、己の身を挺してテロを阻止し、被害を最小限に抑えて、日本の英雄とすらもてはやされた。」
これが4年前に起きた、日本テロ未遂事件
この事件はとある範囲でしか起きなかったが、日本全土に知れ渡っている
環那「だが、それはとある人物が仕組んだ、加持新太を英雄に祭り上げるための茶番だった。」
新太「なん、だと......!?」
環那「おかしいと思わなかった?なぜ、あの規模のテロ組織が新太の目の届く範囲でしか事件を起こさなかったのか。」
「そ、そう言えば。」
「今思えば......」
別に、あんなの俺でも解決できた
ていうか、捕まってなかったら友希那に被害が行く前に潰してた
けど、俺はこれを利用した
環那「あの時、俺は日本に来ると分かっていたあの組織のコンピューターをハッキングし、危険だと印象付けることで狙いを俺に絞らせた。そして、後は雑に身元を隠して会えて向こうに特定させ、誘導したんだ。」
新太「ば、馬鹿な......!?お前はまさか、牢屋の中からあの組織をコントロールしたと言うのか......!?」
環那「その通り。」
俺の言葉に、エマ以外全員がざわめく
いや、エマも少しだけ驚いた様子だ
まぁ、普通に言ってなかったもんね
環那「あれは少し大変だったよ。死んでも友希那やリサに被害を出せないから、あくまで加持新太の周りでだけトラブルを起こさないといけなかった。アニメみたいにね。」
主人公、加持新太
この物語を作る事が俺のミッションの1つだった
全ては、今この時のため
環那「楽しかったでしょ?挫折の次には成功があって、そのままご都合主義で何もかもが上手く行く。まさに、君は俺の作る物語の主人公だったのさ。」
新太「じ、じゃあ、俺が自分の意思だと思っていた、この5年間は......っ」
環那「ぜーんぶ、コントロールされてたんだよ。」
新太「き、貴様ぁ!」
環那「おっと、落ち着きなよ。」
新太「っ!?」
激昂して立ち上がろうとする新太を無理やり椅子に座らせた
まだ余興の段階なのに
相変わらず、キレっぽい子だよ
環那「俺は君を成功させてあげたんだよ?正直、気持ちよかったでしょ?」
新太「......っ」
環那「でも、残念だったね。」
警察官の兄は妹の仇を打つと誓う
だがその途中、思いを寄せていた女性が離れて行った
その原因は最大の敵である妹の仇だった
そんな事とは露知らず、兄は仕事に打ち込むようになり
数々の大事件を解決する活躍をし、国の英雄となる
そして今、妹の仇であるラスボスに最後の刃を向けた、だが......
環那「君の刃は、俺に届かなかった。」
新太「__っ!しまっ__」
俺が喋り終わるのと同時に会議室のそこら中から煙が出始めた
それと同時に俺はガスマスクを装着し
目の前で座ってる新太を見下ろした
環那「さようなら、新太。君の今の立場はプレゼントだ。」
新太「これ......は......!」
「なんだ、これ......」
「急に、眠たく......」
新太「く、クソ......クソ__」
新太は俺を睨みつけた後、力なく眠りについた
はい、これで終わり
国の英雄とすら呼ばれた主人公はラスボスの目の前で眠りにつき
目覚めた頃には復讐心は消され、何も思い出せないまま、そこそこ幸せに暮らしましたとさ
環那「エマ、新太の処理は任せるよ。」
エマ「壊していい?」
環那「......いや、いいよ。後は九十九にこいつらのクソガキの過去の悪事をばらまかせて、それで十分不幸になるさ。」
エマ「そうだね。」
物語の最後は、主人公は復讐を果たせず
ラスボスの思惑全てを通された
環那「残念だったね。ラスボスが性格悪くて。」
エマ「処理を開始するね。お兄ちゃん。」
環那「うん、お願い。」
それから、エマは新太の処理を開始した
ほんと、可哀想な人生だよ
5年間も頑張ったのに、結局復讐は敵わず
復讐心も忘れ、サクセスストーリーも終わり
これからの人生を国の英雄と言う名の道化として生きる
このエンディングに名前を付けるなら、そうだなぁ......
間抜けなバッドエンド、かな