イヴちゃんと合流してから
取り合えず、俺達はタクシーに乗った
変装してるって言っても、イヴちゃんの立場もあるし
安全に行けるなら、そっちの方がいい
イヴ「すみません、私のために。」
環那「別にいいよ。俺、電車好きじゃないし。」
電車には碌な思い出がない
まぁ、あの合宿の時のジジイとかだけど
あんなのいるなら、アイドルなんて連れて電車乗れないよ
環那「それで、目的地は?」
イヴ「はい!そろそろ言っても良さそうですね!では、発表します!」
イヴちゃんの元気な声が車内に響く
こんなに俺に笑顔向ける子も珍しいな
イヴ「今日は少し遠くに行って、カンナさんのプレゼントを選ぼうと思います!」
環那「プレゼント?なら、近くのショッピングモールとかでもよかったんじゃない?」
イヴ「最初は私もそう思ったんですが、カンナさんはあの辺りでは落ち着けないと思ったんです!ついでに、私もバレずらいかなと!」
環那「んー、優先順位、逆じゃない?」
俺は別に誰が来ても無視が撃退するんだけど
アイドルのイヴちゃんは男と歩いてたらマズいでしょ
写真とかあげられたら炎上しそう
環那「まぁ、結果としては正しいから良いかな。」
イヴ「ふふっ、カンナさんはやっぱり優しいですね!」
環那「優しいって言うか、気にして当然の問題だよ?」
俺もイヴちゃんもスキャンダルはダメだしね
別に俺は今さらなんだけど
環那(最悪こっちで何とかするか。)
イヴ「楽しみです!カンナさんはどんなプレゼントが欲しいですか?」
環那「イヴちゃんに任せるよ。」
イヴ「なら、頑張らないとですね!」
俺とイヴちゃんはそんな会話をして
イヴちゃんは運転手に目的地を指示した
__________________
タクシーに乗って来たのはかなり遠くのデパートだ
当り前だけど、あの辺りのとは全然違う
規模はこっちの方が大分大きいな
イヴ「前にここの中にあるお店にお世話になりまして、それからよく利用するようになりました!」
環那「ほんとに顔が広いね。」
まぁ、気持ちは分かるよ?
イヴちゃんは誰にでも笑顔で接する
だから、周りも彼女に優しくしたくなる
イヴ「お世話になったアパレルショップの方はとてもいい人で、お仕事以外のお話でも盛り上がりました!」
環那「イヴちゃんなら誰とでも盛り上がれそうだね。」
そして、何より恐ろしいのは、イヴちゃんには打算的な意図が全くないこと
彼女は純粋な人柄で人を引き付ける
人タラシって言うのかな、こういう人の事
環那(羨ましい才能だよ。)
イヴ「カンナさん!行きましょう!」
環那「うん。どこ行く?」
イヴ「そうですねぇ......カンナさんは何が欲しいですか?」
環那「イヴちゃんのおすすめで。」
イヴちゃんの問いに俺はそう答えた
別に俺は欲しい物もないし
イヴ「うーん......それでは、歩きながら考えましょう!」
環那「そうだね。」
イヴ「それでは!」
環那「ん?」
イヴちゃんは俺の腕に抱き着いてきた
まるで、恋人同士みたいに
環那「イヴちゃん?それはアイドル的にアウトじゃないの?てか、義手の方に抱き着いて痛くないの?」
イヴ「変装してるので大丈夫です!あと、義手の方はヒンヤリして気持ちいです!」
環那「そ、そっか。イヴちゃんが大丈夫ならいいんだけど。」
イヴ「はい!それでは、参りましょう!」
そんな会話をして、俺とイヴちゃんは歩きだした
さて、これはバレないように気をつけないと
__________________
デパートの中を歩いて
イヴちゃんに手を引かれその中にあるお店に入ってみた
ここは、アクセサリーショップだ
環那「えーっと、なんでここに?」
イヴ「カンナさんのお誕生日プレゼント選びです!」
環那「いや、あの、アクセサリーショップなんだけど?」
普通、男へのプレゼント選びには来ないでしょ
ましてや、まだ高校生だし
特別な事情がない限りはありえないでしょ
イヴ「はい!カンナさんへのプレゼント候補なので!」
環那「え?いや、もっと他の物でいいよ?アクセサリーはちょっと、学生にはキツイと思うんだけど。」
学生の友達同士のプレゼントって、普通は文房具とかじゃないの?
俺はそう言う物だって聞いてるけど
イヴ「カンナさんもリサさんにアクセサリーを送ってましたよね?」
環那「いや、俺はお金だけは無駄に持ってるから。」
イヴ「私もお仕事でお給料をもらってます!」
環那「それはもちろん分かってるけどね?」
イヴ「なら問題ありません!」
ご、ゴリ押される
えっと、これはどうしよう
上手く言いくるめる言葉が思いつかないな
環那「あー、うん。じゃあ、イヴちゃんに任せるよ。」
イヴ「はい!任せてください!」
イヴちゃんはそう言って、鼻歌を歌いながらショーケースの中を吟味し始めた
さっきまでをサンサンと輝く太陽だとすれば
今は誰もが目を奪われる、冷たく輝くダイヤモンド
......とでも言うのが正しいのかな
イヴ「......カンナさんは今、ペンダントをお持ちですね?」
環那「うん。これね。」
イヴ「それはロケットペンダントですか?」
環那「うん。写真も入ってるよ。」
俺はそう言って中の写真を見せた
イヴちゃんはジーっと写真を見てる
イヴ「......」
環那「イヴちゃん?」
イヴ「あ、と、とっても素晴らしい写真ですね!」
環那「......?」
今一瞬、イヴちゃんの表情が曇った
珍しいな
多少のことでは表情を変えないのに
イヴ(......そこに、私はいないのに。)
環那「?」
イヴ「......決めました。」
環那「決めた?何を?」
イヴ「プレゼント、決めました。」
環那「そ、そう?」
外国人で背も高いからか、真剣な顔の時の威圧感がすごい
可愛い女の子のギャップと言うのもあるのかな
イヴ「環那さんは先に出て待っていてください。」
環那「うん、了解?」
俺は軽く頷いて、先に店を出た
イヴちゃん、笑ってなかったな
まるで、緊張してるみたいに
__________________
“イヴ”
......私は、カンナさんのことが好きです
そう思ったのは、暖かい春の日
お仕事が上手く行かなくて、無理矢理笑ってた時でした
環那『__ねぇ、イヴちゃん。』
イヴ『は、はい!何かご注文ですか?』
環那『そうだなぁ。5分くらいイヴちゃんと話す権利が欲しいな。』
イヴ『え?』
カンナさんはそう言って笑みを浮かべ
向かいの席を指さしました
その時間はお客さんもあまりいなく
ツグミさんもいいよと言ってくれたので、少し話してみる事にしました
環那『あ、何か食べる?』
イヴ『い、いえ、大丈夫です。』
環那『そっか。でも、悩んでるときは食べた方がいいよ?何も喉が通らなくなる前に。』
イヴ『!?』
私は驚きました
それと同時に不気味にも感じました
まるで、自分の心を見透かされてるようで
笑ってる顔も、少しだけ影がかかってるように見えました
環那『甘いものは良いよ。疲労回復やリラックス効果が望めるし。今のイヴちゃんにはちょうどいいんじゃない?』
そう言って、ケーキを差し出されました
美味しそうなチョコレートケーキ
羽沢珈琲店でも特に人気なメニューです
環那『疲労はパフォーマンスを低下させるからね。ほら、一口でも食べてみなよ。』
イヴ『で、では、いただきます。』
環那『どうぞ。コーヒーも。』
私はケーキを口に運びました
チョコレートの甘みが口いっぱいに広がって
苦みのあるコーヒーとよく合います
イヴ『......美味しい、です。』
環那『だよねー。』
カンナさんは笑いながら、食べてる私を見ています
まるで、遊んでる子どもたちを見るように
穏やかで、優しい
イヴ『なんで、ここまで......』
環那『?』
イヴ『なんで、あまり接点もない私に、優しくしてくれるんですか......?』
環那『優しく?うーん。』
私がそう尋ねると、カンナさんは考え込みました
そして少しして、ふっと笑いました
環那『別に優しくしてるわけじゃないよ。俺がしてるのはただの押し付け。』
イヴ『押し付け......?』
環那『そうそう。今のイヴちゃんが、昔からの友達と重なってね。そうやって無理矢理笑って、周りの空気を乱さないようにしてる所とか。』
イヴ『っ!』
また、変な感覚がしました
完全に心を読まれてます
環那『人間は内と外、心と体のバランスが重要なんだ。』
イヴ『心と体のバランス、ですか?』
環那『そうそう。体が強すぎれば心が付いて来ないし、心が強すぎれば体を壊す。言ってみれば単純で当り前な事なんだけど、人間はそれを自覚できない。自惚れちゃう生き物だからね。』
イヴ『ウヌボレ......』
そんな気は、ありませんでした
けど、そうだったのかもしれません
楽しいからと言ってなんでもしようとして
全部頑張ろうと思っていたのは、カンナさんの言うウヌボレなのかもしれません
環那『ここで俺がイヴちゃんを慰めるのは簡単だよ?でもさ、それは優しさなようで優しさじゃない。』
イヴ『!』
環那『この世で最も醜い悪は優しさの陰に隠れた悪だよ。だったら......』
カンナさんは少し下を向きました
その表情は薄く笑っていて
けれど、どこか悲しそうな
そんな表情でした
環那『......俺はもっと純粋な、最高の悪になる。』
イヴ『っ......!』
環那『だからあえて言うよ。』
イヴ『はうっ!』
おでこをつつかれて
あまりにくすぐったかったので変な声が出ました
それを面白そうに見て、カンナさんはこう言いました
環那『今の君の限界はここだ。まだまだ、未完成なんだからね。』
イヴ『!///』
今度は頭を撫でられました
優しくて、心地よくて
昔、お母さんに撫でられた時と似ていました
環那『未完成なんだから失敗して当り前。必要なのは、自分でそれを許す心。反省は許してからでいい。』
イヴ『......はい///』
環那『よしっ、これで5分だね。』
イヴ『っ!///』
カンナさんはそう言って立ち上がりました
そして、私に笑いかけてくれました
環那『じゃあ、今日は帰るよ。残り時間も頑張ってね。』
イヴ『あ、か、カンナさん!///』
環那『ん?』
イヴ『今日は、ありがとうございました......///その、お代を///』
環那『別にいいよ。それより。』
イヴ『?』
環那『次来た時、最高の笑顔を見せてよ。そっち方が俺も嬉しいからね。』
イヴ『......!///』
カンナさんは優しい声でそう言って
お会計をして、お店を出て行きました
イヴ『カンナさん......///』
その後もしばらく、私の鼓動は激しいままで
その日からずっと、カンナさんの事が頭から離れませんでした
私はあの時から、ずっと......
__________________
イヴ「......好きです。」
プレゼントを購入した後
私はお店の中でそう呟きました
この気持ちはもう、止まれません
例え、カンナさんに大切な人がいても
イヴ(でも、諦めたくありません。)
初めて、本気で好きになったんです
だから、例え散ると分かっていても
絶対に引きません
イヴ(まだ、時間はあります。少しでも、頑張らないと。)
私はそう意気込んで、お店を出ました
なんとかして、カンナさんの視界に入らないと
私が、抑えられなくなる前に