羽丘の元囚人   作:火の車

99 / 200
確信に近いもの

 あの日から、ずっと胸に突き刺さってる

 

 一週間経っても、あの日の事が忘れられない

 

 毎日、あの日がフラッシュバックする

 

環那「......」

 

 いつもみたいに力が湧いてこない

 

 今日も学校には来たけど、授業をサボってる

 

 別に授業を受けたくないわけじゃない

 

 ただ、今したいことじゃない感じがする

 

環那「......これは。」

 

 適当にネットニュースを眺めてると

 

 イヴちゃんが写ってる写真が画面に表示された

 

 決して、大きい記事と言うわけじゃない

 

 けど、楽しそうに笑ってて、いい写真だ

 

環那「......なんだ。」

 

 杭を打ちつけられてるように胸が痛い

 

 こんな笑顔を浮かべる女の子に、俺は......

 

環那(......イヴちゃん。)

 

 本当にいい子だった

 

 羽沢珈琲店でも、いつも笑顔を振りまいていて

 

 こんな俺にも優しくしてくれた

 

 そして、あの夜......

 

イヴ『カンナさん......///』

環那「......っ。」

 

 彼女の笑顔が忘れられない

 

 この記事に乗ってるような笑顔じゃない

 

 もっと幸せそうな、そんな笑顔だった

 

環那「......」

巴「__環那さーん!いるかー!?」

環那「んあ?ともちゃん......?」

巴「ほら!いましたよ湊さん!」

友希那「えぇ、ありがとう。」

環那「友希那も......?」

 

 珍しい組み合わせだ

 

 けど、何でこんな所に?

 

 様子的に俺を探してたみたいだけど

 

環那「どうしたの?わざわざ、こんな所に。」

友希那「それは環那自身が一番よく分かっているでしょう?」

環那「......!」

巴「え、何かあったんですか?」

 

 少しだけ、驚いたな

 

 友希那が自分から俺の悩みについて言及するなんて

 

 こんなこと、初めてだ

 

友希那「聞くわよ?話してみなさい。宇田川さんも一緒に。」

巴「いいんですか?あたしじゃ、大した力にはなれそうにないですけど。」

友希那「私1人よりはマシよ。」

巴「あ、はい。」

環那(......困ったな。)

 

 ともちゃんはともかくとして

 

 友希那は俺の好きな人について知ってる

 

 なのに、他の子で悩んでるなんて話したら......なんて思われるだろうか

 

環那(......いや、これは誰かに話してみるべきか。どうせ俺がいくら考えたって分からないんだ。)

友希那「話しずらいことなら無理には聞かないけれど......」

環那「......話すよ。そっちの方がいいからね。」

 

 そう言うと、2人は俺の前に座った

 

 一旦、吐いて楽になろう

 

 そうした方がいいだろう

 

巴「それで、どうしたんですか?」

環那「......実は、ある子のことで悩んでるんだ。」

友希那「それは、リサ達の事かしら?」

環那「いや......別の子。」

友希那「!!」

巴「別の子、って、どういうことですか?」

 

 ともちゃんはまぁ、知らないよね

 

 そう言う話はしたことないし

 

環那「ともちゃん。俺には多分、好きな人が3人いるんだ。」

巴「はぁ!?そうなのか!?あの環那さんが!?」

環那「気持ちは分かるよ。自分ですら驚いてるもん。」

巴「てか、もう1人って......環那さん、四股か?」

環那「いや、違う......でしょ。(違うのか?)」

 

 俺、全員とそういうことしてるし

 

 ......あれ?俺ってもしかしなくてもヤバい?

 

 え、最低のクズ野郎じゃん

 

巴「......なんで自信なさそうなんだ?」

環那「いや、同時に複数人好きになるのはあれかなって思って。」

巴「あー、そういう事か。でもまぁ、それはいいんじゃないか?別に珍しい話じゃねぇし。」

友希那「そうね。好きになるだけなら自由だもの。」

 

 うん、俺もそう思うよ

 

 口から出まかせにマジで答えてくれてるよ

 

 ごめん、本当にごめん

 

友希那「けれど、本題はそこではないわね?別の子の事で悩んでるのでしょう?」

環那「そう、だね。」

友希那「それで、どんな風に悩んでいるの?」

環那「......」

 

 どんな風、か

 

 それも分からないから困ってるんだけど

 

 いや、一旦、自分で整理しよう

 

環那「......この間、その子に告白されて、振ったんだ。けど、なぜか、その子が頭から離れないんだ。」

友希那「......なるほど。」

巴「んっ?(それって。)」

 

 俺の言葉に、2人は全く違う反応を示した

 

 友希那は考え込むように俯いて

 

 ともちゃんは何かに気付いたような顔をしてる

 

巴「それ、普通にその子のことも好きになったとかじゃね?」

環那「いや、そんなはずないんだ。その子に抱く感情は、3人に向けるそれとは似てるけど違うから。」

巴「そ、そうなのか?」

友希那「......それはどうかしら?」

環那、巴「!」

 

 友希那の声で、ともちゃんとの会話が止まった

 

 友希那は俺の考えと違うみたいだ

 

友希那「人の感情なんて、全部が全部同じと言うわけではないわ。」

環那「ど、どういうこと?」

友希那「感情なんて、1つの言葉で表せても、内容は色々あるのよ。幸せを感じる時も、どう幸せなのか、そんなのその時々でしょう?」

環那「......あっ。」

巴「確かに、上手いもの食ってるときと幼馴染の皆といる時とじゃ、幸せだけど違う感じしますよね。」

 

 ......言われてみれば、そうだ

 

 けど、それじゃあどうなる?

 

 それなら、この感情は......

 

環那「......」

巴「か、環那さん?」

友希那「......環那は、ずっと頑張っていたから。」

環那「友希那......?」

 

 考え込んでると、友希那はそう呟いた

 

 それを聞いて俺もともちゃんも視線をうつした

 

友希那「ずっと苦労した、恋愛なんてする暇もないくらい。だから今、環那は過去にするはずだった恋愛を取り戻してるのよ。もっと、自分に正直になって。もう、環那は自由なんだから。」

環那「......うん。」

 

 俺はイヴちゃんのことが好きじゃない

 

 この言葉の意味が、今分かった

 

 理解してなかったと言うのもあるけど

 

 それ以上に、恐らく自らの保身を考えていたんだ

 

 あの3人以外を好きになって、失望されたくない

 

 そんな気持ちがあったのかもしれない

 

環那「......軽蔑、されないかな?」

友希那「この程度で軽蔑して嫌いになる程度なら、最初から環那のことなんて好きにならないわよ。

巴(い、意外と辛辣だな。)

環那「確かに、そうだね。」

巴(納得するのかよ!......確かに、性格はヤバいけどさ!)

 

 まだ、確定したわけじゃない

 

 けど、確信に近いものはある

 

環那「ありがとう、友希那、ともちゃん。大分、気が楽になったよ。」

友希那「気にしなくてもいいわ。環那にはずっとお世話になってるもの。」

巴「あたしは何にもしてないからな、礼はいらねぇよ。」

環那「もう少し、自分なりに考えてみるよ。」

 

 俺はそう言って、立ち上がった

 

 もう、答えはすぐに出せる自信がある

 

 まずは、謝らないといけないな

 

 そんな事を考えながら、俺は屋上を出て行った

__________________

 

 屋上を出て、俺は教室に向かってる

 

 今日は家に帰ろう

 

 出来るだけ早く、自分の気持ちを理解しないと

 

日菜「__へぇー、良い顔してるねー。」

環那「!......って、日菜ちゃんか。」

日菜「やっほー、イヴちゃんをこっぴどくフッた環那くーん。」

環那「っ......!」

 

 日菜ちゃんの声を聞いて、背筋が寒くなった

 

 いつもよりも低い声だ

 

 力で負ける訳がないのに、恐怖心を煽られる

 

日菜「そんな環那君にはどーでもいいかもしれない情報をあげるよ。」

環那「......情報?」

日菜「......イヴちゃん、泣いてたよ。」

環那「......っ!!!」

 

 それを聞いて、胸が締め付けられた

 

 なんだこれ

 

 痛いのか苦しいのか分からない

 

 けど、それらと同系統の感覚だ

 

日菜「レッスンの休憩中に、1人で隠れて。」

環那「......」

日菜「ほんとに、とんでもないことやらかしてくれたよねー。相手が環那君じゃなかったらぶっ殺してるよー。」

環那「......」

 

 自分でやらかしたことの重大さを自覚する

 

 ......俺はまた、失敗したのか

 

 そう思ってると、俺の足元に一枚の写真が落ちて来た

 

日菜「あー、大切な写真を落としちゃったー。環那君、拾ってよー。」

環那「......わざとだよね?」

日菜「知らなーい。」

環那「......取り合えず、拾うよ__っ!!」

 

 写真を拾って、それを見た

 

 その瞬間、俺は驚愕した

 

 そこに写されてるのは、薄暗い廊下で、物陰に隠れて泣いてるイヴちゃんの写真だったから

 

環那「......意外と嫌味なんだね。こんなの見せるなんて。」

日菜「まぁ、元からあたし、環那君のこと好きじゃないからね。」

環那「......知ってた。」

 

 俺はそう言って、ゆっくり立ち上がった

 

 この子、態度では分かりずらいけど、俺を警戒してたからね

 

 天才だって聞くし、俺がどういう人間か見抜いたんだろう

 

日菜「あたしには分かんないよ。環那君のどこがそんなにいいのか。」

環那「奇遇だね、俺もだよ。気が合うね。」

日菜「あはは、キモイね。」

環那「ひっど。紗夜ちゃんが可愛く見えて来た。」

日菜「おねーちゃんは可愛いでしょ。」

環那「それはそうだ。」

 

 俺は別に、日菜ちゃんは嫌いじゃないんだけどな

 

 普通に気が合いそうだし

 

 まっ、向こうは仲良くしたくなさそうだし、無理に関わらないけど

 

日菜「......その裏、イヴちゃんの家に住所書いてるから。後は......分かるよね?」

環那「......勿論。」

日菜「なら、いいよ。じゃあね。」

 

 そう言って日菜ちゃんは踵を返し

 

 軽い足取りで廊下を歩いて行った

 

 俺はその背中を見送ったまま、立ち尽くした

 

環那(もたもたしてる場合じゃない。すぐにでも行かないと。)

 

 俺は日菜ちゃんに貰った裏を確認し

 

 書いてある住所を覚えた

 

環那(少し遠い。急がないと。)

 

 俺はそう言って、教室にあるカバンを取り、学校から駆け出した

 

 取り合えず、イヴちゃんのもとに急がないと

 

 そうしないと、ダメな気がする

 

 答えなんて、その場で出せばいいだけだ

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。