ついに(狩り場への)転送が始まった。
(ガンツスーツの防御力しか知らない)加藤はラッパーたちの目前で仁王立ちし「俺を殴れ」的なことを言った。
そして無視された。
夜、路上。
歩道に面したコンクリ製階段の上に立派な大門…二重門が建っている。扉の両脇に仁王像。
軒下に看板。
“羅鼎院”
閉ざされた門扉に拒絶の意思を感じる、って何してんの?あいつ。
転送トップの北条が扉にくっついている。
私が近付いたら奴は振り向いて目を逸らした。
え?隙間から中が見えないか覗いてたって? 暇か。
おっサダコも来たな。彼女はこっちの位置を確認すると素早く門の下から降りて階段の横に隠れた。良い動きだ、あ奴スーツを使いこなしておる…じゃないよ。
恥ずかしがってる場合かっ、今の内に告白したまえっ。思いの丈を詳しくっ。
今日のミッションはマジでヤバいから。最後のチャンスかも。
「…」ジー…
「!?」ビクゥッ
サダコの視線に気付き怯える北条。ビビりすぎ(笑)。
…。
無理か。北条と2人きりじゃないとサダコは一言も喋らないんだった。
なんで転送順、北条とサダコの間に私を挟んだかな~ガンツ~。
結果はみえてるけど他人の告白って観てみたくない? ガンツとそのお友達は見飽きてるのかな? たしかに頻繁にありそーではある、ミッション中の告白イベント。吊り橋効果だね。
とか思いつつ私は階段横の駐車スペースにある普通車の陰へ移動しコントローラーを操作した。
(みんなー、ここから離れないでくれーっ)
加藤の声が聞こえる。
転送されたメンバーへの指示だ。新規メンバーにとって重要な内容である。
そろそろ僧侶も来るかな? 奴が転送ラストだったよね。
私は門扉の内側に立ち周囲を警戒している。やる事があるので一足先に侵入した。
扉越しの指示は無視だ、わるいね加藤。
え?どーやって入ったのって? それは、フツ―にジャンプして。着地するまで周波数変えてたから門番に気付かれてないと思ふ。門扉を破壊して侵入とか野蛮だよ(笑)。
はずしたはいいが、どこに置こっかな~
このカンヌキ。
「外の2体ってさぁ…」
!!
ガランッ ガランッ
私は恐る恐る声のほうへ向き直る、が誰も居ない。植え込みの葉が微かに揺れている、
…。
お化け?幽霊??ゴースト???やっぱ寺には……出るの?
怖ぇ~…
「門番の仁王だよな?指令の奴って」
…なんだ西か。
ビックリしたなぁもぉ。突然背後でしゃべるなよ~肝試しじゃないんだからさぁ。
カンヌキ落としちゃったじゃん。壊れたら弁償できないよ~…する気は無いけど。
「…そーですね~」
私はカンヌキを拾いながら透明人間の問いに答える。
すると外の声が聞こえた。
(なんだ?今の音)
(こん中じゃねーか?って開くぞ、これ。…おかしーな、さっきは閉まってたのに…)
(おいおい待てッて!なかッ何か居るかもしンね―から)
(そーだよっ ターゲットは仁王っぽかったし、きっとこの寺院が奴らの巣だよっ)
(いや、でも開けてみねーと始まんねーし)
(それは、そーだけど…)
(何、門の中に入るの? ここにいる奴じゃないの? なんとか星人って)
(!!)
(おぉ…)
(え~…これぇ?)
(マジかよ、コレ動くのか?)
(いや…でかすぎる、こんなの今まで遭ったことない…)
(だよねぇ。これは…さすがに)
(前の鳥の倍以上はあるな)
(違うかなぁ~)
(レーダーはどーなってる?)
(…反応は、この中だな)
(何か確かめる方法 無いの?)
(なら、コレで…。あ)
(…!)
(加藤?)
(まっ 待ってくれっ 帰らないでくれっ 戻って来いっ)
(ああっ!)
(うっ)
(うわァ、またかよ…)
(おいっ あいつっ どーしたっ)
(死っ 死ぃっ!?)
(あの人…どうしたの?)
(あ~。えッと言い難いンだけど…)
(それ以上進んでみろっ あいつと同じにっ 頭がふきとぶぞっ!!)
…。
マンガと同じく帰ろーとした誰かが犠牲になったらしい。
あ~ぁ。加藤が「ここから離れないで」って言ったのに無視するから~。
エリアアウトで頭破裂するって、どう説明しても新規メンバー…実際に破裂を見てない、警告アラームも聴いてない人に信じてもらうの難しいなぁ。
辺りが静寂に包まれる。
私は無人の境内を歩み塀際の木陰へ向かった。
羅鼎院の広い境内に立派な伽藍が並ぶ。
二重門を入って右に鐘楼。門から真っ直ぐ伸びた参道の先に大仏殿。その右隣に庭園、奥に五重塔。大仏殿の左隣に金堂。それぞれの木造建築を石畳の参道で繋いでいる。各所に照明があってかなり明るい、もしかして防犯カメラ作動中か?どこにあるんだろう?
大仏殿の正式名称もなんたら金堂だけど、金堂はその寺院の本尊を安置する建物なので一番強力なターゲット、ボスが居る建物を金堂と呼ぶことにする。
マジで5体並んでるよ~
塀を背に木陰で座って金堂へ向けたXショットガン。そのモニターを見る。
前列3体後列2体の骨格が並んでいる。今回のターゲットは展示された仏像に擬態しているのだ。広い建物だが他に骨格…生物は居ない。前列のセンターがボスだったね確か。変な姿勢で座る骨格の周りにモジャモジャと放射状に輪郭が付いている。ターゲット共はポーズを維持し動かない。人目が無くても仏像のフリし続けるなんてタイヘンねぇ。
って、あれ?だとすると防犯カメラにターゲット映ってるのでは?
映らなくても定位置から消えているのが記録されたら困るよね? あるのか?引越し先。
(逃げろ逃げろぉっ)
お、
(うあああっ)(中に逃げろぉっ)(早く、あけろぉっ)
ギギギギギギギギギギギギ…
「早くっ早くしろぉっ!」
「うああああ!」
ドンッ
外に居たメンバー達と偽仁王が門から入って来た。
===◇○○===
加藤がYガンを向けた途端、仁王像は動き出した。
自らを囲ッていた柵を蹴り砕き俺たちを踏み潰す勢いで近付いて来た巨体。
慌てた連中は扉を押しあけ我先にと門をくぐり正面の大きな建物まで駆けた。
砂利と石畳の広場には幸いなコトに待ち伏せする星人の姿は見当たらず無人。
逃げる途中スゴイ音と共に両足が地面を離れ、いや背後からの圧力ッつーか…風だ。
ありえない強風に吹き転がされた。あのデカイ星人共の仕業だ。勿論俺も驚いた。
風で人体が浮き上がる、なンて初めて見たし体験したぜ。フツ―に暮らしてたら味わえない感覚にちょッと興奮した。奴らに殺意が無いなら何回か飛ばされるのもいい。怪我無いし。
スーツ着てない奴は痛そーだな。加藤があンなに言ッたのに着ない奴が悪い。
「ざけんなっ!あんなの勝てるかっ!」
新規メンバーの1人が喚く。
だからァ、スーツ着ないと……まァいいや。
「おわぁっ!!」
大きな建物に到着。
その正面、階段の最上段で踏み止まり北条・加藤・山田が巨体と対峙するも銃撃前に加藤が爪先で蹴られ戦線崩壊。ソレを見てひッくりかえる山田、じゃないな誰だ?あのメガネ。
仁王の1匹、あばれんぼう星人はこッちの武器が恐くないのか加藤たちが銃を向けても攻撃をやめない。ねぎ星人や田中星人の3倍以上ありそーな図体にも効くよな?この銃。
ダメだッたら無理ゲ―じゃん。
加藤は出入り口付近に背中で着地、すぐに起き上がる。
腹への衝撃もだがかなり飛ばされて固いコンクリに叩きつけられたのだ、フツ―なら大ケガだろう。やはりこのスーツは星人の攻撃を含めダメージを無効化するらしい。
スゲェ装備だ。ビビッてる場合じゃねェ。
ドンッ
ドゴーンッ
虫を潰すように拳を落とし続けるあばれんぼう星人。砕けた階段の欠片が散る。
「欠片」と言ッてもバスケットボールくらいある凶器。
「あ”あ”っ」「うあ”ぁ」「だっだぁっ」「あ”あ”あ”あ”あ”っ」
逃げ惑う奴らの悲鳴がうるせェ。
今のところ生身連中も含め誰も潰されてない。田中星人と比べたらかなりノロマなターゲット。なンだよデカイだけじゃん。デカイだけ…
加藤は座ッたまま、俺の隣に立つ女…桜丘も巨体のバケモノを見つめる。
ドッキンッ ドッキンッ ドッキンッ
『計ちゃんマジカッコイイよ。
悟空とかケンシロウより、俺絶対いつか計ちゃんみたいになりたいよ』
加藤が、子供の頃ヘンなこと言ッてたな。今思えば無謀な俺を褒めていたンだ。
ケンカの強いガキ大将や徒党を組むイジメッ子に屈しないヒーロー。
そうだ…あの頃の俺は…今とは違ッた。
苦境を愉しみそこを乗り切ッた時のヒーロー的な自分の姿を想像して興奮していた。
そしてその通りになッていた。
アイツを倒す映像は浮かンでる。
ヤッてやる!!あン時みたいに!!
俺なら
勝てる。
=========
ギギィー
バタンッ
開けっ放しの扉って妙に気になるんだよねぇ。
門扉を閉め金堂を眺めていると横手から音が聞こえた。
砂利を踏む様な音だ。しかし歩いている姿は無い。足跡も、よく分からない。音が止む。
…まだ居たの?西センパイ。
「暇ならアレとか倒してきては?新しい武器の試し撃ちに手頃だと思います」
ほどよい巨体だし、と鐘楼の横に居る偽阿形像(おこってる方)を指す。
大仏殿前が騒がしいので奴は門付近の私に気付いていない。
膝をつき左掌を砂利に擦りつけている。僧侶は退場した様子。
「ザコに興味無い。クロノ達がヤるだろ」
誰も居ないほうから返事が返って来た。
ちょっ(笑)何そのセリフ(笑)まるで強キャラだな(爆)そーいや隙を見て高得点を掠め取るのがセンパイでしたね。どうやってボスに突っ込ませよう、と思ってたけれど「金堂だから高得点ターゲットが居るかも」と言えば自主的にいってくれるか?
今回のミッション達成唯一の障害と言える金堂内のボスは、でたらめである。
序盤で出てくる敵キャラのスペックじゃない。マンガなら、フィクションなら敵キャラが理不尽なほど強力なほうが話が盛り上がるし面白いけど現実でそんなのに遭いたくない。
先ず防御面。
再生(破損部分だけ時間を巻き戻す)能力がある宝具を持っていて、それが破損しない限り頭部だけでなく例え全身を破壊しても数瞬で復活する。誰にでも使えるんなら是非とも欲しい装置だ。でもムリだろうなぁ、他のターゲットを再生する素振りは無かった。
スーツで強化した膝蹴りを顔面に受けても凹んでいなかったことから(蹴ったのが武術素人帰宅部の玄野だったことを差し引いても)素でかなり頑丈と言える。
次に攻撃。
その手段は剣と酸(左手に持つ瓶内の液体をぶっ掛けてくる)それとレーザー。とくに恐いのはレーザー、その射程は50m以上ありそう。門の下に居ながら金堂屋根のゴルゴを狙撃・追撃してたので。だとすると完全に射程内なんだよなぁ私たち。態々室内から見えない相手を狙わないと思うが金堂方向には常に注意が必要だ。しかも3種類の攻撃全てがガンツスーツを一撃で貫通する威力。それと杞憂であってほしいが、マンガで使われなかった宝具の性能も気になる。思いもよらない攻撃手段・特殊能力があるかも知れない。
最後は索敵(感知?)能力。
透明人間をバラバラにしていたので、耳に付いたり頭部にのっている「顔」の目全てが機能して周りの違和感を見逃さないのかも。または宝具による特殊能力の1つ?
処刑人のスペックは大体こんなカンジ。マンガで読み取れた限りは。
本当に遭いたくない。
こんな盛り過ぎターゲットにもフォローというか救いというか、弱点というか…謎の隙がある。再生能力があるからか、こちらの攻撃を回避しないこと(カウンター攻撃はあったけど)。
金堂に入らなければ率先して出て来ないことだ。
ビルが倒壊しているよーな騒音から侵入者の存在を知っていた筈なのに、金堂をメンバーが訪ねるまで参戦しなかった。こっちを油断させる作戦だった、あるいは定位置から動くと後が面倒なのだろう。だからギリギリまで出張らなかった、と考えられる。
なので会敵前に潰す…100点武器で建物ごとペシャンといくのが妥当かな。実に勿体ない。
西が消えてるので外装すらわからない“より強力な武器”はマンガのアレだよね?標準装備の機能がマンガと同じだし1回目の100点武器はアレの筈。違ったらYガンでなんとか…
あ、Yガンだと囮が必要だ。Xガン類と違い透視ロックオンできないもの。
囮か…。マンガと同じく金堂の屋根に居るゴルゴ(仮)に頼もうか。彼はマンガでレーザーを避けていた。
それにしてもどーやって登ったんだろう?生身なのに(笑)。
(ぉぉぉおおお!!)
お。漸く彼が活躍するらしい。
『う”お”お”お”お”…お”お”お”あ”あ”あ”』
玄野が巨体の足元をチョロついて見えなくなったと思ったら偽吽形像(あばれてる方)の背丈が減り空気が軋むような悲鳴が響いた。
手足が痛い痛いですね。
(やれるぞ!!やれるぞ おいっ!!)
(ぉぉぉぉおおっ!!)
(計ちゃんっ!!これ使えっ)
(ぅぉ…うおおお殺せっ!!殺せ―っ!!)
(やれっ!!)(殺せっ!殺せっ!)
あれ?Yガンを使ったのか。階段で四つん這い(?)になっていた巨体が消失。
玄野の手並みが鮮やかすぎて手を出せなかった門番の片割れ…偽阿形像(おこってる方)が右側の鐘楼から中心の参道へ移動し大仏殿を向いて仁王立ちする。
(行くぜ おいっ!やれんぞ!!殺れる!!殺れる!!)
(うぉおお!!行くぜ!おらぁっ!!)
おこりんぼう星人の股下から駆け寄る玄野が視える。それを追うメンバー達も。
英雄を追って最初に走りだした迷彩服は左右に一丁づつXショットガンを持ち両手が塞がってる&ガニ股なので後続全員に追い抜かれた。でも愉しそう。
(ぉおおおおお)(行け 行け 行け)(足を潰せっ)(殺せっ!殺せっ!!)
『ぬんっ』
ヒュ…
ビュオォォォオオオオオッッ
偽阿形像の左腕一振り。
風だ。
門前から大仏殿へ逃げたときと同じヤツ(私は塀際に居たから影響無かった)。
あのときはどっちがやったのか判んなかったけど。奴の特殊技なのかな?
風圧で吹き転がされるメンバー達。ターゲット後方の私にも微風。生身でくらっても(転んだ際に)擦り傷ができるかな~?ぐらいの攻撃だけど見た目は派手ね。
(なァッろォッ がォォおおッ!)
体重が軽いからか、偽阿形像に近いほど風の影響を受けるのか、先頭から最後尾へ吹き飛ばされた玄野が起き上がり謎の咆哮をあげつつ再突撃。
他は寝転んだまま。
『ぬ”あっ』
バガッッ
「!?がッあアああァ!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ…
ギギ ギ
2度目の強風を堪え更に間合いを詰めたものの横手から金剛杵を食らい玄野の動きが止まる。
力比べする両者。
「計ちゃんっ」
キュンキュン キュンッ
ザザッ
『!?』
ガッ ガッ ガッ
加藤のYガンによって偽阿形像の腹部と肘辺りがワイヤーでまとめられ、アンカーで固定された。玄野を打つため丸めていたターゲットの背筋がちょっと伸びている。
でかい獲物だと、ただの拘束も見応えある~……不安なカンジで。
巨体に対してアンカーセットの小ささが心許ない。
「大丈夫か!? 計ちゃんっ」
「クロノくん!!」
ターゲット拘束時、内側へ引きこまれた金剛杵に引き摺られ、その股下に倒れた玄野を心配し駆け寄る加藤と美女。スーツの強化でマジ走りなのか、ちょー速い。音スゴイ。ブレーキをかける靴底が石畳を削り、その礫から顔を庇う玄野は起き上がれない。
……あれ?
「あれって…」
後方から聞こえる呟き。透明人間も同じモノを見ているようだ。
ターゲットにゴルゴ(仮)の銃撃が無いことと関係が?とか思いつつ金堂へ視線を向け、
気付いた。
視点変更:オリ主→玄野→オリ主
加藤と同様ガンツスーツの防御力しか知らないが積極的な玄野。
オリ主「さす主(たくさんためてね経験値)」