参加者全員生還でミッションはクリア。
翌日、昼。
遠くに校門が見える。片側のみ開かれた鉄柵。その近くに人影は無い。
学校は平和だ、今のところ。
風が屑入れを揺らす。チラシを折った箱だ。重しに石を入れているので飛ぶ心配はない。
スケッチブックを近付けて消しカスを屑入れへおとす。
ほほう…タイムサービス…平日の夕方にこんな特典が…
帰りにスーパー寄ろうか…人ゴミは嫌いだが野菜の袋詰めに興味がある。
“詰め放題”…良い響きだ。
それにしても、おもしろいように手が動くなぁ。もう半分くらい描けた。
先端が丸くなった鉛筆に気付き削ってあるものと持ち替える。小島のチビた鉛筆コレクションって捨てちゃ駄目かな~。延長軸でも無理な程小さいのを何故とっておくんだ
ガチャーン
扉の開閉音が聞こえた。
騒がしく駄弁っていた連中が教室へ戻り、やっと静かになったと思ったら…今頃屋上に何の用だろ?午後はサボるって人かな?暇を持て余してボケっとしに来たんなら優雅で羨ましい…
あ、今の私は忙しいよ?珍しく。2つのことを同時にやってるので。片方は自動書記だけど。
柵越しに風景を観察する。うん、さっきと変化無し。
遅いなぁ、もうすぐ昼休み終わっちゃうのに。正門通らないのか?
素直に犠牲者(予定)を見張るべきだったか。変装してても塀を余裕で跳び越せそうだものね。
先に登校したのが『本物』とは限らないけど。
傍らに影がのびる。
…また何か言われるのか。
今日は妙に話しかけられるなぁ答えるのが面倒すぎる。教室で同じこと…スケッチしてるときは誰も話しかけてこないのに。屋上は目敏い暇人の溜まり場か?
…
……?
無断で隣に座った人物は古いスケッチブックを見ているのだろうか無言だ。
…べつに止めないけど一言くらい断れよ。そしたら私も「それR18Gです」と教えたのに。
いや指定はされてなかったと思うけどそれ並みって意味で。基準がよく判らない(笑)。
夢に見ても知らないよ~?まぁ素描だからグロに耐性あるひとにとってはそれほどでもないか。見本は寧ろ美しいし。屋上を去った連中は「グロいグロい」と爆笑だった。
小島の席から見える風景がネタ切れしてからは原作を思い出しながら描いていたので、ちょっと閲覧注意な作品が混じったのよね。中身入りのスラックスとか顔から出るものが全部出た子供とか頭部を減量した△ブとか
♪キーンコ-ン カーンコーン♪
とりあえず完成した&予鈴鳴ったので片づけを始める。
つーか、そんなに面白かったのかな?スケッチブック。没頭してた…いや、してるのか?
未だ私の用意した敷き物に座ってやがる。退けっての貸さねーぞ。小島家の備品だし。
帽子の下から隣人を確認する。
…和泉だった。
お前、ボードゲームはどーした。
===■◇■===
男子トイレ。
出入り口に扉は無い。
入って右側に個室が並びタイル張りの床を挟んで対面に小便器。水色を基調にした空間。
個室の横に立ち奥…喚起窓の方向を見つめる3人。服装検査に引っ掛かりそうな奴らだ。
本鈴が鳴り終わったのに焦る様子が無い。
窓の前に立たせた2人の生徒を見比べている、…無防備で。
「おおーっ」「なんだよこれ」「はははは」
「なんだこれ」「なんで中野2人いんの?」
「違うってコイツッ。こいつニセモノだって!!」
「確かにコイツ変じゃん。何も喋んないし、まばたきもしねーぞ」
「うぇっなんか気持ち悪ぃっ。よく見たら表面絵みてーじゃねえ?気色っ !!
おいっ触んのかよっ」
「なんか言え~」
3人組の1人…茶髪が奥へ進み件の人物に左掌で触れる……
ボンッ
湿った破裂音。
斑に染まる空間。
4人に遮られた床の一部を除き底面・壁・天井を彩る細かい飛沫。
浸食された電灯と日光そして…生臭い靄で空気まで薄ら色付いている。
窓側の天井に張り付いていた塊が落下。
ベチャッ
狭い空間を支配する色は赤。
5人分の絶叫が木霊した。
=========
教室。
黒板の前で教師がテキストを読み上げている。ちょっと遅刻したからか巻き気味で。
マンガではチビ星人狩りの翌日である今日このクラスで惨劇が起きていた。
別クラスの生徒(偽)が授業中に現れて暴れ、和泉・玄野・小島以外の生徒が…ってヤツ。
和泉が殺人鬼を机でしばいてたな~そして全く効いてなかった。
服に血をベットリとつけた生徒を見て「自習~」とか言いながら素早く逃げた教師が印象的なイベントでした(笑…い事じゃない)。それを言うなら「退避~」でしょ?間違えないで?
別クラスの生徒(偽)はチビが“人マネ”したもので、玄野がいるクラスに辿り着く前にトイレで4人解体していた。
…ええ、待ってたのです奴を。
マンガとは逆にチビをミンチにした。教室に来ないから成功した筈。
念話する相手に思考を読まれなくてラッキー。敵の油断は大歓迎。
屋上から教室へ戻る途中すれちがった男子生徒2人を思い出す。
そいつらの容姿にピンときて振り返ると1人は教室内へ1人は中を覗く姿。これは出たな、とイベント発生を確信し現場へ先回りしてトイレの置き物みたいな生徒(の胴内で縮こまる骨格)をロックオンした。現場は特別室の多い棟の1階隅。いちばん辺鄙な男子トイレから確認し最初で大当たりだった。見張っていたのかマンガで被害を受けた連中のひとりが出入り口付近に居たけど放置。透明人間が話しかけたら驚いて心臓止まるかも知れないし。
チビは何時から居たのかな?あそこに。そういう種類の大道芸人みたく不自然な直立不動の人間(偽)が居る空間で気にせず用を足していた連中がいたと思うとシュール…いや、同じ階で使用中の教室無かったから件の男子生徒3人以外には見付かってなかったのだろう。
ヘンな生徒(偽)を見つけて人気の無いところへ誘導したのかサボろうと辺鄙なトイレに行ったら居たのか知らないが後者だとしたら納得だ。悪ガキは「見てはいけないもの」とのエンカウント率が高いってこのことだね。
星人に姿を借りられた「中野」くんは完全に巻き添え。マンガでは同じ姿だからって無理矢理現場に連れてこられたように見えた。不運すぎる。そーいやスタート地点付近に“中野運送”の看板立ってるビルあったけどその関係者か?解体されるまでの「中野」くんはピンピンしてたからチビは見るだけで“人マネ”出来るのかもしれない。
あの能力って本来は買い出し用なのかな、コンビニ弁当食べたり雑誌を購読してたとか。
ミッションで使った奴はいなかった。マンガのときはハンターが主人公独りだったからやる意味が無かったけど。
今日は学校中のトイレ位置を確認するため1時間早く登校し、不自然さを無視してセーラー服の下にスーツ着てきたので現場を探しまわったり着替えるロスは無かった。
制服姿の群れに上下ジャージで混ざるよりはマシだろうと思ってネックウォーマーと靴下で要所を隠してみたら周りはいつも通り無反応だった(笑)あれ?これなら「毎日スーツで防寒」イケる? 2度目のトリガ―も消えたまま空き教室(周波数変更時も使用した。施錠の処理はお察し)で引いたから目撃者の心配は無い、たぶん。
マンガでこのイベントが起きた原因は主人公が1体討ち洩らしたこと。
でもターゲットに逃げられたのではなく逃げたのは玄野。(放棄された)Xショットガン2丁を装備した耳無しキューピーに追われて、タイムアップまでエリア内を逃げ回って…すごい怯えてたなぁ。
マンガと逆でこっちが怖がられているなら襲撃が無い可能性もあった。
私は戦略的撤退だと思うけど。“根にもつ”タイプらしいし。
そーいえばなんでチビはあの時逃げきれたんだ?ロックオンしたんだからエリアを出ても仕留められる筈じゃん。エリアの境界線を越えられると無効になるってことか。実際に逃げた奴が出たんだから不思議がっても無意味だけど、これもミッション限定の仕様と考えれば良いのかな?
ミッション時だけ自動でかかる不可知化みたいに。
“心を通わす”って能力の一部だろう、マンガでは『信号』を覚えられ捜索されたらしい。
信号って電気信号?脈拍や脳波のことかな?一度でも接触すると記憶されてしまうのだろうか。それとも黒球メーカー謹製爆弾を探知された?爆弾で区別してるなら態々3人揃ってる此処には来なさそう。私なら単独行動の奴を狙う。
不意討ちを狙うべく強い奴から順に。
マンガのチビ星人は腹癒せ目的&精神攻撃のつもりで玄野の仲間…っぽいクラスメートを解体していた。
昨日のミッションで一番恨まれたのって……
===◇○○===
『刃物を持った人物が校内を徘徊しています。
クラスごとに慌てず速やかにグラウンドへ避難して下さい』
休み時間。隣の空席を眺めていると物騒な放送が入ッた。
刃物ッて…ハァ?
…この寒いのにオカシナ奴が居たもンだ。
「おっこの声。体育の松田じゃねえか?」「誰か殺されたのか?」「刃物持ってるってー」
「刃物ってなんだ?包丁か?」「どーせカッタ―ナイフとかだろ」「鉈」「チェーンソー」
「こわい!」「意表をついて鋏」「シ□ーマンだ!」「◇ロックタワーかよ」「あれ鋏か?」
「や…マジな話このまま行って平気なのか?鉢合わせとか…」「えぇ~ビビりすぎ~」
「大丈夫だろルートの指定ねーし」「教師がどっかに追いつめてンじゃねーの?」「おお!」
「大捕り物だ」「ほかの棟か?観たいかも」「いや、そこは警察呼んだだろ」「だよなー」
「なんでもいいじゃん。早く帰れるし」「どっかよってく~?」「塾までなら付き合う~」
「…ねぇ!和泉くん戻ってないんだけど」「えっ」「ホントだっ」
「さっきの授業ずっと居なかったよぉ」「早退じゃないの?」「まさか和泉君が…」
「いやーっ」「うそー」ザワザワザワ
帰り支度をしながら噂するクラスメート。動揺しているらしくいつもより大声。
…放送の声は落ち着いてたから、もう解決してンじゃね? ソレか犯行現場の片付け中。
「俺達の誘いを断って教室を出て行きました…それが彼を見た最後の記憶です…」
「ううっ…良い奴だったのに…。…ぷっ」
「オマエらなァ…」
永沢の小芝居に松村がのッかる。おいッ命懸けの冗談か?
俺が居ない時にやれッつの…女子達の目が恐くなッてンぞ…
クラスの奴らは和泉が死傷したからこの場に居ないと思ッてるようだ。
何者かにトイレで刺された?俺はアイツが一般人にどーこーされるッて想像出来ね―けど。
鞄が無くなッてるから早退かもしンねーし。
仮にアイツが刃物野郎に遭ッてたとして、生身で星人に挑む奴を心配?ソレこそ冗談だろ。
逆にブッ殺してねーか心配。学校での温厚な人気者面がミッション中は剥がれていた。
危ないコトに嬉々として絡ンでいッたのかも。
クイクイ
?
「玄野くん、桜丘さんと連絡とれますか?」
肘辺りを引かれ振り返ると佐藤だッた。
何だよ?藪から棒に。
メールで良いの?は?生存確認?あッちでも殺人鬼が出たッてか(笑)…怒るなよ。
昼休みに2通メール来たから、ソレまでは生きてたンじゃね?
はいはい今電話するッて……
グラウンドに着き、呼び出し音を聞いていると人気者が現れた。
安堵するクラスメートの質問攻めを適当にあしらッて、こッちに来る。
何だよ~やッぱピンピンしてンじゃん~何故かジャージ着てるけど。髪も濡れてて生臭い…?
お? 横に居た筈の佐藤が俺の後ろへ回ッている。
深呼吸するジャージ男。
「撃つなら撃つと言え!」
なンだよ和泉?!
ビビッたァ~…ッて、アレ?ちょッと泣いてる?
「撃つ」ッて何が?もしかしてXガンのコト?なら学校に持ッてこねーよ?さすがに。危ねーからな色ンな意味で。
俺じゃなく佐藤に言ッてンならソレも違うぞ?コイツはさッきの授業でてたから、オマエと違ッて。だいたい学校で何に使うンだよ銃なンて。
解散後、走り去る2人は超目立ッていた。…何なンだアイツら。
… … …
次の日、いつも通りに学校生活は再開した。見たカンジなンの変化も無く。
板書をノートへ写しつつ思い出す。
犯行現場はC棟のトイレ。避難の原因は“不審物”だッたらしい。“不審者”じゃなく“不審物”?“刃物”はドコ行ッたンだよ…トイレに不審物があッたので大事をとッて全校避難に踏み切ッた、じゃ理由として苦しくないか?爆弾や危険物、毒物ではなく不審物ッて公表してるのも嘘くさい。調べてもなンだか解ンないッて?オーパーツ扱いかよ(笑)ソレッてまるで…。
噂するクラスメートを眺めながら永沢が「4組の中野そっくりの奴がトイレで破裂した」とか小声で言ッててドキッとした。情報源は目撃者(自称)で件の「中野」も破裂するところを見たひとりだとか。フツ―なら出来の悪い作り話だと思うけど、そンなカンジに生き物が爆ぜる武器知ッてるからなァ…。
永沢が仕入れた情報が全て事実で俺の予想が正解なら「中野そっくりの奴」は星人狩り用の武器で対処するべき危険生物だッたのだろう。なンでそンなモンが昼間の学校に?
でも、ソレを佐藤か和泉が始末したッてコトなら辻褄合う…。
あの2人には未だ確認を取ッてない、ッつか取れてない。訊く前に教室を出ていッたンで。
肝心なコト伏せると作り話になるから、クラスメートにミッション関連の話出来ないから説明を要求されないよう逃げたのかも。アイツらならサクッとホラを吹けそーだけど話が食い違ッてウソを疑われると困るッて口裏合わせに行ッたとか?…ピンと来ねーな。
昨日の今日で再び星人(?)が来て迎撃しに行ッた、とかでなきゃ何でもいいか。
詰襟の中に折りたたンだ部品に触れる。他の奴より安全だろ…コレを着ていれば。
俺はノートとりを再開した。
視点変更:オリ主→和泉→オリ主→玄野
ちび星人狩り終了。次回からかっぺ星人編。