凡キャラでGANTZ   作:フランディーニ

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前編のあらすじ:
転入初日に目的を達成する和泉。
翌日、ちび星人狩り終了。
(トイレにいる星人に周波数を変えて近づいたせいで酷いことになった制服を和泉は授業サボって洗った※仕上げはクリーニング屋さん)



かっぺ編①

===□○◇===

 

 

 

西深角工業高校、教室。

期末試験が終わり、もう3月。

ちび星人のミッションからひと月以上経っている。このまま呼ばれないなら嬉しいが…。

 

今は昼休み、腹ごなしに将棋をうっている。向かいに座る友人がニヤリと笑った。

 

「王手!」

「おお~」「そーきたか」

「あっちゃ~…」

 

周りで見ていた友人達から歓声があがる。

やっぱつえ~。こんなに早く終わると申し訳ないなぁ。

 

「おい!!加藤!!加藤勝!!」

 

観戦にまわろうと席を立ち空いた椅子を引き寄せていると名を呼ばれた。

前にもこんなことあったな…嫌な予感。

廊下には見覚えのある先輩。以前と同じ胡散臭い笑顔の。

 

「…何か用スか?」

「付いて来い。お客さんだ」

「はぁ」

 

客?俺の知り合いが来…るワケ無いか、学校あるだろーし。

昼休み半分しか残ってないけどすぐ終わる話なのか?

…面倒事の匂いがする。

 

 

… … …

 

 

「う”ぉあ?!」

 

ダンッ

進行方向を黒い物体が横切り…壁に激突した。

先輩について歩いていたら突然、だ。

なにごと?………なんだ黒いパーカー着た人間か。ってあの先輩じゃん…じゃねぇ。

人間ひとりが右から左へノーバウンドで飛んでいた、どーやったんだ?

あの先輩嫌われてるから連合で下剋上されたのか?いや数人で投げてもあの勢いは出ねえだろ。何が起こっている?

現場は2年用トイレ前の廊下。壁に“ペンキ塗りたて”の張り紙…は関係無いと思う。

 

「変なのキタ~と思ったらマジでおもしろいことになってんじゃん…」

 

隣に立つ先輩が廊下を眺め呟く。「変なの」?

廊下の壁にぶつかってそのまま凭れている先輩…鬼塚は座り込んだ姿勢から動かない。

それとトイレの中を交互に見て騒いでいるのはその取り巻き達だろうか。

 

「加藤?!」

 

ひとりが俺に気付く。なんだよ?

 

「えっ」「加藤?」「加藤だ」「加藤っ」「なんで加藤まで…」「加藤!」「ぅわっ」

 

一斉に注目する取り巻き連中。総じて蒼褪めた顔色。

 

…俺なんかしたか?

 

前門の虎、後門の狼

って表情の連中を放置しトイレの出入り口を見ていたらスゴイのが出てきた。

髭の巨漢だ。いや熊みたいなカンジではない頭髪ともに整備された髭だ。

サラシを巻いた上に袖を千切り取った長ランを纏いオープンフィンガーグローブに包まれた右手で荷物の入った袋の紐を持ち肩に担いでいる。両腕もそうだが素足に下駄は寒そう。

フィクションの番長や格ゲ―のキャラみたい、と言ったら解り易いだろうか。

普通の奴がやったら滑稽な扮装だが2m近い背丈の筋骨隆々なこの男には似合う。似合いすぎている。えっとアレ何だっけ?あのキャラn

 

「なんや、きさん」

 

コスプレ男に睨まれた。

取り巻き達より後ろに居るのに俺は目立っていたらしい。…無駄にタッパあると損だなぁ。

 

「あいつは加藤勝。そこの鬼塚に1度勝ってる」

 

男を見上げ俺を紹介する先輩。いつの間にかトイレの横に立ってニヤついている。

ここが目的地のようだ「客」ってアレかよ。

周りの人間が端によったので仕方なく先輩たちに近付く。

 

「何言ってんだ香月。そいつ例の1年だろ?聞いてんぞ、ケンカしねーって」

「藤沢~おまえ知らねーの?」

「勝ったっていつだよ初耳だぞ」

「ん~と冬休み前かな」

「去年かよっ」

 

古い話を持ち出してどーいうつもりだあの先輩(香月って名前だったのか知らなかった)。

たしかに冬休みまえ俺は鬼塚をボコボコにしたけど喜んでやったことじゃない。

問題を解決する方法がソレしか思い付かなかったんだ。

俺の通う此処はよくない奴が集まる学校で理不尽な目に遭う人間が視界に入る頻度が高い。

それを毎回止めていたら奴らが恐れる人物、所謂番長?的な先輩に睨まれてしまった。

止めたって言っても絡まれてる友達に話しかけたり近付いて見てただけだったけど邪魔された側はかなりムカついていたようだ。

同級生・先輩関係無く同じ態度で止めてたのも悪かったのかなぁ?制服を着崩していたり私服だったりして学年の区別がつき難いんだよ此処の生徒って、授業サボる奴多いし。

とにかく俺も友達の扱われ方について譲る気が無かったので「勝負する」という結論を出した。番長…学校で一番強い奴を判り易くぶちのめすことにしたんだ。

てゆーかぶちのめした。計ちゃんたちみたいなヒーローに近付く為の道は想像以上に険しい。

いま考えてもアレ以上に効果的な方法は無かったと思う。

個室で用を足している途中、機動力の無い状態をボコッた。奇襲が成立したのは偶然だけど。

相手がプロボクサーって聞いて焦ったぜ。正攻法で勝てるワケねーっつの。

あのとき襲撃されそーってことと首謀者の情報を教えてくれた香月先輩には感謝している。

学校をシメようって話には乗れないが。

 

あのケンカで俺たちは平和を手に入れた。

あれから友達が絡まれたことは無い。フツ―な奴にとって肩身の狭い危険な学校でフツ―に暮らせている、でもデメリットがあったらしい。

香月先輩はコスプレ男をなんとかさせる為に俺を連れてきたようだ。教師を頼らないのは面子の問題だろう。テリトリーで暴れた部外者をタダで帰してはならない、みたいな。

そういうのは番長の役目じゃねーの?

気絶しているのかさっきから何も言わない鬼塚を見ると両鼻孔から出血し前歯が2本折れていた。白目をむいた顔は完全にグロッキーだ。顔面にくらった攻撃であんなに飛ばされたのか。

ひでぇ。ホントにひとりでやったんだとしたら…この状況じゃソレしかありえないが…

コスプレ男の腕力は星人並だろう。

 

ガランッ ガランッ ガランッ

 

廊下に出るコスプレ男。

こっちに背を向け歩く。…帰るのか?

向こうから来た野次馬が男を見あげ後ずさる。俺の後方にも集まってるのだろう騒がしさが増している。

 

男は荷物を床へ落とし下駄を脱ぎながら振り返る。

あ、やっぱケンカする気?

背筋がチリチリする。すっかり慣れちまった殺気ってヤツ、とはちょっと違うな。

日常で殺気放ってる奴がいたら悪目立ちするってレベルじゃねーか。

香月先輩無視して教室に居ればよかった、何これ?俺このままケンカしなきゃダメ?

この注目されてる状況でボロ負けはマズイだろーなぁ侮られたら元の木阿弥。なんとか引き分けねぇと。ったく何で鬼塚はこんな奴にケンカ売ったんだ?スゴイ強そーじゃん。

部外者なのに学校入り込んで生徒を気絶させるとか意味分かんねーし、犯罪だろ。

ヤバい奴じゃねーだろーな?

 

「あの」

「なんや」

「鬼塚…先輩がアンタに何かしたのか?それなら

「いや別に」

 

「俺、関係無い」と続ける前にあっさり否定された。

だとすると、なんの理由も無く初対面の人間ぶっ飛ばしたの?

…どーしようこいつ、ヤンキーなんかよりかなり危ない奴なんじゃ…

いや悲観するのは未だ早い。格ゲ―キャラのコスプレしてんだから、きっとこいつアレだよ。

 

「えっと。変なこと訊くけど…もしかして…道場破り、みたいな…?」

「おう、平たくゆうちそーゆうこつだな」

 

……!?

自分で訊いといてなんだが理解出来ない。今どきそんな…マンガみたいな…

道場破りなら道場行けよ~学校に乱入してんじゃねえ。アンタいくつだよ?高校生にケンカ売って意味あんのか?ある意味他流試合かもしれないけど。

男は半身に構え「きなぃ…」とか言っている。

俺、武道なんて体育の柔道くらいしか知らねーぞ?マジでお互いに得る物がねーだろ、このケンカ。

 

ヒュッ

 

開幕の突きをかわす。

ギリギリだがなんとかなった。開始の合図無かったけど、ケンカにルールは無いもんなっと

 

ガッ

「!?」

タ―ンしながら、突き手と服を掴みいっきに……やめた。

タンッ タタッ

両手を離して間合いをあける。

 

ヤバかった。背負い投げするとこだった、

 

今日はスーツ着てんのに。

 

ちょっと寒かったから学ランの下にガンツスーツ着て来たんだった、忘れてた。

あのまま投げなくてよかったぜ…計ちゃん投げたとき下敷きになった壁が軽く陥没してたからなぁ。道場破りと野次馬がヤバいことになるとこだった、あぶない危ない。

つーか問題解決したな、このまま平気な顔して殴られてればいいじゃん。全く効かないのが解れば諦めるだろう、スーツ着たメンバーを生身で殴ると手が痛ぇーし。

 

ちび星人と闘ってから数週間後、計ちゃんから“勉強会”に誘われたのを思い出す。

そのときテスト週間だったから文字通りの意味にとって勉強道具持って行ったら笑われちまった。「ミッションの」勉強会だって、ひでーよ計ちゃん!分かるワケ無いだろ(笑)。

その日は武器の性能を話し合ったり公園で鬼ごっこしたりと遊びのよ―な勉強会だった。

一抱え程ある置き物みたいな遊具を持ち上げ、鬼役にぶつかったソレが粉々に砕けたのには焦ったぜ。やった当人…北条が言うには「発砲スチロールみたいに軽」かったらしい。

生身でスーツ着用メンバーの攻撃を避けるのは恐かったなぁ、かなり。チビ星人のように目で追えないほど速いターゲットに慣れようという趣旨だったか。投石(?)の仕返しらしく最初につっかかられた北条がマジ逃げしてたのには笑ったが、すぐに納得した。

武器がプラスチック製の棒きれなのに迫力ありすぎなんだよアイツn

 

ヒヤリ

 

?!

咄嗟に大きく右へ跳ぶ。左耳の横を何か通りすぎてった。

…さっきと同じ突きか?

ドッキン ドッキン ドッキン

な…なんとか避けた、が速え~!!ホントに人間か?こいつ。今度こそ殺気も感じるし

 

ボボッ

 

俺と位置を入れ替え左右の突き。

…って、おおっ!!肘が顎を掠め

 

ぐっ?!

…いや痛くね―けど驚いた。膝を胸に食らっちまった。…コイツじつは星人か?

俺スーツ着てんだぞ!

さがって体勢を立て直す俺に追いすがる道場破り。蹴りも混ぜて畳み掛けてくる。

 

(なんだコレ)

(スゲーな、おい。あの1年もボクサー?)

(さぁ?知らねー)

 

風切り音の合間に先輩達の暢気な会話が聞こえる。

ほかの野次馬も勝手なこと言ってるが聞き流すしかない。今は避けることで手一杯……

 

 

♪キーンコーン カーンコーン♪

 

 

「! おっと。予鈴鳴ったから終わりだ。帰ってくれ」

 

体当たり?みたいな攻撃を避けて声をかける。

音と風圧すごかったなー今の。廊下がちょっと揺れたし。

藤沢って先輩が「あれは八極拳の…」とか言ってる。八極拳って中国武術の?

必殺技みたいなものか……まぁ、いいや何でも。終わったことだ。

くっそ~結局3発も食らっちまった。効かない攻撃を避けさせられたのも何か悔しい。

 

「なしけんや!まだ勝負は着いっちらん!」

「聞こえたろ?予鈴だっつの。ここ学校だぞ午後の授業があんだよ」

 

信じられないって顔で抗議する道場破り。

うるせーな!いきなり現れて他人の昼休み潰しといて被害者面?信じられないのはこっちだ。

…ちょっと八つ当たり入ったけどな。

 

「勝負つかなかったな~」「このまま続けてたら死人出たんじゃねーの」

「こんなスゲーもの見れるとは…」「金取れるレベルだよ」「両方バケモンだぜ」

「あーあ、これから体育だよ~持久走だって~」「まださみーっつーの」「フける?」

 

「あ、待っ」

 

不審者を廊下に残し俺たちは解散した。

 

 

 

=========

 

 

 

いつも白色灯に照らされる室内はオレンジ色に染められている。

夕日が綺麗だね~…あ、沈んじゃう。パッと明るくなる部屋。

今回は早いなぁ、さっき時計見たら17:40だった。

 

此処は黒球部屋だ。

 

…未だ夕食前なんだけど…

 

必要無いときに消灯するのはフツ―だがこの部屋が暗いと不気味。

誰がスイッチ押すでもなく勝手に点いた明りも。しかし黒球部屋を明るくする意味ってあるのか?一般人から見て無人の部屋に電灯点いてるほうが変だろ。ミッションまでの光源は夜景で充分だし。暇潰しに読書するメンバーはいない。

 

今日は3月8日、前回のミッションから36日後である。シナリオより9日も前の呼び出しだ。今回こそマンガに無いミッションだろうか?それも気になるけど…あ~ぁ

ビーフシチューが出来る時間に合わせて焼いたパンが冷めちゃうじゃん。

焼きたてが至上なのに~

 

「…なんや?ここ」

「…」

 

現実逃避しながら転送ビームを眺めていると加藤と一緒に変な奴が出てきた。




加藤日常回。概ね平和な高校生活。
香月センパイはあと一回登場する(かも知れない)。
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