野宿星人ミッション開始(オリミッションその2)。ミッション・エリアは昼間。
メンバー全員がスタート地点に揃うまでベンチに座っていたターゲットは起立した途端浦中に驚かれ何かする前にガンツソードで頸を刎ねられた。
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んだよ、つまんね―…
メンバー達に混ざって突っ立っていたオッサンを和泉が瞬殺し、その呆気なさにガッカリしているといつのまにか足元を黒い靄が覆っていた。
火事?!
急ぎ飛び退いたほうへ靄は広がらず、しかし潮風に逆らいメンバー達を包んでゆく。
足元から上半身へ集まり伸び縮みしながら留まる黒雲…
いや、生き物?
あれがターゲット…
「わ”ーッ わ”ーッ わ”ぁぁあアァァあ!!」ゴロゴロゴロ…
床から1m程度上で滞空する黒雲。周波数を変えているからか俺には近付いて来ない。
その直径10m近くありそうな範囲から最初に脱出したのはクロノ。馬鹿のくせに勘は鋭い、
屈んで転がり回避すると隣の足をペンペン叩き「おいッ しゃがめッ虫は上だけだッ」となかなか的を射たアドバイス…
虫なの?あれ。
虫(?)の大群こと黒雲から露出したメンバー達のスーツは生きてるらしい、ボタンは光ったまま。当人たちも弱体化や心神喪失の症状は無さそう、元気よく踠いている。
ガンツスーツは細かな生物の攻撃からもメンバーを守れるってことか?
スーツを着込んだ奴らのリアクションでは攻撃の有無すら判断できない。
悲鳴をあげていることから「虫」は口に入ろうとしないのだろうが
「なにあれっ」「小蠅?」「フ□キラー!□ースジェット!!」「無えよっ!」
「星人なのか?」「いや、虫じゃん」
掴めない敵を振りほどこうという無駄な努力を止め、四つん這いで包囲(?)を抜けるメンバー達。いくらか落ち着いた数人が外側から見た感想を言い合う。
「…どうする?」
ヤッつけるしかねーだろ。
「捕獲…はムリか。銃は?」
「ダメだッ 効いて無ェッ」
「刀もだ、擦り抜けちまう」
「くっそ~。あ、ゆっくり引いてみるとか。振り回せば腹で潰せねぇ?」
「…」
「吹き散らすのは?何かで扇いでさぁ」
「散らしてどーすんだよ」
まぁ虫捕りや殺虫用ではないよなぁガンツ武器。銃で捕獲可能は猫サイズ以上じゃね?
レーダーをチェックしたところ黒雲の位置にマーカーは無くターゲットではないと判断しつつも不審物を放置できず攻撃してみるものの失望を繰り返すメンバー達。
今のところ殺傷力無いからガンツに無視されてるだけであの大群は星人の一種だと俺も思う、
船全体の平面図にしてもターゲット反応0なのに転送始まらないし。
ターゲットから涌いたってだけでも駆除対象だろ、きもすぎる。
「よしっ」
何かを決意する加藤、に注目するメンバー共。
嫌な予感。
「叩くぞ! 一時間あればいけるっ とどまっている今がチャンスだ!」
「…」「…」「…」
捕獲銃をホルスターへ戻し空いた両手を構えつつじりじりと大群へ向かう馬鹿。
それを無表情で見送る間抜け共。
想像力無いのか?あいつら…
(うわぁ~面倒な…)
は?
(100点武器を撃ってみます?最大範囲ならいけると思います)
佐藤が話し掛けてきた、俺と同様に周波数を変えているからか小声で。
たしかに、散らばったメンバー達を追わず群れの大きさは10m弱なままだから効果範囲を最大にすれば一度に圧砕できそうだ、けど陸の見えない場所で足場にダメージ与えたくない。
和泉も同じ考えだから使わないのだろう。加藤の100点武器は何故かクロノが持っている。
(ですよね~沈没したら困ります)
無言を否定ととったのか佐藤は大群へ視線を戻した。
“野宿星人”がさっきの1匹だけなら今頃は部屋で採点されてるはず、レーダーに映らないターゲットが居るのかも。一般人っぽい姿でターゲット表示のされない星人ってのもウザそーだが俺たちのように消えているとしたらそのほうが厄介だ。互いに視えないなら先に動くのは悪手。もう少し様子を見たい。
「あっ!!」
レーダーを再度チェックしていると山田の大声が響く。
大群が動きだした。
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「わっ わっ動いたっ」「分かれるっ行っちまうぞっ」「とめろッ!!」「どーやって?!」
「…やばくねぇか?」
中腰で近付く全身タイツに危険を感じたのか、メンバー達を包んでいた位置から動きだした黒雲(に見える大群)は建物前で上昇し十数条に分かれ隙間やゲートへ吸い込まれていった。
というか逃げた?
やっぱ吸血鬼じゃないじゃん。
奴らなら“黒服”か“ホスト”星人だろう、名称がおかしい。なんだよ“野宿星人”って。
体内で羽虫飼ってる~なんて設定も無かったはず。飼ってるとしたら蝙蝠か?
マンガ同様ミッション・ターゲットにならないのだろう吸血鬼は。
まぁ無駄だよね、あいつら各自が感染宿主だから例のウイルスだかナノマシンを消すカウンターをホモサピ全部に植えでもしない限り根絶できまい。吸血鬼菌がヒト以外にも感染するものだったり空気感染だったらもっと無理だし数百年前から強ーい吸血生物が存在するわりにヒトは増え続けているんだから今慌てて対処しなくても誤差じゃないかな? マンガよりもメンバーが充実しているとはいえ逃げ場が限られた状況であの強キャラと遭うのは恐いからミッションにならないことに文句は無い。
そんなことより何で今だよ海外遠征。
カリブ海のクリ―チャ―ならカラカスとかフロリダチーム呼べって。どうせキューバやドミニカにもあるんだろガンツチーム。マンガの順番ならあと数カ月先のミッションじゃんエリア違うし。本来の遠征ミッションには地元チーム(以外も多数参加していたけど)も居たからスタート地点が違うだけで来てんのか?他のチーム。
今回のターゲットは“くろい”細かな羽虫を出すらしい。
口内や耳孔に入って悪さしないタイプなのは嬉しいな。侵入を試みる虫を防ぐ自信無い。
ある程度の群れならまだしも1・2匹じゃ見逃しそう。
対象が小さすぎてロックオン機能が反応しないのか、米粒サイズが1匹づつ爆散(?)してるからパッと見わからないのか判断出来ないが結局試していない範囲武器(Zガン)以外の攻撃が効かず、両手で挟むように叩き潰す方法しか使え(なさそーだが試す前に逃げられたので、これも適切か判ら)ない相手がターゲット扱いじゃないのは助かる。
逃げ隠れする羽虫なんて蠅1匹でも駆除に数分かかるのに制限時間足りないだろ。
初見の大型客船内を一時間も走りまわらされたあげく点数没収とかやってられない。
きっと吸血鬼共のような一般人っぽい姿なんだろーな点数のつく“野宿星人”は。大型客船に紛れ込んだホームレスを探すのか、客や船員に擬態したクリ―チャ―を見つけるミッションなのか?
指令の個体に住んで(?)た羽虫は切断面という大きな出口ができたことで噴出した様に見えたが鼻や耳等天然の孔からも出入りするとしたら見分け易そう。
でも一撃で船の底が抜けないことに賭けてZガン使ってみるべきだったよセンパイ~、虫(?)が0点のターゲットだとしても田中のギョロちゃんみたいな斥候かもしれない。あるいは…
あのままでは手詰まりだったが、北条の言うとおり船内へ行かれるのはヤバそーね。
… … …
なんと怪しからん職場か、
簡素な通路で調理師っぽい中年に圧し掛かりくねくねしているブルネット女を発見。
そんな2人をガン見する野郎共を放置し角を曲がると南国めいたBGMを圧す騒音が聞こえてきた。
「なんだ…?」
先頭じゃない加藤が呟く。
配膳係の通り道だろう細い一本道の途中から壁が透かし堀りされているもののメンバー達で構成された行列の前3人以降は視線が通らない。
「レストランみたい。客が騒いでる」
「あンなに虫がでたら当然だろ。あ、でもいつも通りなら視えてないのか?」
「…あれが星人なら隠す気なか。暴れとー」
風の静かな声がいつもより小さい。
桜丘と玄野より視点が高いぶん状況が解っているのか。視力もよさそーだし。
武人が動揺する相手とか怖い、虫人間みたいな奴でも出た?或いは不審者。(拒否反応を我慢できないレベルの)グロいターゲットより人間風ターゲットのほうが嫌と言われれば納得。殺害or拉致対象なわけだし。でも紛れ込んだのが(スタート地点に居た様な)浮浪者ならあんなに騒がれないか、異臭のするヒトでも飛行機に乗せてもらえるらしい。
聞こえるのは怒号と悲鳴に少々の笑い声、それと奇声。
Xショットガンのスコープ越しに見ると骨格が骨格を素手で襲っていた。抱き付いてパクパクと…顔面に食い付いている様子。
玄野に促された列が進み大きめな観葉植物の陰から裸眼で確認できた光景はなんとも…
「っ?!」
仰向けに倒れた人間の腹部から顔を上げる逞しい肩、の女性と目が合い息を飲むメンバー達。
口角を中心に赤く染まった顔が歪み
「yipe!」
斜め手前に居た中年女性を押し倒した。わがままボディ2人分の衝撃で拉げる椅子と植木鉢。
食人女が見ていたのは玄野たちではなく獲物らしい。
フロア内のいたる場所で同じように襲われる客、と給仕らしき船員。
ここが本当にカリブ海なら時差半日遅れだから朝食か。
大半は暴徒の間合いから離れ、なぜか遠巻きに惨状を伺っている(?)が一部は鬼ごっこ状態。
鬼役は全体の1割、15人ほどか。食事(?)中の奴等が参加したら3割超えそう。
3層吹き抜けの高い天井に大きなシャンデリアを吊り下げた立体的な構造のレストランは広く造られているもののテーブルと椅子が邪魔なので追いかけっこには向いてない。鬼役は横に大きな奴ばかりで、ちょっと鈍足だ。機動力に欠ける体型のうえ超人的ではなく一般的な腕力なのか客に制圧されている食人鬼(?)もちらほら。椅子でぶたれたり直でぶたれたり革靴で踏まれたり。
食人鬼(?)を打ちすえている数人は周りの客より落ち着いた雰囲気。薄着な周りから浮いたかっちり黒背広は要人警護か? 満身創痍で尚獲物に向かおうと這い進んだ食人鬼(?)は背中にテーブルを乗せられた。
まだ動いてる。
「…」「…」「…」
「変ね…」
「どーなってんだ今日のミッション。…関係無いテロ?」
「あれがターゲットなの?一般人に負けてるよ。僕ら要らないんじゃ…」
「星人じゃね―ならヤク中やビョーキか?ありえねーッて」
バックヤードへ続く通路を出、室内装飾の陰で相談するメンバー達。
亮太の目元は祖母の掌で覆われている。彼女も目を瞑って沈黙、いや何か呟いてる。
食人鬼(?)共がターゲットか確かめたいならコントローラー見ろよ、このフロアに居るのは
「Yikes!」
ガチャ―――ンッ
扉へ駆ける赤毛女性の真横、テーブルに男が激突。遠いギャラリーからも悲鳴がわく。
ひとつかふたつ上のバルコニーから落下したのだろう彼は白いテーブルクロスに覆われた天板に全身を預け身じろぎしない。
見上げると3階の柵に身を乗り出す連中が数人。客でも接客員でもなさそーな装備だ。
「Hey.Are you okay?【ねぇ、あなた大丈夫】」
「Doctor! Is there a doctor on this room?【医者は、この部屋に医師は居るか】」
冷静な声は同じ階の乗客。
泣いている幼女の腕に(たぶん)絆創膏をつけていた客こと細身淑女とチェーンスタンドを構え侍っていたカジュアル紳士が、他より重傷そうな怪我人こと仰向けで動かない男へ近寄り助けを募る。が名乗り出る者は無し。
ん?
怪我人へ視線を戻しこちらに背を向ける淑女、そのカーディガンに違和感を感じていると彼女の背景…メインっぽい出入り口に物々しい集団が現れた。
3階(?)に居た人たちに似ている、警備員か?
服装は海員制服(半袖Yシャツ)に防護ベストを足しただけの簡素さだが変な形状の長柄や銃を構えている。大型船なら発砲OKなの?
【脈が無い】【AED(自動体外式除細動器)は?…って、来たぞっ】
連れに答えてから出入り口の反対方向へ短く叫ぶ紳士。彼も診察台代わりへ飛び乗り、遅れて気付いた淑女と共に身構える。
そんな暇があるなら逃げたほうがいい。
2人(と重体)を目指し駆けるのは十数人。
その殆どが肥満体独特の動きで着衣に飛沫付き。食人鬼だ。
紳士たちの何が他より魅力的なのか標的を変えて集まって来る。
もしかして落下男もターゲット?彼も暴徒同様太鼓腹。
一般人に返り討ちされる同胞は無視してたのに突然互助精神に目覚めた?
危害はよくて救助はだめなの?
(今のところ)一体一体が仔ねぎに毛が生えた程度の戦力といっても多勢に無勢。
食人鬼共は落下男狙いだとでも思っているのか紳士たちは彼を隠すような位置取り。
危険な立場のまま他人を顧みるなんて加藤並みに希少な変人…そうか、勇敢で利他的だから目撃例が少ないのね為善者って。
淑女も(膝丈スカート下から出した)特殊警棒を展開、ヤる気だ。
ムチムチ通り越して力士体型9割な食人鬼連よりきみらのが運動機能は高そうだけどあの数に勝つつもりなら銃器が要るよ。
とか思いつつ私はトリガ―を引いた。
【むっ】【あれっ?!】
【隊長っ】
【落ち着け!…狼狽えるな…落ち着け。目を閉じて深呼吸しろ…おお…神よ…】
リンチされそーな乗客を守ろうと詰めた距離から進めず騒ぐ警備員たち。
瞬きする者・周りを見回す者・上司へ指示を仰ぐ者・訊かれて一喝し全く落ち付けない者。
彼らを留める障害は未知への恐怖と混乱あたりか。
テーブル上の2人も唖然としている。
【奴らは…】
【消えた】
【そんな、どこへ消えたっていうの…縦穴?…抜け道? どこにあるのよそんなもの】
【現に消えている。だが】
怯えた目のまま笑う淑女へ答えながら3番目に近い食人鬼…の尻でおされちょっと傾いたテーブルを見つめる紳士。倒れたグラスが落ちそで落ちない。
彼らに1番近い、1mほどしか離れていない食人鬼へは2人共視線を向けない。唯一自由になる頭を振り回し唸っている赤ら顔の老人に気付いていない様子。天板をうち一部脚元にかかってそーな唾すら無視。
これではっきりした。ワイヤーをかけた物体は一般人の知覚から消えると。
乗客乗員こと今回の一般人はターゲットを視認しているから今までの条件とは違うところもあるが「ミッション中にYガンのワイヤーで巻いた物体はガンツ武器と同じ周波数になる」ってことだろう。少なくとも今回は不可知化するらしい。
ステルス機能って不思議だ。ミッション中のメンバーは3種類の周波数(?)を選べる。
ひとつはオートで設定されてる周波数。一般人には姿と音を認識されない仕様。
ふたつめはターゲット(とメンバー)から姿のみ隠すもの。コントローラーが無いと選べない。
みっつめは一般人にもターゲットにも認識される状態。これもコントローラー必須だが選ぶ利点は何だろう?
(居残る理由は別として)加藤はオリ主の負担を減らそうと特典武器を選択。
スタート地点への転送時、加藤と共にその足元へ現れたZガンを持ち主より先に玄野が拾い上げ渡す前に小蠅(っぽい何か)の大群がメンバーたちを囲んだ。
玄野「これオマエのだろ」
加藤「(使うと船底が抜けそうだしデカくて邪魔だなぁ)計ちゃんが使っていいよ」
玄野「マジで?(船内で使うのは心配だけどコレじゃないと倒せないターゲット出るかも。
ていうか使ッてみたい)」※移動中の会話※
孫を抱っこする老婦人が呟いていたのは経文。
細身淑女とカジュアル紳士は警備員が来るまでの数十秒間耐えるつもりでいた。
自分たちと要救助者両方が必ず助かると確信した選択だが、勝ち目が薄くても実行した。
目の前で死にそうな人間を絶対に見捨てられない類いの人種。
メンバーたち「今回のミッションエリアは客船全体か(当たり前のように納得)」