凡キャラでGANTZ   作:フランディーニ

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前回のあらすじ:
乗員乗客とガンツメンバー以外に野宿星人をやっつけている存在がいることを怪しむオリ主。



野宿編⑤

 

===■■====

 

 

 

ここは大型劇場。船首に位置する空間。ここもスタート地点と同様3階分を使った施設だ。

眼下に並ぶ2階席と1階席を含めた収容人数はアクアシアターの倍以上だろう。

後部へ広がるほど高くなる天井の中心にある巨大な飾りはシャンデリアに見えるが今は役割を果たしていない。代わりの光源は陳腐なアクション映画。

そのBGMも本物のパニック劇を扇動している。視界に入るのは間抜け共の阿鼻叫喚。

 

指令の星人から湧いた羽虫の大群を追い300mは走ったと思う。

アクアシアターの2階客席を飛び越え大型客船を二分するメインストリートを通りすぎ

突き当たりのゲート手前で大群の末尾に追いついたのは予定調和ってヤツか。

奴らにとっての目的地に着いたから移動速度が落ちたんだろう此処はターゲットの巣だった。

 

“野宿星人”は一般人にも視えるらしい。

1階のステージと客席の間で首が飛んだ途端、悲鳴があがった。

ステージ上に生首が増えるたび大声が増え今は近場の会話すら聞き取り辛い喧しさ。

 

動かない奴・席を立つ奴・移動する奴…

会場の暗さも手伝って俺の位置からじゃ大きさと体型そして行動しか分からないが、先ず一階のステージ前に陣取るメンバーこと和泉につっかかってる連中は星人だ。倒れるたび靄が立ち昇る、銀幕を遮る影は小蠅だろう。

3ブロックに別れた座席のうち中央ブロックの観客はほぼ全てが和泉1人を囲んでいる。

両隣のブロックは包囲に加わる奴と逃げる奴が半々くらい。1ブロック200席ちょっとだから星人は400匹以上。それを一匹づつ斬首する和泉。初期位置から殆ど動かず順次処理、首を飛ばして残りを蹴る。機敏で無駄のない動きだ、得物が只の刀なら。

 

雑魚だからって遊ぶんじゃねーよ、ワンキル縛りか?余裕だな。

どーせ1匹1点だ、ブレード伸ばして刈っちまえ。20mくらい余裕だろ。

一度振り回せば終わるのにやらないなんて時間の無駄だ。

まさか群れに混ざる一般人を気にしている、なんて言わないよな?お前そんなキャラだっけ?

 

惨状から逃げない馬鹿や囲みの外周部で撮影・通話中の間抜け共なんぞに価値は無い。

1匹2秒弱で片付くなら支障は無いが星人が逃亡を選んだ場合ペースを維持出来なくなる。

俺らを認識出来ない一般人を巻き込まずに闘いたいなら時間制限無い時にやれ。

効率に縛られることが退屈でもルールを軽んじては本末転倒だ。それに他の懸念もある。

 

判別し難いのは席を動かない客。

やっぱり面倒だな、外見にクリ―チャ―要素が無いと。

劇場の最上階こと3階に陣取る観客は座ったまま。近くの敵(=俺)は視えず和泉は2層下で無双中なせいで行動を迷っているのか、興味が無いのか。隣と会話したりケータイを弄ったりステージ前の騒ぎを罵ったりは(たぶん)一般人。うるさいのなら他へ行け、上映中のマナーなんて既に誰も気にしちゃいない。

 

1階席で斬首を撮影する間抜けが倒れ2階席でも騒ぎが起き、それらの原因を知ると野次は止まった。あれがかっぺ星人みたいな仲間割れじゃないのなら“野宿星人”は一般人も襲うらしい。

人間を転倒させ喰らいつく人間(?)。

!!

悲鳴の発生した後方を見ると出口へ続く階段に寝そべる外人が。

上半身と両脚の距離が離れ頭部が無い。気付いて腰を上げる観客も次々と脳漿や臓器を撒き散らす。スクリーンからの光を反射しキラめく液体。

 

俺たち以外にもメンバーが居るらしい。

あの音が聞こえなかったってことは遠くから…同じ階の右翼か左翼端からの狙撃か、周りの声で聞き逃したか。

劇場に着いた当初はスクリーン側真ん中の最前列付近に集中していたターゲット反応が今や劇場全体に増えている。一般人と“野宿星人”の違いは今のところ血液の有無と虫を出すことのみ。

姿を隠し安全に倒したいのは解るけど、やっちまったなぁ。全部ハズレだぜ殺人犯。

偽善者の仕業だったらお笑いだ。

 

そうこうする間も“野宿星人”は手ぶらで正面から和泉へ向かっては斬首される。

何匹死んでも敵わないことに気付かないほど盆暗なのか、或いはほかの目的か。足止めならば何を待つ? 

羽虫が態と俺たちを劇場へ誘い込んだのならこのまま終わりはしないはず。

広い劇場内に異形や巨体は見当たらない。それっぽい像も無い。道中の通行人同様人種の坩堝ではあっても人間(とそれに似た外見の生物)しか居ない。周波数を変えている俺の目にも映らない星人が居るなら話は別だが。

 

映画の明度が下がる程にスクリーン前を上る幾筋もの靄・動物的な悲鳴・押し合い倒れる人間やモドキ。出口に近付けず和泉へも向かわない奴らは座席の下で息を潜める。殴り合いを始めた奴らは一般人同士なのか違うのか。気楽な現実逃避中に断頭(または階層)と乱射(しかも両方犯人不明)に前後を挟まれ、おまけに食人鬼まで居る状況で出る発狂者としては少ないか?

それにしても、ちらちらと目に付くあれ、星人の死骸に接触してる奴らは何なんだ?

頭の落ちたほうを指し何か言っている。ひょっとして“野宿星人”は仲間を蘇生できるとか?

指令にあった“しなない”ってそーゆう意味? 

 

作業に飽きたのか休憩か、座席上で直立し顎を上げる和泉。

 

ああ、あれか

 

スタート地点で見た大きさの数倍に成長している、広い天井全体に犇めく雲…

天井画とシャンデリア、半円状に並ぶ照明を覆い圧迫感を増す生きた靄、

あれ全部小蠅かよ。

ターゲットは殆ど虫飼ってたから、としても多い。鳥肌が立つ程に。

隙間から入り集まって来た分も含んだ群れか?

…これは期待できそう

和泉が座席から降りた瞬間、馴染みのある音が微かに聞こえた。

密室で数百人が発すかなりの騒音に紛れなかったのは偶然か。

死体の振りでもしていたのだろう背後から忍び寄り和泉が移動したことで見えた老婆が意外な速さで腕を振るう、そして四散した。よろめき歩く下半身。

その背後で爆ぜる生首や死骸は合計3発分。

 

崩折れ一際多く噴出した靄でスクリーンを遮ったのち同類に折り重なるターゲット。

それを一瞥もせず右上…最上階の右翼端を睨む和泉。

 

(おぉいっ外したぞ下手糞!)(おめーもだろっ)(撃て撃てっ)

ギョーン ギョーン ギョーン ギョーン…

 

狙撃した奴は同じ階に居るらしい、すこし遠い声。ケータイの光にスーツのものも混ざっているようで詳しい位置は判らない。マジで邪魔だな一般人。

ターゲットには当たった、から…あいつらマジか?

明らかに和泉狙い

 

ドンッ ダンッ

 

黒い人混みから飛び出し一階の通路へ着地する影2つ。

肉薄するターゲットを無視し開いた席へ飛び込んだ獲物に勝機を見たのか距離を詰める。

時間差で爆ぜる肉塊・座席・床。小蠅と埃で曇る現場。

和泉を消したいメンバーって…ああ、そうか。あいつらなら後2匹居る筈だ。

 

2階席経由で合流した仲間へ振り向く間抜け。こっちを指し何か発するデブ野郎。

右腕を失くし尻餅をつく馬鹿。とどめの前に群がられ、そのまま雑魚に喰われるようだ。

断ち斬られたってことは、おシャカになったかあいつのスーツ。

 

間抜けとデブへも群がる星人。

包囲されてビビッているうちに上から和泉の襲撃を受け人波に消えた。

…。

いつの間にやら一階席がターゲット専用スペースと化している。一般人は喰い尽くされたか。

 

実験がてらデブを蹴り落としたのは俺。2匹の出発地点で柵に乗り出しスコープを覗いていたから簡単だった。背後も注意だぜ?素人共。

乱戦中を遠くから狙うのは名案だ、というより雑魚にも勝ち目のある唯一の手だった。

しかしガンツ装備への理解が足りない。メンバー殺しをやるには早い。

強い駒を消すならミッションの勝ち筋が見えてからにしようぜ、仕返しが成功してもターゲットに殺られちゃあ無意味ってもんだ。

 

前回からの新規メンバー3匹を危なげなく下した和泉が駆けだす。

後に残った現場には妙な動きの星人共。数匹で襤褸きれを広げ丸いものを投げ合っている。映画に照らされた表情は笑顔。ボールは…バカ3匹の頭部、掲げる布はガンツスーツのなれの果て。

示威行為だろうか。

和泉が馬鹿たちのスーツを壊したから勝てたってのに滑稽な…

 

敵を追わずボール遊びに興じるターゲット共を放置し、俺も出口へ足を向けた。

 

 

 

… … …

 

 

 

(どっちからか分かるっ?)

(え?え?)

「…誰だか知らないけど 余計なことしてると死ぬよっ!どっか行きなっ!!」

(!?)

 

「あっはっは、こっえ~、強がってんのも今のうち~ってか」チャカッ

 

こっちも揉め事か。

劇場を出てすぐ、聞こえた大声は奇妙な脅迫。

劇場の3階出口を開き床の隙間を覗くと歩みを止めない長髪の向こうに見えたのはガンツスーツの男、とそいつの横に2名。メンバーではない。

気付かない男へ和泉は刀を振りかぶる。

 

(おい)

「あ?…!

 なっ ぅおっ くそっ ちょっ 待ってくr

ブッシュウウウゥゥゥ…

 

4・5撃目で胴に別れを告げる首。

暗い劇場よりは視えたが振りが速くて判別しづらい、けど多分その回数。

着地音で勘違いされないよう階段を使って現場に着くと待っていたかのように首無しスーツが床へ倒れた。あの男は和泉にケンカ売った無謀共の連れだ。妥当な末路である。

移動すら出来ず台詞の途中で終了とか雑魚すぎ、そんな下手すりゃ今日のターゲット以下な身体能力もアレだが、和泉を待ち伏せてたんなら一般人に目移りして背後とられるとかバカだろ、何がしたかったんだ?

なんて少し興味が出たけど当人共にはもう訊けないし頭の悪い奴の考えを聞くのは殆どの場合時間の無駄だ。

問題は…

シンメトリーな内装の左階段を背にした女2人は足元の新鮮な首と処刑人に無反応。

本当に視えていないらしい。

 

「何言ってるの?何なの?」

(…ちっ、よりによってこんなときに…)

「は?」

 

訝しむ表情で問う白服女へ答えず周りを警戒する青服女。

白服は何故か露わな左肩と下着を押さえる際どい姿。青服のワンピースは無事。

両方高校生、だった筈。青服はともかく白服は有名人。TV観なくても殆どが知ってる… 

ってそんなことはどうでもいい、

おかしいのは青服の態度。あの女もしかして…

 

「話は後。逃げないと」

「あ ちょっと」

「言うこと聞いて。死にたくないなら」

「死?え?」

「はやくっ」

「待って、戻るの?ここのほうが安全でしょ?銃声も聞こえないし…」

「視えない奴が居るの!何でわからないのっ!!」

「? さっきからわけのわからないことばっかり…もういい。付き合いきれない!!」

 

青服の手を振り払い言い返す白服。

生首はギリギリ踏まれていない。足元から白服を見上げる渇いた瞳、

っつか白服女の服破いたのってまさか…

青服たちはターゲット共の暴動を避け逃げてきたようだ。襲われたなら此処でケンカは無理だろう。

 

「ふん、どうでもいい」チャキッ

 

喚く青服たちから視線を外し劇場の出口へ向きなおる和泉。暗い角穴から異音が漂う。

 

なるほど

イレギュラーの処置なんて後回しでも問題無いか。

 

装備無しではムリゲ―だ。

 

 

 

===◇○○===

 

 

 

パラララララ ラララ…

ビシッ ビシビシッ チュインッ ガガガガガ…

 

舞い泳ぐCG魚と庭園を見送り、ホームドアが左右へ開くとそこは戦場だッた。

隣接する廊下の右に居る誰かと左に居る誰かが実弾を撃ちあッているらしい。

もしくは俺たちを待ち伏せか。とりあえず超ウルセ―。

 

周波数変えたから俺たちを狙ッて撃つのはムリなはず、でも射撃が途切れず出られない。

伏せた岡崎と跪いた桜丘たちに見上げられる。這い進ンでみる?

こンな危ない出口を試す意味ッて

 

「Why doesn't it stop?!」

「It's a waste of bullets!Shoot both legs of your opponent!!」

「That is a monster!!」「Fuck you!!」

 

銃声に混じッて罵声が聞こえる。内容は解らない、でも呻き声や笑い声ではない。

ッてコトは正気の一般人かもどッちかは。

外国の警備員は過激だな、いや両方星人じゃない可能性もあるけれど。

レストランで撃ッてきた奴らがミッションとは無関係の犯罪者なら…

シージャックとガンツミッションが偶然ダブッたとか? テロの一種や営利誘拐もありえる。

何にしても被弾は恐い、弾切れを待つか。

……

………待ッてる時間が勿体ない、上を片付けよう。

 

 

… …

 

 

「…ッ」

 

カゴが停止し再びドアが開いた場所は今まで見てきた内装とは違うコンセプトなのか近未来的で広さもあるフロア。ここで争ッた跡なンだろう散らかッた床に奇妙なモノが。

破壊されたマネキンだろうか、妙に小さい…

他に何も居なかッたので半透明な壁をつなぐ柱へ寄り、外を覗くとプールサイドだッた。

 

こッちはだいぶ混ンでいる…

 

船の屋上にプールッてどーなの?

普段なら呆れるか笑うだろーけど今はそンな気分になれない。

岡崎は左手で口を押さえ、前回からの新規メンバー(浦なンとか)は顔を背ける。

両サイドに設置された2種類のプールに挟まれた空洞…エレベーター内から見えた庭へ日光を当てる為だろう縦長の空洞以外を埋め尽くす勢いで倒れている無数の物体はさッきと同じく人間ッポイ何か。

見たカンジは制作中の木像。全身にクレーターが出来ているらしく等間隔でゴルフボール大に抉れた素材は赤黒い。頭部は頭蓋骨とその下まで削れ中身を晒している。手足は下手くそが造った木刀みたいで先端パーツは欠落。服を着て(?)いなければ人間…いや、人型だッたとはとても思えなかッただろう。 

額から小鼻を通る水分を感じる…体温調節のためではない…

指令のオッサン同様、服や床に血液が全く無いから星人の死骸だ。

どうヤッたらこンなコトに?

 

「見てっ」

「ぅわっ」「ひっ」

 

桜丘の指す方、後にしたばかりのロビーを振り返るとアレがいた。

壁一面にびッしりと。

うん“野宿星人”は虫に関連あるらしい。蠅ッポイ羽虫は腐るほど見たしな。でも、

アレは出ないでほしかッた。

 

「…」「…」「…」「…」ゴクリッ

 

バ”バ”バ”バ”バ”バ”バ”バ”バ”バ”

ぅおぉおおぉぉおおお?!

 

ゴキブリ(×???)の攻撃!

クロノの精神に50のダメージ!ッてか?!

エレベーターホールの外壁をうめ尽くしていた羽根ゴキが俺たちに殺到した。

両腕や肩に断続する衝撃。ひとつひとつはゴム鞠がぶつかる程度。でも相手がゴキブリ(大量)だと思うとちょッとした恐怖。

とか何とか強がりつつも為す術無く攻撃を受けること数十回、幾度目かの短いインターバルが来る――ここだッ

ギョーンッ

タイミングを合わせ突き出したXガンのトリガ―を引くと漸く羽音が消え去ッた。

 

「やった?」

「…はぁッはぁッ…ふう」

 

ガードを下ろしつつ呟く桜丘。答えるのはちょッと待ッて。

命中してても数匹じゃね?かるく数百匹は居たから。焼け石に水だし。

はァ…すッげェドキドキしてる…

 

「あっ、あれって…」

 

塔のような建物にターゲット反応が出たので、空洞から響く銃声を警戒しながら向かうと途中に残骸を発見。翅と脚と腹と、頭だ。道しるべの小石よろしく点々と続くゴキブリのパーツ。

…頭の小さいゴキだなぁ。

小蠅と違ってXガンが効くと判ッたのはいいが効率が悪い。次は100点武器でいくべきか。

 

そんなことを思いながら俺は扉を押し開けた。




西くんと同じ階の入り口から大型劇場へ入った(富岡を除く暴行犯)3人は扉を閉めてから間近な乗客を撃った。入場直前にチェックしたマップでは劇場内を星人が占領しているように見えたこと、外見で一般人と区別し辛いことから通り道周辺の人影をXショットガンで倒し移動。階下で目立つ和泉を発見。

西くんの実験:ガンツメンバーに対する直接攻撃。

白服女は衣装の破損をサイズのせいだと思っている。
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