凡キャラでGANTZ   作:フランディーニ

47 / 62
前回のあらすじ:
大量のゴキブリ()を撃退し塔へ向かう玄野たち4人。
※玄野たちがスル―し山田たちが後回しにした銃撃戦は同じもの。

(2021/3/9、登場人物の行動を修正)



野宿編⑥

=========

 

 

 

ショッピングモールが終わり巨大な円柱を迂回すると生存者が居た。

大きな観葉植物脇にしゃがむ背中は、なんだ紳士たちか。

頭数は同じだが連れの2人が変わってる。さっきの親子は?逸れたの?

4人は会話中。内容はわからない。彼らの見つめる先から発生するかなりの騒音で聞こえない。

 

両脇に観葉植物を飾った短めな連絡通路の先は広間。

派手な壁紙と調度・階段で飾られた天井の高いロビーを荒すのは……ドローン?

飛ぶ音はそっくり。

あのオモチャが黒球メーカーに魔改造されたらアレくらい動けるかも(笑)遠隔操作できる100点武器なら是非欲しい、なんて願望入りの冗句は置いといて。

実体の判らない速度の何かが大量に飛び交い損害を増やしている。

なるほど「ロビーへ踏み込む→即ミンチ」を警戒して紳士たちは部屋の外で様子を伺っていると。

…逃げるって選択肢は無いのかな?

加藤と見せかけ和泉タイプか?あの連中。

 

ミキサー内のような戦場で耐えるのは2人、いや4人か。

丁度中央辺りでガンツソードを振る全身タイツ、と黒背広。その足元にうずくまる奴が2人。亀姿勢の服装はさっきの親子と同じもの。

って、あれ?紳士たちも警戒してるってことは不可知化されてないの?あの未確認飛行物体。

 

目が慣れてきた。

 

猛威を奮うのは機械ではない、虫だ。

ブビビビビビビ…と機械的な騒音を発する昆虫は胴、と形容して正しいのか頭から胸までがヒトの頭部ほどある姿が黒いブレードと火花を散らし

ギィンッ

と鳴った外殻はかなりの強度。

翅で床を擦りホバリング、膝丈で滞空し同胞を避けながら上昇。

 

衝突しろよ面倒な。速度違反だ、ぶつかっとけ、

とか思っていたら視界の隅で事故が起きた。

 

4人と8m程離れた床に転がるデカ虫1号、そいつより通路近くでバタつくデカ虫2号。

天井付近で接触したらしく軌道を乱したものも数匹。ギャリギャリ鳴ってるが落ちてはこない。

ひっくり返った体勢を戻すも飛ぶ前に分割される1号、左翅を失う2号。刈ったのは和泉。

止まっていれば刃が立つらしい。

まぁ犬サイズの昆虫つっても所詮は空飛ぶ兜蟹。飛翔時の耐久力が異常なのだ。

って星人だから何でもありか。同胞を避ける反応速度で刃を受け流していたのかも。

 

翅と頭は蜻蛉だが腹が短く全身黒い、トータルでは蠅っぽいデカ虫も擬態で乗船していたとしたら古代虫の展示室まであるってことか?この客船。

でも標本が動きだしたって設定にしては数がおかしい、多すぎる。

古代生物なら化石だろう。

 

デカ虫2号に止めを刺した姿勢で浮くロン毛。腹に体当たりを食らった様子。

しかしタダで倒れないのは執念か、襲撃者を離さずブレードで抉る。

流石ミッション大スキ変j ん?

和泉の腕から虫の頭がころげて消える。床を鳴らす前にバシュッと。

盗ったのはデカ虫。

前脚(?)と牙で固定した同胞のパーツと飛び去る、と同時に仰向けのロン毛へ群がるデカ虫3匹。

急上昇した和泉は天井到着前に落下。凹んだ床からふらつきながらも立ち上がる。

 

中央で天井を見上げる黒背広、着地(?)場所で同様の和泉。

降りて来なくなったターゲット共は天井で休憩、してはいない。高い位置で旋回している。

窮屈そうな密集隊形で。

…?

もしや敵に接触してまで持ち去った死骸と何か関係が?

床に転がっていた2匹分のパーツもいつのまにやら消えている。

 

モニター越しの視界が塞がれた。

Xショットガンの射線を遮ったのはカジュアル紳士のジャケットだ。その背中が遠ざかり白カーディガンも付いてゆく。

向かう先はペアルック親子たち。中年男は上半身を起こしキョロキョロ。天井を見た表情は変わらず左右へ転じ子供を担ぐ。

虫が視えていないのか? 怖かったのは増える破壊と二次被害?

 

子供を右手で抱えこっちを、連絡通路を目指す中年。

それを見て奥の扉へ向かおうとした紳士は淑女と中年の左手に止められた。

あぁ「依頼」とか言ってたクライアントか?あのペアルック親父。

おっと…

紳士たちの近くに黒いパーツが落下。床を滑り前を横切っても一般人たちの目は追わない。

本当に視えてないようだ。

…当たったら怪我してたかな?

 

更に降る外殻の欠片をブレードで弾く和泉、避ける黒背広。

意外と命中したよXショットガン。効くとわかったことも朗報。増えた破損は不可抗力

 

「佐藤さん!…無事でよかった」

 

は?

親子を追いこっちへ駆けて来た黒背広に話し掛けられた。

おまえ加藤かよ。

何なのその恰好、人知を超えた達人護衛と思ってたわ。

一般人に知覚出来ない武器で不可知な高速飛行物体を弾くとかすっげぇ~~~って。

ありえなかったね。

言いながら彼は瞳を潤ませ拭う。デカ虫はそんなに恐かったのか。

 

「ここには和泉しか居ない。他のメンバーは客室区画、じゃねーかな?

 前回加わった奴らはやられたらしい、けど…。…」

 

「けど」何だよ?言い掛けてやめるな。

と思いつつマップをチェック。

十数分前よりターゲット反応が少ない。客室区画のロビーだろうか他よりちょっと広い空間と屋上?甲板の塔、その最上階に残っている模様。

レストランみたいな状況なのか、ここと同じようにデカ虫と交戦中か。

残り時間は10分。

 

「あっ!」

 

踵を返しロビーへ向かう加藤。戻ると危ないよ、デカ虫がアタック再開したから。

集中攻撃されているのはガンツスーツ着たロン毛、を助けに向かわず左折する長身。

Yガンを試しに行ったのか?

ガンツソードに耐える飛翔中の翅にワイヤーが負けなければ有効かも。

和泉の牽制で虫が失速した瞬間にワイヤーを届かせれば或いは。

 

ロックオンしているとモニターに入る痩身。

連絡通路へ駆けこんだのは加藤と1人の女のコ。

いや、彼は人間を抱えている、横抱きで。

怪我人は純白のリゾートワンピースから珠のような四肢を晒す美少女だ。

気絶の原因だろう頭部の傷だけでなく上唇すれすれまで覆った布で顔の造作は見えないけれど美少女な雰囲気。

2人ともガンツメンバーではない。彼は彼女たちを思い出して戻ったようだ。

…何してんの、加藤。

 

彼らにデカ虫が付いて来ない。周波数を変えている? でも透明人間のままでは紳士たちと合流できない。彼らも彼女たちの存在を知っているとしたら安否を確認するまで避難しそうにない。

加藤の斜め後ろで歩く青(色のワンピースという)服(装のこちらは顔面丸見えだからわかる勝ち気そーな美)少女が手にするのはYガン。

背後を警戒する彼女がデカ虫を捕まえるまでもなく3人は紳士たちの元に辿り着いた。

青服少女がガンツ武器を装備しているのに加藤のデスペナ用爆弾が作動していないってことは

 

ドンッッ

 

紳士の視線が加藤へ向く前に轟音が響いた。

 

 

 

… … … 

 

 

 

ジリリリリリリリ…

 

音のあと船が数度揺れたものの今は収まっている。鳴り響くのは火災報知。

船の被害は深刻らしい。避難所から救命ボートへ移動しろって放送も。

沈没に巻き込まれたならガンツスーツを着ていても無意味だろう。試したくない。

 

「何だよあれ、かってぇ…」

 

ロビーへZガンを向けながら呟く西。

大穴から溢れ出るくっさい煙を気にしていない。どこまで陥没したのやら…

不可視の大槌を喰らい一旦視界から消えたデカ虫共は何事も無かったかのように戻り滞空中。

いやさっきまでのデカ虫より若干大きく複眼が赤い、強度も違うから別種かも(複眼が赤くないデカ虫には特典武器を使ってないが)。

倒れたロン毛をデカ虫らはシカト。警戒する意味が無くなったかは姿勢や角度で判らない。

インパクト時、和泉は隅に転がっていたのでZガンで欠けてはいないはず。

ウエイトよセンパイ、撃ち方待て。クリ―チャ―の居る船内で水泳なんて嫌だから。嫌だよね?

出火位置によっては既にヤバい。Zガンはハイリスクと実証された(←悲しい)。

時間切れのペナルティーはマンガ設定より厳しいかもしれない、でも今すぐ退場よりは希望がある。和泉をやったのは奴らだ、正面対決は無謀。ステルスが効いてるとしても通路の真ん中に立つのは危ない。端に寄りたくないのなら奴らの高度より頭を低く

 

ヴ”ン”

 

背を押す圧力、迫る床。へんな羽音(?)は遠ざかる。

ドキドキ…

悪寒を超えた不快感が体表を走る。鳥肌すっげぇ。今のところ痛みは来ない。

思い付くのが遅れていたらヤバかった。

うつ伏せのままロビーを見る。さっきまでの敵影はキレイさっぱり消えている。

群れで移動か、あの一瞬で

 

「おい」

 

横を向くと目が合った。

同じくうつ伏せなセンパイだ。続けて睨むのは背中、にのってる小島の腕。

はいはい、すぐに退けますよ~って、動けない(笑)今頃なのか武者震いぎぎ。

 

西のパーカーは破損している。フードの先っちょとジャージに掛かる裾が不揃い。

首のボタンも点滅して……あ、小島のスーツも同様、じゃない。液漏れしている。

センパイのZガンも後部が短くなってパチパチいってる~…ヤバそうだったら窓から捨てよう。

無事で嬉しいなぁ小島の右腕。

センパイどついてそのままだったからデカ虫にちょっと触れたんだろう。

風圧だけでガンツスーツを壊したんなら恐すぎる。数分でも痛いのは嫌。

 

「死ぬぜ?加藤たち。…もう死んだか」

 

知人の末路を決めつける言葉は、うつ伏せのままコントローラーをチェックするセンパイの指摘だ。

その発言は加藤たちを心配してるととればいいの? そんなに盾になりたかった?

彼ら怪我人一行は和泉が戦闘不能になる前、避難放送の前に救命ボート乗り場へ向かった。

順調なら着く頃だろうしデカ虫らは余裕で彼らに追い付くだろう。何もしなければ君の予言は現実になる。特典武器の効かないターゲットを加藤が倒す術は無いかもしれない。

しかしそれを私に言われても困る。君だって彼らを守る為に途の真ん中で棒立ちしてたわけじゃないだろ。点数のためだよね?あとタイムリミット。

 

「これからどうなるんだ?」

 

震えがマシになったので仰向けに転がり鉢にぶつかったところで響く問い。

それも私に訊いてんの?

こっちはスーツ壊れ(たから離れると周波数変わっ)てて君を視れないんだぞ解ってる?

今日はエリアが外国だからミッション終了後が気になるって意味なのか?

心配しなくてもいつも通りでしょう途中までは。

黒球部屋へ戻って採点。時間切れなら点数没収。間違ってても知らん。

 

「さっきの虫は何なんだ?誰も殺せなかったのか?」

 

「何」って、マップに表示されてるからガンツが指定するターゲットじゃん。

落ち着いていると見せかけて混乱しているのか?センパイ。

通り過ぎて行った赤眼デカ虫をメンバーの「誰も殺せなかった」のか訊いてるなら知るワケない。メンバーの居場所すら把握していない。

つーか過去形にするな、未だ終わってないから。

 

西を放置し船尾へ向かう。

更に何か言ってたがもう知らん。知力キャラなら自分で答えを出せ。

転送まで暇だろう、床から起きる気が無いんなら。

ほか2箇所のターゲットには手が回らないが近場だけでも間に合わせる。

メンバー達の対応力はいまいち判らないけれど(時間切れ)罰則への危機感だけは信じてる。

 

うあ~ショットガンかさばる~

100m程移動した地点で(危機一髪体験やら何やらで忘れていたチャージショットのトリガ―を引いた後)射撃姿勢をとる。スーツアシストが無いので体育座りの変形だ。

生身狙撃は初体験だがやらないよりはマシだろう。来たれ火事場のなんとやら。

肉眼とマップで予め位置を確認しない標的も初かと思いつつ壁・柱・階段その他を透過し…

映る。

黒地に白く浮かぶ蜻蛉、っぽい蠅(?)が。

重なっている分を含め数十匹。他所の分が合流したか。

船の側面へ向かうほど増える二足歩行の骨格へ虫が接近、四散する。

よっしゃ効くじゃん。

それに初期(?)デカ虫へのロックオンが有効ってことはマジで赤眼は黒眼の進化

 

ズシンッッ

 

最悪の想像を振り払ってターゲットを定め深呼吸のあと息を止めた直後、足場を襲う大きな縦揺れ。内臓が偏る感覚

 

ガシャ―――ンッ

 

あ?

 

ドンッ

 

 

 

 

===□○◇===

 

 

 

ここは避難路の終点。他より少し狭い通路。子供も大人も大声で、耳がバカになりそーだ。

皆がんばったんだなぁ。元気な人がこんなにたくさん、

最後の扉を押す中年男性。白い服のコは未だ気絶。青い服のコが心配そうに彼女の顔を見つめている。

船の側面に設置されていたのであろう頑丈そうな囲型救命ボートはクレーンとアームで支えられ乗客を待っていた。乗り込んでから海面へ降ろすようだ。

手強くて大きな虫を思い出す…

船外までは追って来ないと思いたい。

 

「あの…」

 

白服のコを座席に横たえ立ち上がると青服のコも席を立った。何だ?問題か?

 

「えっと…」

 

視線を向けると言い淀む。俯いた顔色は判らないが耳が真っ赤だ。

捕獲銃を手放したから不安なのかな?このボートにも照明弾くらい付いてると思うが…

俺は白服のコをロビーから運ぶとき青服の彼女に捕獲銃を貸した。

ソードの効き難い相手にどこまで通用するかは不明だったが目暗ましにはなるだろう。

素早く通路へ戻るには俺が怪我人を持つ必要があったし青服のコの細腕で扱えそうな武器は捕獲銃だけだった。

自身の頭蓋骨(?)内で何かが爆発するのは恐かったけれどミッションに巻き込まれた人がターゲットに殺されるなんて理不尽すぎる。

渡す時「捕獲銃」を「照明弾」と伝えたのが正解だったのか、俺の爆弾が作動する気配は無い。

 

「そこに居ると避難が止まる。戻るか残る、はやく決めろ」

 

!!

外国人男性の指摘で気付く。なんだか覚醒し直した感じだ。

そうだよ!時間が無い。恐がっている暇なんて無いんだよ俺たちには。

自信が無くても動かなければ最悪の想像は現実になる。

お蔭ですっきりした、ありがとう。

 

「Un?…こちらこそ」

「あ…」

 

男性たちへ頷いてからボートを出る。後続に何か言われたが言葉がわからない。

英語とは違うような、まぁいいか。少し道を開けてくれ。

 

広間に出た大きな虫は和泉と西、佐藤さんが居るからいいとして、他の状況はどうなった? 迷惑そうな顔の乗客たちを突き飛ばさないよう移動しながらマップをチェック。

船首区画のターゲット反応が消え、同じ階層を縦断中?

通路を曲がり狭まる距離。耳へ届く不吉な騒音。

急いで周波数を操作する。

 

ヴ”ン”

 

左右へぶれて迫る影。ソードを振ったが手応え無し。

背後で迸る液体。疑問の声と遠い悲鳴。ぶつかる何かを弾く背広。逆さで俺を見る碧眼。

視界に入る裾が赤い。辺りを翳める霧のせいだ。

っ!

振り返る途中に傾く視界。依れそうなものが近くに無い

 

バババババババババババババババ

 

緑、黄、黒と変わる靄。血臭に混じる青臭さと土の匂い。倒れる前に爆ぜる鉢植え。

照明が壊れたか、靄が晴れても暗いままの通路を漂うのは赤い光点。

 

熱っつ、うぐっ

左脛と右脇腹に激痛。スーツは故障したらしい。一撃でこれって反則だっ!

転がる度に増す血臭。出血を止める暇が無い。迫る殺意は5つ分。煩い羽音はそれ以上。

さっきより動きが遅い?鈍いような。眼が光るのに視えてない?

ぅわっ

ゴッ

3方からの風圧で反転する床と天井。眼に異物感と頭部へ衝撃。

被ったモノをそのままにして呼吸を止める。

 

静かだ。

 

光点も消えた。Xガンは持ってないから

 

……佐藤さん?




和泉は広間に放置。

西くんは通路に放置。

加藤を襲ったデカ虫をやったのは最後のチャージショット。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。