ねぎ星人ミッションクリア。
岸本コピーではなく小島がメンバー入り。
山田生存。
加藤と西が険悪化していない(表面上は)。
『この…ここのホームで2人の高校生が線路に落ちた人間を助けた後、
忽然と姿を消してしまったのですっ』
“初冬のミステリー 地下鉄でホームレスを救った2人の高校生が消えた?!”
ポリッ
私は小鉢に盛られた糠漬けをとり齧る。
『あっち側まで走ってったんですけどぉ~電車が来ちゃって…見えなくなってぇ』
『え?…撥ねられたとこは見てないけどなぁ…』
『その時間このホームにいたけど、そんな高校生見なかったよ?
なんか…集団催眠みたいな?ヤツなんじゃないスか…?』
『謎の高校生2人は実在するのでしょうかっ』
こっちの時間で昨日の宵、
TVに映るプラットホームで玄野見てからガンツに呼ばれネギ狩りして。
長~い夢…だと思ってたんだが違うかもね~。モグモグ
思い返してみれば最初からこの世界は不自由すぎた。こんなに融通の利かない夢はおかしい。
この家屋、が建つ町、の属する国、を養う惑星がよく出来た仮想世界ではなく当たり前に暮らしてきた現実世界と同等だ、と五感が示している。所謂、並行世界?致命的な違いを含む現実世界。私が唯一だと思っていた世界には隠れ住むクリ―チャ―や“ガンツ”みたいなモノは無かった筈だ。
調べると私が住んでいたマンションは存在せず知らない建物が表示された。
ネット検索しかしてないから何かの間違いって可能性もあるが私の人格(魂?)が小島に乗り移っている、ということは「私」という器に小島が代わりに入っている、あるいは魂(笑)を抜かれた私は「向こう」のどこかで倒れている……そっちのほうが困る。
これがフィクションに出てくる異世界トリップ及び憑依ってヤツか(笑)数ある可能性のうち2番目くらいに嫌な候補だが、とりあえず仮定しよう。知らない場所へ放り出され住む家まで無い、という状況でないことは喜ぶべき。衣食住が粗末な生活は辛い。
ただし既存の立場を演じるとなると問題がある。
この姿をしている限りそうそう疑われないとは思う。が、どの程度のものなのだろう?
母親の直観というものは。
いま(わたし扮する)小島多恵は用意された朝食を摂っている。対面に座りテレビを見る女性、小島母の態度を伺いながら。彼女は無言でワイドショーを観ている。オカルト好きか?
趣味が合うかもしれない。ボロが出そうだから会話は遠慮するが。
視線が外れている今のうちに食事を終えてしまおう。部活や委員会活動で急に登校時刻が早まったと言えば最低限の会話で済むだろう。
この世界が昨日、突然始まったモノでないなら「小島多恵」の人生があったはず。
会話のくい違いが恐い、挨拶のタイミング・調味料の好み・食べる順番・表情の選択ミスに怯えながら摂るなんて食材が勿体ない。小島が当たり前のように享受してきた贅沢、実母の手料理という毎日ありつける筈の朝食に対するリアクションは無表情、で正解か?
もっと気だるい感じのほうが自然かも(客観的には)寝起きだし。
娘の中身が違う、なんてバレたらすごく面倒そう。
最後まで秘密にしたい。
私は口に含んだ米飯を飲み込んだ。
定期券あるけど駅の場所わかんねーよ、通勤っぽいヒトについてトボトボ歩く。
社会人が通勤するように学生は通学して勉強しなくてはならない、私が授業受けても無駄なのに。2度目の高校生活とかダルすぎ。許されるなら他のことしたい。
小柄な学生の小島と社会人の私は「性別以外の共通点が見当たらない」と言える程ちがうのに今のところ物を掴み損ねたり小さな段差で転ぶとかの支障は無い。違和感が少ない、というより身長の違いを比べる対象が無かったら気付かないレベルで同調している。それは助かる反面腑に落ちない。でも20cm低くなる程度の変化ならこんなもんか。低身長から高身長に乗り換え、おまけに性別まで変わっていたらまた違ったのだろうが。
今朝、事故を確信した時刻は午前3時だった。
平時「私」が起床していた時間だ。私の身体は女子高生のはずなのに生活リズムが社畜のままってオカシイだろ…。小島も3時起き生活だったのか?
どちらにしても超早起きだが無駄にはならなかった。シワシワになった制服のアイロンがけとかに時間かかったので。制服のまま寝るのは絶対にやめよう(泣)。
明日もこのままだったら2度寝しよう。
駅に到着。
小島と同じ制服を着ているグループについて降車する。高校まで案内よろしくー。
彼女の友人が話し掛けてきたらどうするか。知らない話題は聞き役に徹すればなんとか。解らない問いはくしゃみで誤魔化せるというのは、さて本当か。態とするくしゃみって難しそう。というか小島のキャラってどんなんだ?玄野への対応しか知らんのだが同じで問題無いのか?
地味に微笑んでればいいの?…学校も気が抜けない。一緒に住んでる人を欺くよか難易度低そうだけどー、いや相手のスペックによるか…。いっそキャラを作ってスベるのもテだな。
素でとりあえず臨んでみよう。
対応を考えながら女子高生をチラ見する。
…。
あれ?もしかして――
… … …
無事、教室前の廊下に着いた。
そして登校中、誰にも話しかけられなかった。
高校デビュー失敗か?小島。ぼっちなのね。
…親近感湧くなぁ。
1年生の教室が並んでいる。どれだろう小島のクラス。隅ではない筈。
手入れの良い茶髪に目が止まった。
見覚えがある横顔。教室の窓際、前から3番目に座った彼に男子生徒2人が近付く。
その1人が持った雑誌を広げ、
(何なんだよ、このカラダ!!なあ!!すっげ~よな~。反則だよっ。やーらしすぎ)
ス○ックみたいな男子がグラビアアイドルを指してはしゃぐ。奴の名は、たしか永沢。
話題は、あぁ昨日プラットホームで玄野が見てたアレな。
小島の座席を知らないので私は荷物棚の前に立つ。空席はあと数か所。
(スッゲ~よなッ、どこに生息してンだよ~こンなの)
頬づえをついて聞いていた茶髪こと玄野が相槌を打つ。
(うちの高校にゃあ、いねーな~)
(まァな。ハハハハハ)
(そ~いや昨日BSで始まったアニメがさぁ~あれ絶対ブレイクするよっ)
ぽっちゃりしたメガネ…松村が永沢に語る。欠伸する玄野。
主人公と松村は永沢を共通の友人にしてるだけで話が合うとかじゃなさそーに見える。
松村といえばイベントがあったな。今日だっけ?
屋上の通路。
松村に連れ出され相談される玄野。
屋内への出入り口から私が顔を出すと通路中程で壁に凭れて話す2人が視えた。
(…なぁ玄野)
(ハァ?)
(俺…今やばいんだよな~)
(何が?)
(俺…カツアゲくらってんだよね。2年の米倉に…。アニメ雑誌も買えないよ~)
(…)※記憶補完
「く・ろ・の・く~ん!!」
とりあえず呼んでみる。
小島は普段怒鳴ったりしないのだろう大声を出しにくいが問題無く届いたようだ。
弾かれたように背筋を伸ばしてからゆっくり振り向く玄野。
見逃さなくて正解だった。
玄野が松村に連れられ教室を出たときは一瞬「お手洗いか?」と思ったけどな。
ホケ面晒してる場合じゃねーよ?って、なにその訝しげな表情~もしかしてもう忘れたの?
マジで?巨乳美少女以外は記憶したく無いってか?それは知ってるが酷くね?
助けてやろうと思ったのに~やめよっかな~。
いや、クラスメートとして見覚えくらいあるよね。接点無かったから困惑してるのだろう。
「あのっ、先生が呼んでますっ。はやく早くっ」
そこに居るとキケンだよ~。はやく去らないと恐喝犯とエンカウントしちゃう、かも。
焦った様を装い両腕を振る私。パタパタ パッタリ パタパタパタ
(あ…玄野…あの)
松村が何か言ってるが無視しろ。危険感知(?)を働かせるんだ、命の危険じゃないけどね。
おもに自尊心と歯が危険。どーでもいい知人の懐事情より大事なモノでしょ?
来なかったらどーしようかな。…どーもしなくていいか私は早速困らない。
玄野だって犯罪者に絡まれて大怪我したとしても次のミッションまで息あれば治るし、たぶん。
とか思い待っていると彼はノコノコ近付いて来た。
玄野と屋内へ入り扉を閉じる。
ふぃ~まったく世話の焼ける奴だ。これで恐喝犯には見つかるまい。
「お、よく見たら…ッて、ハァッ?
…サトウ…だッけ」
今まで眠そーにしていた奴が目を瞠る。
サトウ?誰だよ佐藤って………
あ、私か。
「佐藤ッて勢綾だッたンだ…ジツザイシタンダ…」
玄野と小島が通う学校は私立勢綾高等学校。
「はい?」
バッチリ聞こえたけど訊いちゃう。
君も昨晩の出来事を覚えているんなら現実なんだろうねぇ残念なことに。そして同じクラスだよ☆
「や…中学生かと」
「…」
そーいや玄野って付き合いだしてからも小島の名前知らずにいたなー。それに私が自己紹介で偽名言ったとき、の前に目が合ってもリアクション無かったわ。同じ高校の制服着てたのに。
ってことは昨日のミッションで遇うまで存在すら認識していなかったのね。
はっ、もしかして他のクラスメイトもそーなの?だから話しかけてこないの?なんてこった、
どこの隠密キャラだよ(笑)。
「…で、呼ンでるッて誰?担任?職員室行けばいーの?」
「ん? あー、ごめんなさい。あれは方便というか…教員方は呼んでません」
「?」
「私…聞いちゃったんですよ。松村くんがカツアゲされてて…
お金無いなら代わり…連れて来いと言われたって」
玄野の通う高校には恐喝犯が生息している…マンガ設定では。
そいつらに目をつけられた彼が今日の放課後、ガンツスーツの力で理不尽な要求を撥ね除けるイベントがある。本来なら私が出しゃばらなくても玄野が勝手に解決する話だ。
しかし私は見た、彼がスーツを仕舞ったケースを棚へ戻すところを。
そう、こいつはガンツスーツを持ってない。
やる気あんのか?
「…そーいえば、アイツ2年がどーのッて言ッてたけど。え?それで…」
やはりカツアゲについて相談されていたようだ。
まぁ相談と見せかけて松村の仕込みだけどね「2年」と玄野を遭わせるための。
誤解だとしても「2年」に難癖つけられた主人公を売っちゃうんだから同じこと。
恐いわ~、マジで恐喝犯が扉のむこうに居るのかよ。東京ありえね~。
「…はい。おそらく松村くんは玄野くんにカツアゲを押しつけようとしています。
これからはやめたほうが良いですよ?松村くんと2人で行動するのは。
犯罪者には接触しないように、なるべく注意して下さい」
面倒事はミッションだけで充分でしょ?
♪キーンコ-ン カーンコーン♪
「…」
反応が無いな。?……。
仕方ないか。ほぼ初対面の私より前から知ってる松村を信じるのが普通。
う~ん、最初のフラグは折ったし大丈夫かな?
「教室へ戻りましょうか」
「…ああ」
号令には間に合った。
私の高校生活って平和だったのね。
… … …
地下鉄のプラットホーム。
いまごろ歯コレクターに1話キャラがボコられてんだろーな~…学校の方角へ手を合わせる。
断じて尾行していたのではなく全くの偶然だが、視界の隅で玄野と永沢が談笑中。
松村は居ない。そーいや駅で一緒の描写は一度も無かった。利用線が違うらしい。
「これ朝のワイドショーでやってたけど本当かぁ?」
柱の張り紙を指す永沢。
“ホームレスを救った高校生2人を探しています。12月16日18時50分頃
線路に落ちた人を助けようとして急行列車に轢かれたと思われる高校生2人を探しています。
特徴 1人は190cm以上の長身でオールバック 2人とも紺または黒色の学生服
目撃証言はこちらまで… … ”
タイヘンだ~
加藤が簡単に特定されそーな内容だ。190超の学ラン・オールバックなんて、そうそう居ないって(笑)そこにお人好しって付くと加藤の学友だったら即バレしかねない人物像だし。
それに比べ玄野の特徴は学ランの色だけ。性別しか分からない。良かったねぇギャラリーの記憶に残らなくて(笑)。
「玄野、行くでしょ今から…」
「アッ!そッか…。川村ひ□る握手会か!?あ~今日だッたか…」
「はぁっ?お前ともあろう者が忘れてたのかよっ。どーした変な物でも食った?」
「なンだよソレ~…でも、どーしよッかなァ。川村■かる俺のモンになるワケじゃないしィ」
「な~に言ってんだ玄野。俺ら彼女一生できねーんだし夢くらい見よーぜ!ともに…」
「俺らッて…らッてなンだよ!俺もかよ!?」
ちょっと恥ずかしい内容を大声で言いながらじゃれ合う2人。
野郎共はそーいうつもりでアイドルの握手会へ行くのか~なるほどなぁ。
残念だが永沢よ今後高確率で玄野には彼女ができるぞ。それも容姿レベルがカンストしたような、まさにマンガのヒロイン級(神)な彼女だ。そのときこの友情はどーなるのだろう?
ニヤついてたら玄野と目が合った。
…… …… …
見つめ合うこと暫し。
「何?知り合い?」
「ああ。えッと…」
「あ、あいつクラスにいたな、たしか」
「そうそう。同じクラスの佐藤」
「佐藤?そんな名前だっけー…」
「え?」
さすがだ永沢。伊達に前髪パッツンじゃないね。さっさと訂正するんだ。佐藤☓→小島○。
「…まぁ、いっか」
「何が?」
永沢~っ
…もう、いいよ佐藤で。
私が言わなきゃ誰も気付かないだろう。
興味を失ったらしく2人は線路へ向き直った。
握手会か~行ってみたいけど混ざれず浮きそーだし無料じゃなかろ、やめとこ。
付いてくと玄野にストーカーだと思われかねないし。
ストーカーといえば、あの娘はこの世界に存在しているのか?
コピー岸本だけでなくあの娘まで削られたら泣いちゃうよ?私。
マジで。
改変点:
玄野と立花(歯コレクター)遭遇せず。
原作既読者は見る必要の無い解説①
小島母=ヒロイン3号こと小島多恵ちゃんの母親。下の名前不明。増えゆく捏造設定。
歯コレクター=カツアゲの元締め的な校内犯罪者。歯医者の息子。集金の邪魔者から歯も頂く。
一話キャラ=カツアゲ回の一話キャラ。後輩のお金を取り戻そうとしてボコられた。